タケちゃん - みる会図書館


検索対象: ノンちゃん 雲に乗る
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1. ノンちゃん 雲に乗る

ね : : : それから、まだわかるとこないかと思って、もう少し見てたら、『オカアサンニカテモ ラウモノオトウサンノトオンナシマネシッリ ュセンケジドウシャ』なんてのが出てきたの。 それで、ああ、これはまちがいなく、うちのタケちゃんのだなと思ったから、おかあさん、き れいにふいてとっておきましたよ。あれはね、タケちゃん、まねしつでなくて、まんねんひつ。 それから、りゆせんけでなくて、りゅうせんけい。」 おかあさんは、まっかになって笑いながらいいました。 にいちゃんもまっかになって、おかあさんの話がほかの人にきこえないように、どなってい ました。 「ずるいや、するいや ! 」 ちょうめん 「だから、こんどから、帳面にはみんなお名まえを書いとくの。そうすれば、だれも中まで見 はねお やしません。字も、もっとちゃんと書かなくちゃ。おかあさん、読むのに骨折っちゃった。」 「ずるいや、みんな読んじゃったんだ ! 」 「『べエゴマノヒミッ』って、なんだい。」と、おとうさんが、やつばり笑いながら聞きました。 「シバイタョ。」にいちゃんは、急に小さい声になりました。 「どこでするんだ ? 」 「田村君とこの物おき。」 わら わら

2. ノンちゃん 雲に乗る

しトフぶまち ノンちゃんのにいちゃんは、ノンちゃんより二つ年うえの、ちょうど十歳、菖蒲町の小学校 はんみよう しいますが、いつもタケちゃんとよぶのは、ほとんど、 の四年生です。本名は、田代タケシと、 おかあさんひとりといっても、 ししくら いろんな名まえをもっています。時間にかぎりがあ 三についてしか、お話できないのは、まことにざんねんです。 りますから、おもなもの、二、 と、お にいちゃんが生まれてから、まず最初に自分の名まえとしてつけてもらったのは ことわりするわけは、にいちゃんも生まれてから六日間は、、 との男の子にもあてはまる「赤ち ゃん」とか「坊ちゃん」とかいう名でよばれていたからですーーーもちろん、本名のタケシでし ばうず た。けれど、すぐそのあとを追っかけて、「根っこの坊主」という、最初のあだ名をもらいま はんみさっ した。名づけ親は、本名のときと同じく、おじいちゃんでした。 にいちゃんは生まれて以来、いつもいつもふとってばかりいて、ノンちゃんのように、やせ たりふとったりしたことはないのです。生まれたてのときにもう、その首、その胴、その手足、 ノンちゃんのお話 ( にいちゃんーにいちゃんのあだ名 ) おや たしろ さいしょ さいしょ はんみよう 113

3. ノンちゃん 雲に乗る

ノンちゃんの目とロカノ ; 、。、ツとあきました。「おかあさんは ? 」 おばちゃんは、またチラとおとうさんを見て、こまったように、 「あの : : : おかあさんね、ちょっとご用ができて、東京へいらしったの : ノンちゃんは、目をまるくしたまま、しばらくじっとしていましたが、やがて、少しふるえ よっや る声で、「四谷で : : : だれか病気 ? 」 わら おばちゃんは笑いました。 でもね、ノンちゃんたち、どんどん大きくなるでしよう ? だから、買いもの 力しつばいたまっちゃったんですって。でも、おおいそぎですまして、あかるいうちに帰って きますって : : ちゃん : : : は ? 」と、聞いたノンちゃんの声は、まえよりもふるえていました。 「タケちゃんもいったの : ノンちゃんはうつむいて、ごはんをたべはじめました。 おばちゃんはなぐさめました。 くら 「おかあさんね、ノンちゃんがちょっとあそんでるまに帰ってきちゃうんだって。暗いうちに、 お茶づけたべて出てらしったのよ。だから、おばちゃんと何かしてあそんでましよう。 0 、、 てしょ ? ・」 7 ケちゃんだけお泊まりして、あした、おじいちゃんに送ってきていただくの

4. ノンちゃん 雲に乗る

ありや、なんだ ? あ、メダカだ、メダカだ ! わあ、たくさんいる ! すごいなあ ! ち よっとはいれば、すぐとれら。 しかし、ランドセルしよってメダカすくいは、なんぼにいちゃんでも、気がとがめる。それ にほれ、おまえもさっきいったな、はら時計がなるぞ : そこで、にいちゃんは石橋から先 てつぼうだま きようそ・フ は、まるで鉄砲玉だ。エスと競争で、とぶように帰る。 えん 「ただいまア ! おかあさん、なにかア ! 」縁がわヘランドセルほうりだしながらどなる。 あせ 「お帰り。まあ、タケちゃん、どうしたの ? そんなに汗かいて : おかあさんは、用意しておいたおいしそうなものを、お勝手から出してきてくれる。 息もっかずにつめこもうとする 「タケちゃん、手をあらった ? 」と、おかあさんがきく。 にいちゃんは、ハッとして手を見る。さっき、メダカを見に川へおりたとき、土手へ手をつ いたから、まっくろだ。 わす 「←毋日のことでしょ一つ ? ・ 忘れないで、あらうの。」 にいちゃんは、くわえかけたおやつをいそいでのみこんで、井戸ばたへかけてって、手をあ むちゅう らう。それから、夢中でつめこむ。つめこみながら、メダカ、なんですくおうかな、と考える。 ぼくのあみじゃ、もぐっちゃうな :

5. ノンちゃん 雲に乗る

かなき 「うそじゃないッ ! 」ノンちゃんは、思わず金切り声でさけびました。 「そんな声、出さなくても、 しし」と、おとうさんがいいました。 び 4 つき ほんとにそうでした。ノンちゃんのうそぎらいは、一つの病気だということは、おとうさん もよく知っているのですから。 ばっていいました。 「何か証拠があるのか。あるなら見せろ。」と、にいちゃんが、い 「まあ、たいへんなことになっちゃった。」おかあさんは笑って、いつのまにかおしまいになっ ていたごはんのあと始末をはじめましたが、少しふしぎそうに、 「だけど、タケちゃん、あなた、ほんとにそう思ってるの ? 」 「一つん ? ・」 「ほんとにそんなことしなかったと思ってるの ? 」 「しないよ : ・。」にいちゃんは、元気なく答えました。 ざしき ひ、一うき 「そう : : ? じゃ、しかたがないわねえ。お座敷の飛行機見たとき、あなたの気もちは、飛 行機みたいにたんすの前まで飛んでっちゃったんでしよう。でも、やつばり、あなたには足が あるから、足あとがついちゃったんだわねえ。」 「そのきれ、持ってきて見せてやったら、すぐわかるじゃないか。」と、おとうさんがいいました。 おかあさんは、もうそのことは、わけがわかったからようござんす、といったのですが、お しまっ わら 175

6. ノンちゃん 雲に乗る

でいったのかもしれんぞ。 ものおき おかあさんは、物置へかやを探しにいってくれた。にいちゃんは二階へかけあがって、机の 上を片づけた。いい や、あと二題だもの、帰ってきてから、時間表そろえながらひとひねり かやは、 しいあんばいにすぐ見つかった。それを、少し切ってもらう。それから、ほそい竹 はワがね に針金をまるくしてはめこみ、おかあさんから糸と針をかりて、かやをぬいつける。 おとうさんだって、自分のことは自分でしろっていうんだ : 「まあ、タケちゃん、がんじがらめで、じようぶそうね ! タケちゃん、お裁縫じようずだわ。」 と、おかあさんが笑う。 よくできたろ ! 細工はりゅうりゅう 「そうさ。ゃぶけたら、すくえやしないよ。どうだい、 仕上げをごろうじろだ。」 にいちゃんは、じまんしいしい はりきって出かけた。 夕方、にいちゃんは、おお元気で帰ってきた。 だいしゅうかく だいしゅうかく 「おかあさん、大収穫 ! 大収穫 ! おとうさんより大収穫 ! 」 おかあさんが、お勝手からとびだしてきて、 ぞうきん えん いま雑巾がけすんだとこですよ。 「ああ、タケちゃん ! そのばけつ、縁がわへおかないでー まあ、どろだらけになって ! その服、全部、縁台の上 ( ぬいで、おふろ場からおあがり。よ わら さカ はり だいしゅうかく さいはう つくえ 211

7. ノンちゃん 雲に乗る

さんかん べんとう たりはいったりするそうです。体操の時間は、庭で参観します。にいちゃんは、お弁当のある べんとう 日は、お弁当を二つ持っていきます。ときどき、自分のおかずとエスのと、とりかえっこして たむら いると、田村さんがいっかおかあさんに話していました。 わるぐち にいちゃんは、そんなふうに、エスのためならどんなことでもします。おかあさんの悪口さ えいいます。たとえば、ついこないだも、おかあさんが一生けんめいまいたジャガイモが、と め てもかわいい芽を出しました。すると、それを、エスが一晩のうちに、友だちとさわいで、け ちらしてしまったのです。 おかあさんは、とてもがっかりしました。 「タケちゃん、エスを少しのあいだ、どこかへあずけてくれないか。おかあさん、エスきらい になったよ。」 にいちゃんは、なさけなさそうな顔をして、、、 「おかあさんは、動物をあわれまない : すると、ノンちゃんは、そんなことをいう、にいちゃんがだいきらいになって、どなってし まいます。 かわ 「にいちゃんは、ジャガイモをあわれまないー ジャガイモだって、生きてるんだよー しそうじゃよ、 / しか、せつかく芽工出したのに。エスにちゃんとおせとかないから、にいちゃん め ししました。 ひとばん

8. ノンちゃん 雲に乗る

「いやだアー いやだア ! おとうさんが、ぼくのことぶったア : にいちゃんはそうやって、ずいぶん長いあいだ、やかましく泣いていました。 少しすると、おと一つさんがいいました。 「うるさいやつだ , もうぶたないから、こっちへこい にいちゃんは、それでもまだむこうをむいて泣いていましたが、泣き声はだいぶ、しずかに なりました。 また少しすると、おかあさんが、 「タケちゃん、こっちへいらっしゃい。」といい すると、にいちゃんは、こんどはおとなしくもどってきて、おかあさんのわきへすわりました。 おとうさんは、それを見て笑いました。 「おとうさん、ぶった、おとうさん、ぶったって、だれに、 ししつけてきたんだ ? 氷川様にか ? 氷川様だって、おとうさんはわるくない、そんな坊主は、もっとぶってよろしいとおっしやる ぞ。おとうさんには、ちゃんとわかってる。」 にいちゃんは、こまったように、指のあいだから、おとうさんをのぞき、おとうさんが笑っ ているのをみると、カのなくような声でロごたえしました。「アンナニブッタラ、イタイヤ。」 「いたくたってかまうもんか。おまえはおとうさんの子だから、おとうさん、ぶちたいだけぶ ひかわさま わら ました。 ひかわさま わら 136

9. ノンちゃん 雲に乗る

「ふうん、そりや、おもしろそうだな。一度みんなを招待してくれ。」 「ウン : けれども、にいちゃんは、とうとう一度もノンちゃんたちを、その物おきへつれていきませ んでした。 にいちゃんは、そういうふうに、とてもうそっきです。 みよう 話が、なんだか妙なほうへそれてしまったので、ノンちゃんはわけがわからなくなり、ぼん やり考えました。いま、なんの話してたんだっけ ? おじいさんも息をつきました。 「ああ、おもしろかった : : : ええと : : : わしたちは、なんの話をしておったのかな ? おまえ のにいちゃんの話か ? 」 「ちがうわ、おじいさん ! 」ノンちゃんは急に思いだして、元気にさけびました。「おかあさ んのお話 ! 」 「そうだった、そうだった ! 」と、おじいさんはうなずき、「ああ、 ノンちゃんは、につこりしました。 「ときに・ : 」と、おじいさんは首をかしげ、「さっき、おまえのおとうさんがにいちゃんを、 ムサシとよんだようだが、タケちゃんかい、ムサちゃんかい どっちがほんとじゃ ? 」 いいおかあさんだ :

10. ノンちゃん 雲に乗る

にいちゃんはそうやって、おかあさんに買ってもらうつもりのものを、一、二年まえまで、 ちょうめん ちゃんと帳面に書きとめて持っていました。 それには、「オトウサンノトオンナシマネシッ」「リュセンケジドウシャ」などと書いてあ ったのだそうです。 、、、ちょう ちょうめん その帳面は、ほんとは、にいちゃんのひみつ帳だったのですが、いっかおかあさんが見てし わら ばん まいました。いっか、晩ごはんをたべていたとき、おかあさんが急に笑いだして、 「タケちゃん、『べエゴマノヒミッ』ってなに ? 「えッ ? 」と、にいちゃんは、とてもびつくりしました。「おかあさん、どうして知ってるの ? 」 ちょうめん 「あなたの帳面に書いてあったから。」 「ずるいや ! ずるいや ! 」と、にいちゃんはどなりました。「ひとのひみつ帳、だまって見 て ! どこにしまってあった ? 」 「しまってなんかありませんよ。きよう、庭をはいてたら、ギポシのかげに、おとうさんの手 帳みたいなものが落ちてるから、ひろったんですよ。そしたら、おとうさんのじゃないの。そ して、お名まえもなんにも書いてないの。だから、おかあさん、だれのかわかるようなこと書 いてないかと思って、少し読んでみたんですよ。そしたら、『田村クントボクトべエゴマノヒ たむらくん ミッスル』なんて書いてあるから、ああ、これはだれか、田村君のお友だちのだなとわかって