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検索対象: ノンちゃん 雲に乗る
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1. ノンちゃん 雲に乗る

ありや、なんだ ? あ、メダカだ、メダカだ ! わあ、たくさんいる ! すごいなあ ! ち よっとはいれば、すぐとれら。 しかし、ランドセルしよってメダカすくいは、なんぼにいちゃんでも、気がとがめる。それ にほれ、おまえもさっきいったな、はら時計がなるぞ : そこで、にいちゃんは石橋から先 てつぼうだま きようそ・フ は、まるで鉄砲玉だ。エスと競争で、とぶように帰る。 えん 「ただいまア ! おかあさん、なにかア ! 」縁がわヘランドセルほうりだしながらどなる。 あせ 「お帰り。まあ、タケちゃん、どうしたの ? そんなに汗かいて : おかあさんは、用意しておいたおいしそうなものを、お勝手から出してきてくれる。 息もっかずにつめこもうとする 「タケちゃん、手をあらった ? 」と、おかあさんがきく。 にいちゃんは、ハッとして手を見る。さっき、メダカを見に川へおりたとき、土手へ手をつ いたから、まっくろだ。 わす 「←毋日のことでしょ一つ ? ・ 忘れないで、あらうの。」 にいちゃんは、くわえかけたおやつをいそいでのみこんで、井戸ばたへかけてって、手をあ むちゅう らう。それから、夢中でつめこむ。つめこみながら、メダカ、なんですくおうかな、と考える。 ぼくのあみじゃ、もぐっちゃうな :

2. ノンちゃん 雲に乗る

たかさご たことがあるはずです、ノンちゃんのおひなさまのなかにある、高砂のじじばばのじじに、そ もの つくりじゃありませんか。高砂のじじばばは、おとうさんからの贈り物なので、ノンちゃんに とっては、とくべつだいじなおひなさまでした。 ( もっとも、とくべつだいじでないおひなさ まなんて、世の中にありませんけれど。 ) ノンちゃんは、うれしくなって、につこり、そのおじいさんに笑いかけました。 げいとう すると、おじいさんも笑いかえして、「なんじゃい、おまえ。だいぶん芸当しとったじゃな 、、 0 し力」 くまて ノンちゃんは、熊手ですくわれ、ふわっと雲の上におかれました。 ああ、やわらかいー ノンちゃんは、「おきあがりこぼし」のかっこうで、腰まで雲にしず みました。おじいさんは笑って手を出しました。ノンちゃんはその手につかまり、やっとこさ と立ちあがり、一足、二足、雲のまん中へむかって歩きだしましたが、その歩きにくいこととい ったら ! 雲は雪ほどっめたくなく、雪よりずっとやわらかです。おじいさんの手にでもっか げかい まっていなかったら、ノンちゃんはころんで、雲をつきぬけ、下界へおっこったかもしれません。 「おじいさん、それなに ? 」ノンちゃんは、おじいさんのはいている、へんなものに、なんど もつまずきかけて、ききました。 おじいさんは、テニスのラケットのようなものをはいているのです。それだから、ちっとも わら わら わら

3. ノンちゃん 雲に乗る

「ま ーい。」にいちゃんは、すぐお勝手 ( いて、エスのごはんをだしてやりました。それから、 またもどってくると、 たしら 「田村君のにいさんにね、石こうのつくりかた、おそわってたんだ。だから、おそくなっちゃ ったのさ。首や手がなくて、こういうかっこうしてる人形。」 むね にいちゃんは、胸をはって、人形のまねをしました。 ゅうめい 「そりや、有名な人形だ。うまくできたかい ? 」 「まだわかんないけど : : : 人形でも有名なのあるの ? 」 そうりだいじん 「ああ、おまえがいまに総理大臣になっても、なかなかその人形にはかなうまい」 「ふうん ! 」にいちゃんは、びつくりしたようにいいました。「えらい人がつくったの ? 」 「そうだろうなあ。何千年もまえのことだから、よくわからないんだ。」 「ふうん ! 」 「早く手や足をあらってこい ! 」 にいちゃんは、いそいでおふろのほうへいきました。そして、出てくると、とてもにこにこ して、おばちゃんのそばへすわりながら、 「星が出てるよ : 「そうお」 せつ ゅうめい 201

4. ノンちゃん 雲に乗る

ましたが、かんじんのにいちゃんが返事をしないものですから、少しすると、にいちゃんには 何もいわないで、ノンちゃんとだけお話をしました。 そんなことで、 いつもは、にぎやかなおひるごはんも、気まずくすみました。 いく日かまえ、やつばり学校の帰りにひ ごはんがすむと、にいちゃんはすぐ庭へとびだし、 ろってきた小大ーーーのちのエスですーーとあそびはじめ、おやつごろまでいなくなりました。 とっゼん 三時になって、ノンちゃんが茶の間で、おやつをたべていたときです。にいちゃんは、突然、 縁さきへあらわれて、 「おかあさん、ぼくにも。」と、はじめて口をききました。 「こっちへおいで。」と、おかあさんはいいました。 ぶん にいちゃんの分も、ちゃぶ台の上にのっていたのです。 「いいよ、ぼく、こっちでたべるんだ。」 おかあさんは、にいちゃんのおさらをもっていって、縁がわにおきました。 「手をあらってから、おあがり。」 にいちゃんが、手をあらってから、たべたかどうか、ノンちゃんは知りません。にいちゃん ってしまいました。 は右手にそのおさらを持ち、左手に大をだいて、またどこかへい なんだか、 にいちゃんが、大にな「てしま「たような気がして、ノンちゃんはとてもいやでした。 えん へんじ えん

5. ノンちゃん 雲に乗る

しいます。 さんじゅっ おかあさんも、にいちゃんは算術がよくできるから、だいじようぶと思っているようです。 さんじゅっ けれど : : ノンちゃんは、それさえどうかと思うのです。にいちゃんの算術は、エスに手つだ ってもらうのです。 さんじゅっ いっか、 にいちゃんとふたりで、算術の話をしながら学校へいったことがあります。何かの つごうで、おとうさんはいっしょではありませんでした。 ( それは、にいちゃんやノンちゃん だって人間ですから、たまには、仲よく話しながらいくこともあるのです。 ) あんざん そのとき、ノンちゃんは、暗算はあまりすきでないといいました。すると、にいちゃんは、 あんなものわけはないよ、と、こんな秘訣を教えてくれました。 にいちゃんの頭の中には、数のかたまりがたくさんしまってあるのだそうです。①のかたま だから、にいちゃんは、物をかそえはじめた り、②のかたまり、③のかたまりというように。 ゅび 最初から、手の指をつかったことはありません。 かんじよう 「あんなことして、一つ一つ勘定してたら、めんどくさくって、しよがないよ。数のかたまり はな がなければね : 自分でくふうして、こういうふうにしても、 しゃなしか。目は②、鼻は ①、③は : : : 目と鼻で③ってふうに、自分でつくるのさ。④は、目と目で④だろ ? 」 「目が四つある人、ないじゃないか」 さいしょ 166

6. ノンちゃん 雲に乗る

それなのに、そういう日でも、にいちゃんは、いつものようにエスをおともに、あっちへ寄 ったり、こっちへひっかかったりしながら、帰ってきます。 はレ」けさま つうしんば おかあさんは、にいちゃんの通信簿をまず仏様にあげます。そして、やつばりおがんでから、 おろして、だいじそうに手にもったまま、 「ど一つだった ? ・」とききます。 ノンちゃんのときと、順序がぎやくです。 「テヘッ ! 」というようなことをいって、にいちゃんは頭へ手をやります。 つうしんば おかあさんは、びつくりしたように、いそいで通信簿をあけて見ます。 乙がたいてい 一つか二つか三つあります。おかあさんがおがんでいるあいだ、平気な顔を して、それをながめていたにいちゃんの気が、ノンちゃんにはさつばりわかりません。はずかし はレさま わが くはないのでしようか ? それとも、仏様が、おかあさんのお願いをきいて、乙をなくしてく ださるとでも思っているのでしようか 「タケちゃん、また『読み方』が乙ね。もう少し一生けんめいやらなくちゃだめじゃないの。じき、 しいます。 中学じゃありませんか。」と、おかあさんは、 。ぼく、先生に注をされたことなんか一度も 「だいじよぶだよ、おかあさん、中学ぐらい しんばい ないよ。」と、にいちゃんは、おかあさんが、い配していることが、ふしぎなことでもあるように炻 じゅんじよ おっ おっ へいき

7. ノンちゃん 雲に乗る

それから、またこんなこともありました。ノンちゃんは道を歩きながら、なんの畑のとなり はらやま はなに、何屋のとなりはなに、とおぼえていくのがすきなのです。原山をすぎて学校に近・つく と、だんだん家が多くなりますが、そのなかに一軒、いつも戸のしまっている、大きい、まっ 四角な家があります。あるとき、ノンちゃんは、ひょっと思いついて、おとうさんにききまし 「おとうさん、この家、なに ? 「倉庫だよ。」 「ソーコ ? 何かしまってあるの ? 」 ひりようや 「ああ、となりの肥料屋さんで、売る物をしまってあるのさ。」 : なか、まっくらね。」 おとうさんは、ちょっとびつくりしたように、ノンちゃんを見ました。それから、ノンちゃ んにいわれて、はじめて気がついたように、その戸のしまった家を、もう一度しげしげながめ わら てから、なんだかうれしそうに笑いだしながら、 「ああ、まっくらだね ! 」といいました。 そういうとき、ノンちゃんは自分もとてもうれしくなって、おとうさんと手をつないでいれ ば、その手をしつかりにぎりなおし、そのまっくらな中でおこっている、いろんなことを考え いつけん

8. ノンちゃん 雲に乗る

まだ小さかったとき、ノンちゃんは、にいちゃんが小さい水たまりへとびこむのさえ、 「おちる ! おちる ! 」と、泣いてとめたものでした。 あの空が、うその空だとは、ノンちゃんにはとても思えないのです。 ノンちゃんは、モミジの木によりかかって、じっとその青い空に見入りはじめました。 池のまん中に、まっ白い、やわらかそうな雲がうかんでいます。らくそうだなあ : 「チチッ ! 」上のほうを、鳥が渡りました。 ひょいと見あげると、頭の上に、ぬうとっき出ている大きな枝は、もちろんにいちゃんの「馬」 なす です。にいちゃんは、いつもこのモミジの大枝にまたがり、ずっと先までのりだして、那須ノ 与一をまねるのです。 ノンちゃんは、エスのそばから立ちあがると、モミジの木に手をまわし、池のほうへ手をさ すがた しのべているような、その形のよい木の姿を下から見あげました。それからゆっくりのぼりは じめました。これでも、ノンちゃんは、おとうさんのおしこみで、木のぼりなら、にいちゃん になんか負けないのです。負けるものですか。にいちゃんのように重い子は、あぶなくてのぼ れない木でも、身がるなノンちゃんは、さっさとのぼっていけます。ですから、ときどきタコ が木にひっかかると、にいちゃんはいつもよりていねいなことばで、ノンちゃんをよびにくる くらいです おおえだ えだ

9. ノンちゃん 雲に乗る

までかけていき、じまんそうにおかあさんを見あげました。 「だいじよぶだったの ! ちっとも気もちわるくなんかならなかった。おべんとも、みんなた べちゃったの ! 」 しんはい 「そうお。」おかあさんは、それでも少し、い配そうにいうと、しつかりノンちゃんの手をとりま した。それから、ふたりはならんで家のほうへ歩きだしました。 くさもち 「いまね、神主さんのところへ草餅もってってあげたのよ。そして、出てきたら、ノンちゃん おばあちゃん、さっきいらっしやって、ノンちゃん らしい子が、こっちへかけてくから : のかえるの待ってらっしやるよ。それからね、ノンちゃん、もうおひなさま、おしまいなさい って。だから、きようは、みんなでいっしょにお茶をいただいて、おひなさまお送りしましょ いくらおひなさまだって、そういく日もおすわりさせられちゃ、くたびれたろ。」 わす レつ。へんに忘れました。そして、 ノンちゃんは、それをきくと、池のことも、雲のことも、 くさもち 一刻も早くおばあちゃんにあい、また草餅でお茶をいただきながら、おひなさまともなごりを おしもうと、おかあさんの手をひつばって、家へ帰りました。 わす その日からきようまでーーー私は申し忘れたでしようか、ノンちゃんが空におちて、雲に乗っ かんぬし 268

10. ノンちゃん 雲に乗る

「え ? それはまた、どうしてわ ? 」 うんてんしゅ 「いっかおとうさんがにいちゃんといっしょに歩いてたとき、その運転手さんにあって、あや まったの。そしたら、にいちゃん、もうすぐその人とお友だちになっちゃって、大きくなった うんてんしゅ ら、どうしてもトラックの運転手になるっていばってたの。」 「わっはつは ! そういう坊やだ。そうだと思ったよ。わっはつはつはー ひ、 : フさ 「でも、にいちゃん、とてもあきつま、 ( しから、このごろじゃ、飛行機のほうがいいんだって。 ひ・ : フさ モケイ飛行機つくって、ローソクぼうぼう燃やして、あぶなくってしかたがないの。」 「わっはつはつはー・わっはつはつはー わら おじいさんは笑ってばかりいます。ノンちゃんは、しばらくおじいさんをながめていました が、きりもなさそうなので、思いきってききました。 「おじいさん、 : にいちゃんみたいな子すき ? 」 「ああ、すきだなあ。」おじいさんは、あっさり答えました。「おまえもすきだろ ! 」 「あたし : とい - っことはが、いまにも口からとびだしそうになって、なぜか、 : 」だいきらい のどにキュッとつまり、出てこなくなりました。「あ : : : 」 ノンちゃんが、目をばちばちしていると、おじいさんは、おもしろそうに笑って、 。いいにいちゃんじやか 「あたしはどうなんだね ? おまえだって、だいすきにちがいないさ わら 142