なら、蛮人たちの舟がやってくるのが見えるまで、安全に身をかくして待ちかまえていられそう じようりく すがた だし、いよいよ蛮人たちが上陸してくる気配が見えたら、姿を見られずに、近くの木のしげみに 移動することもできそうだった。しげみの中の一本の木には、わたしの全身がすっぽりかくれる ぐらいのうろがあいていた。そのうろの中から、蛮人たちの血なまぐさいふるまいを見ていて、 れんじゅう 連中が一か所にかたまったところを見すましてから、よくねらいをつけて撃てば、ねらいがはず さいしょ れることはないだろうし、最初の一発で、三、四人はかならず負傷させられるだろうとわたしは 思った。 そこで、わたしは、この場所で、かねての計画を実行にうっそうと決心し、さっそく、マスケ じゅうちょう ふつ ) りようじゅうちょう じゅう さんだんこ ット銃二梃と、普通の猟銃一梃を用意した。マスケット銃には、それぞれ、散弾二個と、ビスト ルの弾丸ぐらいの大きさの、ドの弾丸を四、五発こめ、猟銃には、弾丸のうちでいちばん大き たま たま 白鳥を撃つのにつかう弾丸をすこしこめた。ピストルにも、それぞれ、弾丸を四発ぐらいず しゆっげきじゅんび っこめた。まゝこ、 ーカ。二度目、三度目に撃っ弾丸もじゅうぶん用意して、出撃の準備をした。 こういうふうに、計画をねり、頭の中でそのとおりにやってみてから、わたしは、その後毎日、 いじよう 自分の城から三マイル以上はなれた、その丘の頂上まで出かけては、島に近づいてくる舟がない かと見張っていた。だが、二、三か月ものあいだ、かかさず見張りをつづけても、なに一つ見つ からないとなると、わたしは、この苦しい仕事にうんざりしてきた。なにしろ、そのあいだじゅ どう しろ ばんじん ばんじん ふね たま おかちょうじよう ばんじん ふしよう ふね 251
たたかかく′」 「どっちにしても、フライデ 1 二人でやつらと戦う覚悟をきめることがかんじんだ。おまえ たたか は戦えるか、フライデ 1 ? 」とわたしはきいた。 「わたし、撃つ。だけど、やつら、とてもたくさん来る。」とフライデ 1 は答えた。 じゅう 「そんなことは平気だよ。銃をぶつばなせば、弾丸にあたって死なないやつだって、おびえあ がるにきまっているからね。」とわたしはいいきかせ、さらに、もしわたしがおまえを守ってや ると決心したら、おまえのほうでも、わたしを守り、そばにいて、わたしの命令するとおりにし てくれるか、とたずねた。フライデ 1 は、「だんなさま、わたしに死ねといえば、わたし死ぬ。」 と答えた。 そこでわたしは、家の中にはいって、だいじにしまっておいたラム酒を一抔持ってくると、フ りようじゅう ライデ 1 に飲ませてやった。それから、いつも持ち歩いている猟銃を二梃フライデーに渡し、そ たま じゅう の銃に、小さなピストルの弾丸ぐらいの、がん玉という弾丸をこめた。わたしのほうは、マスケ たま 、、だま ちょう じゅう ット銃を四梃出して、それぞれに、ざら弾丸二発と、小つぶの弾丸を五発こめたうえ、ビストル ちょう も二梃持って、それぞれに弾丸を二発ずつこめた。腰には、いつものように抜き身の大刀をさげ、 フライデ 1 には手斧を持たせた。 ぼうえんぎよう こうして、用意ができると、わたしは、望遠鏡を手にして、敵の様子をさぐりに岩山の中腹ま まるきぶね ばんじん ぼうえんぎよう でのばっていった。望遠鏡で見ると、すぐに、蛮人が二十一人、捕虜が三人、丸木舟が三艘、レ ちょうな たま たま こし たま てき ほりよ しゅ ちょう いつばい めいれい わた ちゅうふく そう 引 1
べつじゅう それから、別の銃を出して、一つの銃には弾丸を二発、もう一つの銃には、もっと小さい弾丸を さいしよじゅう 五発こめた。それから、最初の銃をとって、よくねらいをつけ、ライオンの頭を目がけて発射し まえあしはな たが、相手は、前脚を鼻のすこし上にあてて寝そべっていたので、弾丸は、ひざもとにあたって、 ほね 骨をくだいただけだった。そのとたんに、ライオンは、うなり声をあげて起きあがったが、脚が たお くだけているので、また倒れてしまった。だが、すぐまた、三本脚で立ちあがると、なんともい えぬおそろしいうなり声をあげた。 わたしは、頭を撃ちそこなったので、はじめはちょっとあわてたが、すぐに二番目の銃をとり めいちゅう あげると、逃げかかっている相手にむかって、また発射した。こんどは頭に命中し、うれしいこ だんまつま とに、ばったり倒れると、ほとんどうなり声もたてずに、断末魔の苦しみにもだえはじめた。こ れを見ると、ジ = 1 リは元気が出て、陸にあがらせてくれとたのんだ。わたしが、「よし、行っ かたて かたてしようじゅう てこい。」というと、ジ = 1 リは、ざぶんと海にとびこみ、片手に小銃をにぎり、片手で泳いで あな じゅうこう 岸に着き、ライオンに近づくと、銃口を耳の穴におしあてて、もう一度、頭に撃ちこんだ。ライ かんん オンはその一発で完全に息の根をとめられてしまった。 たいした獲物であったことはまちがいないが、食べられるようなしろものではなかった。わた 力やくたま しは、だいじな火薬と弾丸を三発分もむだづかいしたあげくに、なんの役にも立たないけだもの ざんねん を撃ったのが、残念でたまらなかった。ところが、ジ = 1 リは、ライオンの体のどこかがほしい えもの たお じゅう たま はっしゃ あし じゅう たま からだ じゅう たま はっしゃ あし
んわかった。 ぎ力い くわ 危害を加えるつもりは全ないということを、フライデーにわからせるのは、簡単だ 0 た。手 ころ こやぎ をとって立ちあがらせ、にこにこ笑いながら、撃ち殺した子山羊を指さし、走っていって、こっ ばんじん さしず ちへ持ってこいと手まねで指図すると、フライデ 1 はいわれたとおりにした。この蛮人が、カ にもふしぎそうに、どうして子山羊が殺されたのかと、さかんにしらべているあいだに、わたし じゅうたま はもう一度、銃に弾丸をこめた。やがて、弾丸がとどく範囲内に立っている一本の木の上に、鷹 に似た大きな鳥がとまっているのが目についた。そこで、これからしようとしていることをすこ しでもわからせてやろうと、フライデーをまた呼びよせ、その鳥を指さしてみせた。はじめ鷹だ じゅう と思ったその鳥は、実はおうむだった。とにかく、そのおうむを指さしてから、わたしの銃を指 ました さし、それから、おうむの真下の地面を指さして、これからあの鳥をあそこに落としてやるのだ じゅうう というかっこうをして見せて、わたしがその鳥を銃で撃ち殺すのだということを理解させた。そ こで、わたしは発砲し、フライデ 1 に、よく見てごらんといった。ところが、フライデ 1 は、お うむが撃ち落とされるのを見たとたん、あれほどいってきかせておいたのに、こんども肝をつぶ して立ちすくんでしまった。しかも、わたしがさっき弾丸をこめるところを見ていなかっただけ じゅう 前よりももっとびつくりしたようだった。きっと、わたしの銃には、なにかふしぎな力がや どっていて、人間だろうがけだものだろうが鳥だろうが、遠くにいようと近くにいようとおかま はっぽう こやぎ わら ころ たま たま はんいない ころ かんたん たか たか 311
じゅう こうかいし 水夫二人と船室付きポ 1 イをしたがえて、銃をかまえて待ちうけていた。航海士が鉄梃でドアを じゅう こじあけたとたんに、その四人は、とびこんでくる相手にむかって、めちゃくちゃに銃をぶつば じゅうたま ふしよう ふしよう いのち なした。航海士は、マスケット銃の弾丸を腕に受けて負傷し、部下の二人も負傷したが、命には べつじよう 別状なかった。 おうえんもと こうかいし にせせんちょう 航海士は応援を求めてさけびながら、傷をものともせずに船室にとびこみ、ピストルで偽船長 ひとこと の頭を撃ちぬいた。弾丸は口からはいって、耳のうしろからまたとび出し、相手は一言もいえず れんじゅうこうさん しゅび にのびてしまった。これを見ると、あとの連中も降参したので、それ以上死者を出さずに、首尾 よく船をうばいかえすことができた。 こうして、船長は、船を自分の手に取りもどすと、成功した場合の合図として、あらかじめわ はっしゃ たしとうち合わせておいたとおり、七発の号砲をすぐ発射させた。わたしは、午前二時ごろまで こし 海岸に腰をおろして、今か今かと合図を待ちかまえているところだったから、この号砲をきいた ときにはどんなにうれしかったか、読者にもすぐわかってもらえるだろう。 こうかいし っ たま ぎず どうほう せいこう ぶか いじよう あいて かなてこ こ - ) ほよノ 基 12
たま ながら、さんざんさまよい歩いたあげく、しかたなしに、とにかくもう一度海岸までもどり、棒 じゅう を立てた場所をさがしあてて、来た時と同じ道をもどることにした。ひどく暑いし、銃だの弾丸 だの手斧だのがひどく重いので、無理をせずに、ゆっくり帰ることにした。 びきこやぎ 帰り道でのことだが、わたしの犬が、いきなり一匹の子山羊におそいかかって、おさえつけた こやぎ ので、わたしは、すぐにかけよると、子山羊をしつかりだきかかえ、かみ殺されないように、大 ひき こやぎ からひきはなしてやった。前から、子山羊を一、二匹つかまえて飼いならし、子どもをふやして、 こやぎ と思っていたので、この子山羊 弾丸がなくなっても食物の心配をしないですむようになればい、 をなんとかして、連れ帰りたくなった。 こやぎ くびわ わたしは、子山羊に首輪をつけ、いつも持ち歩いているロ 1 プをほどいてひもをこしらえて、 こやぎ ほねお ひつばっていった。なかなか骨が折れたが、どうにかあずまやまでもどると、子山羊を中へとじ いっこく すま こめておいてから、住居へ帰った。なにしろ一か月以上もるすにしていたので、一刻も早くわが 家へ帰りたくてたまらなかった。 なっかしいわが家にもどってノ 、、ンモックの上に横になった時のうれしさは、なんともいえな やど ほうろう かった。今度の 、別にきまった宿もない放浪の旅は、とても心ばそいものだったので、それを思 すま えば、今ではほんとうに「わが家」となったこの住居は、申しぶんなかった。身のまわりのもの が、なにもかも、実に感じがいいので、この島にとどまっていなければならない運命のつづくか ちょうな べっ むり よこ いじよう ころ うんめい ぼう たま 167
いると判断して、わたしをさがし出すまでは、あきらめないだろう。そう思うと、わたしは、、い 配で心配で、生きた心地がしなか 0 た。わたしは、ぎりぎりのどたん場まで追いこまれた気持に なり、いちもくさんに城までかけもどると、梯子をひきあげ、できるだけくふうして、あたりが どこもかしこも、荒れはてて、自のままに見えるようにした。 しろ 城の中にはいってからは、守りを固めるのにてんてこまいした。とりでにすえつけてある大砲、 んぶたま じゅうんぶ つまりマスケット銃全部に弾丸をこめ、つづいてビストルにも全部弾丸をこめて、最後の最後ま ばんじん わす いのもと まごころ で身を守ろうと決心した。真心こめて神の守りを祈り求めることも忘れず、この身を蛮人の手か すく ら救い出したまえと、ひたすらねがった。わたしは、こうして二時間ほど待ちかまえていたか 斥候を出しているわけでもないので、外の様子がどうなっているかわからず、早く知りたくてじ りじりしてきた。 それでも、しばらくは、じっと腰をおろしたまま、どうしたらいいかといろいろ考えていたが、 カまんができなくなった。そこで、 あいかわらず様子がわからないままじっとしているのには、、、 ちゅうふく 前にのべたように、中腹にくばみのあるあの岩山に梯子をかけて、そのくばみのところまでのば はしご り、その梯子をひきあげておいてから、またその梯子を立てかけて、山の頂上までのば 0 た。わ ぼうえんきよう たしは、地面に腹ばいになると、忘れずに持ってきた望遠鏡をとり出して、敵の様子をさぐった。 すると、すくなくとも九人の蛮人が、はだかで、たき火をかこんですわっているのが目にはいっ せつこう はんだん はしご ここち しろ ばんじん こし かた はし′」 ちょうじよう てぎ 267
あらわすほかなかったが、ちょうどそのとき、思いがけないことが起こったために、おかげでむ こ、つにも大よろこびしてもら、つことができた。というのは、。 ホ 1 トがまだ岸近くにとまっている もうじゅう ひきすがた あいだに、猛獣が二匹、姿をあらわしたからだ。見たところ、一匹が、もう一匹のあとを追いか けているらしく、山のほうから、もうれつないきおいで海へむかって走ってきた。ふざけている めすら のか、ほんとうに怒りくるっているのかわからず、まして、こんなことがいつでもあるのか、珍 しいことなのか、見当もっかなかったが、どうも、めったにないことらしかった。というのは、 もうじゅう すがた 第一に、こんな猛獣は、夜でなければほとんど姿をあらわさないものだし、第二に、海岸にいる やり 土人たち、ことに女たちが、ふるえあがった様子は、ただごとではなかったからだ。投げ槍を持 れんじゅう っている男だけは逃げなかったが、あとの連中はみな逃げだした。 もうじゅう えじき ところが、海めざしてまっしぐらに走ってきた猛獣は、土人を餌食にするつもりは全然ないら しく、そのまま水にとびこむと、まるで水遊びをしにきたとでもいうように、さかんに泳ぎまわ った。しまいには、そのうちの一匹が、思ったよりずっとそばまで、ポ 1 トに近づいてきた。だ じゅんび じゅうたま が、わたしのほうにも、準備はできていた。あらかじめ、銃に弾丸をこめてあったし、あとの二 ちょう 梃にもこめておくようにジ = 1 リに命じてあった。わたしは、じゅうぶん弾丸のとどくところま 、もうじゅう はっしゃ しず で相手が近づくのを見すましてから、そいつの頭めがけて発射した。猛獣は、たちまち水中に沈 しず んだが、 すぐにまた浮きあがると、浮いたり沈んだりしながら、死にものぐるいで岸をめざして びき びき たま びき んぜん およ
わって、マスケット銃をほうり出し、猟銃をとりあげると、フライデ 1 もすぐそのとおりにした。 じゅうう わたしが銃の打ち金をおこして、かまえるのを見ると、フライデーも同じ動作をした。「用意は カフライデー ? 」というと、「はい。」と答えたので、「よし、撃て ! 」というと同時に、 ばんじん はっしゃ わたしは、びつくりぎようてんしている蛮人たちめがけて発射した。フライデ 1 もそのとおりに した。今度の銃にこめてあるのは、わたしががん玉と呼んでいる、ドのビストルの弾丸なので、 倒れたのは二人だけだった。だが、大ぜいの蛮人が傷を受けて血だらけになり、まるで気がちが ったようにきや 1 きや 1 悲鳴をあげながら、やたらに走りまわっていた。ほとんど全員が、カな かんぜん りひどい傷を受け、そのうちの三人は、完全に死ぬまでにはいたらなかったが、たちまちその場 に倒れてしまった。 わたしは、今撃ちおわった猟銃をほうり出し、まだ弾丸をこめたままにしてあるほうのマスケ 。」と声をかけると、フライ ット銃をとりあげてから、「さあ、フライデー、わたしについてこい デーは、元気よく立ちあがった。それを見とどけるなり、わたしは森の外へとび出し、フライデ ばんじん ばんじん すがた すがた ーをすぐうしろにしたがえて、蛮人たちの前に姿をあらわした。蛮人たちの目にこちらの姿がう つったなと見てとると、わたしはありったけの声でワーツとさけび声をあげ、フライデ 1 にもそ 妊んそくりよく うしろといった。そして、全速力で、とはいうものの、武器が重いのであまり速いとはいえなか どくほりよ ったが、ともかくいっしようけんめいに走って、気の毒な捕虜のところへかけつけた。その白人 たお たお じゅう きす がね じゅう りようじゅう りようじゅう ばんじんぎず たま ぶぎ ち や んいん 3 7
「ねモ 1 リ、ご主人の銃がポ 1 トに積んであるんだが、火薬と弾丸がすこしばかり手にはい らないかな ? ことによるとしぎかなんかが撃てるかもしれないからね。たしかご主人は、本船 に弾丸や火薬をしまっていると思うんだが。」 いじよう 「よし、持ってこよう。」とモ 1 リはいうと、すぐに、火薬が一ポンド半かそれ以上はいっこ しようじゅうだん かわぶくろ さんだん かわぶくろ 大きな皮袋と、散弾が五、六ポンドと小銃弾がすこしはいった、もう一つの皮袋を持ってきて、 かやく みんなポ 1 トの中に積みこんだ。それとは別に、わたしは、船室の中に主人の火薬がすこしある のを見つけ出していたので、それを、ほとんど空になっている酒びんの中身をほかのびんにうつ したうえ、その酒びんにつめた。こうして、必要なものは全部そろったので、わたしたちは、釣 ようさい みなと みなと りをすることにして、港を出た。港の入口にある要塞の連中は、わたしたちが何者だかよく知っ おき 妊んぜん ているので、全然気にもとめなかった。一マイルほど冲へ出てから、帆をおろして、いよいよ釣 りにとりかかった。ぐあいの悪いことに、風は北北東から吹いていた。もし南風だったら、スペ インの海岸に向かうことができたろうし、すくなくともカディス湾には着けたろう。しかし、風 向きがどうであろうと、とにかくこのおそろしい場所から逃げ出して、あとは運を天にまかせよ 、つとらにきめた。 さかなつりばり しばらく糸をたれていたが、魚は一匹も釣れなかった。それもそのはずで、魚が釣針にかかっ ても、ム 1 ア人の目をごまかして、釣りあげなかったからだ。そうしておいてから、わたしはム たま かやく さか じゅう さかな びきっ べっ ひつよう から れんじゅう かやく ぜんぶ かやくたま さか わん