剰余金の増加の例 会計上、元本である資本が社外に流出 するのを防ぐために、資本とその運用 果実 ( 利益 ) を区分して明記している。 2 年後の B / S 1 年後の B / S 負債 負債 資 資 産資本金 50 産資本金 50 剰余金 30 剰余金 1 0 期首の B / S 負債 資資本金 50 産剰余金 0 1 年間の P / L 1 年間の P / L プÜ上ー局 XXX フ上局 XXX ー費用 xxx ー費用 xxx ( 支払利息 ) ( 支払利息 ) 当期純利益 10 当期純利益 20 、「金」のつく言葉・・・ B / s には、買掛金、借入金、資本金、剰余金など「金」が付く言葉 が多い。「〇〇金」となっていても、それは「〇〇の全額」という意 味だ。現実に持っているおカネは現預金だけで、それ以外はモノや 債権・債務の形で金額表示しているにすぎない。 期間利益の蓄積が利益剰余金である P / L の最終利益である当期純利益が、 B / S に利益剰余金とし て蓄積される。利益剰余金から配当金を払ったり、各種の名目 で積み立てられる。前期までの利益剰余金十当期の内部留保で 増加する。そのプロセスは株主資本等変動計算書 (). 1 24 参照 ) に示される。 利益剰余金を増やすには時間がかかるから、その大きさは 企業の真の実力や経営の安定度を物語るといえよう。 三「貸借対照表は右と左を比べて見る MEMO ・ 97
優良企業は 自己資本比率が高い ままでは剰余金比率が低下することになる。 反対に、時価発行増資などで資本金を増やしても、収益力が低い 味である。 いる資金の 7 割は、過去からの利益の蓄積 ( 内部留保分 ) という意 車の剰余金比率は 69 % ( 2007 年 3 月期、個別 ) である。現在使って 高い企業は長期にわたり高収益体質である。たとえば、トヨタ自動 そこで、資本の中身に着目したのが剰余金比率である。この値が 建中であり、利益の蓄積である利益剰余金は赤字だ。 金と資本剰余金という株主からの拠出分にすぎない。実は、経営再 ページの A 社は、自己資本比率が 94 % と異様に高いが、中身は資本 自己資本比率が高くても、見かけだけで評価してはいけない。次 ■見かけよりも中身の剰余金比率に着目する 不振で借入れが多い企業である。 や、業績順調で借入れによる規模拡大が著しい企業、または、業績 体質の健全な企業が多い。低い企業は、巨大な設備資産を持っ企業 いわれる。一般に、自己資本比率の高い企業には、高収益かっ財務 中小企業はおおむね 15 ~ 30 % 程度だが、 50 % 以上になれば優良と る場合は、株主資本比率が使われている。 と定義した自己資本を使う。なお、連結決算を米国基準で作ってい 会社法施行後は「自己資本 = 純資産ー新株予約権一少数株主持分」 安全性を示す指標である。以前は株主資本比率とも呼ばれていたが、 総資産に占める自己資本の割合である自己資本比率は、長期的な ・自己資本比率が高いほど経営は安定している
0 新会社法施行により 誕生した純資産の部 ・その定義はズバリ「資産ー負債」 連結決算に表れる「少数株主持分」は資本ではないが、返す必要 もないので資本と負債の中間的扱いにされていた。同じように 「新株予約権」は返済義務がなくても負債扱いだった。 今日のように企業活動が複雑化すると、古い枠組みでは整理がっ かない点が目立ってきた。そこで、国際基準への歩み寄りとして 「資本の部」を整理整頓した結果が、「純資産の部」である。資産と 負債を定義し、その差を純資産としている。 つまり、全財産から他人への支払義務を引いた残りという意味で あり、従来の「資本の部」よりも広い範囲を示している。 ■純資産の部は誰のものかという区分で分けられる 従来は、「資本の部」「株主資本」「純資産」の 3 つは、ほば同義 語として使われていた。しかし、新しい「純資産の部」は、所有権 を 3 つに分けた。 ①株主の持分であるもの ( 株主資本 ) ②株主以外に帰属するもの ( 新株予約権、少数株主持分 ) ③いずれにも帰属しないもの ( 評価・換算差額等 ) そして、①の株主資本の内訳を「資本金、資本剰余金、利益剰余 金、自己株式」とした。従来の各種積立金は、「利益剰余金」内の 「その他利益剰余金」に入る。利益の繰越しを示していた当期未処 分利益は、「繰越利益剰余金」となった。 かなり複雑な区分になったが、中小企業や連結のない企業では不 要な項目も多いので、次ページの図表よりはシンプルになる。なお、 単独では資本剰余金や利益剰余金の明細を表示するが、連結では表 示しなくてよい。
資本の部から純資産の部へ ・従来の連結貸借対照表 負 債新株予約権 ( ※ 1) 少数株主持分 、資本金 資本剰余金 資 利益剰余金 産 の 資 1. 利益準備金 2. 任意積立金 の。 ・〇〇積立金 部 3. 当期未処分利益 。その他有価証券評価差額金 自己株式 ( ※ 2 ) 資産合計負債、少数株主持分及び資本合計 ・連結の純資産の部 I 株主資本 1. 資本金 2. 資本剰余金 3. 利益剰余金 4. 自己株式 ( ※ 2 ) Ⅱ評価・換算差額等 1. その他有価証券評価差額金 2. 繰延ヘッジ損益 ( ※ 3 ) 3. 土地再評価差額金 4. 為替換算調整勘定 Ⅲ新株予約権て※い一 Ⅳ少数株主持分 ( ※ 1 ) 新株予約権 : 株式をあらかじめ決めた価格で買える 権利のこと。まだ株主になっていない人が持つ。スト ックオプションや敵対的買収への対策にも使われる。 ( ※ 2 ) 自己株式 : 市場から買い戻した自社株式のこと。資 本を減らす効果があるためマイナス表記になる。従来 は資産の部に計上したが、資本の部の末尾に移り、 新会社法施行後は株主資本に計上する。 ( ※ 3 ) 繰延ヘッジ損益 : 主に商社、金融、資源会社等の相 場変動のある取引を行う企業で、ヘッジ会計を適用し て発生した評価差額のこと。従来は資産か負債に計 上していた。 自己株式・・・議決権や配当がなく、保管しておくだけなので金庫株とも呼ぶ。持合い解消の 受け皿、株式消却、敵対的買収対策としての他社との株式交換などに使われる。 一 = 一貸借対照表は右と左を比べて見る ・単独の純資産の部 I 株主資本 1. 資本金 2. 資本剰余金 ( 1 ) 資本準備金 ( 2 ) その他資本剰余金 3. 利益剰余金 ( 1 ) 利益準備金 ( 2 ) その他利益剰余金 ・〇〇積立金 ・繰越利益剰余金 4. 自己株式 ( ※ 2 ) Ⅱ評価・換算差額等 1. その他有価証券評価 差額金 2. 繰延ヘッジ損益 ( ※ 3 ) 3. 土地再評価差額金 4. 為替換算調整勘定 Ⅲ新株予約権 ( ※い MEMO ・ 95
長期的な安全性を示す指標 ( ※ ) 自己資本 自己資本比率 = 総資産 ( ※ ) 従来の株主資本比率という名称も残っている。 自己資本の定義 ( 連結 ) I 株主資本 1 資本金 2 資本剰余金 純 3 利益剰余金 資 4 自己株式 産 Ⅱ評価・換算差額等 Ⅲ新株予約権 Ⅳ少数株主持分 自己資本 経営分析で経営指標に強くなる 自己資本比率の例 ( 2006 年度 ) ファナック 松下電器産業 83.4 % 49.6 % 武田薬品工業 新日本製鉄 78.8 % 35.4 % 三菱商事 TDK 77.1 % 25.7 % 京セラ 富士通 71 . 1 % 24.6 % 信越化学工業 東京電力 71 .0 % 22.4 % 任天堂 東芝 69.9 % 18.7 % 日本マクドナルド 鹿島 16.2 % ホールディングス 67.3 % 日本航空 14.9 % キヤノン 66.0 % 楽天 14.6 % ファーストリティリング 60.1 % ダイエー 13.4 % 富士写真フィルム 59.5 % ソフトバンク 6.6 % キリンビール 50.6 % 三菱 UFJ フィナンシャルグループ 4.5 % セブン & アイ・ホールディングス 50.1 % ※企業名は 2006 年度当時のもの。 A 社 ( 音響メーカー ) ( 2006 年 12 月期 ) ( 連結 ) ( 単位 : 百万円 ) 流動資産 8 , 062 流動負債 ( 2 % ) 161 固定負債 ( 4 % ) 449 純資産の部 ( 94 % ) 9 , 570 資本金 5 , 794 固定資産 2 , 1 1 8 資本剰余金 3 , 900 利益剰余金 △ 193 自己株式 △ 1 評価換算差額等 10 , 180 負債純資産合計 資産合計 10 , 80 ※ ( ) 内は資産合計に対する割合。 剰余金一利益剰余金 比率ー総資産 ・ 203
/ 一過去からの利益の蓄積が 、剰余金 ・剰余金といってもカネが余っているわけではない 併等の資本取引から得られた差額を資本剰余金と呼ぶ。 資分のうち資本金に組み入れなかった分や、株式の交換・分割・合 取引 ) から得られるものを利益剰余金と呼ぶ。それに対し、株主出 字なら欠損金 ) という。剰余金には 2 種類ある。通常の商売 ( 損益 さて、株主資本が資本金よりも大きいときの超過分を剰余金 ( 赤 0 利益剰余金と資本剰余金に分けられる るために「株主資本」の中に書くのである。 ら、利払い後の残りは株主のものであり、その帰属先を明らかにす は株主と債権者だが、債権者には借入金の利息を払っている。だか では資産を増やした源泉 ( 利益 ) は誰のものか ? 資金の出し手 やしている。 分が利益かなどわからない。しかし、確実に利益の分だけ資産を増 投資に使われる。つまり、何かの資産に再投資されているが、どの 年間で利益が出たとする。利益を含んだ売上代金は次期の仕入れや 次ページの図表で解説しよう。資本金と借入金でスタートし、 1 金ではない。 だけしかない。そもそも右側は資金の出どころの明細であって、現 業に実在する現金は貸借対照表 (B/S) の一番上に書いてあるもの たとえば、剰余金で工場を建てるなどというのは無理な話だ。企 に「おカネがざくざく余っている」感じを受けるが、そうではない。 純資産の部に剰余金という言葉がある。何となく金庫や預金口座
剰余金の例 ( キリンビール ) 資本金 ( = 元手 ) はたった 資産のうち約 41 % は 負債 = 人のカネ。 の 7 % にすきない。 2006 年 12 月期 ( 個別単位 : 百万円 ) 598 , 381 ( 41 % ) 壘貸借対照表は右と左を比べて見る 負債 I 株主資本 1 . 資本金 ( 7 % ) 102 , 045 2. 資本剰余金 ( 5 % ) 71 , 1 1 3 ( 1 ) 資本準備金 70 , 868 ( 2 ) その他資本剰余金 245 3. 利益剰余金 ( 43 % ) ( 1) 利益準備金 ( 2 ) その他利益剰余金 特別償却準備金 913 固定資産圧縮積立金 12 , 554 任意積立配当引当積立金 6 , 450 マイナス表記 金の例 別途積立金 494 , 367 利益剰余金 95 , 99 4. 自己株式 △ 26 , 796 782 , 153 ( △ 2 % ) Ⅱ評価・換算差額等 1 . その他有価証券評価差額金 94 , 080 △ 76 94 , 004 ( 6 % ) 2. 繰延ヘッジ損益 純資産合計 876 , 157 ( 59 % ) 負債純資産合計 1 , 474 , 538 ※ ( ) 内は負債純資産合計に対する比率。 総資産の 40 % 強が 過去からの利益の 蓄積 ! 資 産 25 , 511 資産のうち、株主の分は 約 53 % ( 59 % ー 6 % ) 。 ・ 99
B/S ・ P / L と株主資本等変動計算書との関係 ・ P/L TÜ上 . 局 当期純利益 xx 前期繰越利益 xx 中間配当額 x ! 未処分利益 xx : 当期未処分利 益を計算する 欄がなくなり、 P / L は当期利 益で完結する。 利益処分計・、 期末配当 役員賞与 〇〇積立金 次期繰越利益 XXX 前期末の B / S 負債 資純資本金 資資本剰余金 産利益剰余金 ニ一経営の視点から会計を見る 自社株を配当を、配当を 行った 行った 買った 配当を 行った 期首 株主資本等変動計算書 株主資本 前期末残高 当期の 変動額 合計 当期末残高 期中に純資産を変化さ せた要因を列記する。 期間 : x 年 x 月 x 日—x 年 x 月 x 日 純資産合計 当期純利益 xx 当期末の B / S 負債 資純資本金 資資本剰余金 産利益剰余金 配当の回数・・・毎月配当を行うのは現実的ではないが、四半期ごとに配当をする企業はあ る。個人株主を増やしたり、安定株主を確保する目的と考えられる。ただ し、株主名簿の確定作業などコスト負担も多い。 一致する MEMO ・ 125
52 横に長 ~ い株主資本等 変動計算書とは ・純資産、特に株主資本の変化を報告することが目的 新会社法により、貸借対照表の資本の部が純資産の部に改定され た。さらに、利益処分案 ( 利益処分計算書 ) が廃止され、株主資本 等変動計算書が新設された。これは、株主資本が 1 年間にどういう 理由でどう変化したかを報告するものである。 表の形式は純資産の項目を横に書き、前期末残高と要因別の期中 増減額、期末残高を示している。長たらしい名前だが、要するに 「純資産計算書」と思っても差し支えない。 表が横長なので、紙面に入りきらないと折り返して表示される。 見るだけでウンザリしそうな表であるが、中小企業では科目が少な いので実際はもっとシンプルになる。 0 ーか所にまとめて、年度中の変化を説明するために生まれた 以前は損益計算書の末尾に中間配当、自己株式消却額などが表示 されていた。続いて、利益処分計算書で年間配当金や各種の積立処 理が行われていた。このように、剰余金を減らしたり、新株発行に よる資本金の増加など、純資産を変化させる要因は多くある。 また、新会社法により期末と中間の 2 回だけだった配当回数の制 限がなくなったり、自己株式も取得しやすくなるなど、以前にも増 して期中に純資産が変化しやすくなった。だから、その変化の説明 を会計上きちんと報告するために、株主資本等変動計算書が誕生し たわけだ。純資産の変化 ( フロー ) の報告であるから、開始と終了 の期間表示がされる。 なお、配当や自己株式の取得をすることを剰余金の分配という。
理解度確認テストの答え 1 . ROE= 当期純利益 + 自己資本 = 3 , 375 + 21 , 093 x 100 16.0 % 2 . 売上高当期純利益率 = 当期純利益 + 売上高 = 3 , 375 + 27 , 297 >< 100 12.4 % = 21 , 093 億円 + 1 , 333 , 445 千株 1 , 582 円 / 株 11. BPS= 自己資本 + 株数 = 3 , 375 億円 + 1 , 333 , 445 千株 # 253 円 / 株 10. EPS = 当期純利益 + 株数 = 16 , 267 + 29 , 381 x 100 55.4 % 9 . 剰余金比率 = 利益剰余金 + 総資産 x 100 = 21 , 093 + 29 , 381 x 100 71.8 % 自己資本比率 = 自己資本 + 総資産 x 100 = 13 , 158 + 21 , 093 x 100 62.4 % 7 . 固定比率 = 固定資産 + 自己資本 X100 = 16 , 223 + 7 , 706X 100 # 211 % 6 . 流動比率 = 流動資産 + 流動負債 X100 = 2 , 060 + ( 27 , 297 + 365 日 ) 28 日 5 . 棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 + ( 売上高 + 365 日 ) 4 . 財務レバレッジ = 総資産 + 自己資本 = 29 , 381 + 21 , 093 1.39 3 . 総資産回転率 = 売上高 + 総資産 = 27 , 297 + 29 , 381 0.93 8 . 製品競争力と原価低減力の賜物だろう。 たまもの の高さはなんと言っても、当期純利益率 12 % という信じがたい利益率によるものだ。 な財務体質が同居しているといえよう。 2 と 3 と 4 の積は ROE と同じになる。 ROE 上記の経営指標では、優良企業の典型的な結果となっている。高い利益率と健全 であるから、この決算書では純資産と同じ値になる。 こでは単年度のテータで計算した。自己資本は「純資産ー新株予約権一少数株主持分」 2 期間のテータがあれば、自己資本などは前期末と当期末の平均値を使うが、 補足