318 い尾根の上に、ペリシテ人とむきあって陣をとった。 ぐんぜい どちらの側もじゅうぶんなカ つづいておこった戦いで、イスラエルの軍勢はふたつにひきわけられてしまい をだしてたたかうことができなかった。それでも、ねばりづよくたたかったけれど、その日は敗れてしまった。 低い土地で追いまくられて、エベネゼルの陣にしりそいて、あとには四千人の死傷者をおき去りにした。 げんいん しゅうかい しきしゃ つぎの日、イスラエルの指揮者たちは集会をひらいて、この負けいくさの原因を考え、おたがいにいった。 かん かみ 「もし、イスラエルのものが、エホバの神はじぶんたちとともにおいでになるということを心に感じていたな しようり らば、勝利をあたえられていたにちがいない。」 じしん じようねっゅうき ぐんぜい しきしゃ しかし、指揮者たちはそう いいながらもあやぶんでいたので、軍勢にあらたな自信をふきこみ情熱や勇気をか じん かみやくそく きたてるために、シロの神殿に使いをおくって、そこから「神の約東の箱」を陣にもってくることにきめた。 やくそく 「そうすれば、イスラエルのものは、その『約東の箱』がじぶんたちとともにあることを目で見て、それを敵 しん にたいするたしかな助けとも守りとも信じ、じぶんたちは破られることがないと思うだろう。」 ぐん つか すぐに、使いがシロの神殿におくられた。しかし、エリは使いの目的を聞くと、たいへん心をなやました。軍 たたか しきしゃ かみ の指揮者たちは、それが神の意志だということをどうして知ることができたのか。戦いのわざわいや混乱の中で、 きけん よこ こうち エフライムの荒れはてた高地を横ぎって長い旅をつづけるうちには、さまざまの危険に出あうだろうが、その危 かみやくそく はこ あんんまも 険の中で、「神の約東の箱」を安全に守ることがどうしてできるのか。 きず やくそく はこ もし、「約東の箱」をすこしでも傷つけたりけがしたりすれば、イスラエルにたいする神の怒りは二度ととけ じしんかな ることはなく、かれ自身も悲しみがっきることはないにちがいない。それでかれは、むすこのホフニとビネハス ぐんしきしゃ に、軍の指揮者たちからおくられてきたことづてにしたがうまえに、よく考えるようにとうったえた。 ひく けん たたか たす しんでんつか しんでん じん じん たび ゃぶ つか ししようしゃ かみ がわ やふ こんらん てき
180 ず出かけなければならないのです。イスラエルはひとつのものなのです。工ホバの神はイスラエルが祭りをする ことを命じられたのです。」 きそく エジプト王は、あざけるような身ぶりをしながら、かれに反対した貴族や大臣たちのほうをふりむいた。そし てさけんだ。 「よく見たかー この無礼なふとどきものを。」 それから、こんどはモーセのほうをむいた。 「この王が、子どもたちが出ていくことをおまえにゆるさねばならぬほど、おまえの神の力は大きいと思うの うら か。おまえのことばの裏は見えているのだ。はじめからずっと、おまえはひそかに、むほんをたくらみ、おまえ さか たち〈ブライ人どもが、この王国の境いを出ていったら、二度とかえってこぬようにするつもりだったのだ。 よく聞け。そんなことはさせぬそ。もし、おまえたちの神を祭りたいなら、いかせてはやる。だが、おとなど もだけだ。もともとそれが、おまえの願いだったのた。これが、このエジプト王の答えである。もうおまえたち に、用はない。」 しんか そして臣下たちに命して、ヘブライ人たちを、じぶんのまえから追いださせた。 それからモーセは、かれの杖をエジプトの土のうえにおいた。すると、かわききったあつい風が東のほうから 吹きおこってきた。その風は、カナンのずっとむこうの、アラビアのはてしない荒地やシリアの砂ばくから、ひ ふ ねっ りひりするような熱をふくんでやってきた。そして、その日とその夜のあいだ、たえまなく吹きつけた。それか なが らふしぎにも、あくる朝の夜あけには、風にのってイナゴの群れが流れこんできた。 こうび せんとう 荒れはてた砂ばくにうまれたイナゴどもは、つぎからつぎへ群れをつくって、先頭から後尾まで長くあつい雲 ぶれい っえ ねが かみまっ む はんたい お だいじん あれち かみ こた かみ まっ
323 まどい、何の望みものこっていませんでした。」 エリはからだをこわばらして身うごきもせずに聞きつづけ、何もいわなかった。べニヤミン人は、かすかな声 でいった。 かな さいしちょう 「祭司長さま、わたしは、あなたにも、この上もなく悲しい知らせをもってまいりました。あなたのふたりの ころ やくそく むすこホフ = さまとピネ ( スさまは、戦いの列の中で『約東の』につきそっておいででしたが、殺されておし まいになったのです。そして、『箱』はペリシテ人にうばわれました。」 ちゅうぶう エリは、ふたりのむすこが殺されたことを聞いたとき、からだがまるで中風にかかったようにふるえたが、 くら やくそく 「約東の箱」までもうばわれたと聞くと、気をうしなった。心は、暗やみにおおわれた。じぶんの座からあおむ けに門のかたわらにおち、首をおって死んだ。年よりで、からだがきかなかったのである。 ペリシテの軍勢は、とりこやうばったものを運びながら、勝ちほこって国にもどった。しかしイスラエルの軍 りようしゅ 勢からうばったもののうちでも、「約東の箱」はもっともほこらしいものだったので、。ヘリシテの五人の領主は、 とう じようへき しようりきねんひん それを勝利の記念品としてアシドドの町にあずけた。この町は、庭園や、とりでつきの城壁や、塔をそなえ、大 すな さきゅう きな海の岸からほんのすこしはいった砂丘のただ中にあったが、いまではその場所には、うつりうごく砂の山が しんでん やくそく あるばかりである。「約東の箱」がダゴンの神殿の門をとおって中へはこばれていくと、うかれさわぐ人びとの 群れが通りにあふれ、よろこびのさけびをあげたり、その「箱ーにあざけりのことばをなけたりした。そして、 なが 「箱」のあとからどっと流れこんだので、そのうちのあるものは、地面につきとばされてたおれ、ふみつけられ = て死んでしまった。 むかし、イスラエルの勇士サムソンが、めくらにされた、たよりないすがたでガザにつれてこられてからとい とお ぎし のぞ ぐんい ゅうし くび はこ ころ はこ やくそくはこ たたか れつ とし はこ ていえん じめん ばしょ びと ぐん
テを見つめて、胸をはけしくときめかしながら、ゴリアテがにくにくしげなおごりたかぶったことばをはくのを なが じっと聞いた。ゴリアテのものすごい声がびびきわたると、イスラエル軍のうち、流れのそばで水がめに水をみ たしていたものや、陣のはしこ 冫いたものは、腰をぬかすほどおそれて、走ってにげかえった。。 タビデは、それを 見てまゆをひそめた。そして、近くに立っていた人びとをふりむいてたずねた。 「あのにくにくしいペリシテ人は何ものですか。そして、どういうわけで、あの男は、まことの神工ホバにつ ぐんい かえる軍勢をあざけりながら、戦いをいどむのですか。どんな人があのものとたたかうためにえらばれているの ですか。あのものをたおして、イスラエルにくわえられたこのはすかしめとあざけりをそそぐ人は、どのように あっかわれるのでしようか。」 そばに立っていた兵士たちは、ダビデにつげていった。 「まだだれもあの大きな男とたたかうためにえらばれてはいないし、すすんでかれと戦いに出ていくものもい ちょうせん たたか ないだが、かれの挑戦にこたえて一対一で戦い、かれを殺したものがあったら、大金をいただけるばかりでな かぞく しに、王女をもらうことができるだろう。そしてその日からのちは、そのものの父がだれであっても、その家族 はみな、イスラエルの自由な民ということにされるだろう。」 ダビデは、かれらがいうことを聞きながら、考えこんだ。 としうえあに しかし、かれのいちばん年上の兄エリアプは、かれが兵士たちとはなしていることを聞くと、はらをたてて、 よげんしゃ はけしくかれをふりかえった。エリアプは、偉大な預言者サムエルがべツレヘムの村をおとすれた日のことをお わか おとうとよげんしやしゆくふく ・ほえていた。あのとき、エリアプはのけものにされて、このごく若いいちばん下の弟が預言者に祝福され、神聖 あぶらきょ きゅうでん な油で清められたのだった。また、エリアプは、ダビデが王から宮殿によばれたことを聞いたときにも、ねたま むね じん じゅうたみ ちか たたか たい こし ころ ぐん たいきん たたか かみ しんせい
272 かみにつこう 間にひびきわたり、金色の髪が日光を受けてかがやいた。 けいかくじっこ・う それから何日か、かれはじぶんが考えだした計画を実行するためにはげしくはたらいた。まず、山々のふもと さく にある自然にできたくば地を柵でかこった。くば地からは、ひあがった川床が岩だらけの道のようになって平地 りようがわ のほうへくだり、その両側はけわしく切り立っていた。 ばしょ あなほ その仕事がすむと、野のキツネやジャッカルがよくとおることがわかっている場所にはどこでも、穴を掘って たにま ばたけ わなをしかけた。そして、昼まは山の谷間の割れめで、夜は月に照らされたブドウ畑で、待ちかまえて、足のは やくておくびようなけものたちを狩りたてて、手でとらえた。 キツネをとらえると、それを運んでいって、そのために用意しておいた柵の中にとじこめた。キツネたちは、 ひつよう 柵をとびこすこともできず、どのようにしてもにげだせなかった。かれは、キツネたちが必要になるときまで、 のぞ あの かってにさせておいた。そして、ただひとつのはげしい望みにかりたてられて、休みなくはたらいた。 わす いまいましいペリシテ人たちに、二度と忘れられないほど思い知らせようというのだった。 ほね きんにく かれは、骨ぐみのたくましい顔や手足を日に焼かれ、青い目はきらきら光り、からだじゅうの筋肉がこわばっ けいかくひつよう ていたが、それでもヘビのようにすばしこかった。そして、じぶんの計画に必要なだけ多くのけものをとらえて しまうと、長い時間をかけながらたき木をたばねて小さなたいまつをたくさんつくり、木のやにをぬりつけて、 かわかしておいた。これでとうとう、仕事はおわった。 こうしてすっかり用意ができたある夜、ま夜中に起きあがって、岩のあいだのく・ほ地につくったけもののかこ いわいわ いへおりていった。とりいれどきの満月のころで、あお白い月の光が、しずまりかえった木々や岩々のひとつひ とつにそそぎかけていた。 さく し・こと ひる かお はこ まんげつ しごと かわどこ さく
173 会することにした。王は、ふたりのいうことを聞かなかった。モーセは、王がこんども神をあなどったことに、 つかはい はらをたてていた。かれは、そばにあった大きなかまの中から、陶器やガラスをつくるときに使う灰を二つかみ 手にとって、王が見ているまえで、たかく投けあけて、空気の中にまきちらした。 「さあ、よく見ておられよ ! 」 とお 天はとびちった。そよ風が、それをあっちにもこっちにも、四方にずっと遠いところまで火きおくっていった。 にんげん すると、ふしぎなことに、人間やけもののからだに、そっとするような、うみやはれが出てきて、ひふは焼ける しんかんまほうつか きゅうでん きぞく ようにいたんだ。王の宮殿のおっきのものも、貴族も、そして神官や魔法使いも、のがれることができなかった。 めんかい それから何日も、モーセは、しびれをきらして待ったあげくに、もう一度王に面会をもとめたが、そのときに は、魔法使いはひとりも見えなかった。かれらは、王のごきげんをそこねて、すっかり気をおとしてしまってい はじ た。顔は、おできでみにくくなっていたので、出てきてモーセのまえで恥をかきたくなかった。 ねん かみめいれい モーセは、念のためもう一度、王がまだ神の命令を耳にいれないではねのけるならば、どのようなことがおこ けいこく と警告した。あすは、このエジプトに、国がはじまってからいままで見たことのないような、 るかもしれない、 かお ぼうふうふ ひくともせぬような顔つきを見せながら、 暴風が吹きまくって、ひょうがうちつけるだろう、といった。王は、・ わら あざ笑うようなことばを、モーセになげかけた。 だいじんやくにん けれど、そこにいた大臣や役人の多くは、もうこれまでにしめされた神秘のカで、ふかく考えさせられていた かみおそ から、ヘブライ人とその神を恐ろしく思うようになっていた。かれらは、じぶんたちの召使いにそっと命令を出 にんげん かちく して、あすは朝から夜まで、家畜を野に出さぬようにさせた。家畜はすべて小屋に入れておき、世話をする人間モ も外に出てはならぬ、といいつけた。 力し まほうつか かお かちくの とうぎ しんび こや かみ めしつか
138 鳥たちが、いつものように、そこにまいおりてきた。そのさえずりと、水がびちゃびちゃいう音と、アシがそ なが よいでたてるささやくような音とのほかは、ひっそりとしずかだった。時は、ゆるやかに流れていった。子ども をおどろかせて目をさまさせるようなことは、おこらなかった。だが、やがてミリアムは、美しい、すみきった ゅうき ばしょ ひとごえ 人声がするのをきいた。かくれ場所からすこし顔をだしてのそいて、息をする勇気もなく、またすぐ顔をひっこ めた。 ミリアムが聞いたのは、エジプトの王女の声だったのだ。王女は、侍女たち というのは、おどろいたことに、 じじよ をつれて、川へ水あびにきたのだった。まもなく、まだ笑ったりはなしあったりしながら、侍女たちはすこしは うつく なれていって、スイレンの花のように美しく、水ぎわのあちこちにいって、水にうかぶスイレンの花をつむのだ った。そのとき王女は、ただひとりの気にいりの侍女だけをしたがえて、水をあびようとした。 はこぶね ちか 王女が、はだかのからだを、美しくかがやかせながら水べに近づいたとき、アシの中にかくされていた箱船に 目をとめた。それは、黒ずんではいたが日にきらきら光り、さざなみで、ゆらゆらとゆれうごいていた。王女は、 おどろいて立ちどまって、手をひたいにあてながら、このふしぎなものは何だろうかと、しばらくじっと見つめ じじよ しいつけた。 ていた。それから侍女に、水をわたってあれをもってくるようにと、 しゅじん じじよ しいつけにしたがった。水から箱船をとりあげて腕にかかえて、ご主人の王女のところへもってきて、 侍女は、 じぶんでふたをあけた。そしてびつくりした。中にはちいさな赤んぼが、やわらかな布にくるまれて、よく眠っ ~ 、ら につこう て、ほおをまっ赤に光らせていた。そのせまくるしい暗いところへ、きらきらする日光がさっとさしてくると、 なきごえ びくっとして目をさまして、声をあげた。エジ。フトの王女は身をかがめて、その赤んぼを腕でだきあけて、胸 にかきよせるようにして、恐れをしずめてやろうとした。 うつく はこふね かお じじよ わら ぬの うつく うで かお じじよ ねむ むね
227 さいだん イスラエル人は、荒野をこのようにしてさまよっていたころ、大きなテントをはって、「神の幕屋」をつくり、 ぎよ つみ いつもイスラエルの神をおがんで、罪をくいあらためて、心を清らかにするのであった。 ぶぞく かみ その祭りのために、人びとはみな、美しい箱そのほかさまざまのものをもってきて神にささげた。部族のかし なまり ほうせき らたちは、宝石や金や鉛やしんちゅうなど、それそれじぶんの力いつばいのものをささけた。青やむらさきや赤 よう、もう・ ぬの にそめられた、きめのこまかなアサの布もあったし、きぬも、羊毛も、皮も、ともし火のための油も、香をたく ための香料もあった。それらはすべて、神をまつる幕屋をこうごうしくりつばにするために、モ 1 セのところへ ぎんか もってきたのだった。いちばんまずしいものでさえ、それなりに、銀貨をもってきたりした。 幕屋の中には、いけにえをささける壇があった。奥の室は、ししゅうした幕でかくされていて、もっとも神聖 やくそく はこ ( 3 ) なところとされていて、そこに、神とその民イスラエル人とのあいだの「約東の箱」というものがおかれた。こ かみ ざいもく れは、アカシアの材木でつくられ金でかざられたであって、その中には「神の戒め」をきざんだ「石の板」そ のほか、尊い物がおさめてあった。これは、イスラエル人にとって、もっとも神聖なものだった。 かみ レビの一族のものはすべて、神をまつることになっていた。アロンはもちろん祭りを受けもっレビの一族だっ さいこうさいし たから、そのころの最高の祭司であって、そのむすこのナダブ、アビフ、エレアザル、イタマルは、かれの下で あぶら ( 4 ) しんせい つかえる司であ 0 た。かれらは、おごそかな誓いをたてた。そしてモーセがかれらに油をそそいで神聖なもの まくや しよく まくや とした。かれらの職は、この幕屋とその中にあるものを守って、神をまつることだった。その幕屋で、かれらは野 しよくだい ばしょ やくそく 祭壇のまえに香をたき、「約束の箱」を守り、その神聖な場所にもえている燭台の七つのともし火に油がたえな荒 しよ、つにしこ 0 まくや まっ こうりよう たっともの こう あれの かみ かみ だん うつく かみ たみ はこ ちか しんせい おくしつ まくや かみ かわ しんせい まっ かみまくや ( 2 ) あぶら あぶら こう ぞく しんせい
とになる。そう思うよりほかはないのだ。そして、人質としてのこしていたひとりは、死刑にする。』 それで、シメオンはのこされて、わしたちは、大いそぎでかえってきたんです。」 きようだい ヤコプは、これを聞くと、はけしく兄弟たちを責めた。 わる 「わたしは、おまえたちに何も悪いことはしておらぬのに、どうしておまえたちは、わたしの子どもたちをう ばってしまうのか。ョセフがいなくなった。シメオンもいなくなった。そしてこんどは、おまえたちは、べニヤ ミンをわたしの手から取っていこうとする。わたしに、こんなにわざわいがふりかかるのに、わたしはどうする こともできないのか。」 かな ルべンは、父のことを思うと悲しくなった。父のそばへよって、なぐさめた。 「もし、わしにべニヤミンをあすけてくださったら、きっとぶじに安全につれてかえるということを、約束し ます。 もし、わしがその約東をやぶりましたら、わしが家にのこしたふたりの子どもを、殺してください。わしには、 この世の中でいちばんだいじなものなのですけれど。」 それでもヤコプは、よこをむいて、返事をしなかった。 こくもっ ところで、そのあとすぐ、兄弟たちがロ。ハの荷をおろしていると、ひとりのこらずのふくろの中に、穀物には らった金がかくされているのを見つけた。かれらは、きもをつぶしてしまって、おたがいの顔をじっと見つめあ 、わざわいをおそれて、生きた心もなかった。 きようだい 兄弟たちは、このことを父にはなした。そして、すぐにエジプトへひきかえさしてくださいとねがった。けれ ど、父はどうしてもゆるさなかった。 やくそく きようだい へんじ ひとじち あんぜん ころ しけい かお やくそく
418 おんがく 「べツレヘムの村人工ッサイのむすこで、音楽にすぐれて、琴をたくみにひく若ものがおります。わたしはべ あれち ツレヘムのものなので、かれをよく知っています。わたしは、荒地でそばに腰をおろし、かれが琴をひいてうた おんがく うのに聞ぎほれたものです。鳥たちまで、声をしずめて、その音楽に耳をかたむけるのでした ! かれは、父の せけん ゅうき ヒッジの番をしているだけで、世間のことは何も知りませんが、めずらしいほど勇気や分別があって、美しい顔 あんしん かたちをしています。かれには安心して秘密をまかすことができます。また、神がかれを守っておられると思い ます。」 おんがくき のぞ サウルはこれを聞くと、心をなぐさめられた。音楽を聞きたいという望みが、のどのかわいたものが水をほし がるように、かれの中にわきおこった。それはまるで夜のやみにユウガオの花がばっと咲いたようにうまれたの わか だった。かれは医者たちに、すぐべツレヘムの村へ人をやって、その若いヒッジ飼いをつれてくるように、と命 王の使いがエッサイの家へきて、その用向きをつげると、エッサイは心をなやました。かれにとって、ダビデ のことが王によくったえられたのはうれしいことだったが、これまでに三人のむすこをサウルの軍にとられてい しんばい たので、いまいちばん下のむすこもとりあけられるのではないかと心配したのだった。 それでも、かれは、じぶんのカであつめられるかぎりよい物を、王へのおくりものにととのえた。一頭のロ・、 にくらをおき、それに小ムギの。ハン十個と、じぶんのブドウ畑でつくった・フドウ酒を入れた皮ぶくろ一個と、じ ぶんの子ャギのうちでいちばんよいものとをつんだ。つぎの日、ダビデは、きがえの衣服ひと組と、家からはな ひつよう しゆっぱっ れているあいだに必要になりそうなものとをもって出発した。父にくちづけをして別れをつげ、いそいで出てい っこ 0 つか ばん しゃ こ ようむ ひみつ ばたけ もの こと こし かみ しゅ わか わか ふく ふんべっ かわ ぐん こと うつく こ かお