仕事 - みる会図書館


検索対象: 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-
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1. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

295 「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後のひとりはどうしても逃けられない 「先生、わたしにそれをやらしてください。どうか先生からペンネン先生へお許しの出るようおことばを ください。」 「それはいけない。きみはまだ若いし、いまのきみの仕事にかわれるものはそうはない。」 「わたしのようなものは、これからもたくさんできます。わたしよりもっともっと何でもできる人が、わた わら しよりもっとりつばにもっと美しく、仕事をしたり笑ったりしていくのですから。」 ぎし そうだん まくはいかん。ペンネン技師に話したまえ。」 「その相談はを ぎし そうだん ブドリは帰ってきて、ペンネン技師に相談しました。技師はうなずきました。 ことし けれども・ほくがやろう。ばくは今年もう六十三なのだ。ここで死ぬならまったく本望とい 「それはいい。 し・こと 「先生、けれどもこの仕事はまだあんまり不確かです。一ペんうまく爆発しても、まもなくガスが雨にとら れてしまうかもしれませんし、また何もかも思ったとおりいかないかもしれません。先生がこんどおいでに なってしまっては、あと何とも工夫がっかなくなるとそんじます。」 ろうぎし 老技師はだまって首をたれてしまいました。 のちかざんきよくふね みつか それから三日の後、火山局の船が、カルポナード島へいそいで行きました。そこへいくつものやぐらは建 でんせんれんけっ ち、電線は連結されました。 うものだ。」 のでね。」 かえ くひ うつく くふう わか しごと し」と ふたし と′ノ しごと ば・くはっ ゆる にんもう グスコーフ・ドリの伝記

2. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

301 はなまきのうがっこう 会に通い、また「どんぐりと山ねこ」その他の童話を、たてつづけに書きだしました。花巻農学校の先生に どう けんこう のうがっこうたいしよく なったのもこの年です。それから三十一歳の四月、農学校を退職するまでの年月は健康にもめぐまれ詩、童 どうわしゅうちゅうもんおおりようりてん ししゅう げきしごと 話、劇と仕事もたくさんし、詩集「春と修羅 , 、童話集「注文の多い料理店」も出版しました。しかし賢治の げんざい のうがっこう ほんとうの仕事への意欲はそれからで、農学校の先生をよしますと、現在「雨ニモマケズ」の詩碑の建って たはたひりようそうだん はたけたがや らすちじんきようかいせつりつ じすいせいかっ いる下根子で自炊生活をはじめ、畑を耕し、羅須地人協会を設立して、田畑の肥料の相談や方々の農村を歩 びようぎ びようき いなさくしどう いて稲作の指導などをしましたが、とうとう病気になってしまいました。その後一時病気もよくなって東北 しようわ しどと びようきあっか かろう さいせぎこうじようぎし 砕石工場の技師になったのは三十六歳の時でしたが、その仕事での過労から病気は悪化して昭和八年九月一一 十一日に永眠しました。 のうがっこう 賢治が亡くなる十日前に書いた農学校の教え子あての手紙につぎのような一節があります。 せき おんようい かげだいぶなお 「 : : : 私もお蔭で大分癒っては居りますが、どうも今年は前とちがってラッセル音容易に除かれす、咳がは き びとなみつくえすわ せき しごと じまると仕事もなにも手につかず : : : けれども咳のないときはとにかく人並に机に坐って、切れ切れながら びようじよう ・ : 」死の十日前の病状で「七八時間は何か」するという 七八時間は何かしてゐられるやうになりました。・ けんじ かずおお ことはなみたいていなことではありません。賢治の数多い文学作品は、生まれながらの天才とそうした努力て ひりよう ちゅうい のうみん たず によって生まれたものでした。またその二日前の晩には、訪ねてきた農民に田の肥料について注意するため、に 寝床に起きあが 0 て話しています。じぶんの苦しみは内にかくして他人のためにできるだけのことをつくす、皿 治 けんじ いっしよう そういう献身の、賢治の一生はその積み重ねでもありました。 沢 ことししんはい さきの教え子への手紙の最後で賢治はこういっています「 : : : それでも今年は心配したやうでなしに作も けんじ しもねこ えいみん けんしん しごと さいご やま けんじ っ しゆら どうわ ばん ことし し たにん しゆっぱん せつ てんさい のそ ぎ のうそん けんじ し た どりよく

3. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

280 「あなたが、グスコーブドリくんですか。わたしはこういうものです。」と、 しいました。見ると、 かざんきよくぎし あいさっ 〔イハトーブ火山局技師ペンネンナーム〕と書いてありました。その人はブドリ の挨拶になれないでもし しんせつ 、ました。 もじしているのを見ると、重ねて親切にいし でんわ 「さっきク , ーポー博士から電話があったのでおまちしていました。まあこれから、ここで仕事をしながら しごと べんきよう きよねん せきにん しつかり勉強してごらんなさい。ここの仕事は、去年はしまったばかりですが、じつに責任のあるもので、 かざん かざん それに半ぶんはいっ噴火するかわからない火山の上で仕事するものなのです。それに火山のくせというもの がくもん は、なかなか学問でわかることではないのです。われわれはこれからよほどしつかりやらなければならんの こんばん です。では今晩はあっちにあなたの泊まるところがありますから、そこでゆっくりお休みなさい。あしたこ たてもの あんない の建物じゅうをすっかり案内しますから。」 ろうぎし つぎの朝、ブドリはペンネン老技師につれられて、建物のなかをいちいちつれて歩いてもらい、さまざま おそ き力い の機械やしかけをくわしく教わりました。その建物のなかのすべての器械はみんなイー / 、トープしゅうの三 かっかざんきゅうかざん かざんけむりはい ようがんなが 百いくつかの活火山や休火山につづいていて、それらの火山の煙や灰をふいたり、熔岩を流したりしている ようがん かたちか ようすはもちろん、みかけはじっとしている古い火山でも、その中の熔岩やガスのもようから、山の形の変 すうじ へんか わりようまで、みんな数字になったり図になったりして、あらわれてくるのでした。そしてはけしい変化の あるたびに、模型はみんなべつべつの音で鳴るのでした。 ろうぎし あっかかたかんそく ブドリはその日からペンネン老技師について、すべての器械の扱い方や観測のしかたを習い、夜も昼もい 刺入れを出して、一枚の名刺をブドリに出しながら、 ぎ力い もけい はかせ ふんか かさ たてもの かざん たてもの しごと なら ひる

4. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

278 そと わら 「よろしい。きみはどういう 仕事をしているのか。」 「仕事をみつけにきたんです。」 しごと 「おもしろい仕事がある。名刺をあけるから、そこへすぐ行きなさい。博士は名刺をとり出して可かする とぐち する書き込んでブドリにくれました。ブドリはおじぎをして、戸口を出て行こうとしますと、大博士はちょ っと目で答えて、 「何だ、ごみを焼いてるのかな。」と低くつぶやきながら、テー・フルの上にあったかばんに、チョークのか まど けらや、ハンケチや本や、みんな一しょに投けこんで小わきにかかえ、さっき顔をだした窓から、プイツと だ、はかせ 外へ飛びだしました。びつくりしてブドリが窓へかけよってみますといっか大博士はおもちゃのような小さ ひこうせんの な飛行船に乗って、じぶんでハンドルをとりながら、もううす青いもやのこめた町の上を、まっすぐにむこ だいはかせ うへ飛んでいるのでした。ブドリがいよいよあきれて見ていますと、まもなく大博士は、むこうの大きな天 ふね たてもの いろの建物の平屋根に着いて、船を何かかぎのようなものにつなぐと、そのまま。ほろっと建物の中へはいっ ひく 「無風で煙がそうとうあれば、たての棒にもなりますが、さぎはだんだんひろがります。雲のひじように低 い日は、棒は雲までのぼって行って、そこから横にひろがります。風のある日は、棒は斜めになりますが、 かたむ ていど その傾きは風の程度にしたがいます。波ゃいくつもきれになるのは、風のためにもよりますが、一つはけむ かたち りや煙突のもっくせのためです。あまり煙の少ないときは、コルク抜きの形にもなり、煙も重いガスがまし ふさ れば、煙突の口から房になって、一方乃至四方におちることもあります。」 だいはかせ 大博士はまた笑いました。 しごと むふうけむり えんとっ たてものひらやね えんとっ ぼう こた しごと ひく なみ けむり まど はかせめいし カお けむりおも はかせ

5. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

310 ぐたいてき しめ にんげんひしよう まり、人間の卑小さというものが具体的に示されています。いたちがツェねすみのぐにやぐにやした性質に たくさん てんじよう こんべいとう はらをたてて投けだした金平糖を、このねずみは持てるだけ沢山ひろって「いちもくさんにはしって、天井 ひくっ うらす 裏の巣へもどって」「コチコチたべ」ているのなどは、卑屈であわれな感じがまったくよく書けています。 しようぎよう だんちょう しやかいてぎ 「ツェねずみ」は個人に関することで、「カイロ団長」は社会的なことがらに対する批判です。商業だとか、 ふこころえ かた にんげんせいかっ しほんうんえい 資本の運営などということが、人間生活のうえで大切なことはいうまでもありませんが、不心得なやり方だ けんじ だんちょう わるめん と、悪い面をもたらします。「カイロ団長」や「なめとこ山のくま」の場合などがこれです。賢治が好まし しごと こうふくやくだ せいさんてききんろう く思っているのは、生産的な勤労によって、みんなの幸福に役立つような仕事です。 しより だんちょう もんだい しやかいあく ところで問題なのは、このような社会悪をどのように処理するか、ということです。「カイロ団長」では わる けつきよく かいけっ めいれい 「王さまのご命令」で解決します。それによって、悪いものは結局しぜんにつぶれてしまうというわけです。 けんじ らすちじんきよう こんぽんてきかいけっ けれども、根本的な解決は、やはり雨がえるたちみんなのカでやりとけるべきでしよう。賢治の羅須地人協 こうじよう のうそんせいかっ もくてき 会の仕事の大きな目的は、つかれている農村の生活をもっと向上させようということです。そのためには、 し うちゅういし ばんにんこうふくじっげん 万人の幸福を実現しようとしている宇宙意志を、各自がめいめいじぶんの意志として、農耕生活を生きがい りようめん 力しか ' 、ノ・ル せいしんぶっしつ さくもっぞうさん ひりようせつけい 、精神と物質との両面からの改革運 いっぽう、肥料設計によって作物の増産をはかるという あるものとし、 うちゅう にんげん しん にんげんいじよう うちゅういし 動だったのです。この合、「宇宙意志」という人間以上の力を信じるのですが、それは人間をはしめ、宇宙 こんげんりよく げんしよう かん 間のすべての現象をつくり出す根源力であり、その力によってつくり出された各人が、めいめいの個性をで こう かた こうふくたっ きるだけ発揮することによって、まことの幸福に達する、という考え方なのですから、けっして受け身な行 かんせい うちゅういし 動なのではありません。「宇宙意志」の力と人々の力とが合わさって、大きな仕事が完成されるのです。 どう ど ) しごと はっき こじんかん あま も たいせつ かくじ しごと かくじん ひ ん のうこうせいかっ こせし この せいしつ み

6. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

272 主人は笑いながらいって、それからブドリといっしょに、かたつばしからオリザの株を刈り、あとへすぐ そばをまいて土をかけて歩きました。そしてその年はほんとうに主人のいったとおり、ブドリ の家ではそは 、ました。 ばかりたべました。つぎの春になると主人がいし らく ことしぬま きよねん 「ブドリ、今年は沼ばたけは去年よりは三分の一へったからな、仕事はよほど楽だ。そのかわりおまえは、 、つしよう ペんきよう やまし おれの死んだむすこの読んだ本をこれから一生けんめい勉強し、いままでおれを山師だといって笑ったやっ らを、あっといわせるようなりつばなオリザを作る工夫をしてくれ。」 ひとやま わた そして、いろいろな本を一山ブドリに渡しました。・フドリは仕事のひまにカオ 、こつばしからそれを読みまし た。ことにその中の、クーポーという人の物の考え方を教えた本はおもしろかったので何べんも読みました。 またその人が、イー / 、トーブの市で一カ月の学校をやっているのを知って、たいへん行って習いたいと思っ たりしました。 びようき そして早くもその夏、ブドリは大きな手がらをたてました。それは去年とおなじころ、またオリザに病気 かもしれないんだ。」 「石油こやしになるのか。」むこうの男は少し顔いろをやわらけました。 セきゅ 「石油こやしになるか石油こやしにならないか知らないが、とにかく石油は油でないか。 わら まふら せきに 「それは石油は油だな。」男はすっかりきけんをなおして笑いました。水はどんどん退き、オリザの株はみ るみる根もとまで出てきました。すっかり赤い斑ができて焼けたようになっています。 「さあ、おれのところではもうオリザ刈りをやるそ。」 しゅじんわら せきゅ きい セきゅ しゅじん もの ふち とし くふう かたおし し′こと しゅしん しごと きよねん あふら しりそ かふか なら わら かふ

7. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

274 み気り停こさな本くそり んをき車えいをののまブ なとた場ばまで書でむしド ブりりをど沼 : いし た リ ドなす ろばたた う は リおる足 のした出くけープは車皐時 4 あてくまつをポド は間 さすて作ー ま リたいば ク りそんとたれとはく くか ま まるい いさつり の じら自じ地しらようろんも歩ー めの動一面なう人いののい大 な人車皐のい にろ黒沼て博 顔にの底くま会あないば をクあからたい思森た停し いがけ車 てポだ何で山えでで を場 にかしのき胸つどへ ふ博 : のた灰るがぎんき き士ブん だないかどま だのドの汽きのらつらんし し学リん車皐ひ ばつどた そ校は湧わはで働いぎん 0 うへしくそりきらでとどそ に行ばよのだなし形んれ しくらう日のがたをちうか なみくなの寒ら 変かしら がちぼひひさ勉 : 早えろ切 らをうびるだ強篁くてへ符 たときすのしうイ 送を ずしやぎをて一やり買か / 、つオよ・つ ねてど の まつんイそみトばがて しつよー 工くなブう た立り イ っとト夫すがのしも一 すてし一をあ市しろう るしたプしんにのい ト とまくのたな着つほっー だいら市しいに うさフ・ れまい にとってへん行 へし空着。思ら のにき きた気ききう いあこ走の まと思のさり汽 い親れま車 てや行し もつった汽を切茗てしに 車しな行た乗 0 0 あかがわくっ わす と赤革の靴とをブドリにくれました。ブドリはいままでの仕事のひどかったことも忘れてしまって、もう何 し・こと はたら にもいらないから、ここで働いていたいとも思いましたが、考えてみると、いてもやつばり仕事もそんなに あいだ ていしやじよう しゅじん ないので、主人に何べんも何べんも礼をいって、六年の間はたらいた沼ばたけと主人に別れて、停車場をさ して歩きだしました。 だいはかせ て、しやば れ しどと ま しゅしん わ きしゃの

8. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

むぐらは、 びをします。 ホモイは足をばたばたして、 「ホモイさんでいらっしゃいますか。よくそんじております。」 「そうか。そんならいいがね。ぼく、おまえを軍曹にするよ。そのかわり少し働いてくれないかい。」 「へいどんなことでございますか。」 しいました。 「すずらんの実を集めておくれ。」と、 むぐらは土の中で冷汗をたらして頭をかきながら、 「さあまことに恐れいりますがわたしはあかるいところの仕事はいっこう無調法でございます。」といいま 「そうかい。そんならいいよ。たのまないから。あとでみておいで。ひどいよ。」と叫びました。 むぐらが土の中でいいました。 ホモイは大いばりでいいました。 「どうかごめんをねがいます。わたしは長くお日さまをみますと死んでしまいますので。」としきりにおわ火 むぐらはびくびくしてたずねました。 おこ ホモイは怒ってしまって、 ホモイがいきなり、 あっ ひやあせ あたま ぐんそう しごと ぶちょうほう はたら さけ

9. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

りすがきやっきやっ喜んで仕事にかかりました。 このときむこうから子馬が六びき走ってきてホモイの前にとまりました。その中の一ばん大きなのが、 よろこ 「ホモイさま。わたしどもにも何かおいいつけをねがいます。」と申しました。ホモイはすっかり喜んで、 「いいとも。おまえたちはみんなにくの大佐にする。ぼくがよんだら、きっとかけてきておくれ。」といい よろこ ました。子馬も喜んではねあがりました。 むぐらが土の中で泣きながら申しました。 を ~ いたしますか 「ホモイさま、どうかわたしにもできるようなことをおいいつけください。きっとりつまこ 「おまえなんかいらないよ。今にきつねがきたらおまえたちの仲間をみんなひどい目にあわしてやるよ。 みておいで。と足ぶみをしていいました。 、よ。だまっておいで。」と しいました。 その時むこうのにわとこのかけから、りすが五ひきちょろちょろ出てまいりました。そしてホモイの前に びよこびよこ頭をさけて申しました。 「いいとも。さあやってくれ。おまえたちはみんな・ほくの少将だよ。」 「いいよ。もういし 「ホモイさま、どうかわたしどもにすすらんの実をお採らせくださいませ。」 ホモイはまだ怒っていましたので、 ホモイが、 あたま おこ よろこ しごと しようしよう なかま

10. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

293 9 カルポナード島 しゅじん それからの五年は、・フドリにはほんとうに楽しいものでした。赤ひげの主人の家にも何ペんもお礼に行き ました。 いじようか もうよほど年はとっていましたが、やはりひじような元気で、こんどは毛の長いウサギを千びき以上飼っ はたけ たり、赤いかんらんばかり畑に作ったり、あいかわらずの山師はやっていましたが、暮らしはずうっといい ようでした。 ネリには、かわいらしい男の子が生まれました。冬に仕事がひまになると、ネリはその子にすっかり子ど ひやくしよう フドリの家にたすねてきて、泊って行ったりするの もの百姓のようなかたちをさせて、主人といっしょに、。 でした。 たず むかし ある日、・フドリのところへ、昔てぐす飼いの男にブドリといっしょに使われていた人が訪ねてきて、・フド リたちのおとうさんのお墓が森のいちばんはずれの大きなかやの木の下にあるということを教えて行きまし た。それは、はじめ、てぐす飼いの男が森にきて、森じゅうの木を見てあるいたとき、・フドリのおとうさん たちの冷たくなったからだをみつけて、・フドリに知らせないように、そっと土に埋めて、上へ一本のかばのの せつかいがんはか 枝をたてておいたというのでした。ブドリは、すぐネリたちをつれてそこへ行 0 て、白い石天岩の墓をたてハ て、それからもそのへんを通るたびにいつもよってくるのでした。 とし そしてちょうどブドリが二十七の年でした。どうもあのおそろしい寒い気候がまたくるような模様でした。 とし はか とお しゅじん たの し・こと やまし さむきこう とま もよう