見 - みる会図書館


検索対象: 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-
298件見つかりました。

1. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

274 み気り停こさな本くそり んをき車えいをののまブ なとた場ばまで書でむしド ブりりをど沼 : いし た リ ドなす ろばたた う は リおる足 のした出くけープは車皐時 4 あてくまつをポド は間 さすて作ー ま リたいば ク りそんとたれとはく くか ま まるい いさつり の じら自じ地しらようろんも歩ー めの動一面なう人いののい大 な人車皐のい にろ黒沼て博 顔にの底くま会あないば をクあからたい思森た停し いがけ車 てポだ何で山えでで を場 にかしのき胸つどへ ふ博 : のた灰るがぎんき き士ブん だないかどま だのドの汽きのらつらんし し学リん車皐ひ ばつどた そ校は湧わはで働いぎん 0 うへしくそりきらでとどそ に行ばよのだなし形んれ しくらう日のがたをちうか なみくなの寒ら 変かしら がちぼひひさ勉 : 早えろ切 らをうびるだ強篁くてへ符 たときすのしうイ 送を ずしやぎをて一やり買か / 、つオよ・つ ねてど の まつんイそみトばがて しつよー 工くなブう た立り イ っとト夫すがのしも一 すてし一をあ市しろう るしたプしんにのい ト とまくのたな着つほっー だいら市しいに うさフ・ れまい にとってへん行 へし空着。思ら のにき きた気ききう いあこ走の まと思のさり汽 い親れま車 てや行し もつった汽を切茗てしに 車しな行た乗 0 0 あかがわくっ わす と赤革の靴とをブドリにくれました。ブドリはいままでの仕事のひどかったことも忘れてしまって、もう何 し・こと はたら にもいらないから、ここで働いていたいとも思いましたが、考えてみると、いてもやつばり仕事もそんなに あいだ ていしやじよう しゅじん ないので、主人に何べんも何べんも礼をいって、六年の間はたらいた沼ばたけと主人に別れて、停車場をさ して歩きだしました。 だいはかせ て、しやば れ しどと ま しゅしん わ きしゃの

2. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

196 ような、空の野原に、まっすぐにすきっと立ったのです。 するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションという声がしたと思 おくまん うと、いきなり目の前カ 」 ; 、ばっとあかるくなって、まるで億万のほ かせき そら たるいかの火を一ペんに化石させて、空じゅうにしすめたと いうぐあい。またダイアモンド会社で、ねだんがやすく ) 謬。 ならないために、わざととれないふりをして、かくし こんごうせき ておいた金剛石を、だれかがいきなりひっくりかえし て、ばらまいたというふうに、目の前がさあ 0 とあかるく " なって、ジョバンニは、思わす何べんも目をこすってしまいました。 でんとう 気がついてみると、さっきから、 * ろの電燈のならんだ まど しやしつ そと ごとごとごとごと、ジョパ 車室に、窓から外を見ながらすわっていたの しやしつ ンニの乗っている小さな です。車室の中は、青いビロードをはった こしかけが、まるでがらあきで、むこうの 列車が走りつづけていた のでした。ほんとうにジ 1 ハ 、ねずみいろのワニスをぬった壁には、しんち けいペんてつどう ドイ ゅうの大きな・ほたんが二つ光っているのでした。 ンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄い * まど あたま せき うわぎ すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高い子どもが、窓から頭を出して外を見ている カナ のに気がっきました。そしてその子どもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思う れっしゃ のはら ぎんが がいしゃ ぎんが かべ そと

3. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

232 こうげん そうそう、ここはコロラドの高原じゃなかったろうか。ジョパンニは思わずそう思いました。 あねおとうと あの姉は弟をじぶんの胸によりかからせてねむらせながら、黒いひとみをうっとりと遠くへなけて何を見 るでもなしに考えこんでいるのでしたし、カム。ハネルラもまださびしそうにひとり口笛を吹き、男の子はま るで絹でつつんだりんごのような顔いろをしてねむっておりました。 とっぜん、とうもろこしがなくなっておおきな黒い野原がいつばいにひらけました。 のはら 新世界交響楽はいよいよはっきり地平線のはてからわき、そのまっ黒な野原のなかをひとりのイノデアン ゆみや むね あたま が白い鳥のはねを頭につけ、たくさんの石をうでと胸にかざり、小さな弓に矢をつがえていちもくさんに汽 しやお 車を追ってくるのでした。 「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。ごらんなさい。」 くろふくせいねん 黒服の青年も目をさましました。 ジョ、、ハンニもカム。ハネルラも立ちあがりました。 した。 しんせかいこうきようがく 「とうもろこしだって棒で二尺もあなをあけておいてそこへまかないと生えないんです。」 「そうですか。川まではよほどありましようかね。」 一よラこ、 「ええ、ええ、河までは二千尺から六千尺あります。もうまるでひどい峡谷になっているんです。」 「走ってくるわ、あら、走ってくるわ。追いかけているんでしよう。」 しいえ、汽車を追ってるんじゃないんですよ。猟をするかおどるかしてるんですよ。」 きしやお かわ むね しやく かお ちへいせん りよう のはら くちふえふ とお

4. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

279 かん かざんぎよく 5 イハトーブ火山局 だいはかせ ブドリが、クーポー大博士からもらった名刺のあて名をたずねて、やっと着いたところは大きな茶いろの げん かたち ふさ 建物で、うしろには房のような形をした大きな柱が夜のそらにくつきり白く立っておりました。ブドリは玄 関に上って呼鈴をおしますと、すぐ人が出てきて、ブドリの出した名刺を受けとり、ひとめ見ると、すぐプ ドリをつきあたりの大きな室へ案内しました。そこにはいままでに見たこともないような大きなテーブルが あって、そのまん中にひとりの少し髪の白くなった人のよさそうなりつばな人が、きちんとすわって耳に受 ゅび 話器をあてながら何か書いていました。そしてブドリのはいってきたのをみると、すぐ横のいすを指さしな がら、またつづけて何か書きつけています。 かべ へや ープぜんたいの地図が、美しく色どった大きな模型に作ってあっ その室の右手の壁いつばいに、イーハト さんみやく てつどう て、鉄道も町も川も野原もみんな一目でわかるようになっており、そのまん中を走るせほねのような山脈と、 てんてんしま さんみやく 力いがんそ 海岸に沿って縁をとったようになっている山脈、またそれから枝を出して海の中に点々の島をつくっている れつ 一列の山々には、みんな赤やだいだいや黄のあかりがついていて、それがかわるがわる色が変わったりジー かべ すうじ とせみのように鳴ったり、数字があらわれたり消えたりしているのです。下の壁にそった棚には、黒いタイハ れつ 。フライターのようなものが三列に百でもきかないくらいならんで、みんなしずかに動いたり鳴ったりしてい じゅわき わす るのでした。ブドリがわれを忘れて見とれておりますと、その人が受話器をコトッとおいてふところから名 たて、の わき てみえなくなってしまいました。 よびりん へり のはら へやまんない ひとめ かみ えだ うつく よこ もけい たな じゅ

5. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

223 くしくいろどられた大きなりんごを落さないように両手でひざの上にかかえていました。 せいねん 「おや、どっからきたのですか。りつばですねえ。ここらではこんなりんごができるのですか。」青年はほ くび ひと とうだいかんしゆらようて んとうにびつくりしたらしく、燈台看守の両手にかかえられた一もりのりんごを、目を細くしたり首をまけ たりしながら、われをわすれてながめていました。 「いや、まあおとりください。どうか、まあおとりください。」 せいねん 青年は一つとってジ 1 ハンニたちのほうをちょっと見ました。 「さあ、むこうの・ほっちゃんがた。いかがですか。おとりください。」 ジョ・ハンニはぼっちゃんといわれたので、すこししやくにさわってだまっていましたが、カム。 ( ネルラは、 、ました 「ありがとう。」といし おく すると青年はじぶんでとって一つずつふたりに送ってよこしましたので、ジョパンニも立って、ありがと うといいました。 とうだいかんしゅ 燈台看守はやっと両うでがあいたので、こんどはじぶんで一つずつ、ねむっているきようだいのひざにそ っとおきました。 「どうもありがとう。どこでできるのですか。こんなりつばなりんごは。」 夜 せいねん の 青年はつくづく見ながらいいました。 のうぎよう 、ものがでぎるような約東に河 「このへんではもちろん農業はいたしますけれども、たいていひとりでにいし のぞ 銀 のうぎよう ほねお なっております。農業だってそんなに骨は折れはしません。たいていじぶんの望むたねさえまけばひとりで せいねん りよう りようて ほそ やくそく

6. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

224 にどんどんできます。米だってパシフィックへんのようにからもないし十倍も大きくてにおいもいいのです。 のうぎよう けれどもあなたがたのいらっしやるほうなら農業はもうありません。りんごだっておかしだって、かすが少 しもありませんから、みんなそのひとそのひとによってちがった、わすかのいいかおりになって毛あなから ちらけてしまうのです。」 にわかに男の子がばっちり目をあいていいました。 「ああ。ほくいまおっかさんのゆめをみていたよ。おっかさんがね、りつばな戸だなや本のあるとこにいて ね、ぼくのほうを見て手をだしてにこにこにこにこわらったよ。・ほく、おっかさん。りんごをひろってきて あけましようか、といったら目がさめちゃった。ああここ、さっきの汽車のなかだねえ。」 「そのりんごがそこにあります。このおじさんにいただいたのですよ。」青年がいいました。 「ありがとうおじさん。おや、かおるねえさんまだねてるねえ、ぼくおこしてやろう。ねえさん。ごらん、 りんごをもらったよ。おきてごらん。」 あね 姉はわらって目をさまし、まぶしそうに両手を目にあてて、それからりんごを見ました。 男の子はまるでパイをたべるように、もうそれをたべていました、またせつかくむいたそのぎれいな皮も、 じようはっ カたち くるくるコルクぬきのような形になって床へ落ちるまでのあいだにはすうっと、灰いろに光って蒸発してし まうのでした。 ふたりはりんごをたいせつにポケットにしまいました。 ぎし 川しものむこう岸に青くしけった大きな林が見え、その枝には熟してまっかに光るまるい実がいつばい ゆかお りようて じゅく きしゃ かわ

7. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

248 博士は小さくおった緑いろの紙をジョバンニのポケットに入れました。そしてもうそのかたちは天気輪の はしらのむこうに見えなくなっていました。 ジョバンニはまっすぐに走って丘をおりました。 そしてポケットがたいへんおもくカチカチ鳴るのに気がっきました。林の中でとまってそれをしらべてみ ましたら、あの緑いろのさっき夢の中で見たあやしい天の切符の中に大きな二枚の金貨がつつんでありまし ぶんはまっすぐに草の丘に立っているのを見、また遠くからあの・フルカニロ博士の足おとのしずかに近づい てくるのをききました。 ばしよとお 「ありがとう。わたしはたいへんいい実験をした。わたしはこんなしずかな場所で遠くからわたしの考え を人にったえる実験をしたいとさっき考えていた。おまえのいったことばはみんなわたしの手帳にとってあ ゅめ かえ る。さあ帰っておやすみ。おまえは夢の中でけっしんしたとおりまっすぐに進んで行くがいい そしてこれ そうだん から何でもいつでもわたしのとこへ相談においでなさい。」 ころ・ふく すす 「ばくきっとまっすぐに進みます。きっとほんとうの幸福をもとめます。」ジョパンニはカづよくいいまし こ 0 「ああ、ではさよなら。これはさっきの切符です。」 はかせ みどり こ 0 「博士ありがとう。おっかさん、すぐ乳をもって行きますよ。」 ジョ・ハンニはさけんでまた走りはじめました。何かいろいろのものが一ペんにジョバンニの胸に集まって はかせ みどり じつけん おか ゅめ おか じつけん ちち きっふ きつぶ はかせ すす きんか てちょう むねあっ てんきりん

8. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

285 ふわの 「そうだ、。ほくはこれでしつけいしよう。」といって小屋を出て、いっかひらりと船に乗ってしまいました。 ろうぎし だいはかせ 老技師とブドリは、大博士があかりを、二、 = 一どふ 0 て挨しながら山をまわ 0 てむこう〈行くのを見お がた こうさくたい かんそく くってまた小屋にはいり、かわるがわるねむったり観測したりしました。そしてあけ方ふもとへ工作隊がっ ゅび ろうぎし きますと、老技師は、・フドリをひとり小屋にのこして、きのう指さしたある草地までおりて行きました。み てつざいりよう んなの声や、鉄の材料のふれ合う音は、下から風の火きあけるときは、手にとるようにきこえました。ペン あつりよく しごとすすぐあい ネン技師からひっきりなしに、むこうの仕事の進み工合も知らせてよこし、ガスの圧力や山の形の変わりよ じしんじな うもたずねてきました。それから三日のあいだは、はけしい地震や地鳴りのなかで、・フドリのほうも、ふも ろうぎし はっしん とのほうもほとんどねむるひまさえありませんでした。その四日目の午後、老技師からの発信がいってきま 1 ) こ 0 かんそくき力い 「ブドリくんだな。すっかりしたくができた。いそいでおりてきたまえ。観測の器械は一ペんしらべてそ ごご ひょう こや のままにして、表はぜんぶもってくるのだ。もうその小屋はきようの午後にはなくなるんだから。」 ぎよくそうこ ブドリはすっかりいわれた通りにして山をおりて行きました。そこにはいままで局の倉庫にあった大きな やぐら でんりゅう てつざい 鉄材が、すっかり櫓に組み立っていて、いろいろな機械はもう電流さえくればすぐに働きだすばかりになっ ていました。ペンネン技師のほおはけっそり落ち、工作隊の人たちも青ざめて目ばかり光らせながら、それの わら でもみんな笑ってブドリにあいさっしました。老技師がいいました。 だい 「では引きあけよう。みんなしたくして車に乗りたまえ。」みんなはおおいそぎで二十台の自動車に乗りま れつ した。車は列になって山のすそをいっさんにサンムトリ市に走りました。ちょうど山と市とのまんなかごろ とお こや ろうぎし こうさくたい くさち はたら じどうしゃ かたちか

9. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

205 とがったくるみの実のようなものをひろいました。 「くるみの実だよ。そら、たくさんある。流れてきたんじゃない。岩の中にはいってるんだ。」 「大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。」 「はやくあすこへ行ってみよう。きっと何かほってるから。」 ふたりは、ぎざぎざの黒いくるみの実をもちながら、またさっきのほうへ近よって行きました。左手のな ぎん力いがら いなずま ぎさには、波がやさしい稲妻のようにもえてよせ、右手のがけには、いちめん銀や貝殻でこさえたようなす すきのほがゆれたのです。 ・、 / 、しゃ きんがんきよう だんだん近づいてみると、ひとりのせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長ぐっをはいた学者らしい人が 手ちょうに何かせわしそうにかきつけながら、つるはしをふりあけたり、スコップをつかったりしている、 じよしゅ 三人の助手らしい人たちに、むちゅうでいろいろさしずをしていました。 「そこのその突起をこわさないように、スコップを使いたまえ、スコップを。おっと、もすこし遠くからほ って。いけない、 いけない。なぜそんならんぼうをするんだ。」 ほね 見ると、その白いやわらかな岩の中から、大きな大きな青じろいけものの骨が、横に倒れてつぶれたとい うふうになって、半分いじようほり出されていました。そして気をつけてみると、そこらには、ひづめの二 ばんごう つある足あとのついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切りとられて番号がつけられてありました。 ナしか ~ 、し さんかん 「きみたちは参観かね。」その大学士らしい人が、めがねをきらっとさせて、こっちをみて話しかけました。河 「くるみがたくさんあったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみたよ。ごく新しいほう なみ とっき しかく まん ちか よこたお あたら とお

10. 銀河鉄道の夜 -宮沢賢治童話集Ⅱ-

276 かべ 「そこでこういう図ができる。」先生は黒い壁へべつのこみいった図をどんどん書ぎました。 左手にもチョークをもって、さっさっと書きました。学生たちもみんな一生けんめいそのまねをしました。 ・フドリもふところから、いままで沼ばたけでもっていたきたない手帳を出して図を書きとりました。先生は もう書いてしまって、壇の上にまっすぐに立って、じろじろ学生たちの席を見まわしています。ブドリも書 ずたてよこ いてしまって、その図を縦横から見ていますと、ブドリのとなりでひとりの学生が、 「あああ。」とあくびをしました。ブドリはそっとききました。 「ね、この先生は何ていうんですか。」 すると学生はばかにしたように鼻でわらいながら答えました。 だいはかせ 「クーポー大博士さ。おまえ知らなかったのかい。」それからしろじろ・フドリのようすを見ながら、「はじめ こうざ 、。まくでさえおなじ講座をもう六年もきいているんだ。」といってじぶんの から、この図なんか書けるもの力を きようしつ ノートをふところへしまってしまいました。その時教室に、ばっと電燈がっきました。もうゆうがただった だいはかせ のです。大博士がむこうでいいました。 きぼうしゃ しよくん きた 「いまやタははるかに来り、拙講もまた全課を終えた。諸君のうちの希望者は、けだしいつもの例により しよそくけっ すうこ せっしやしめ そのノートをば拙者に示し、さらに数個の試問を受けて、所属を決すべきである。」学生たちはわあとさけん フドリにはただおもし みんなはしきりに首をかたむけて、どうもわからんというふうにしていましたが、 ろかったのです。 こ 0 ゅうべ くび だん せつこう ぬま はな ゼんか しもんう こた てちょう でんとう せき いっしよう