におい - みる会図書館


検索対象: えりなの青い空
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1. えりなの青い空

「どんなにおい ? 」 ひなた 「えっとね、おつばいのにおいがして、日向のにおいがして、赤ちゃん のにおいがする」 ハヤンがミヤオとないて、そのまま、大きなあくびをした。 池内さんがまた、につこりと笑う。白い子ネコの耳にそっとさわった。 「よかったね。おまえは、かわいがってくれる人にもらわれて、ほんと よかった」 「ほかの赤ちゃんは、もらい手が見つかった ? 」 むすめほ 「ええ、シマはとなりの市に住んでる娘が欲しいって。ほかのネコも、 友だちや知り合いの人がひきとってくれるの。ただ : 池内さんは、真っ黒の子ネコをそっとだきあげた。 「この子だけは、まだ、もらってくれる人がいないの。真っ黒で、ほら しつばが曲がってるでしよ。だからかな」

2. えりなの青い空

「うん」 ハヤンか、う、つつと小さな声をだした。 「赤ちゃん、あんまりさわってほしくないんだ」 すずはら 鈴原さんが黒い子ネコから手をひっこめる。その手のにおいをかいで、 ひなた 「赤ちゃんと日向のにおいがする」 あま と、言った。えりなも自分の手をかいでみる。甘い、ほこほこしたに おいかした。 ふたかわ 「双川さん」 「はい」 「さっき、お天気が良くなったから、どこかにねころばないって言ったよね」 「うん」 「どこにねころぶの ? ブナの木の下 ? 」 「どこでも、 しいよ。空が見えるところならどこでもいい鈴原さん、プ

3. えりなの青い空

ころんだ。 この小学校が建つ前から、この場所にはえていたという大きな木だっ ねころぶと、みどりの葉っぱが、目の前い つばいにゆれた。葉っぱの かがや 間から空がのぞき、葉っぱがゆれるたびに太陽の光がちらちらと輝いた。 そして、みどりのにおいがした。夏の近いにおいだった。 新聞紙が耳元で、カサコソ、音をたてる。 ちょっとねむくなって、うとうとしていたら、五時間目の体育にちこ くしそうになった。あわてて教室にもどったら、 「なんか、そこまでやるかなあ」 真帆ちゃんが、あきれたみたいにため息をついた。ママのため息のつ き方と、よくにていた。 「やつばり、えりちゃんって変わってるのかなあ」 新聞紙のおしゃべり

4. えりなの青い空

赤むらさきって、色が変わっていく。晴れた日は、ほんとうに青くて手 をのばしたら、ツメの先が青くそまりそうに思えたりする。 空ってすごいな。すごくて、おもしろいな。 えりなは、いつもそ、つ思、つ まど 今日も、朝起きてすぐに、パジャマのまま窓を開けた。 央晴。すごく良いお天気だ。雲が一つもない。びかびかにみがきあげ た青いガラスを、びたっとはめこんだみたいだ。 しんこきゅ、つ むね 深呼吸する。青葉のにおいがすっと鼻から胸まで通っていった。春と 夏の間のにおいだ。なんだか、わくわくする。 服に着がえて下におりる お兄ちゃんが、厚切りのト 1 ストにマーガリンをつけていた。中学生 になってから、お兄ちゃんは、トーストにマーガリンをつけはじめたの だ。それまではチョコレートだったのに、

5. えりなの青い空

ちばな 「もう、乳離れするからね。そしたら、もらってやってね」 池内さんが、ハヤンの頭をなでた。えりなはうれしくて、大きな声で、 「はい」 と返事した。 「トイレのトレ 1 ニングとかしてね」 「トイレ ? 」 「決められた場所で、おしつこやウンチをするように教えるの。最初は、 ちょっと失敗するかもしれないけど」 「平気。ちゃんと教える。何度でも教えるから」 池内さんがほほえむ。白い子ネコをだきあげ、えりなにわたしてくれ 「ど、つ ? 」 「かわいい ふわふわしてる。いいにおいがする」 ほんとうのこと 79

6. えりなの青い空

すすはら 自転車にのって、新聞紙をもって、鈴原さんの家まで行ってみた。ち よっと遠かったし、道もよく知らなかったけれど、おまわりさんやお店 の人に聞いてさがしながら自転車を走らせた。 鈴原と表札のかかった家を見つけたとき、ほっとした。広い庭のある 大きな家だった。池内さんのところよりたくさん、バラか咲いていた。 表の道まで花のにおいがしている。 門のところからのぞくと、ほっそりした女の人が庭の草とりをしていた。 「こんにちは 晴れた日は新聞紙をしい匸

7. えりなの青い空

すずはら 声をかける。女の人がふりむいた。目元が鈴原さんとそっくりだった。 とても、きれいな人だ。 「あの : ・ : 。鈴原さん、いますか ? 女の人が、まばたきをする。いらっしゃいというふうに、手をふった。 庭の中に入る。バラのにおいが強くなった。白や赤やピンクや、いろん な色のバラか咲いている ちか 「あなたは : : : 。千夏のお友だち ? 」 友だちではないと思う。鈴原さんのことを千夏ちゃんとかスズとか呼 んだことはないし、いっしょに帰ったこともない。一度だけ、ブナの木 の下でいっしょにねころんだだけだ。そういうのは、友だちとは言わな し ) 田 5 、つけ・れ ) : よくわからない よくわからないので、よくわかっていることだけを答えることにした。

8. えりなの青い空

まど すいてき 水滴のついた窓ガラスを見ながら、えりなは、心の中でお祈りした。 そして、今日、雨はやんだ。だれかが、力いつばい水道のせんを閉め たように、びたりとやんだ。 すっとふっているときは、雨がいやだったけ 晴れ。最高級の晴天だ。、 れど、晴れてみると、雨のおかげで葉っぱのみどり色がぐんとこくなっ て、つやつやしているとわかる。空もつやつやだ。せんたくしたみたい 給食を食べたあと、えりなは新聞紙をもって、木の下に行った。 葉っぱからしずくが落ちてくるかなと心配したけれど、だいじようぶ だった。地面が少ししめっているぐらいだ。これくらいなら、新聞紙を たくさんしけば平気だ。もんだいない 何まいも重ねて新聞紙をしく。ねころがって、足をぐんとのばしてみ る。大きく息をすいこむと、雨上がりのにおいのする空気が、どんと胸 むね

9. えりなの青い空

こんだ。 せなか 一時間ぐらいねころがっていた。背中がいたくなったので起きあがる すずはら 鈴原さんは、、 しきおいよくとび起きて、ジーンズのおしりをばんばんは たいた。池内さんが、クッキ 1 をふくろにいれてくれた。赤いリボンま でしてある。 池内さんの家の前で、鈴原さんが先にさよならと言った。 「さよなら : あっ鈴原さん」 「なに ? 」 「子ネコのこと、えっと、黒いのなんだっけ」 「コムン」 「あっそうだ、コムン。ほんとうにもらってくれる ? 」 「うん、もらいたい。青れた日にもらいに来ようかな」 「そうだね。晴れた日かいいね。ついでにねころがれるもんね。今度は 102

10. えりなの青い空

ふたかわ 「石倉くんの言、つことはおかしいと思います。えりちゃん : 、双川さ んは、別に何も悪いことをしているわけじゃないし、だれにもめいわく とか、かけているわけじゃありません。石倉くんは、おせつかいだと思 います」 しきおいよく立 今度は、女子たちがくすくすと笑った。石倉くんは、、 ち上がり、 「おせつかいじゃねえよ。ば 1 か」 と、真帆ちゃんにむけて舌を出した。真帆ちゃんもば ーかと一一一口った。 あさみ 麻美ちゃんが手をあげて意見を言、つ。 「えっと、双川さんのことを一言うなら、石倉くんたちも反省した方が良 いと思います。禁止されてるのに、ときどき中庭でサッカーとかしてま 「うるせえ」