ハヤン - みる会図書館


検索対象: えりなの青い空
14件見つかりました。

1. えりなの青い空

池内さんはちっともこまっているようには見えなかった。いつもより、 わか ほおが赤くてうれしそうで、若く見えた。 ハヤンは、池内さんの家の飼いネコで、真っ白な毛と青い目とふさふ さしたしつほをしている。ときどき、えりなの家にも遊びに来る。かわ むね いい。ハヤンの子なら、ハヤンと同じくらいかわいいだろう。胸がくす ぐったくなる。わくっとする 「あたし、見たい」 「いいわよ。でも、もう少しあと : そうねえ、ハヤンが落ち着いて からね。いまは、すごく用心してるから」 えりなはうなずいた。ハヤンの目と空の色が重なる。胸がまた、わく っとした。

2. えりなの青い空

「えりちゃんの字、きれいだから、すごく読みやすいよね。なんか、て いねいに書いたって気がする」 「ありがとう」 えりなも、真帆ちゃんにむかって笑ってみせた。 六月の最初の日曜日は晴れた。 雲はまだたくさんあったけれど、雲と雲の間に見える空は、目にちか っとしみる青だ。まぶしくてきれいだ えりなは、池内さんの家で、ハヤンの赤ちゃんを見ていた。 ハヤンは、庭の木の下で、たけかごにねころび、せっせと赤ちゃんを なめていた。たけかごは、池内さんの子どもたちが使ったゆりかごの上 の部分らしい。ピンクの古いタオルケットをしいてもらって、ハヤンも 赤ちゃんも幸せそうだった。白い毛も黒い毛も、久しぶりの太陽の光を あびて、きらきらしている。

3. えりなの青い空

ちち ーだ。香ばしくておいしい。子ネコは、ハヤンからお乳をもらっていた。 「かわいいね」 すすはら 鈴原さんが、黒い子ネコにさわる。ハヤンの耳がびくっと動いた。じ っと鈴原さんを見つめる。それから、ペろっと鈴原さんの指をなめた。 「おや、ハヤンはあなたのこと気に入ったみたいよ」 池内さんに言われて、鈴原さんが少しだけほほえむ。 かんこく 「ハヤンて、韓国の言葉で白って意味ですよね」 「あらまあ。よく知っているのね。びつくりした」 えりなもびつくりした。鈴原さんて、ほんとうに何でもよく知っている 「鈴原さん、黒はなんて言、つの 「えっとね : ・ : 。たしかコムンだったかな」 「じゃ、この黒いのはコムンだ。ねっシマシマはなんて一一一一口うの ? 」 「知らない」

4. えりなの青い空

るよ、つなことは、何もしていない。 草とりの手伝いでもしてあげればよかったのかな。広い庭だから、そ うじがたいへんそうだものな。 そんなことを考えた。 「で、どこに行ったんだ ? 」 「はい ? 」 すすはら 「いや、だから、二人でどこに行ったんだ。鈴原をどこに連れ出してく れたんだ」 、あっハヤンのとこですー 「ハヤン ? 」 びき 「あ、ネコです。赤ちゃんを六匹もうんだんです。白いのと黒いのとぶ ちとシマシマと、それで、赤ちゃんを見て : : : 」 それから、泰山木の木の下にずっとねころんでました。鈴原さんがコ たいさんばく 104

5. えりなの青い空

鈴原さんのさようなら むね すずはら 鈴原さんは、指を胸の上で組んで、ねむっていた。 すうすうと息の音をさせて、ねむっていた。おでこに、葉っぱの先か らしずくが落ちたけれど、目を開けなかった。 す、つすうす、つ。すうす、つす、つ。 ねいき 鈴原さんの寝息は、きそくただしくて聞いているうちに、えりなまで ねむくなる 葉っぱの間から白い雲が見えた。まるいふわふわした雲だ。ハヤンの ことを思い出した。ハヤンの赤ちゃんのことも思い出した。ひとりでに、

6. えりなの青い空

すずはら だから、鈴原さんはイジワルじゃなく、優しい人だと思う。でも、ネ コは好きだろ、つか ハヤンの赤ちゃん、見せてあげたいな。 また、ふっと田 5 った。 鈴原さんに、六匹の赤ちゃんネコを見せてあげたいな。ハヤンにもあ わせてあげたいな。 ねいき 鈴原さんの寝息を聞きながら、えりなは、ずっと考えていた。 キンコーンカンコ 1 ン ) キンコ 1 ンカンコーン ) チャイムがなった。 〈あと五分で、五時間目の授業が始まります。運動場で遊んでいるみな さん、教室に入りましよう〉 放送がながれる びき やさ

7. えりなの青い空

「おはよう、えりちゃん」 「おはよう ) 」ざいます」 池内さんは、黄色いつるバラのむこうでにこっと笑った。花バサミを おいて、ないしょの話をするときみたいに、ロに手をもっていった。 「えりちゃん、ハヤンが昨夜、赤ちゃんをうんだのよ」 「ええっ′ ほんとに」 びき 「ほんとのほんと。六匹もうんだの」 「六匹 ? うわっ、すごい。六つ子なんだ」 「そ、っそう、六つ子」 「ハヤンみたいに、みんな真っ白 ? 」 「いえいえ、白い子も白黒も真っ黒もシマもいるの。お父さんはどんな ネコだったんでしようね。まさか、六匹もうまれるなんて思わなかった から、こまってるの」 びかびかの空 15

8. えりなの青い空

かみがた つも髪型のけんきゅうとかしているのに、リンリンが死んでから一週間 以上、真帆ちゃんの髪の毛はばさばさで目は真っ赤にはれていた。真帆 ちゃんまで死んじゃうような気がして、えりなは心がちくちく痛んだ。 動物はたいてい、先に死ぬ。それは、すごく悲しいし苦しいことだと思 う。病気にもなるし、ちゃんとせわをしてやるのはたいへんかもしれない。 でも、やつばりうれしい たいへんなことを考えるより、うれしい気持ちをたいせつにしたい。 えりなは、足をそろえて、部屋中をびよんびよんとびはねて回った。 池内さんもよろこんでくれた。 えりなは真っ白の子ネコをもらおうと思っている。ハヤンにそっくり の子だ。ママに言われたからじゃなく、白くてふわふわした雲のような 子ネコが、ずっとほしかったのだ。 今日も帰ったらハヤンの赤ちゃんを見にいこう 鈴原さんのさようなら 59

9. えりなの青い空

ちばな 「もう、乳離れするからね。そしたら、もらってやってね」 池内さんが、ハヤンの頭をなでた。えりなはうれしくて、大きな声で、 「はい」 と返事した。 「トイレのトレ 1 ニングとかしてね」 「トイレ ? 」 「決められた場所で、おしつこやウンチをするように教えるの。最初は、 ちょっと失敗するかもしれないけど」 「平気。ちゃんと教える。何度でも教えるから」 池内さんがほほえむ。白い子ネコをだきあげ、えりなにわたしてくれ 「ど、つ ? 」 「かわいい ふわふわしてる。いいにおいがする」 ほんとうのこと 79

10. えりなの青い空

の方が柔らかく見える。でも、どちらも気持ちが良い。地面の暖かさが せなか 背中にったわってくる。風が足の指をくすぐる。雲がゆっくり動いてい すすはら 地面からばこっと鈴原さんの声か聞こえた。 「あたしね」 「うんー 「コムン、ほしいな」 「ほんと、もらってくれる ? 」 「うん。けど、ハヤンは悲しむかな。赤ちゃんと離れ離れになって」 ど、つか」な・ : 。悲しいかな。泣くかな 「えっと、あのね、赤ちゃんじゃなくてね、大きくなったら、そんなに 悲しいことないんじゃないかな」 「そうかな」 しんこきゅ、つ 鈴原さんが息をはいた。深呼吸したみたいだった。それつきりだまり 0 やわ 0 は学は硺 あたた 100