静か - みる会図書館


検索対象: えりなの青い空
22件見つかりました。

1. えりなの青い空

おこ すずはら 鈴原さんの声は静かで、怒った声じゃなかった。 せなか 「えっと、あのね、鈴原さんがねころがるの、背中からプールにとびこ むみたいなかっこうだったから、おかしかった」 「とびこむみたいに : ・ 鈴原さんは、ロの中でばそっとつぶやいて、顔を空にむけた。えりな も上をむいた。風がふいたけど、二人でねころんでいるので、新聞紙は あまり動かない。 葉っぱがゆれて、しずくがほおの上に落ちてくる。 「これ、ブナだね」 鈴原さんの声が聞こえる 「ブナ ? 」 「ブナの木だよ。双川さん、知らなかったの ? 」 「知らなかった」

2. えりなの青い空

石倉くんのくちびるが、ますますとんがる 「えっと : : 。だから、その、学校でねころがるなんておかしいからです。 えっと : 。うん、変な人みたいだから、やめた方が良いと思います」 たお すもと 男子の間から笑い声がおこる。田尾くんや洲本くんが、机をたたいて、 「ヘンナヒト、ヘンナヒト、ヘーンナヒトオオオ」 すずはら と、それこそ変なふしまでつけてさわぎだした。でも、鈴原さんが、 「静かにしてください」 と、注意するとすぐに静かになった。鈴原さんの声は、大きくないけ れどびしっとしていて、よくとおり、言うことを聞かなければいけない ような気になるのだ。 「このことについて、ほかに意見はありませんか 真帆ちゃんの手があがる 指名されて、真帆ちゃんは立ち上がり、石倉くんをちょっと、にらんだ。 つく、え 新聞紙のおしゃべり

3. えりなの青い空

すすはら 「鈴原さん、五時間目が始まるよ」 す、つす、つす、つ 声をかけたけど、鈴原さんは起きない 「鈴原さん、鈴原さん」 す、つす、つす、つ。 ねいき 目をとじて、寝息をたてている。 0 す、つす、つすう 「鈴原さん : : : 」 えりなは無理に起こすのか、かわいそうになった。 鈴原さんは、とてもっかれていて、ゆっくりねむりたいのかもしれない。 すうす、つすう す、つす、つす、つ いつのまにか、校舎の中も運動場もしんと静かになったみたいだ。 0 0 0 鈴原さんのさようなら 63

4. えりなの青い空

木の下で、えりなはそう思った。 す、つす、つす、つ。 ねいき すずはら 鈴原さんの寝息。 鈴原さん、ネコ、好きかな。 考えてみる。よく、わからなかった。鈴原さんは、イジワルじゃない と思、つ。真帆ちゃんが、 丿ンリンを亡くして泣いてたとき、はれた目や かみ ばさばさの髪の毛を見て、石倉くんが「うわっ、プスーとさけんだ。 あさみ 麻美ちゃんやえりなより先に、鈴原さんが、石倉くんをとめた。 「泣いてる人に、そんな言い方ないでしよ。あやまりなさいよ」 おこ 鈴原さんは、麻美ちゃんみたいに怒ったようでも、えりなみたいにば そばそした口調でもなく、はっきりと静かにそう言った。 鈴原さんはイジワルじゃない。イジワルな人は、泣いている人の悲し さやつらさなんて、わからないものだ。

5. えりなの青い空

亠よ、 おく の奥まで入ってきた。 むね 胸の奥に入って、そこから体中に広がる気がする 風がないので、新聞紙は静かだ。おしゃべりをしない。葉っぱがきれ いだ光がまぶしい。雨のふるまえより、日ざしが強くなったと感じる。 空にむかって手をのばしてみた。手のひらに、光の熱がったわってくる そのとき、びつくりするよ、つなことが、おこった。 てんとう虫が、のばした手の甲に止まったのだ。オレンジに黒い星の あるナナホシだ。ナナホシは、えりなの手の上で、もぞもぞ動いて指を のばり始めた。くすぐったいのをがまんして、じっとしていると、中指 しゅんかん のてつべんでばっとハネを広げた。広げた瞬間、ハネは光をあびて、 かがや キラッと輝いた ナナホシがとびたつ。えりなの指から高くとんで行く。ねころんだま ハイハイと手をふってみた。

6. えりなの青い空

「いま、かんけいないだろう。そんなこと」 まど 「だって、この前、三年生の教室の窓にボ 1 ルがあたったじゃない。割 れてたらたいへんでしよ」 すもと 洲本くんが手をあげる。 「だいたい、中庭でボール禁止が変だと思います。運動場は六年生がっ かってるし、おれたち、遊ぶとこないです。中庭のボ 1 ル遊びを許可し てほしいです そうだ、そうだと男子の声か重なる。拍手までおこった。 すすはら みんなが口々にいろんなことを言い出した。鈴原さんは、「静かに」 と言わないで、みんなのようすをじっと見ていた。 たんにん チャイムがなる。鈴原さんは、大きく息をはきだし、担任の平井先生 にむかって、まとめても良いですかと聞いた。先生がうなずく。 「それでは、時間がきたのでまとめます。中庭でのポール遊びについて は′、しゅ

7. えりなの青い空

「気分が悪いので、早退させてください」 「気分が悪い ? 保健室に行ったのか ? 」 いえ。でも、すごく悪いんです。帰ります」 すすはら つくえ 鈴原さんは、さっさと机のなかのものをデイバックにつめた。 「じゃあ、さようなら」 ペこっと頭をさげて、教室を出て行く。出て行くとき、ドアの近くに 立っていたえりなにぶつかりそうになった。 目 A 」目か亠の、つ 「さよ、つなら」 鈴原さんが、先に言った。 「あっ、さようなら」 デイバックを肩にかけて、鈴原さんは大またで教室から出て行った。 そして、それつきり学校にこなくなった。

8. えりなの青い空

五時間目のチャイムがなった。 すずはら 葉っぱがゆれた。水のつぶが、鈴原さんの鼻の上にほたんと落ちた。 「うつ、、つ 1 ん」 鈴原さんか、うす目を開ける。 「あっ、もう五時間目だよ」 えりなは、鈴原さんのうでを軽くたたこうとして、まちがえて、お腹 をぎゅっと押してしまった。 「うえつ」 鈴原さんが苦しそうに顔をゆがめた。 「あっ、ごめん」 「双川さん、起こすならもうちょっと、優しく起こしてよ」 「、つん : 。ごめん」 鈴原さんは、ゆっくりと起きあがり、ふわっと大きなあくびをした。 ふたかわ やさ なか

9. えりなの青い空

むね 池内さんに、行ってきますと手をふってかけだす。胸がわくわくして いるときは、足もさっさと動く。そのまま、学校まで走った。一〇分く らいずっと走った。 しんこきゅ、つ 運動場の真ん中で立ちどまり、深呼吸する。大きく息をすって、ゆっ くりはきだす。それから、空を見上げてみる。やつばり青い。びかびか している。ほんとに気持ちが良い。 五年二組の教室に入ると、真帆ちゃんが「おはよう」と、えりなの背 中をたたいた。 なか 新聞紙のおしゃべり せ

10. えりなの青い空

池内さんはちっともこまっているようには見えなかった。いつもより、 わか ほおが赤くてうれしそうで、若く見えた。 ハヤンは、池内さんの家の飼いネコで、真っ白な毛と青い目とふさふ さしたしつほをしている。ときどき、えりなの家にも遊びに来る。かわ むね いい。ハヤンの子なら、ハヤンと同じくらいかわいいだろう。胸がくす ぐったくなる。わくっとする 「あたし、見たい」 「いいわよ。でも、もう少しあと : そうねえ、ハヤンが落ち着いて からね。いまは、すごく用心してるから」 えりなはうなずいた。ハヤンの目と空の色が重なる。胸がまた、わく っとした。