△ビールや / ヾンをつくるのにつかう母を 拡夫した写真 ( X8277 ) 。母は新しい細胞の「芽を出して」数をふやす。 この写真にもそ んな芽がいくつか見える。 は、ビールづくりでは大麦のしぼ しぼり汁をつかいます。 バンづくりにつかう酵母は、 さんかたんそ 酸化炭素はたくさん出すけれど、 アルコールはあまり出しません。 こうぽ ビールづくりにつかう酵母はその 反対です。 さいほう 空気がなくても生きられる さんそ ほとんどの生き物は、食べ物からエネルギーをえるのに酸素の ひつよう たすけが必要だ。呼吸をしないと生きていけないのだ。しかし酵 ひせいふつ さんそ なんしゆるい やそのほか何種類かの微生物は、酸素をつかわないで食べ物か はっこう らエネルギーをとりいれることができる。このことを発酵という。 にさんかたんそ はっこう アルコールやニ酸化炭素は、発酵のときに出るごみのようなもの こうぽ 五ロ こうほ たんさいまうしんきん はっこう いっしゅ しゆるい 球形またはだ円形の単細胞の真菌の一種。多くの種類があり、さまざまな食品の発酵に用いられている。 酵母 にさんかたんそ さんそたんそ ニ酸化炭素 空気のなかに少しふくまれている気体。酸素と炭素からなり、水にもとけている。 ごうせし、こうごうせし、 とうるいいっしゅ にさんかたんそ デンプン : 植物が太陽光のエネルギーをつかってニ酸化炭素と水から合成 ( 光合成 ) した糖類の一種。 さんそひつよう げんそ 酸素 . 空気のなかや水のなかにふくまれている元素のひとつ。生き物の大部分は、生きるために酸素が必要。 さんそ
薇生を利用した食べ物 牛乳のびんをあけたとき、牛乳がくさっているのではないかとうたがったこと きゅうにゆう はありませんか ? 牛乳がくさるのは、細菌がふえて牛乳をすつばくしてしまう さいきん からです。しかし、さまざまな食べ物をつくるときに、細菌はやくにも立ってく れるのです。ヨーグルト、チーズ、みそ、しようゆ、なっとう、つけものなど、 さいきん 細菌を利用した食べ物はわたしたちの身のまわりにたくさんあります。 の酸のせいです。牛乳がくさるときもおなじことが ヨーグルトをつくる細菌 起こっているのですが、そのときにはほかのたくさ きゅうにゆう しゆるい さいきん ぶっしつ ヨーグルトをつくるには、牛乳をとくべつな種類んの細菌がいろいろな物質をつくり、そのなかには さいきんはっこう さいきんはっこう げんいん きゅうにゆう の細菌で発酵させます。その細菌が発酵のあいだにおなかをこわす原因となったり、牛乳をいやな味に にゆうさん つくるのか乳酸です。ヨーグルトのすつばい味はこしてしまうものもあるのです。 きん マブルガリア菌 ( 左上にある、オレンジ色の棒のような形の部分 ) とストレプトコッカス・サーモフィルス ( オレンジ色で丸いものが つながっている部分 ) は、ヨーグルトやチーズをつくるのにつかわれる。 ぎゅうにゆう きゅうにゆう きゅうにゆう さいきん りよう ぎゅうにゆう さん さいきん
バンをつくる囀母 バンをつくったことがあれば、バンをふくらませるのに酵母をつかうこと こうほ しんきん は知っているでしよう。酵母はとても小さな生き物で、真菌のなかまです。 かんそう バンをつくるときは、たいてい乾燥させた酵母をつかいます。酵母は倉庫ダ きゅうみん かんそう かんそう ニとおなじように休眠するので、乾燥させても生きていられるのです。乾燥 こうぽ ます。ニ酸化炭素のガスのあわは生地にと にさんかたんそ ンという糖分を食べて、ニ酸化炭素を出しはじめ にさんかたんそ とうぶん をくわえると、酵母は小麦粉にふくまれるデンプ こむぎこ こうぽ ってりとした生地をつくります。その生地に酵母 きじこうぽ バンづくりではふつう、小麦粉と水をまぜてぼ こむきこ 分解するときにニ酸化炭素のガスを出します。 にさんかたんそ ぶんかい 糖分を分解してエネルギーにするのです。糖分を とうぶん とうぶんぶんかい 糖分をあたえると、成長して数がふえていきます。 せいちょう とうぶん さな生き物です。酵母をあたたかい場所において こうぽ 酵母はたったひとつの細胞でできた、とても小 さいぼう こうぽ バンをつくる酵母 させた酵母にお湯と糖分をくわえると、また活動しはじめます。 とうぶん えきたい はっこう えきたい こうぽ こうぽ あっ ( 右ページ下のコラムを参照 ) します。この液体 さんしよう 酵母は糖分の入った液体をくわえると、発酵 こうぼとうぶん す。 ビールやワインをつくるのにもつかわれるので なくアルコールもつくります。そのため酵母は、 こうほ 糖分を分解するとき、酵母はニ酸化炭素だけで にさんかたんそ とうぶんぶんかい ビールをつくる酵母 ます。 が上がり、生地がとても熱くなると死んでしまい きじ ニ酸化炭素を出しますが、やがてオーブンの温度 にさんかたんそ バンのできるまで じこめられるので、生地がふわっとかるい 感じになってきます。それをオーブンに こうぼ 入れると、酵母はしばらくはまだふえて な母がニ酸イヒ炭素をつくりだすからだ。 パンがふくらむのは、パン生地のなかの小さ 酵母 こうほ ぬるま湯 さとう 砂糖 ・こねる はっこう ・発酵 こうぽ にさんか ・酵母から出る二酸化 たんそ 炭素のカスで生地が ふくらむ。発酵は 2 回くりかえす はっこう ・形をととのえて オーブンで焼い てできあがり
かんしゅうしゃ 監修者のことば 台所にすんでいる ミクロの生き物たち わたしは大学、大学院そして研究所と長いあいた しよくちゅうどくげんいん びせいぶつ 食中毒の原因となる微生物の研究をしてきました。 びせいぶったいしよう いつも微生物を対象とした研究をしていると、身の びせいぶつ まわりにいろいろな微生物がたくさんいるというこ えいせい とうぜん とが当然のようになってきます。しかし、食品衛生 いつばん こうえんかい の講演会や大学の講義などで一般の人や学生さんた びせいぶつ ちと話をしていると、微生物がわたしたちの身のま そんざい にんしき わりにふつうに存在することを、認識していないの ではないかと思うことがしばしばです。 にゆうさんきん はっこう ヨーグルトやみそなどの発酵食品に乳酸菌がいる きん ことは知っていても、じっさいにその菌の形がどう なっているかを見たことのある人は少ないと思いま いがい はっこう す。また、お店で売っている発酵食品以外の食品に にんしき も細菌がいることもあまり認識されていないようで さいきん す。大手の食品メーカーのつくった食品には、細菌 びせいぶつ などの微生物がいるはずがないとかんちがいしてい る人が多いのにもおどろきます。そしてわたしたち がロにする食品を調理する場所である台所に、この びせいぶつ ような多くの微生物がすんでいることもおそらく気 がついていないのではないかと思います。 こんちゅう わたしは子どものころ、昆虫が大すきでカプトム シやチョウをおいかけていました。また、植物や動 ずかん 物などたくさんの生き物にかんする図鑑を読むのも ずかん 大すきでした。キノコの図鑑を読んだこともおぼえ ています。しかし、この本に書かれているような目 に見えない生き物がいることは当時まったく知りま さいきん ヤ、 国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部第一室長 五十君靜信 えいごばん せんでした。この本のもととなった英語版を見たと さいきん き、細菌の研究者であるわたし自身が、たくさんの えが びせいぶつ 微生物がいきいきと描かれている写真や絵を見て感 動しました。みなさんにもこの本を読んで、身近な そんざい 台所にこのような生き物が存在することにおどろ そんざい き、このような生き物がふつうに存在することに気 がついていただき、さらにそれぞれの生き物にたい きようみ して興味をもっていただけたらと思います。 びせいぶつ しゆるい 微生物はどこにでもいます。いろいろな種類がい にゆうさんきん てそれぞれ生きています。乳酸菌のようにわれわれ びせいぶつ しよくちゅうどくげんいん にやく立つ微生物もいます。また、食中毒の原因に さいきん なる細菌もいます。腐敗といって食品やあらゆるも びせいぶつ のがくさるときにはたらく微生物もいます。テレビ はくりよく すがた かいじゅう の怪獣よりもはるかに迫力のある姿をした " ダニ のなかまもいます。でもそれらはふだんわれわれの にくがん 肉眼ではっきりと見ることはできません。見えない そんざいむとんちゃく とわれわれはその存在に無頓着です。ですから、ま びせいぶつ ずこの本を手にとってじっさいの微生物を体感して ください。 ないよう おとな この本は大人の方も楽しめる内容だと思います。 おとな 子どものみなさんだけでなく、大人の方もこれまで に見たことのない写真や絵を体感してみてくださ い。この本を見て子どものみなさんと語り合い、見 びせいぶつきようみ えないけれどもつねに身近にいる微生物に興味をも ねが っていただくことを願っています。 ふはい 4
びせいぶつりよう 微生物を利用した食べ物の いろいろ なっとう [ 生 ] みそ しようゆ △チースによっては、細菌だけでなくカ ビもくわえる。ブルーチーズでは、カビ もよう が青いしま模様をつくる。 つけもの さいきん さいきん チーズをつくる細菌 チーズをつくるときは、ヨーグ しゆるいさいきん ルトづくりとおなじ種類の細菌を つかいます。ヨーグルトとおなじ きゅうにゆう さいきんさん ように細菌は酸をつくり、牛乳を かためてすっぱい味にします。さ らにチーズづくりでは、レンネッ こうそぎゅうにゆう トという酵素も牛乳にくわえま きゅうにゆう す。レンネットは牛乳を白いかた えきたい まり ( カード ) と水のような液体 ( ホ工ー ) に分けるはたらきをし ます。 っきの作業では、ホ工ーをとり のぞいてから、カードを切り分け て塩をまぜます。塩をまぜると、 はっこう 発酵がゆっくりになります。その おかげでチーズはあまりすつばく なりません。 カードはしぼり器にかけて水け をさらにとり、それから数週間か じゅく ら数か月かけて熟成させます。熟 さい せい 成のあいだにもチーズのなかの細 どくとく きん 菌はゆっくりふえて、チーズ独特 のかおりをつけていきます。 ヨーグルト 生乳 20 % ピル ヨーグルト ビール かつおぶし じゅくせい じくせい じのくせい △チーズはすずしい場所で熟成される。熟成したチーズにも生きた細菌がいるが、チー さん ズを食べたとき胃のなかの酸で死んでしまう。 さいきん 五ロ きんにく に 0 うさんさんみ むしよくえきたい さんいっしゅにゆうさんきんはっこう 乳酸酸味があり無色の液体。酸の一種で乳酸菌の発酵によってできる。また動物の体内でもつくられ、筋肉のなかにたまるとつかれ げんいん の原因になる。 しげき すさんせい ふしよくせいぶっしつ すっぱくて刺激の強い、腐食性の物質。レモンや酢は酸生 ぶっしつ さし当まう たんじゅんえしはうぶんぶんかい 酵素・生きた細胞が、食べ物を単純な栄養分に分解するときなどにつかう化学物質。 さん こうそ 13
0 あ アオカビ アメーバ アリ 5 アレルギー きん ウ工ルシュ菌 21 工ンテロバクター・クロアカ 工ンべロープ 27 おうしよく きゅうきん 黄色ブドウ球菌 20, 21 かつおぶし 仮足 25 かそく 化学物質 7 , 23 ぶっしつ 0 か 0157 21 1 3 カード カビ かふん 花粉 がほう 芽胞 かんづめ 缶詰 カンピロバクター きせい 寄生 きそく 偽足 きゅうにゆう 牛乳 きんし 菌糸 げんせい 原生動物 けんびきよう 顕微鏡 こうこうせい 光合成 こうせいぶっしつ 抗生物質 細菌 さいきん 0 さ コロニ 酵母 こうぽ 酵素 こうそ さくいん 1 2 , 1 3 , 1 6 , 1 9 25 , 26 14 , 1 5 20, 21 サルモネラ 20, 21 さん 酸 1 2 , 1 3 , 1 9 14 , 1 5 25 7 バイオフィルム 24 , 25 はいすいかん 排水管 24 , 25 , 26 0 は 23 さんそ 酸素 しお 塩づけ じゅくせい 熟成 しようか 昇華 しようかかん 消化管 しようゆ しよくちゅうどく 食中毒 しんきん 1 1 1 9 9 , 1 3 1 8 , 1 9 20, 21 , 23 20, 21 1 2 , 1 3 , 1 9 ハエ 5 , 9 バシラス・セレウス 21 真菌 5 , 1 0, 14 , 1 5 しんくう すいじようき 1 8 , 1 9 バター はっこう 発酵 バン ビール びせいぶつ 微生物 ひもの ひょうはくざい : 西白剤 づめ びん詰 1 0, 1 1 , 1 2 , 1 3 5 , 1 0, 14 5 , 1 0, 1 1 , 1 3 , 14 5 , 1 2 , 23 , 24 , 25 , 25 1 8 27 水蒸気 7 す 酢づけ 1 9 ストレプトコッカス・サーモフィ ルス 1 2 ぜん息 7 せんもう 繊毛 25 , 26 , 27 フリーズドライ きん ブルガリア菌 1 8 1 2 1 3 1 9 21 , 22 , 23 7 14 , 1 5 , 1 6 せんもうちゅう 繊毛虫 そうこ 倉庫ダニ だいちょうきん 大腸菌 だっぴ 脱皮 7 るい ちょうえん チーズダニ チーズ ダニ類 25 8 , 9 20 9 5 , 9 , 1 2 , 1 3 , 1 9 7 , 8 ぶんかい 分解 べんもう 鞭毛 ほうし 胞子 ホ工ー 14 , 1 5 20, 21 14 , 1 5 1 5 25 14 , 1 5 5 1 5 1 3 , 1 6 , 1 7 1 0, 1 1 , 14 27 1 9 , 20, 22 , 23 , 25 , 5 , 1 2 , 1 3 , 1 6 , 1 7 , 1 8 , 26 腸炎ビブリオ 21 ちょうかんしゆっけっせいだいちょうきん 腸管出血性大腸菌 0 な 毒素 20, 21 どくそ デンプン つけもの チリダニ 21 ほこり 6 , 7 ほしがき 1 8 きん ボツリヌス菌 21 0 ま・や・ら・わ みそ 1 2 , 1 3 , 1 9 幼虫 8 , 9 ヨーグルト 5 , 1 2 , 1 3 れいとう 冷凍食品 1 8 レトルト食品 1 9 レンネット 13 ようちゅう 6 , 7 1 2 , 1 3 , 1 9 1 0, 1 1 1 2 , 1 3 ワイン ワムシ 5 , 1 0, 1 1 26 , 27 なっとう サイクロバクター さいまう 細胞 5 さっきんざい 殺菌剤 25 30 1 7 生ごみ 22 にさんかたんそ ニ酸化炭素 1 0, 1 1 にゆうさん 乳酸 1 2 , 1 3 ノロウイルス 21
すが、これは大切な仕事でもある しせんかい じゅんかんてつだ のです。自然界の循環を手伝って いるのです。死んだ動物や植物を ぶんかい えいようぶん 分解して、その栄養分を土などに 返すという仕事です。 食べようと思っているくだもの ぶんかい やバンを、カビに分解されるのは こまります。でもカビは、木など のかたいものや、動物のふんなど ぶんかい のきたないものも分解してくれる もくざいとりよう のです。カビは、木材、塗料、か べ紙、たたみなど身のまわりにあ るほとんどのものを消化して、や えいようぶんか くに立つ栄養分に変えることがで きるのです。 ほうし かくだい アオカビの、胞子をつくる部分の拡大 写真 ( X2855 ) 。菌糸の先の丸い形をした ほうし ものが胞子だ。 きんし しんきん 真菌とはどんなもの ? しんきん 真菌は植物でも動物でもない。植物のように光合成を行って自分で自分の食べ物をつくらないし、 動物のようになにかを「食べる」こともしない。そのかわり、食べ物に入りこんて、そこに生えて しんきん きせい 栄養分をすいとるのだ。真菌は死んだりくさったりした動物や植物に生えるか、寄生するものがほ とんどだ。 しんきん 真菌はふつう、菌糸とよはれる目には見えない細い糸として成長する。真菌の体は、その糸がか らみあったものだ。胞子とよはれる「たね」を何百万個もつくって、数をふやす。 こうごうせい えいようふん しんきん きんし ほうし せいちょう せ第 五ロ ほうし しんきん とても小さな真菌の「たね」のこと。 胞子 いじようげんそけっこう ぶんかい ぶっしつ ぶっしつ 分解 : ふたつ以上の元素が結合してできた物質 ( 化合物 ) が、よりかんたんな物質に分かれること。 こうごうせし、 にさんかたんそ ごうせい 光合成 . 植物が太陽光のエネ丿レギーをつかって、ニ酸化炭素と水からデンプンを合成すること。 きせい えしはう 寄生 ある生き物がほかの生き物の体のなかや表面にすみつき、そこから栄養をとって生活すること。 こうせいぶっしっさいきんころ せいちょう 抗生物質 細菌を殺したり、成長をとめたりする薬。 15