見つけ - みる会図書館


検索対象: ツバメ日和
22件見つかりました。

1. ツバメ日和

きに見つける」 むり あか 「赤ンばは無理やデ」 「モノのたとえ、やがナ」 「たださがしまわってるだけではアカンのとちがうか。なんか、ええ方法ないやろか」 だいじ じみちそうさ ほ、つほ、つ 「そんなムシのええ方法、あるかいナ。地道な捜査、ちゅうのンが大事なんや。とにかく あしつこ 足を使て、さがしまわる。これしかおまへん」 ある しおや がっこうお というわけで、学校が終わるとばくらはミーちゃんさがしのため、塩屋のまちを歩きっ つけた。 ろじ しようこうえん とお しようてんがい こくどうにごうせん 国道二号線をはさんで、商店街のある北がわ。ネコが通りそうな路地うらや、小公園 さかみち ちゅうしやじようがっこう しおやたにがわ のうえこみのすきま。塩屋谷川ぞい、コンビニエンスストアの駐車場、学校よこの坂道、 ぐらもの だいいちゃまの が第一山野センタ 1 のうす暗い物かげ。 ぎよこ、つ うみ いちにちょうめ 海がわの、一、二丁目にも足をのばした。漁港まわりもくまなくさがした。波止には野 こざかな かずおおす 良ネコが数多く住みついている。釣り人が小魚をくれるため居ついているのだ。 みつかよっか 三日、四日とミーちゃんさかしをした。けれどもミーちゃんは見つからなかった。ネコ は何十匹もいた。飼いネコとわかるやつは毛並みがよく、近づいても逃げなかった。三毛 なんじっぴき あし っぴと きた ちか ほ、フほ、つ

2. ツバメ日和

うわぎ かえるのかたつほが上着のボタンをなくす。べつのかえるもいっしょになってボタンを さかす。見つけるけれど、ちがう。また見つけてちがうし 。ゝつばいボタンは落ちているの ひと いえかえ に、みんなちがう。かえるのボタンは一つもない。はらがたって家に帰ったら、ゆかにな おも くしたボタンが落ちていた。ああ、ばくはなんてことしたんだろうとかえるは思って、二 ぜんぶうわぎ ひきで見つけたボタンを全部上着にぬいつける。そしてそれをべつのかえるにプレゼント おも ゅめきち する、そんな話だったと思う。おばえてるか、夢吉。 こころ いまおも ゅめきちいっしようたいせつ 今思えば、ばくが夢吉を一生大切にしようと心にきめたときの気もちと、とても近い とも ゅめきち ゅめきち おも 気がする。ああ、夢吉。ばくは、夢吉がばくの友だちであることをとてもうれしく思って いるぞ。 ゅめきち しん ゅめきちしおやかえ 夢吉。 いっかかならず夢吉が塩屋に帰ってくることを、ばくは信じて待ってるぞ。 あわじしま かおあ てがみふうとう おおさかなんたんすまうらさんじようゆうえん 顔を上げ、手紙を封筒にもどし、淡路島から大阪南端、須磨浦山上遊園へとゆっくり いちわ 見わたしていたら、一 羽、二羽、ツバメが空気を切りさくようにツィッと飛んでいった。 ゅめきち 夢吉。きっともどっておいでや。ツバメはじぶんの生まれたところをわすれへんで。 ことし かえ さきすっく おとうちゃん。いつでも帰ってきてや。ツバメ、また今年ものき先に巣を作るからな。 びよりそらうみ あお 本日はツバメ日和。空も海もツバメの背も、青い ほんじっ はなし ちか 102

3. ツバメ日和

第五章・夜逃げ 第五章ー夜逃げ みつかさむひ よっか 三日寒い日がつづいては四日あたたかい日がおとずれる、そんな、三月半ばのある夜の ことだった。 タごはんをすませて、じぶんの部屋のべッドになにをするともなくねころんでいたら、 した こえ 階下から声がした。 あきら 「あっ、明くん」 こえ ゅめきち という声のぬしは、どうやら夢吉のようだった。 した な かお ゅめきち た 階下におりていくと、泣きそうな顔をした夢吉がつっ立っていた。 ゅめきち じかん 「どないしたンや、夢吉。こんな時間に」 「え、えらいこっちゃ」 み 「なに、えらいこっちゃ。ミーちゃんでも見つけたンかいナ」 はんのう ゅめきちくち じむす ばくのじようだんにも反応せす、夢吉はロをへの字に結び、それきり、おしだまってし ゅう へや ひ さんがつなか しき 5 よる

4. ツバメ日和

おも にどれノ、らいカカると田 5 一つフ・」 そうぞう 「うーん。想像もっかへんワ」 さんじつぶんじゅうまんえん 「そやろ。きっとナ、三十分十万円とかするンやデ」 「三十分十万円 ! 」 こえ おも 思わす声がうらがえってしまった。 まえ 「前、テレビで見たことあるンや」 さんじつぶんじゅうまんえん 「三十分、十万円、かア」 かぬし おおがねも 「ミーちゃんの飼い主はナ、大金持ちなんやデ。大きなおやしきでひとりぐらししてるお ばあさんなんや」 「そ、そうかナ」 「そうにきまってる。三十分十万円なんやから。ばくらかミ 1 ちゃん見つけてみ」 「ま、ばノ、、り、て」 おも 「おばあさん、どうする思う ? 」 「ど一つするって・ : ・ : 」 あきら 「ええか、明。おばあさん、大金持ちやけど、ひとりぐらしなんやデ」 さんじつぶんじゅうまんえん み さんじつぶんじゅうまんえん おおがねも おお み 0

5. ツバメ日和

第二章・ミーちゃんさがし ゅめきちそうぞう 「夢吉の想像ではナ」 はなあいて 「たったひとり、いや、たった一匹、じぶんの話し相手になってくれるのがネコのミ 1 ち ゃんなんや。ああ、ミーちゃん、おなかがすいたのね。よしよし、マグロのおさしみあげ ましようね。ああ、よしよし」 「マグロのおさしみはないやろ」 かねも 「いや、金持ちのすることはわからんデ。で、おばあさん、どうする ? 」 ゅめきちそうぞう おおがねも 「もし、夢吉の想像どおりやとして、ひとりぐらしで大金持ちのおばあさん、きっと大 よろこ 喜びするナ」 「いンや」 ゅめきち したう 夢吉は、なんにもわかってへんやつやナ、ちちちと舌打ちをして、首をふった。 よろこ 「喜ぶだけとちがう。お礼や、お礼。ボランティアやあらへんデ」 「お礼」 さんじつぶんじゅうまんえん 「なんせ、三十分十万円のセスナ機借りてさがしてるンやデ。ネコ一匹のために。お礼 もたんとはずむにきまってる」 「そうかなア。けど、その、ひとりぐらしで大金持ちのおばあさんのミ 1 ちゃんを見つけ れい いっぴき おおがねも いっぴき み おお

6. ツバメ日和

第八章・夢吉からの手紙 ゅめきちとしよかんみ かえるの話、か。そういえば、その話がのっている本を、夢吉が図書館で見つけたンや こえ としよかんおも ったな。うれしさのあまり、ばくらは図書館で思わず声をあげてしもうたンや。国語の勉 ほんと、つ はなしか きよ、つ 強じゃなくって、本物の本があったということ、そのお話を書いたひとが本当にいたとい 、つこと はなしき ゅめきち 夢吉。ばくは、手紙の話はもちろんすきだったけれど、ボタンの話も気にいっていたな。 がみつ かな いちど てがみ かえるの一びきは一度も手紙をもらったことがない。そのことを悲しんでいたらべっ て てがみか の一びきか手紙を書くんやったな。そしてそれをかたつむりにわたして、二ひきで手 ま 紙か着くのをじっと待ちつづける。 てがみま いけん じぶんか クラスのおおかたの意見は、自分の書いた手紙を待ちつづけるなんてじれったい話や、 じだい おも というもんやったと思う。ケータイ・メールの時代やもんな。 き じゅぎよう いけん ばくらは授業では意見をいわんかったけど、そのあと、ふたりでかえるになった気 もちで、なんかしみじみほくほくしたよなあ。 おも あきらあきら 明。明がばくの友だちであることを、ばくはうれしく思っているぞ。 0 はなし ほんものほん てがみはなし とも はなし ほん ゅめきち 夢吉より こく′」 はなし べん 101

7. ツバメ日和

ななひき ネコも七匹ばかり見つけたが、左目のつぶれたミーちゃんじゃなかった。 のら め にんげんみ いっぽちか 野良ネコは人間を見る目つきが飼いネコとはちがった。ばくらが一歩近よると、こしを いつぼちか ひいて逃げるしせいになったし、なにより、一歩も近づくなという目をしていた。ぶちに なががいこくしゅ しおや きじにとら、毛の長い外国種まで、塩屋にはびつくりするほどたくさんのネコかいた いっかめ どうゆめきちょ 五日目、つるかめ堂に夢吉を呼びに行ったら、 あきら き 「明。ばく、えらいことに気イついたンや」 ゅめきちまがお み 夢吉が真顔でばくを見た。 「なに、えらいこっちゃ。まださがしてへんとこでもあったンかいナ」 「亠つが一つ」 ゅめきちはな 夢吉は鼻から息をはいた。 よっかかん た き うみしろうまちょっこう 「四日間、ケーキを食べてへんことに気イついたンや。明、いまから海の白馬へ直行や」 おも どんなえらいことかと思ったら、そういうことだった。いわれてみれは、ケーキもまん くち いっしょ じゅうもコロッケも、一つも口にしていなかった。ばくらは一所けんめいミーちゃんさが しをしていたのだ。 「で、ミーちゃんはどうする ? 」 み ひと ひだりめ あきら

8. ツバメ日和

おも かお 「きっと、カバにのみこまれるとでも思たンやろね工。あのときのおとうちゃんの顔、ほ かお ら、この顔ナ」 み しやしんゅび おかあちゃんは、ばくの見つめる写真を指さしてから、 「一番すきゃねン」 はずかしそうにつぶやき、目を閉じた。 いちばん

9. ツバメ日和

こえ ばくはおとうちゃんの声にさそわれるように手をのばした。 「イリマス」 ゅびさき つつけんどんにいって、つまようじを指先にはさんだ。 う た くろ 生まれてはじめて食べた〃わらびもち〃は、黒みつにきなこがまぶしてあって、ぶよぶ しよっかん あま くちなか よとへんな食感だった。そして、それはふるんと甘く、ロの中でとろけるようにおいし き き かった。はじめに聞こえたとおり、アライイ気モチイ、だった。 あきらう た かんそう 「どないや、明。生まれてはじめて食べた、わらびもちの感想は」 き おとうちゃんに聞かれて、ばくは「おいしい」ともいえす、 き 「ア—ラ、イイ—気モチイ」 とふしをつけておどけた。 あたま おとうちゃんはにまっとわらゝ しばくの頭をぐりぐりこすりつけた。 「ヒンヤリツメタイワラビモチ」 「アマクテオイシイワラビモチハイリマセンカ」 こえ き こ , っふく じかん ばくとおとうちゃんは声をそろえていった。なんだかとても幸福な時間だった気がして て 0 0 ノ

10. ツバメ日和

第五章・夜逃げ あきら 「明はおばえてへんのか ? 」 にゆ、フカくしき 「入学式のことや」 にゆ , っカくしき 「入学式 ? なんかあったつけ」 はな ろくねんせい しんいちねんせいひとり 「六年生がナ、新一年生一人ひとりにバラの花をつけてくれてたンや。みんな、順しゅん まえ ろくねんせい はな わたらい いちばんさいご に花をつけてもらってた。ばく、渡来で一番最後やろ。ばくのひとり前で、六年生があっ かお せんせいひと という顔になった。先生、一つ足りません」 「ふうん。そんなことがあったンや」 ばくの花だけがなかったンや。花をむねにか 「数を作りまちかえたンかなア。とにかく、 いちねんせい ざってもらわれへんということは、一年生のなかまいりができへん、そういうことやった。 なすんぜん ばくはもう泣く寸前やった」 まえ あきら 「そしたらナ、明がばくの前まですたすたっとやってきた」 「みれ、ほノ、、か 2 ・」 あきら はなと おんじん 「いのちの恩人のことまちがえたりするかいナ。明はナ、じぶんのむねの花取って、だま かずつく た じゅん