「平成 25 年 11 月 13 日付調査報告書」 ( 以下「平 成 25 年報告書」という ) の存在である ( 委員会 報告書 20 頁以下 ) 。第三者委員会としては , OFS 社のコーポレートガバナンスを評価・検証 するうえで , どうしても根拠とせざるをえない 資料であるがゆえに公表に踏み切ったものと思 われる。平成 25 年調査報告書とは , 平成 24 年 11 月 , OFS 社が東証 1 部への自立上場を目指 していたころに , 同社の不適切取引再発防止に 向けた取組みとして , とりまとめられたもので ある。その調査結果は , 平成 25 年 11 月 13 日の 取締役会で報告された。しかし , 平成 25 年調査 報告書の原案文書は , 一部の取締役だけが保管 しており , 同日の取締役会でも他の取締役・監 査役に対してわずか 30 分だけ閲覧に供され , た だちに回収されたのである。同報告書の内容 が , このたびの委員会報告書によって公表され たことにより , 「ステークホルダーの皆様に安 心してほしい」との OFS 社のリリースとは裏 腹に , OFS 社の株価は急落し , リリース開示 翌日はストップ安となった。 3 反社チェックの結果をめぐる会社と世間 との認識の差 委員会報告書のリリースと同時に , OFS 社 が過去に不適切取引によって A 氏らに 200 億円 以上の会社資金を流出させて , そのうち約 170 億円が未回収になっていることがマスコミ によって大きく報じられるところとなった。そ して OFS 社も世間の誤解を解くために , 未回 収分については平成 14 年 3 月期において会計 上の処理が済んでいることを開示した 4 OFS 社としては , 委員会報告書が「反社会 的勢力との存在は確認されなかった」と結論づ けたことから , 世間的には同社ガバナンスへの 評価が上がることを期待していたものと思われ る。しかしながら , 平成 25 年調査報告書の内容 が明るみになったことにより , 経営陣の期待と は裏腹に , 同社が反社会的勢力との関係をいま だ維持しているのではないか , との疑惑を世間 に抱かせることになった。 委員会報告書には , ( 企業不祥事発生時に設 置されたものではないため , 日弁連第三者委員 会ガイドラインに準拠したものとはいえない が ) 同ガイドラインの趣旨を尊重したうえで調 査にあたることが明記されている。つまり , の報告書は OFS 社のステークホルダーに対し て説明責任を尽くすことを目的として作成され ている。会社側からの諮問事項は , OFS 社 ( お よびその役員 ) と反社会的勢力との関わりの有 無を明らかにすることだが , 委員会は会社側か ら調査依頼を受けた事実だけでなく , その類似 事実の存否についても調査をすることがステー クホルダーへの説明責任を尽くすためには必要 である ( つまり委員会自身が調査範囲を広げた ものと考えられる ) 。また , 調査範囲を広げた 理由にも合理性がある。なぜならステークホル ダーが知りたい事項には , OFS 社が反社会的 勢力との関係を有しているかどうか , というこ とだけでなく , 反社会的勢力と「噂されてい る」人物や法人との関係の有無も含まれるから である。 一般的な認識として , 取引の相手方が反社会 的勢力だと断定できるほどに調査を進めること が困難なことは理解できる ( そのような調査を 進めること自体 , プライバシー侵害や法人の信 用毀損につながるおそれがある ) 。むしろ , 反 社会的勢力と断定はできないが , その疑惑があ ることが合理的な事実から判明する以上 , その 「噂」や「疑惑」の根拠となる事実にこそ , 世 間の関心は集まるであろう。企業の社会的信用 に影響を及ばす事項には , 企業と関わりを有す る者 ( 法人を含む ) が反社会的勢力と断定でき る場合だけでなく , 合理的な根拠から「反社会 的勢力と噂される者」「疑惑を抱かれる者」と の関係性も含むことは , すでに近時の裁判例に おいても指摘されている 5 そこで , 第三者委員会としては「関係の存在 4 平成 28 年 3 月 30 日 OFS 社リリース「一部報道について」 http://contents.xj-sto 「 age.jp/xcontents/AS00845/9 edd25db/ 1 e70 / 4039 / a21 a/680be247f04b/140120160330446373. pdf 72 ビジネス法務 2016.8
0 朝新 0 い ガバナンスの観点から読み解く 王将フードサービス第三者委員会 報告書の意義 弁護士山口利昭 山口利昭法律事務所 めには , 各社各様のガバナンスの現状分析が十分になされることが前提であろう。 ユニークな試みがなされているが , ステークホルダーに対して説得力のある意見を述べるた 的とした第三者委員会報告書が公表された。その検証にあたり , 委員会による調査において 部上場の王将フードサービス社において , コーポレートガバナンスの分析・検証を主たる目 コーポレートガバナンス改革が進み , 実効性の検証が「形から実質」へと進む中 , 東証 1 ガバナンス評価・検証を目的と した第三者委員会報告書 平成 28 年 3 月 29 日 , 株式会社王将フードサ ービス ( 以下「 OFS 社」という ) は , 同日付 「コーポレートガバナンスの評価・検証のため の第三者委員会報告書 ( 公表版 ) 」 ( 以下「委員 会報告書」という ) を開示した 1 そもそも OFS 社が第三者委員会設置に及ん だのは , 平成 27 年 12 月 13 日 , 同社の前社長で ある D 氏の射殺事件に関連して , 九州に拠点を 置く暴力団組員が関与している可能性があるこ とが一部マスコミで報じられたことへの対応を 迫られたからである 2 。同社は , いわゆる反社 会的勢力と OFS 社との関係調査 ( 反社会的勢 カデューデリジェンス ) を含め , 同社における コーポレートガバナンスの評価・検証を外部有 識者に委ね , その結果をステークホルダーに示 すことを目的として第三者委員会を設置した。 一般的に , 上場会社において企業不祥事が発 覚した場合 , 事実関係を明らかにするために公 正中立な第三者による調査に委ねるケースが多 い ( 日本取引所自主規制法人「上場会社におけ る不祥事対応のプリンシプル」参照 ) 。しかし , 当該第三者委員会は , OFS 社において企業不 祥事が発生したことが発端で設置されたわけで はなく , 現状のコーポレートガバナンスの評 価・検証に焦点をあてた点に特色があり , ユニ ークな委員会報告書を作成している。本稿は , この報告書を分析するとともに , コーポレート ガバナンスの評価・検証のあり方について考察 する。 1 平成 28 年 3 月 29 日 OFS 社リリース「第三者委員会調査報告書受領に関するお知らせ」 http://contents.xj-sto 「 age. jp/ xcontents/AS00845/a8e7b956/8c 1 8 / 46e 1 / 9463 / 5b1 568e19773 / 140120160329445276. pdf 2 平成 27 年 1 2 月 ] 3 日付読売新聞朝刊記事等。 70 ビジネス法務 2016.8
当の利益」を与える場合の手続や基準を改定する 場合の手続 , 新入社員等や退職者に対する手続 , 中小企業等における手続などが記載されている。 今後 , 職務発明規程等を作成・見直す際に参考 となる。 ( 上村哲史 ) 平成 28 年熊本地震の激災害の指定等 4 月 25 日 , 平成 28 年熊本地震 ( 4 月 14 日 21 時 26 分以降に発生した熊本県を中心とする一連の 地震活動 ) について , 激甚災害に対処するための 特別の財政援助等に関する法律に基づく「激甚災 害」として指定し , 当該災害に適用すべき措置に ついて , 災害復旧事業等の国庫補助の嵩上げ等 , 地方公共団体に対する特別の財政援助等を実施す る政令が閣議決定された ( 同月 26 日公布・施行 ) 。 また , 同月 28 日 , 当該災害について , 特定非常 災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特 別措置に関する法律に基づく「特定非常災害」に 指定し , 行政上の権利利益の満了日の延長や , 期 限内に履行されなかった行政上の義務の履行の免 責等の措置を図る政令が閣議決定された ( 5 月 2 日公布・施行 ) 。これにより , たとえば金融商品取 引法に基づく開示書類等について , 地震により本 来の履行期限までに履行できなかった場合であっ ても , 一定期限までに履行された場合は , 行政上 および刑事上の責任を問われないこととなる。 さらに , 5 月 10 日 , 当該災害を大規模災害から の復興に関する法律に基づく「非常災害」に指定 する政令が閣議決定された ( 同月 13 日公布・施行 ) 。 これにより , 被災した地方自治体が管理する道路 や河川などの復旧工事を国が代行できるようにな る。なお同法は , 東日本大震災をふまえて平成 25 年に制定されたものであり , 平成 28 年熊本地 経産省 , 譲渡制限付株式を利用した 株式報酬 ( リストリクテッド・ストック ) の手引を公表 4 月 28 日 , 経産省は , 「『攻めの経営』を促す役 員報酬 ~ 新たな株式報酬 ( いわゆる「リストリク テッド・ストック」 ) の導入等の手引 ~ 」を公表 0 近時 , 役員報酬制度は , 中長期的な企業価値向 上に向けた適切なインセンテイプ付けを行うもの となっているかが重要な課題となってきていると ころ , 平成 28 年度税制改正では , 経営陣に「攻め の経営」を促す役員給与等に係る税制の整備とし て , ①役員給与として支給された一定の譲渡制限 付株式 ( いわゆる「リストリクテッド・ストック」 ) について , 法人税上 , 損金算入可能とする等の制 度整備を行う , ②利益連動給与の算定指標の範囲 等について明確化を行う等の措置が講じられた。 本手引きは , これをふまえ , これらのインセン テイプ報酬の導入を促進するために作成されたも のであり , 具体的には , 譲渡制限付株式や利益連 動給与の導入手続 , 税務・会計上の取扱い等に関 する Q & A がまとめられているほか , 譲渡制限付 株式の導入に関する経営陣との契約書の書式例や 株主総会における報酬議案例等が取りまとめられ ており , 実務上参考になる。 ( 奥山健志 ) 震が初の適用事例である。 ( 大室幸子 ) 総務省 , 電波法施行規則の一部改正案等の バブコメ募集を開始 ( ドローン ) 5 月 13 日 , 総務省は , ロポットにおける電波利 用の高度化に係る技術基準等を定める電波法施行 規則 , 無線設備規則等の改正に係る意見公募を開 始した。当該改正は , 同省情報通信審議会による 3 月 22 日付の答申に基づくものであり , ドローン 等のロボット用電波 ( メイン回線用の 2.4GHz 帯 および 5.7GHz 帯 , バックアップ回線用の 169MHz 帯 ) に係るシステムについて , 周波数帯のほか , 通信方式 , 空中線電力等の技術的条件を定める。 今後電波監理審議会への諮問を経て , 改正カ哘わ 8 ビジネス法務 2016.8
新・会社法実務問題シリーズ全 1 0 巻 森・濱田松本法律事務所編 ①定款・各種規則の作成実務 藤原総一郎・堀天子著 442 頁・定価 4 , 320 円 ( 税込 ) ■会社運営の根幹である定款をはじめ、取締役会規則や監査役会規則 等の作り方・記載例を豊富な実例で解説。 ②株式・種類株式 戸嶋浩二著 480 頁・定価 5 , 076 円 ( 税込 ) ■株式・種類株式につき、法的論点や手続、規定例が充実した一冊。 26 年改正による変更点を織りこみ、細かな株式事務も解説。 ③新株予約権・社債 安部健介・峯岸健太郎著 416 頁・定価 4 , 320 円 ( 税込 ) ■資金調達、ストック・オプション、買収防衛策で利用される新株予 約権や新株予約権付社債、社債を解説。 ④株主総会の準備事務と議事運営・ 宮谷隆・奥山健志著 548 頁・定価 5 , 400 円 ( 税込 ) ・総会担当者や議長の視点で解説された株主総会の定番書。平成 26 年会社法改正やガバナンス・コード等の実務動向を反映。 ⑤機関設計・取締役・取締役会 三浦亮太著 ン 280 頁・定価 3 , 240 円 ( 税込 ) ■取締役や取締役会につき会社法の規定や趣旨、実務を解説。初版に 収録した「株主代表訴訟」の章は削り「機関設計」を新設。 ⑥監査役・監査委員会・監査等委員会 奥田洋一・石井絵梨子・河島勇太著 336 頁・定価 3 , 672 円 ( 税込 ) ■監査役に関する体系的な説明に加え、平成 26 年改正をふまえ監査 委員会や監査等委会につき解説。 ⑦会社議事録の作り方・ 松井秀樹著 444 頁・定価 4 , 536 円 ( 税込 ) 臨議事録の作成方法を、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社、 指名委員会等設置会社に向け解説。 ⑧会社の計算 金丸和弘・藤津康彦著 340 頁・定価 3 , 672 円 ( 税込 ) ■実戦的な書式を数多く掲げることにより、計算書類の作成・監査・ 承認の手続きなど法務担当者に必須の会計知識を詳述。 ⑨組織再編 菊地伸・石綿学・石井裕介・小松岳志・高谷知佐子・戸嶋浩二 峯岸健太郎・池田毅著 492 頁・定価 5 , 184 円 ( 税込 ) ■組織再編に伴う種々の手続やそれぞれの法的問題を明らかにする。 中央経済社 定飲・各種規則 - : の作成実務 にセのい行種壥 ! ひな や豊富 : : 掲気 : 株式・ 種類株式 新・第ま 新株予約権・ 社債 最の行調辻を・みい一 : 株主総会の 準儼事務と 語事運営 機関設計・ 取締役・ 取締役会 第けンたヨーをに蚪応 ! ・ド鈊年改既をふまえ 監査役・ 監査委員会・ 監査等委員会 会社議事録 の作り方 ま第・宿第設気 第査金・一員金 会社の計算 心川識をないす ( 解説・
否か , 再許諾可能 (sublicensable) か否か , 全世界 (worldwide) に及ぶか , 国や地域を 限定するかも規定することが重要である。 通常実施権は , 平成 23 年改正前には , 登録 を対抗要件としていた。平成 23 年改正前にお いて , ライセンス契約実務上 , 通常実施権に ついて対抗要件としての登録を行うことも稀 であったが , 特許権等が譲渡された場合に 登録をしていなかった通常実施権者は譲受人 に通常実施権の存在を対抗できないし , 特許 権等の権利者が破産した場合に , 通常実施権 者は通常実施権につき「登録その他の第三者 に対抗することができる要件」を備えていな い限り ( 破産法 56 条 1 項 ) , 実施料を完済して いないライセンス契約を双方未履行の双務契 約として破産管財人に解除されるおそれがあ った ( 破産法 53 条 1 項・ 2 項 ) 。特許法 , 実用 新案法 , 意匠法は , 通常実施権について , 対 抗要件としての登録制度を廃止し , 通常実施 権の存在を立証することにより当然に対抗で きるようにする平成 23 年改正が行われたが ( 特許法 99 条 , 実用新案法 19 条 3 項 , 意匠法 28 条 3 項 ) , 対抗要件としての登録制度を維持して いる法律もある ( 商標法 31 条 4 項・ 5 項 , 種苗 法 32 条 3 項・ 5 項 , 半導体集積回路法 21 条 1 項 3 号・ 2 項 ) 。なお , 著作権法にライセンスの登 録制度はなく , 「許諾に係る著作物を利用す る権利」の登録制度が提案されたこともある が ( 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 「中間まとめ」 ( 平成 19 年 10 月 ) ) , 改正は見送ら れ , 著作権が譲渡された場合や著作権者が破 産した場合のライセンシーの保護は立法的に 解決されていない。 特許出願段階の発明もライセンスの対象と することが実務上行われるが , 平成 20 年改正 は , 特許を受ける権利に基づいて取得すべき 特許権について仮専用実施権の設定 ( 特許法 34 条の 2 ・ 34 条の 4 ) や仮通常実施権の許諾 ( 特許法 34 条の 3 ・ 34 条の 5 ) をできるようにし て , そのような実務に法的根拠を与えた。そ して , 平成 23 年改正は , 通常実施権の当然対 抗を認めることになった実用新案権と意匠権 にも , 仮通常実施権の規定を整備し , 同じく 当然対抗を認めることとした ( 実用新案法 4 条の 2 , 意匠法 5 条の 2 ) 。 なお , 法制審議会民法 ( 債権関係 ) 部会に おいて , 賃貸借に類似する契約としてライセ ンス契約に賃貸借の規定を準用する規定を民 法に設けることが検討されたが ( 「民法 ( 債権 関係 ) の改正に関する中間試案」 ( 平成 25 年 2 月 26 日 ) 第 38 の 15 ) , ライセンス契約に賃貸借の 規定を準用するのは必ずしも適当ではない面 があって , 反対意見が強く , 平成 27 年 3 月 31 日に第 189 回通常国会に提出された民法改 正案に , ライセンス契約に関する規定は盛り 込まれなかった。 ◆ライセンス契約のその他の条項 1 ロイヤルティの支払 ライセンス契約が有償である場合 , ライセ ンスの対価であるロイヤルティ ( 実施料 ) の 定め方が交渉のポイントになる。売上高や販 売数に応じて算出されるランニング・ロイヤ ルティは , ライセンスによってライセンシー が受ける利益からの配分という側面があり , ロイヤルティ支払の適正さをライセンサーが 監査できるように , ライセンシーがランニン グ・ロイヤルティを計算した報告書をライセ ンサーに提出することやライセンサーが工場 に立入検査に入ったり , 帳簿を閲覧したりで きることをあわせて定めることも行われる。 他方で , 開発費の回収や過去分の損害の清算 という観点から一定の額をまとめてロイヤル ティとして支払うことにもメリットがあり , ロイヤルティの全額を一括して支払うことを ランプサム・ペイメントといい , ランニン ◆ 138 ビジネス法務 2016.8
会社法法令集ト 会社法・法務省令大改正を収録 / 中央経冫斉社編 A5 判・ 688 頁定価 3 , 024 円 ( 税込 ) ◆新規収録改正の概要 ◆重要条文ミニ解説 付き ◆改正中間試案ミニ解説 会社法制定以来初めての大改正となった、 26 年改正会社法 と 27 年改正法務省令を織り込んだ待望の最新版。変更箇所 が一目でわかるよう表示。 本書の特徴 ◆会社法関連法規を完全収録 本書は、平成 17 年 7 月に公布された「会社法」から同 18 年 2 月に公布された 3 本の法務 省令等、会社法に関連するすべての重要な法令を完全収録したものです。 ◆好評の「ミニ解説」さらに充実 ! 重要条文のポイントを簡潔にまとめたミニ解説。平成 26 年改正会社法と平成 27 年改正法 務省令を踏まえ大幅な加筆と見直しを行い、ますます充実 ! ◆引用条文の見出しを表示 会社法条文中、引用されている条文番号の下に、その条文の見出し ( ない場合は適宜工 夫 ) を色刷りで明記。条文の相互関係がすぐにわかり、理解を助けます。 ◆政省令探しは簡単 ! 条文中に番号を明記 法律条文の該当箇所に、政省令 ( 略称 = 目次参照 ) の条文番号を色刷りで表記。意外に 手間取る政省令探しもこれでラクラク。 ◆改正箇所が一目瞭然 ! 平成 26 年改正会社法、平成 27 年改正法務省令による条文の変更箇所に色付けをし、どの 条文がどう変わったのか、追加や削除された条文は何かなどが一目でわかる ! ・重要スミ " 一解説 物改所表 ・会社ま 第会第物ⅱ ・会犹第第行を第 ・会社新第ル第 中央経済社編 会社法法令集一 新省文 ~ ・電子公場第 ・社法の第行にう第保第をの 第鋼等にダる 1 第 ・龕社議の物行に体う関係第の 整鋼にまるユの行にう 法文 遇置を定める臨倉 会 第十一版 見やすい、引きやすい大活字版 ! 。会社法法令集 いⅱ町囀会 平成二十七年五月一日現在 ■民法改正整備法案による会社法改正案を収録。 中央経冫斉社編 B5 判・ 696 頁定価 4 , 212 円 ( 税込 ) いる会社法正案を譽第 中央経済社 机上版
れるかを示しておらず , 情報漏えい対策の指 標として使い勝手が悪いとの指摘があった。 そこで , 経済産業省は , 平成 27 年 1 月 28 日 , 管理指針を全面改訂し , 「営業秘密」として 法的保護の対象となるための最低限度の基準 と , そのために必要となる管理措置を示した 営業秘密管理指針 ( 以下「新管理指針」とい う ) を公表した 1 。 従来の管理指針では , 「秘密管理性」が認 められるためには , 従業員等アクセスした者 にそれが秘密であると認識できるようにされ ていること ( 認識可能性 ) ( ① ) のみならず , 情報の秘密保持のために必要な管理をしてい ること ( アクセス制限 ) ( ② ) の 2 つの要件 を満たすことが必要とされていた。 しかしながら , 「秘密管理性」の要件とし て , 従業員等が秘密であると認識できる以上 に強固な管理措置が講じられていることを要 求することには , 企業の機密情報の多くが 「営業秘密」として保護されず , しかも円滑 な情報の活用が阻害される弊害があった。 そこで , 新管理指針では , 「秘密管理性」 が認められるためには , 従業員等アクセスし た者にそれが秘密であると認識できるように していること , すなわち , 認識可能性 ( ① ) があることが必要 ( かっ十分 ) であることが 明確に示された。 3 「秘密管理性」に関する裁判例の動向 管理指針が策定された平成 15 年 1 月から , 平成 19 年 4 月頃までは , 従業員の認識可能性 を担保するレベルを超えた , 秘密保持のため に高度な管理措置が講じられていないことを 理由に「秘密管理性」を否定する裁判例が多 く見られた。 機密情報を守る人事労務管理 しかしながら , 大阪地裁平成 19 年 5 月 24 日 判決 2 以降の裁判例では , 従業員の「認識可 能性」の有無によって「秘密管理性」の有無 が判断される傾向が強い 3 4 まとめ 以上のように , 近時は , ガイドラインと裁 判例の両者とも「秘密管理性」を従業員の認 識可能性の有無を中心に判断している。そこ で , 機密情報が「営業秘密」として法的保護を 受けるためには , 従業員の認識可能性を担保 することが不可欠であり , そのような視点に 立った人事労務管理面の対策が必要となる。 ール ( 就業規則 ) を整備し ( 第 1 ステップ ) , これらの対策は , 従業員の就労に関するル ③従業員へのアナウンス ②実効性ある調査を行うための準備 ①秘密保護に向けた義務の設定 に取り組むべき対策は , 次の 3 つである。 情報漏えいを防止し , 法的保護を得るため 進め方 機密情報を守る人事労務管理の 定め , 従業員が認識できるようにすべきであ まず , 秘密として管理する情報を服務規律に 従業員の認識可能性を担保するためには , 分・退職金不支給の定め ) ( 1 ) 第 1 ステップ ( 秘密保持義務と懲戒処 1 秘密保護に向けた義務の設定 具体的な対策は , 次の通りである。 ップ ) , という 2 段階で導入するべきである。 ルールを補強する措置を実施する ( 第 2 ステ 1 基準を超えた , 情報漏えい対策として望ましい措置は , 平成 28 年 2 月 8 日公表の「秘密情報の保護ハンドブック」において 示された。 2 水門開閉装置事件・判時 1 999 号 1 29 頁参照。 3 田村善之「営業秘密の秘密管理性要件に関する裁判例の変遷とその当否 ( その 1 ) ( その 2 完 ) 」知財管理 64 巻 5 号 621 頁 , 6 号 787 頁参照。 ビジネス法務 2016.8 103
欧州の法制度の内容・運用は , 4 月 13 日に 開かれた第 2 回検討会の議題となっており , そこでは , 平成 23 年 7 月に労働政策研究・研 修機構 (JILPT) が厚生労働省の依頼により まとめた「雇用形態による均等処遇について の研究会報告書」を基礎にした紹介がなされ ている。 ( 2 ) 同一労働同一賃金と不利益取扱い禁止原則 平成 23 年の JILPT 報告書は , 同一労働同一 賃金の原則について , 日本では正社員と非正 規労働者の格差是正の文脈で言及されること も少なくないが , 欧州諸国では , 性別・人種 など個人の意思や努力では変えることのでき ない属性等を理由とする原則であると指摘す る。正社員や契約社員 , パートタイマーとい った雇用形態は , 当事者間の合意によって決 定されるものであるから , 性別・人種といっ た属性とは違ったものである。 そして , この当事者間の合意による雇用形 態間の格差是正について , 欧州諸国では , 雇 用形態に係る不利益取扱い禁止原則の枠組み により対処されていると述べる。 すなわち , JILPT 報告書は , ①同一労働同一賃金の原則 ( 性別・人種 など ) ②雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則 を峻別して捉えたうえで , 正社員と非正規労働 者の格差は②の問題と整理するものと言える 7 。 ( 3 ) 政府が検討しているのは②の制度 ここでもう一度 , 水町教授の提出資料や第 1 ~ 3 回検討会の資料に目を移してみると , 政府内の検討の俎上に乗せられているのは , 雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則のほう ・「同一労働同一賃金」議論を追う いる。 4 月 1 日施行の労働契約法 20 条につながって められ , それが平成 24 年 8 月成立 , 平成 25 年 働契約の在り方について ( 報告 ) 」が取りまと つつ , 同年 12 月に労働政策審議会で「有期労 の」と指摘されており , この報告書もふまえ 題とされている日本において , 示唆に富むも 合理な処遇格差の是正及び納得性の向上が課 でに②の制度は「正規・非正規労働者間の不 平成 23 年 7 月の JILPT 報告書において , す 押さえる必要がある。 議論は , 今に始まった話ではないという点を 一方 , 欧州の②の制度を参照した法制化の 8 条 ( 1 ) 労働契約法 20 条 , パートタイム労働法 2 日本の現行法 は相対的なところも見られる。 う考え方を基礎にしており , ①と②の峻別に 容であれば同一の賃金を支払うのが原則とい というものであるから , やはり同一の職務内 らない ることを使用者側が主張立証しなければな 労働条件の相違に「客観的な理由」があ の労働条件が同一でないことを主張立証 働者と同一の労働に従事しているが , 両者 有期の労働者が , ( 比較可能な ) 無期の労 ると , ただし , ②の制度も , 有期ー無期を例にと く , ②の制度ということになる。 ろの同一労働同一賃金の原則 ( ① ) ではな の導入を議論しているのは , 欧州でいうとこ 「同一労働同一賃金の実現」を掲げて日本へ であることがわかる。すなわち , 現在政府が 7 ただし , フランスでは判例法理上 , 雇用形態を事由とする同一 ( 価値 ) 労働同一賃金の原則が認められている ( 破毀院 1996.10.26 判決 ) 。他方 , フランスでは若年層の失業率が特に高いという背景の中 , オランド政権による労働法改正案を めぐって各地で激しいデモが起きている状況にある。 ビジネス法務 2016.8 85
要員、規程、研修・・・どこまで贈賄防止に取り組んでいる ? ビジネス法務 3 贈賄防止 August 0 2016 Vol.16» No. 8 中央経済社 プロクラムの実践 東京商工会議所・各地商工会議所主催ビジネス実務法務検定試験対応 座談会 : 各社の対応 工ージェントのコントロール 贈賄防止規程の作り方 高リスク国の法規制 わが社でもできる ! 平成 10 年 9 月 8 日第三種郵便物承認平成 28 年 8 月 21 日発行 ( 毎月 21 日発行 ) 徳市立文 160964861 「株主総会フロセス電子化報告書」 か実務に与える影響 「同一労働同一賃金」議論を追う 王将フードサービス 新連載 実務解説 特別企画 ビジネス実務法務検定試験演習問題 第三者委員会報告書の意義
なく , あくまでも同社のコーポレートガバナン スの分析・評価およびそれに伴うガバナンス向 上のための提言を受領するために設置されたも のである。したがって , 企業不祥事が発生した 際のような「原因究明」に基づく再発防止策の 実行が喫緊に求められるようなものではない。 しかし , 委員会報告書が公表されたことによ り , OFS 社のガバナンスが創業家による過度 の経営介入 , 反社会的勢力との癒着疑惑等の事 実から , 問題を抱えていることが明らかにされ た。そこで , 同社の今後の取組みに注目が集ま るところである。なお , OFS 社は第三者委員 会から指摘を受けた点に対する取組みを速やか に実行しているようであり , また , 法律専門家 である社外取締役を同社の常務取締役 ( 業務執 行者 ) として選任する議案を株主総会に上程す ることを決めた 8 。このような速やかな対応が , 今後のコーポレートガバナンスの機能向上にど れほどの実効性を有するのか注目したい。 2 会計監査人の果たすべき役割とは 委員会報告書を読み , やや物足りなさを感じ た点は , 委員会報告書から ( A 氏との不適切取 引に関する ) 会計監査人の動きが不明な点であ る。上場会社が株主に対して説明義務を尽くす 姿勢については , 会計監査人と会社との間でど のようなやりとりがあったのか , 事実を示す必 要がある。会社が適切な情報開示と透明性の確 保を図る意思があるのか否か , 最もよく表われ るのは会社と会計監査人との信頼関係の有無で あり , コーポレートガバナンス評価においては 必須の事項と思われる。 OFS 社が追加リリースで説明しているよう に , OFS 社と A 氏との不適切取引により , 170 億円もの資金が未回収となっている点につ いては , 平成 14 年 3 月期の決算において会計処 理は終了している 9 王将フードサービス第三者委員会報告書の意義 管理人。 斐閣 . 2014 ) 等多数。プログ「ビジネス法務の部屋」 有事対応 ~ 経営戦略に活かすリスクマネジメント」 ( 有 役 . 社外監査役を務める。著書は「不正リスク管理・ 山口利昭法律事務所代表弁護士。複数企業の社外取締 山口利昭 ( やまぐちとしあき ) かったところである。 か , 重要な論点と思えるだけに切り込んでほし ことを前提として監査を進めてきたのかどう 人としては統制環境に重大なリスクが存在する 査役会 ) との連携が不全である以上 , 会計監査 れているが ( 37 頁 ) , 会計監査人と監査役 ( 監 た , と評価すべき事実は委員会報告書にも示さ 時の監査役 ( 監査役会 ) が機能していなかっ を来したような事情はなかったのだろうか。当 惑により , 会計監査人としての意見形成に支障 締役会議事録に添付されていない , といった疑 取締役会で審議されていない , 重要な資料が取 はチェックしていたのだろうか。重要な議題が であるが , 当時の取締役会議事録を会計監査人 査委員会報告書が取締役会に提出されていたの 防止委員会が設置され , 1 年後には平成 25 年調 とりわけ , 平成 24 年 11 月の取締役会では再発 には多大な関心を寄せていたものと思われる。 ーポレートガバナンスや内部統制 ( 統制環境 ) な状況に鑑みると , 会計監査人も OFS 社のコ と東証との統合によるものである ) 。このよう かった ( 現在東証 1 部に上場しているのは大証 があったために , 自力上場の目標は達成できな り , 結果的には取引所に対する報告内容に不備 1 部に上場することを目標としていたのであ 時上場していた大証市場 1 部から ) 自力で東証 しかし , OFS 社は平成 24 年 12 月をめどに ( 当 8 OFS 社は , 第三者委員会からの提言への取組み経過をタイムリーに開示している。また平成 28 年 5 月 13 日 OFS 社リリース 「取締役および監査役候補者の選任に関するお知らせ」参照。 http: 〃 contents. xj-sto 「 age. jp/xcontents/AS00845/ f80C6875 / 098b / 4af4 / a61 c / 047682d8Cf9e / 1 40120160513488520. pdf 9 前掲注 4 ・ OFS 社リリース日召 多・′い、 0 ビジネス法務 2016.8 75