検討してみましよう。 A 県公安委員会 図 1 不利益処分 ることができます ( 同項ただし書 ) 。なお , 合は , 当該理由を示さないで不利益処分をす ないで処分をすべき差し迫った必要がある場 っとも , 行政庁は , 不利益処分の理由を示さ なりません ( 行政手続法 14 条 1 項本文 ) 。も 時に , 当該不利益処分の理由を示さなければ には , 原則として , その名あて人に対し , 同 そして , 行政庁は , 不利益処分をする場合 執らなければなりません。 処分の名あて人である B に対し , 聴聞手続を の取消処分は , 重大な処分であると考えられ , て , A 県公安委員会が行おうとする営業許可 機会の付与」手続とがあります。本問におい ( 原則として書面による。 ) を与える「弁明の となる事実に関する意見陳述のための機会 名あて人となるべき者について , 処分の原因 聞」手続と , ②その程度にいたらない場合に よる意見陳述 , 質問等の機会を与える「聴 合に , 名あて人となるべき者について口頭に 続には , ①処分が重大であると考えられる場 ければなりません。この意見陳述のための手 原則として , 意見陳述のための手続を執らな は , 処分の適法性を確保するなどの観点から , 行政庁が不利益処分をしようとする場合に 不動産法律セミナー ないか」と問うています。したがって , 解答 は , 「のの意見陳述のための手続きを経た 上で , のの処分手続を執らなければならな い。」としなければなりません。 ( 2 ) 内容の検討 どのような内容にするか。図を書きながら , キーワードになります。このキーワードのう 不利益処分を書面でするときは , 理由につい ても , 書面により示さなければなりません ( 同条 3 項 ) 。 以上により , のには「聴聞」を , のには 「不利益処分と同時に , その処分の理由を , 書面により示す」を挿入することになります。 ( 3 ) 解答の作成 ( 1 ) で検討した形式に , ( 2 ) で書き出し た語句を挿入すると , 「聴聞手続を経た上で , 不利益処分と同時に , その処分の理由を , 書 面により示す手続きを執らなければならな い。」となります。事案に即して , 「不利益処 分」を「営業許可取消処分」と直した上で , 重要でない部分を削り , 又は省略してこの文 章を 40 字程度の滑らかな文章にすると , 次の 解答例のとおりとなります。 解答例 聴聞手続を経た上で , 営業許可取消処分と 同時に , その処分の理由を , 書面により示 すべき。 ( 42 字 ) ※下線部分がキーワードです。 なお , 行政書士試験の指定試験機関である 一般財団法人行政書士試験研究センターが発 表する近時の解答例に即して言えば , 事案に 即して , 「不利益処分」を「営業許可取消処 分」と直すことは , 重視されていないようで すから , 次の解答例でも結構です。 解答例 聴聞手続を経た上で , 不利益処分と同時に その処分の理由を , 書面により示さなけれ ばならない。 ( 45 字 ) ※下線部分がキーワードです。 ( 4 ) 本問の配点基準 本問では , ①「聴聞手続」 , ②「処分と同 時」 , ③「処分の理由」 , ④「書面」の四つが ノノ / 2 硼 5
〔問題 44 ~ 問題 46 は記述式〕 〔解答は , 必ず解答欄 ( マス目 ) に記述すること。なお , 字数には , 句読点も含む。〕 問題 44 次の【設問】を読み , 【答え】の中の〔〕に適切な文章を 40 字程度で記述して , に対する【答え】を完成させなさい。 【設問】 行政書士 【設問】 行政庁が私人に対して不利益処分を行う場合の理由の提示について , 行政手続法 14 条 1 項は , 「行政庁は , 不利益処分をする場合には , その名あて人に対し , 同時に , 当該不利益処分の理由 を示さなければならない。ただし , 当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場 合は , この限りでない。」と規定している。しかし , この規定においては , 不利益処分の理由の らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであるから , その記載を欠くにおいては , 処 処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに , 処分の理由を相手方に知 の理由の提示の趣旨について , 一般に , 法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは , 行政手続法制定前に出された最高裁判所昭和 38 年 5 月 31 日判決では , 税務署長が行う更正処分 明確に規定されていない。そこで , 最高裁判所は , この点についてどのよ 【答え】 うに解しているか。 提示の程度について , 分自体の取消しを免がれないものといわなければならないと判示した上で , どの程度の理由を提 示すべきかについては , 〔 〕と判示した。 行政手続法の制定をうけて不利益処分等の理由の提示の程度について , どのような影響がある のかが注目されていたが , 平成 23 年に出された最高裁判決は , 上記最高裁判決をほば踏襲した。 ( 下書用 ) ノ 7 / 20 ノ 5 不動産法律セミナー
記述式 問題 44 処分の性質と理由の提示を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らして決定すべき ( 37 字 ) ※下線部分がキーワードである。 ■内容の解説■ 平成 18 年度本試験から記述式問題は , 40 字程度で記述する問題となった。行政法からは , 毎年 1 問が出題されたが , その分野は , 行政法の一般的な法理論 , 行政手続法および行政事件訴訟法であ った。行政手続法においては , 平成 23 年に重要な判例が出されていることから , 不利益処分の理由 の提示の程度について確認しておこう。 1 不利益処分の理由の提示 ( 1 ) 最高裁判所昭和 38 年判決 行政手続法制定前に出された最高裁判所昭和 38 年 5 月 31 日判決は , 更正処分の理由の提示の趣 旨およびその程度について , 「一般に , 法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは , 処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに , 処分の理由を相手方に知 らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから , その記載を欠くにおいては処分自 体の取消を免かれないものといわなければならない。ところで , どの程度の記載をなすべきかは , 処分の性質と理由附記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきであるが , 所得税法 ( 昭和 37 年法律 67 号による改正前のもの , 以下同じ。 ) 45 条 1 項の規定は , 申告にかか る所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上 , その帳簿の記載を無 視して更正されることがない旨を納税者に保証したものであるから , 同条 2 項が附記すべきもの としている理由には , 特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して処分の具体的根拠 を明らかにすることを必要すると解するのが相当である。」と判示した。 ②最高裁判所平成 23 年判決 最高裁判所平成 23 年 6 月 7 日判決は , 不利益処分の理由の提示の趣旨およびその程度について , 「行政手続法 14 条 1 項本文が , 不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければ ならないとしているのは , 名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分 の性質に鑑み , 行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに , 処分の理 由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして , 同項本 文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは , 上記のような同項本文の趣旨に照らし , 当該処 分の根拠法令の規定内容 , 当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無 , 当該処分 の性質及び内容 , 当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであ る。」と判示した。注目すべき点は , 行政手続法という新たな法律が制定されたにもかかわらす , 不利益処分の理由の提示の程度については , 行政手続法 14 条 1 項の解釈によって決せられるもの ではなく , 個別の法律の規定の解釈によって決せられるとしている点である。もっとも , 「当該 処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無」について考慮すべきとしたことは , 行政 手続法が制定されたことを考慮したものと解されている。 2 本問について (1) 形式の検討 どのような形式の解答が要求されているか。問題文の【答え】では , 不動産法律セミナー 「行政手続法制定前に出 ノノ / 20 ノ 5
プロバイダ等の損害賠償責任の限定として , 特定電子通信による情報の流通により他人 ( 被害者 または発信者 ) の権利が侵害されたときに , 関係するプロバイダ等が , これによって生じた損害に ついて , 一定の場合に , 賠償の責めに任じないこととした ( 同法 3 条 ) 。 Q 肢 7D 問題 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律 ( 行政手続オンライン化法 ) について , この法律により , 処分通知に関してはそれが利益 , 不利益のどちらかに関わらすオンラインで行う ことができる。 解答 正しい 正誤判断のポイント 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律 ( 行政手続オンライン化法 ) について , この法律により , 処分通知に関してはそれが利益 , 不利益のどちらかに関わらずオンラインで行う ことができる ( 同法 4 条 1 項 ) 。 したがって , 本肢は正しい。 法律名 行政手続オンライン化法 国民と行政機関との間の申請・届出等の行政手続について , 書 面によることに加え , オンラインでも可能とする。 行政手続オンライン化法の規定のみでは手当が完全ではないも の , 例外を定める必要があるものについて , 71 の個別法律の改 正を束ねーっの法律としてとりまとめる。 申請・届出等行政手続のオンライン化に資するため , 第三者に よる情報の改ざんの防止・通信相手の確認を行う , 高度な個人 認証サービスを全国どこに住んでいる人に対しても安い費用で 提供する制度を整備する。 法 備 整 公的個人認証法 Q 肢 8D 問題 生体認証のことをいい , 紛失することなく , 他人が利用できない為 , バイオメトリクスとは , ノノ / 20 ノ 5 不動産法律セミナー
/ ー政書士 めることができるのであれば , 当該行為の処分性が肯定されることになる。 が入る。 こは本問判例の学習をしていないと判断するのが難しいかもしれない。 から , 亠には「処分」が入るとわかる。亠は , 保険医療機関の亠とあり , 「指定」 行政事件訴訟法 3 条 2 項にいう「行政庁の亠その他公権力の行使に当たる行為」とあること は , 行政指導として法律上定められるものであることから , 選択肢の中では「勧告」が入る。また , 亠は , 任意にこれに従うことを期待してされるものであるから , 「行政指導」が入る。亠 3 本問について ものである。 づく保険医療機関の指定に及ばす効果等に着目して処分性を肯定するという初めての判断を示した 本判決は , 医療法上は行政指導として規定されている勧告について , その健康保険法の規定に基 険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらす。 とはない。しかし , これに従わない場合には , 相当程度の確実さをもって , 病院を開設しても保 おり , これに従わない場合にも , そのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされるこ 医療法上 , 同法 30 条の 7 の規定に基づく勧告は任意の協力を求める行政指導として規定されて ノノ / 2075 不動産法律セミナー
行政書士 出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに , 当該届出をすべき手続上の義務が履行 されたものとする ( 行政手続法 37 条 ) 。つまり , 届出をすべき手続上の義務が履行されたことに なるのは , 届出が事務所に到達したときであり受理されたときではない。 4 . 正しい。許認可を取り消す不利益処分には , 原則として聴聞手続がとられる ( 行政手続法 13 条 1 項 1 号イ ) 。そして , 聴聞の期日における審理は , 行政庁が公開することを相当と認めるとき を除き , 公開しない ( 行政手続法 20 条 6 項 ) 。つまり , 当事者のプライバシー保護等の観点から 原則非公開であり , 行政庁の裁量により例外的に公開されることもある。 5 . 誤り。聴聞を経てされた不利益処分については , 当事者および参加人は , 行政不服審査法によ る異議申立てをすることはできないが ( 行政手続法 27 条 2 項本文 ) , この規定は , 弁明の機会の 付与手続に準用されているわけではない ( 同法 31 条参照 ) 。したがって , 弁明の機会の付与手続 を経てされた不利益処分については , 異議申立てをすることもできる。 正解 4 本問は , 行政手続法上の諸問題について , 生活保護行政を題材として作成した。なお , 福祉事務 所長は , 生活保護法に基づき市長からの権限の委任を受けて生活保護の決定や実施にかかわる事務 を担当する行政機関である。その事務の範囲内で行政庁としての地位を有する。 1 . 妥当でない。行政庁は , 申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始し なければならない ( 行政手続法 7 条 ) 。つまり , 審査義務は申請の到達によって生じるのであり , 行政庁の受理によって生じるのではない。 2 . 妥当でない。行政庁は , 申請書の記載事項に不備がないこと , 申請書に必要な書類が添付され ていること , 申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた 形式上の要件に適合しない申請については , 速やかに , 申請をした者に対し相当の期間を定めて 補正を求め , または当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない ( 行政手続法 7 条 ) 。つまり , 行政庁は , 補正を求めるか , 拒否処分をするかを選択することができるのであ り , 必ず補正を求めなければならないわけではない。 3 . 妥当でない。申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をし た者を名あて人としてされる処分は , 不利益処分に該当しない ( 行政手続法 2 条 4 号ただし書 ロ ) 。したがって , 生活保護の申請に対して拒否処分をするときは , 聴聞手続を執る必要はない。 4 . 妥当である。行政庁は , 申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は , 申請者 に対し , 同時に , 当該処分の理由を示さなければならない ( 行政手続法 8 条 1 項本文 ) 。その処 分を書面でするときは , その理由は書面により示さなければならない ( 同条 2 項 ) 。 5 . 妥当でない。標準処理期間の定めがある場合 , 申請後 , その期間を経過しても何らの処分がな されないときでも , 当然にその申請が認められたものとみなされるわけではない。そのような規 定は存在しない。 問題 12 問題 13 正解 5 聴聞における手続的保障については , 行政手続法 15 条から 28 条までに詳細な規定が置かれている。 おおよそ聴聞の進行の時間的順序に従って規定が設けられているから , 条文の流れに沿って手続の 進行をイメージしていくと理解しやすい。 1 . 正しい。聴聞は , 行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰して行われる ( 行政手続 7 ノ / 2 硼 5 不動産法律セミナー
問題 11 行政手続法に関する次の記述のうち , 正しいものはどれか。 1 地方公共団体の機関がする行政指導については , 当該地方公共団体が行政手続条例を定めてい ない場合に限り , 行政手続法の行政指導に関する規定が適用される。 2 行政庁は , 申請に対する処分であって , 申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令に おいて許認可の要件とされているものを行う場合には , 必ず公聴会を開催しなければならない。 3 法令により一定事項の届出が義務付けられている場合 , 法令により届出の提出先とされている 機関の事務所の職員が当該届出を受理したときに , 届出をすべき手続上の義務が履行されたこと になる。 4 行政庁は , 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするときは , 原則として聴聞手続をとら なければならす , 聴聞の期日における審理は , 行政庁が公開することを相当とするときを除き , 非公開とされる。 5 弁明の機会の付与手続を経てなされた不利益処分は , 処分の名あて人となる当事者が意見陳述 をした上で決められた処分であるため , 当事者は行政不服審査法による異議申立てをすることが できない。 問題 12 甲市に居住する A は , 病気のために働くことができず生活に困窮している。そこで , A は , 1 2 甲市長から生活保護に関する決定および実施の事務の委任を受けた甲市福祉事務所長に対し 生活保護の申請をした。この場合に関する次の記述のうち , 妥当なものはどれか。 甲市福祉事務所長は , A の申請を受理するまでは , A の申請に対する審査を開始する必要はな 甲市福祉事務所長は , A の提出した申請書に不備があるときは , 速やかに , 相当の期間を定め て補正を求めなければならない。 3 甲市福祉事務所長は , A の申請を拒否する処分をするときは , 聴聞を行わなければならない。 4 甲市福祉事務所長が , A の生活保護申請を拒否する処分を書面でするときは , その理由を書面 で示さなければならない。 5 A の申請後 , 甲市福祉事務所長が標準処理期間を経過しても何らの処分もしない場合 , A の申 請は , 当然に認められたものとみなされる。 問題 13 行政手続法が規定する聴聞手続に関する次の記述のうち , 誤っているものはどれか。 1 聴聞手続を公正なものとするため , 聴聞の当事者や参加人およびそれらの者の配偶者 , 4 親等 内の親族または同居の親族は , 聴聞の主宰者となることができない。 2 主宰者は , 聴聞の期日において必要があると認めるときは , 当事者もしくは参加人に対し質問 を発し , 意見の陳述もしくは証拠書類等の提出を促し , または行政庁の職員に対し説明を求める ことができる。 3 聴聞の当事者は , 聴聞の通知があった時から聴聞が終結するまでの間 , 不利益処分の原因とな る事実を証する資料の閲覧を求めることができ , 行政庁は , 正当な理由があるときでなければ , その閲覧を拒むことができない。 4 主宰者は , 当事者または参加人の一部が出頭しないときであっても , 聴聞の期日における審理 を行うことができる。 5 主宰者は , 当事者の全部または一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭しない場合には , 陳述 不動産法律セミナー ノノ / 2075
された最高裁判所昭和 38 年 5 月 31 日判決では , 行政書士 どの程度の理由を提示すべきかについては , 〕と判示した。」となっている。したがって , 解答は , 「すべき」とする た各法律の規定の趣旨・目的に照らして決定すべき」となる。字数制限に従い , 40 字程度の文章 (1) で検討した形式に , ②で書き出した語句を挿入すると , 「処分の性質と理由附記を命じ ( 3 ) 解答の作成 れを決定すべき」としている。 判所昭和 38 年判決は , 「処分の性質と理由附記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこ どのような内容にするか。上記 1 のとおり , 不利益処分の理由の提示の程度について , 最高裁 ②内容の検討 とである。 ことが考えられる。なお , 注意すべきは , 句点をつけない形で終わらなければならないというこ にすると , 解答例のとおりとなる。 問題 45 答伊 腕時計の返還及び損害賠償の請求ができ , ( 43 字 ) ※下線部分がキーワードである。 ・内容の解説■ 占有侵奪時から 1 年以内に提起しなければならない。 平成 18 年度本試験から記述式問題は , 40 字程度で記述する問題となった。民法からは , 毎年 2 問 が出題されているが , 物権からは , 平成 18 年度本試験において抵当権の効力に関する問題 , 平成 21 年度本試験において民法 177 条の「第三者」の意味に関する問題 , 平成 23 年度本試験において代価 弁済等に関する問題 , 平成 25 年度本試験において即時取得の特則に関する問題が出題された。本年 度試験では , 占有権から出題される可能性があることから , 占有回収の訴えについて確認しておこ 1 占有回収の訴え (1) 占有回収の訴えとは 占有者がその占有を奪われたときは , 占有回収の訴えにより , その物の返還及び損害の賠償を 請求することができる ( 民法 200 条 1 項 ) 。 ②占有回収の訴えの提起期間 占有回収の訴えは , 占有を奪われた時から 1 年以内に提起しなければならない ( 民法 201 条 3 2 本問について (1) 形式の検討 どのような形式の解答が要求されているか。問題文では , 「 X は , B に対して , 訴えにより , どのような請求をすることができ , また , その訴えは , いつまでに提起しなければならないか。」 項 ) 。 不動産法律セミナー どのような内容にするか。上記 1 のとおり , 占有者がその占有を奪われたときは , 占有回収の 解答は , 「の請求をすることができ , = までに提起し ノノ / 2 5 ②内容の検討 なければならない。」とすることが考えられる。 となっている。したがって ,
法 19 条 1 項 ) 。この聴聞手続の公正を確保するため , 主宰者となり得ない者が法定されている ( 同条 2 項 ) 。聴聞の当事者または参加人 , これらの者の配偶者 , 4 親等内の親族または同居の親 族は欠格事由に該当し ( 同項 1 号 , 2 号 ) , 主宰者となることができない。 2 . 正しい。主宰者は , 聴聞の期日において必要があると認めるときは , 当事者もしくは参加人に 対し質問を発し , 意見の陳述もしくは証拠書類等の提出を促し , または行政庁の職員に対し説明 を求めることができる ( 行政手続法 20 条 4 項 ) 。 3 . 正しい。当事者等は , 聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間 , 行政庁に対し , 不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を請求することができ , 行政庁は , 正当な理由 があるときでなければ , その閲覧を拒むことができない ( 行政手続法 18 条 1 項 ) 。 4 . 正しい。主宰者は , 当事者または参加人の一部が出頭しないときであっても , 聴聞の期日にお ける審理を行うことができる ( 行政手続法 20 条 5 項 ) 。 5 . 誤り。当事者または参加人は , 聴聞の期日への出頭に代えて , 主宰者に対し , 聴聞の期日まで に陳述書および証拠書類等を提出することができる ( 行政手続法 21 条 1 項 ) 。そして , 主宰者は , 当事者の全部もしくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず , かっ陳述書もしくは証拠書 類等を提出しない場合には , これらの者に対し改めて意見を述べ , および証拠書類等を提出する 機会を与えることなく , 聴聞を終結することができるとされている ( 行政手続法 23 条 1 項 ) 。つ まり , 当事者の全部または一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭しなくても , 陳述書や証拠書 類を提出していれば , これらの者に対して改めて意見を述べる機会を与えることなく聴聞を終結 することはできない。 行政不服審査法 問題 14 正解 3 本問は , 行政不服審査制度に関する基本的知識があれば容易に正解できる問題である。必ず正解 しなければならない。 1 . 妥当でない。行政庁の処分については , 原則として違法または不当な処分のすべてが不服申立 ての対象となる。これを一般概括主義という。しかし , 行政不服審査法は , その例外として , か なり広く不服申立ての対象とならない事項を設けている ( 行政不服審査法 4 条 1 項ただし書 ) 。 2 . 妥当でない。行政庁がした処分については , 審査請求 , 異議申立てのどちらか一方をすること ができるのが原則であり , 例外的に個別の法律の定めがあるときは , いずれもすることができる ( 行政不服審査法 5 条 , 6 条 , 20 条 ) 。したがって , 審査請求できるかどうかにかかわらず , 「常 に」することができるわけではない。 3 . 妥当である。審査請求は , 行政庁の処分または不作為に対して , 処分をした行政庁 ( 処分庁 ) または不作為にかかる行政庁以外の行政庁に対してする不服申立てである ( 行政不服審査法 3 条 2 項 ) 。審査請求は , 不服申立ての一般法である行政不服審査法に基づきすることができる。っ まり , 個別の法律や条例に特別の定めがなくてもすることができる。 4 . 妥当でない。再審査請求は , 審査請求の裁決に不服がある者が , さらに上の行政庁等に対して 行う不服申立てである。審査庁の裁決に不服がある者が , 同じ審査庁に対して再度不服を申し立 てる制度ではない ( 行政不服審査法 8 条 2 項 ) 。なお , 法律または条例に再審査請求をすること ができる旨の定めがあるときにすることができるとの記述は正しい ( 同条 1 項 1 号 ) 。 5 . 妥当でない。審査請求は , 処分があった日の翌日から起算して 1 年を経過すると , 処分があっ 不動産法律セミナー ーイ 2 ー ノノ / 2 硼 5
行政書士 相続する者によってそれを承継することができるとした。したがって , 本肢は妥当でない。 4 . 妥当でない。本肢では , 再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受 けないまま本邦から出国した場合に , 当該不許可処分を受けた者につき , 当該不許可処分の取消 しを求める訴えの利益を有するかが問題となる。判例 ( 最判平 10 ・ 4 ・ 10 ) は , 当該不許可処分 を受けた者がそれまで有していた在留資格は消滅し , 不許可処分が取り消されても同人が当該在 留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから , 同人は当該不許可処分の取消しの 訴えの利益を失うとした。したがって , 本肢は妥当でない。 5 . 妥当でない。本肢では , 開発許可の取消訴訟の原告が死亡した場合に , 相続人に訴えの利益が 認められるかが問題となる。判例 ( 最判平 9 ・ 1 ・ 28 ) は , 開発許可の取消しを求める法律上の 利益は , 原告の生命 , 身体の安全等という一身専属的なものであり , 相続の対象となるものでは ないから , 原告の死亡により , 取消しの利益は失われるとした。したがって , 本肢は妥当でない。 正解 3 本問は , 仮の救済制度についての条文知識を問う問題である。併せて , 各訴訟類型において , 仮 の救済制度があるのかを問うものである。なお , 無効等確認訴訟においては執行停止の規定が準用 されることも押さえてほしい。 1 . 誤り。私法上の法律関係に関する訴訟において , 行政庁の処分の効力の有無が争われている場 合とは , 争点訴訟である。争点訴訟は , 民事訴訟であるが , 処分の効力の有無が争われているの で , 処分については民事保全法に規定する仮処分をすることができない ( 行政事件訴訟法 44 条 ) 。 なお , 執行停止の規定も準用されない ( 行政事件訴訟法 45 条 ) 。ゆえに , 争点訴訟において仮の 救済制度が機能していないところに問題があると指摘されている。したがって , 本肢は誤ってい る。 2 . 誤り。仮の義務付けおよび仮の差止めは , 申立てを受け , 決定をもって行われる ( 行政事件訴 訟法 37 条の 5 第 1 項 , 2 項 ) 。よって , 本肢前半部分は正しい。決定は , あらかじめ , 当事者の 意見をきいたうえであれば , 口頭弁論を経ないですることができる ( 行政事件訴訟法 37 条の 5 第 4 項・ 25 条 6 項 ) 。したがって , 決定はあらかじめ当事者の意見をきいたうえで口頭弁論を経て 行われなければならないわけではないので , 本肢は誤っている。 3 . 正しい。当事者訴訟のうち , 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関 する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものは , 形式的当事者訴 訟である ( 行政事件訴訟法 4 条前段 ) 。形式的当事者訴訟には , 執行停止の規定が準用されない。 また , 民事保全法の仮処分をすることができないので , 肢 1 と同様の問題がある。したがって , 本肢は正しい。 4 . 誤り。仮の義務付けおよび仮の差止めについては , 内閣総理大臣の異議の規定が準用される ( 行政事件訴訟法 37 条の 5 第 4 項・ 27 条 ) 。したがって , 申立てがあった場合には , 内閣総理大臣 は , 裁判所に対し , 異議を述べることができるのみならず , 仮の義務付けおよび仮の差止めの決 定があった後においても異議を述べることができるから , 本肢は誤っている。 5 . 誤り。不作為の違法確認訴訟には執行停止の規定が準用されていない。申請に対して何らの処 分も行われない場合であるから , 回復すべき原状 , すなわち執行停止の利益がないからである。 問題 18 したがって , 本肢は誤っている。 ノノ / 2 硼 5 不動産法律セミナー