ちりよ、つ さらに、第五には、治療する手立てがない。狂牛病とわかったらあきらめるしかないー とくちょ、つ この五つの特徴の中でも、特に注目しなければならないのが二番めだ。 ふつう 普通、病気というのは人間という生物と、体の中に入った他の生物との戦いだ。でも、狂牛 病はちがう。この病気の原因は「プリオン」というタンパク質と考えられているようだが、タ ンパク質は無生物である。それも人間や動物の体を作るのに必要なタンパク質の一種なのだ。 じよ、つしき 「体に必要なタンパク質」が「病気のもと」になるこれまでの常識では考えられない まだわからないことが多いが、今のところ狂牛病の原因は次のように考えられている。 狂牛病の原因になる「プリオン」は人間や動物の体の中に普通にあるタンパク質でコイルの ひょうし ような形をしている。このプリオンが何かの拍子にその形を変えて「変性プリオン」になる。 そしてこの変性プリオンが発生すると、そばの「正常プリオン」を次々と変性プリオンに変え 、えいきよ、つ 悪い友達には影響されやすい。そのタンパク質版 私たち人間も、朱に交われば赤くなり、 さいば、つあな である。次々と変性プリオンが増え、それが脳にたまると、脳の細胞に穴が空いて細胞を殺し いく。どんどん細胞が死んでいくので脳がスカスカになる。 しゅ
草がなくなれは、草食動物はあきらめて「自分」が死ぬ。 ′」、つも、つ もともと、獰猛な動物でもめったなことでは共食いをしない。食料が尽きて、一度に大量の 動物が餓死するようなときでも、同し仲間の動物は食べない。 いよいよ、お腹がすいて死ぬと 思っても、そはで死んでいる仲間を食べることはない。 同じ種を殺すのは人間だけ。戦争するのも人間だけ。 にくこつぶん かんきよ、つ だから、ウシの肉骨粉という自然にはない環境を人間が作り出し、そんな環境の中で「変 性プリオン」という新しいタンハク質が生まれたのかもしれない。狂牛病というのは少しでも 多くの肉を製造したいという人間の欲望が、形を変えて出てきたもののように思える。バイソ がり はねかざ しゆっげ・き ン狩に羽飾りをつけて出撃したアメリカ先住民の若者のように、食べるものを与えてくれる 自然に感謝する気持ちがあれば、共食いを強制するような肉骨粉自体がなかっただろう。 狂牛病が発見される前、周囲の自然が少しすつおかしくなってきていることに最初に気づい たのは、アメリカの動物生態学者レイチェル・カーソンという人である。彼女が一九六三年に ちんもく 出した『沈黙の春』という本はすごい かんきよう だれ 今でこそ、みんなが「環境」に関心をよせているけれど、 いまから四〇年前には誰も「環