じよう 世界の声を先どりした第 9 条 先生「つづけて 9 条の話をしようか。まず 9 条を読ん でみよう。」 みゆき ほうき こうせんけん 美幸「はい。第 9 条【戦争の放棄、戦力及び交戦権 せいぎちつじよ ひにん の否認】①日本国民は、正義と秩序を基調とする国 せいじつ ききゅう 際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武 かいけつ 力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決す ぜんこう しゆだん えいきゅう る手段としては、永久にこれを放棄する。②前項の目 じよう せんそう およ きちょう こくみん こくさいふんそう いかくまた りよく じ みと 的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保 りくかいくうぐん てきたっ いうこと、そして 3 つめに国の交戦権を認めないという の行使はしないということ。 2 つめに戦力をもたないと を言っている。ひとつは戦争や武力による威嚇、武力 先生「そうだね。これはかんたんに言うと、 3 つのこと 持しない。国の交戦権は、これを認めない」 ことだ」 ようじ じゅうよう 洋ニ「短い文章だけれど、すごく重要なことが書いて あると思う」 しゅぎ 18 ゆういち ですか ? 」 祐ー「世界の歴史のなかで生まれたってどういうこと ん生まれたものではないんだ」 は世界の歴史の流れのなかで生まれたもので、とつぜ れきし いう形で明確にした、先駆的な憲法なんだ。でもこれ せんくてき めいかく と武力行使を放棄し、それを一切の戦力をもたないと 先生「そうなんだよ。日本国憲法の平和主義は、戦争 先生「第一次世界大戦後にできた国際連盟は、平和 への歩みの大きな一歩だった。そして、 1928 年にで ふせんじようやく しんりやく かん きた不戦条約 ( 戦争放棄に関する条約 ) は、侵略戦 いほう かっきてき 争を違法なものとする画期的なものだった。しかし、ざ んねんながら第ニ次世界大戦が起こってしまった。な じえい ぜなら、自衛のための戦争をおこなうことは、国の正 けんり 当な権利とされていたからだ。第ニ次世界大戦ののち は、国際連合が生まれた。平和を維持することを目的 こくれんけんしよう とする世界的な機構だ。この国連憲章の前文は『わ せっ じんるい れらの一生のうちにニ度まで言語に絶する悲哀を人類 さんがい に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い』という 言葉ではじめられている。 そして、第 2 条の 4 項は次のように書かれている。 かめい くすべての加盟国は、その国際関係において、武力 による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保 ぜんまたせいじてきどくりつ 全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の つつし 目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎ま なけれはならない。〉」 洋ニ「あれ、なんだか 9 条とにてるね」 先生「そのとおりだ。国連憲章と 9 条の平和への願い は同じであり、日本国憲法の平和主義は、この世界史 的な反戦平和の流れをさらに大きく前進させたもの、 世界の声を先どりしたものと考えていいだろう」 れんめい ひあい しようらい りようどほ いかく
せいぞん けんり 平和のうちに生存する権利 まつおか しようかい けんばうせんもん お 3 人は、松岡先生の紹介で、大学の憲法専門の小 ざわりゆういち 沢隆一先生に話を聞きにいった。 先生「よく来てくれたね。憲法を勉強しているんだっ て ? どんな話が聞きたいのかな ? 」 みゆき えいきよう 美幸「 9 . 11 テロで日本も大きな影響を受けて、その じえいたい 後、自衛隊を海外に出すことになりました」 ようじ くうばく 洋ニ「アメリカのアフカニスタンへの空爆なども知 しゅぎ り、日本の憲法の平和主義について、あらためて考え てみたいと思ったんです」 先生「なるほどね、ではまず、憲法の平和主義の話を しよう。憲法の前文には、平和についてはなんて書い てあったかな ? 」 だんらく せし、ふ ふたた 美幸「はじめの段落では、『政府の行為によって再び せんそう さんか 戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意 し』とあって、その次の段落はほとんど平和について 書いてあります。 こくみん こうきゅう ねんがん 『日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の かんけい すうこう じかく 関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであっ しんぎ しょこくみん しんらい て、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、わ せいぞん れらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、 せんせいれいじゅうあつばくへんきよう 平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から えいえんじよきょ 永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名 そうご しはい こくさい っと めい 16 よ 誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国 けつほう 民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに せいぞん けんり かくにん 生存する権利を有することを確認する』」 きほんてき 先生「よく読めたね。前文は、憲法を支える基本的な 考え方を示しているんだ。だから憲法全体が、この前 文の考え方でつくられているということだ。平和主義に ついていうと、前文のなかの『平和のうちに生存する 権利』というのが大事なんだよ」 洋ニ「前文って、たんなる前書きとはちがうんですね。 その『平和のうちに生存する権利』って、どういうこと ですか ? 」 けいけん 先生「これは、 2 度の大きな世界戦争を経験した人類 が、今まさに模索している新しい権利だといえる。人間 は平和のなかで生きることができなければ、自由や平 ほしよう 等という他の権利があっても現実には保障されない。 じんけんしんがい 戦争で殺される人は最大の人権侵害を受けるわけだ ふびようどう よくあっ し、国内にひどい人権抑圧や不平等をかかえている 国は戦争をひき起こしやすい。『平和のうちに生存する 権利』とは、戦争と平和の問題を国家まかせにしない きょひ で、戦争を人権侵害として拒否するということなんだ ね。そして、憲法第 9 条は『平和のうちに生存する権 利』を具体化した条文と言えるんだ」 し まぬ きようふ ささ もさく げんじつ さいだい じよう じようぶん
けんばう 身近にある憲法 まつおか 松岡先生の、「日常生活から憲法を見てみよう」と じゅぎよう いう授業があった。人間が生まれてから死んでいくま じようぶん でに、どんなふうに憲法の条文とかかわるかについて もとびようどう 勉強をした。第 14 条の「法の下の平等」、第 20 条の しんきよう じんそんげんりようせい 「信教の自由」、第 24 条の「個人の尊厳と両性の本 しってき けんこう ぶんかてき 質的平等」、第 25 条の「健康で文化的な生活」など、 ようじ いろいろな条文が日常生活とかかわっている。洋ニ は、憲法というのは身近なものなのだと感じた。それか ら、憲法と日常生活のこととをむすびつけて考えるよう になった。 みゆき 美幸「麻里さんのこと、クラスのみんながいじめてい るよね。ちょっとひどいんじゃない ? 」 ゆういち 祐ー「あいつ、はっきりしないからさあ、なんとなくイラ イラしくるんだよ」 美幸「でも、あからさまにさけて通ったりしなくてもいい じゃない」 祐ー「きっかけはさ、このあいだの『王様ゲーム』な したが んだ。トランプで勝った人の言うことに、みんなが従 うゲームさ。女王様になった子が、そうしようって言っ たんだ」 美幸「なにが王様、女王様よ。わたしたちは、みんな 平等なのよ」 けんぼう にちじよう ほん 6 こくみん 洋ニ「ねえ、そのことって憲法 13 条の『すべて国民 そんちょう は、個人として尊重される』ってこととかかわりがある んじゃないかな。いじめは、憲法から考えても問題じゃ ない ? 」 祐ー「いじめと憲法 ? あのさあ、すべてが憲法で解 けつ 決できるもんじゃないだろ」 美幸「いじめのことを憲法にむすびつけて考えてみる のはいいことかもしれないよ」 洋ニ「そうだよ。クラスで話しあうきっかけになるん じゃないかな」 松岡先生は、ばくたちの話を聞いてうなずいた。 松岡「いじめのことを、憲法とむすびつけて考えること おざわりゆういち はすばらしいことだよ。ぼくが習った小沢隆一先生は、 じんけん 人権についてこう言っているんだ。 『人権というのはく人間が人間らしい生活をするた けんり めに、生まれながらにもっている権利〉であり、日本国 およ 憲法では、第 3 章〈国民の権利及び義務〉にくわしく 定めている。いじめられている子の人権を考えること は、この憲法をわたしたちがしつかりと自分のものにす るうえで大切なことだ。憲法は、自由や平等、人間ら たたか しい生活をもとめる世界中の人びとの、長い闘いのな せんせいせいじ かから生まれた。人権が生まれる前は国王が専制政治 かい ぎむ
けんぼう あたらしい憲法のはなし けんぼう かんけい 3 人は、図書館で憲法に関係のある本を調べた。 おこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、 ふつかん 『復刊あたらしい憲法のはなし』というとてもわかりや じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめた まつおか すい本があった。 3 人は、その本をもって松岡先生の のです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようと ところへ行った。 いうのです』」 じよう 松岡「まさにそこは憲法 9 条の内容だね」 よくねんもんぶしよう みゆき 美幸「この本は、憲法ができた翌年に文部省がつ 洋ニ「こういう考え方をしたら憲法に誇りがもてるし、 くったもので、中学 1 年生の社会科の教科書として 世界の国々にもアピールできるんじゃないかなあと思 使ったらしいんです」 うんだ」 れきし 松岡「そうだね。ばくも高校生のとき読んだよ」 松岡「世界の憲法の歴史をみても、国家が自分から ゆういち せんげん ぐんたい 祐ー「なんだ、先生、知ってたのか」 『今後いっさいの軍隊・戦力をもちません』と宣言する いんしよう ふせんじようやくいこう 松岡「祐ーくんはどこが印象にのこったんだい ? 」 ことはなかったんだ。 1928 年の不戦条約以降、戦争 せんそう ほうき いほう きてい 祐ー「やつばり『戦争の放棄』のところかな。こんな を違法であると規定する憲法は、いくつかの国で見ら ふうに書いてあるんだ れるようにはなったけれど、戦力をもたないというとこ てってい 『こんどの憲法では、日本の国が、けっしてニ度と戦 ろまで徹底した憲法はなかったんだよ」 美幸「 9 条は、世界に誇れるということですね」 争をしないように、ニつのことをきめました。その一つ へいたい ぐんかんひこうき 松岡「そうだね。この本には『じぶんの国のためばか は、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするための ものは、いっさいもたないということです。 りを考えて、ほかの国の立場を考えないでは、世界中 これは 戦力の放棄といいます。く放棄〉とは、〈すててしまう〉 の国が、なかよくしてゆくことはできません。世界中の ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思 国が、いくさをしないで、なかよくやってゆくことを、国 さいへいわしゅぎ 際平和主義といいます』とも書いてある。憲法には、 うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国より ちえ さきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強い 世界に誇れる国になるための知恵も入っているんじゃ あらそ ものはありません。もうーっは、よその国と争いごとが ないかな。もう一度、ていねいに読み直してみたいね」 ないよう 0 20
せんそう 男らしさと戦争 みゆき せんそう まつおか 美幸は、ジェンダーが戦争とかかわりがあると松岡 先生にきいたので、調べてみようと思った。ジェンダー てき とは、身体的な男女の性のちがいでなく、社会的につ せいさ くられた性差のことで、「男らしさ、女らしさ」という言葉 けんぼう でよく表わされる。『憲法と戦争』という本を読んで、 美幸は作者であるダグラス・ラミスさんに、思いきって 電話をしてみた。 美幸「ラミスさんは『憲法と戦争』のなかで、自分の かいへいたい たいけん 海兵隊時代の体験をもとにしながら、男らしさと戦争に せい ついて書かれていますね」 ぐんたい 26 か 殺すことが重要であるらしいのです。女性的なものと じゅうよう へつくり変えるためには、いわゆるく女性的なもの〉を じよせいてき ラミス「『人を殺せない人間』から『人を殺せる人間』 ことですね。どんな基礎訓練をするのですか ? 」 美幸「人を殺せるようにするなんて、とてもおそろしい できませんから」 ですね。普通の人には、人を殺すということはなかなか ふつつ 隊で大事なのは、人を殺せるようにするということなの ようにするというのもその一つですが、それ以前に軍 いぜん 的をもって行われました。機関銃などの武器を扱える あっか てき きかんじゅう 入った青年に基礎訓練をほどこす場合、いろいろな目 きそくんれん ラミス「はい。わたしが海兵隊にいた当時、軍隊に は、人間の気持ちのなかで弱い部分やまよう部分だ と、軍は思いこんでいるのです。たとえば兵士たちが ちょっとでも弱い部分を見せると、『おまえたちは女か』 といった言い方で責めるのです」 美幸「どうして、女性的なものを殺すのですか ? 」 たいしつ きほん ラミス「それが軍隊の体質です。軍隊は基本的に男 しゅうだん の集団、男の団体です。男らしさを強調するのは、戦 いに向かわせるためです。戦争をするということと、女 性を軽蔑するということはどこかでつながりがあるので す。『どうした、お前は女か』とバカにした言いかたで へいし せ たたか けいべつ * 参考『憲法と戦争』 (). ダグラス・ラミス ) ラミス「そのとおりだと思います」 れないものだと思いました」 の平和主義は『男らしさ』を押しつける考えとは、相い お しゅぎ 言葉だったのですね。お話を聞いていて、日本国憲法 いい』とも思えるんですが、軍隊に利用されるような りよう 美幸「男らしいという言葉は、ちょっと聞くと『かっこ が訓練の非常に重要な部分なのです」 ひじよう される強い兵士にならなければならないのです。それ から、まよわない強い人間、男らしいという言葉に代表 なろうとするのです。まよいがあっては人を殺せません ずかしくなって、それをふつきって、強くて男らしい男に なぶると、兵士たちは自分のなかの女性的な部分がは
しゅちょう せんしゅ サッカー選手は主張する ゆういち スポーツ好きの祐ーは、社会の時間にこっそりス に終わりがなくなる』 ( * 1 ) 」 まつおか ポーツ雑誌を見ていた。それを見つけた松岡先生は、 祐ー「へえ、すごいな」 しよくいんしつ 松岡「中田選手だけではない。ユーゴのストイコビッ 祐ーを職員室によんだ。 チ選手も同じようなことを主張している。 1993 年 3 月 ぐん 松岡「祐ーくんはサッカーがとても好きらしいけれど、 24 日、 NATO 軍によるユーコ空爆がはじまったとき、 しようらい せんしゅ もし将来サッカー選手になっても、社会について、平 ストイコヒッチ選手やマスロバル選手らは、日本人記 だん 和について考えてほしいんだ。だから授業中はちゃん 者団を前に空爆反対をうったえ、最後にこうしめくくっ と授業を受けること ! これを見てごらん」 たそうだよ。 わたくし しんねん 祐ー「あ、中田選手だ ! 」 『私が心から信念として持っているのは、くすべて そうごうてき けんぼう 松岡「そうだよ。きみは総合的学習で、テロや事法に の出来事は、平和的な方法をもって解決できる。すべ かれ ほうふくせんそう ついて調べているけど、彼は今回のテロ報復戦争に ての出来事は、平和的な方法をもって解決しなくては しつもん ならない〉、そういうことです』 ( * 2 ) 」 対して、イタリアの地元マスコミの質問にこう答えてい る。 ゆいいつかいけつほう 『唯一の解決法は、話し合いだ。大切なのはみんな 祐ーは、あこかれの中田選手がテロについて発言 が地球の住人だと考えることだ。現在起こっているこ をしていることを知っておどろいた。いろいろな人たち とは、平和に生きるためにまだたくさん学ばなければな が、テロや憲法について考えていることを知り、もっと 自分も調べてみたいと思うようになった。 らないことかあることを示している。米国もアフカンも いつばん かんけい ヒンラディンも、一般の関係ない人を殺すという点で まちが わす ふくしゅう 間違っている。復讐は正当なことではないことを忘れ ばくだんえら はなあ てはならない。米国は、話し合いより、爆弾を選んだ。 * 1 『スポーツを殺すもの』 ( 谷口源太郎 ) より じゅうミん * 2 悪者見参』 ( 木村元彦 ) より ミサイルや銃弾より、言葉を役立たせなければ、戦争 ざっし くうばく くうばく じゅぎよう げんざい 10
そうごうてき 「総合的な学習の時間」 そうごうてき 洋ニは中学 3 年生。洋ニの通う学校では、「総合的 『戦争が答えではない、戦争という暴力はみとめられ ゆういちみゆき ない』という立場で、世界中からいろいろな分野の人 な学習の時間」がはじまった。洋ニは、祐ーと美幸と の声を集めて本をつくったんだよ。坂本龍ーさんは、 9 グループをつくり、テーマを決めて学習をすすめていく 月 22 日の朝日新聞でこう言っている。 ことにした。 『もし日本の首相が憲法に基づいて戦争反対を表明 3 人は、 20 0 1 年にアメリカで起きた 9 . 1 1 テロに ちゅうかいてきやくわり かいけつ し、平和的解決のための何らかの仲介的役割を引き 興味をもったのだが、なにをどうやって調べていくか まつおか 受ければ、世界に対して大きなメッセージを発し、日本 まよっていた。そこで、社会科の松岡先生に相談に の存在を大きく示すことができたはずだ。その絶好の いった。 おそ 機会を逸してしまったが、まだ遅くはない。これは日本 こくさい せいき のためだけではなく、 21 世紀の国際社会への大きな 洋ニ「 9 .11 テロについて調べてみたいと思っている 貢献となるはずだ。』」 んです」 祐ー「へえ、ミューシシャンもテロや憲法について考 美幸「この事件があって、日本も変わってきたと思う じえいたい えているんだね」 から。たとえば、自衛隊が海外に出たり・・・ 洋ニ「 9.11 テロと憲法のことか。ちょっとむずかしそう 松岡「事件のことだけ調べたいの ? 」 だけど調べてみようか」 裕一「それだけじゃ、なにかものたりない気がしたんで 美幸「平和と戦争についても考えてみたい」 けんぼうかんれん 松岡「それぞれ自分が興味をもったことから調べてみ 松岡「そうだね。では、憲法と関連づけて調べてみた たらどうだい ? 」 ら ? 」 3 人「はい」 洋ニ「憲法と ? なんかむずかしそうな気かするなあ」 さかもとりゆういち 松岡「ミュージシャンの坂本龍ーさんを知ってるか ほうふくせんそう かれ こうして 3 人の「総合的な学習の時間」がはじまっ い ? 彼は、アメリカが報復戦争をはじめたのをきっか かんしゅう ひせん けに『非戦』という本を監修したんだ。 9.11 テロ後、 ほうりよく せんそう じ もと きようみ ぜっこう そんざい きかい こうけん じけん 0 4
じえいたい 海を越える自衛隊 ほうふくこうげき 9.11 テロとアメリカの報復攻撃がはじまったことか ほうりつ せし、小 ら、日本の政府は法律をつくり、それまで日本国内で じえいたい ぐんしえん 活動していた自衛隊を、アメリカ軍支援のために海外 はけん せんそう へ派遣させた。自衛隊が、戦争をしているところへはじ ようじ めて出ていったのだ。洋ニたちはこのことについて話 しあった。 洋ニ「自衛隊がアメリカの後方支援をして海外に出て けんぼう いったのは、憲法に違反していると思うよ」 ゆういち 祐ー「 9 . 1 1 テロであれだけの人が死んだのだから、 アメリカの報復はしようがないよ。テロをなくすために 日本もなにかしないといけないと思う」 みゆき 美幸「アフガニスタンでもたくさんの人が死んで、そ かんけい のなかには、テロとは関係のない人もいたのよ」 祐ー「でも、日本にはアメリカ軍の基地があって、そ れによって日本の安全も守られているんだから、アメリ きようりよく 力が戦争をしたら、せめて物資を送るぐらいの協力は 当然じゃない ? 」 美幸「物資を送るのも、戦争の一部よね」 せつきよくてき 洋ニ「戦争とはちがう支援を、積極的にやるべきじゃ ないかな」 祐ー「それはそれで大切だけど、アメリカとの関係は 大きいからな」 いはん ぶつし 22 美幸「アメリカとの関係を考えるだけでいいのかな。 アジアやほかの国との関係はどうなの ? 」 洋ニ「日本は戦争をニ度としないという憲法をつくり、 平和な国づくりをすすめてきたよね。自衛隊がアメリカ せいしん 軍を支援することは、憲法の精神に反していると思う おざわりういち 小沢隆一先生のコメント 20 0 1 年 1 1 月 2 日、 9 . 1 1 テロをきっかけにしたア ふりよく こおう フガニスタンへのアメリカの武力攻撃に呼応して、日 たいさくとくべっそちほう せいてい 本では「テロ対策特別措置法」が制定された。この法 じっしつしんぎ ちょう 律は、国会での実質審議が約 10 日という超スピード かんせん で成立したものだ。この法律によって、自衛隊の艦船 ほきゅう がインド洋に派遣され、アメリカ軍艦に対して補給活 げんじっせんとう 動を行っている。自衛隊が現実の戦闘にかかわるとい うのは、自衛隊がつくられて以来はじめてのことだ。 じゅうよう 重要なのはこれが「自衛」ではなく、「海外派兵」と いう形で行われたことだ。場所からしても「自衛」をす る場所ではないね。これは、アメリカの戦争を後方から 支援するということだから、憲法の平和主義から言って も大きな問題となるだろう。 はヘい
うれ そな 「備えあれば憂いなし」というけれど そな 洋ニ「昨日、テレヒで小泉首相が『備えあれば憂い ゆうじほうせい うれ きのう こいずみしゅしよう ようじ 24 ほうりよく し、っち しゅぎ じゅんび たたか いじゃないか」 かのいい友だちにはかんたんに暴力なんてふるわな することが必要じゃないかなフ友だち関係だって、な かんけい ひつよう 洋ニ「なぐられる心配をするより、なぐられないように ないこともあるだろう ? 」 祐ー「また憲法か。憲法の平和主義と現実とは一致し げんじつ の平和主義ってそういうことじゃないと思うんだ」 やり返されて、どんどん広がっていってしまうよ。憲法 けんぼう 洋ニ「そうかな。だれかといっしょにやり返したら、また だってアメリカに守ってもらえるんじゃない ? 」 祐ー「そういうときはだれかに助けてもらえば ? 日本 強いからそう言えるんじゃない ? 」 美幸「わたしはなぐられてもなぐり返せないよ。祐ーは ぐり返すよ。それは正当防衛だろ」 せいとうぼうえい 祐ー「そうかい ? だれかがなぐってきたら、おれはな 洋ニ「それって戦争の準備をすることだろう ? 」 のための準備をしておくことじゃないの ? 」 祐ー「日本もテロにねらわれる可能性はあるから、そ かのうせい ゆういち たときのこと ? 」 美幸「わたしも見た。いざというときって戦争が起こっ せんそう みゆき 衛隊が戦えるようにするということらしいね」 えし、たし、 なし』と言っていたよ。有事法制は、いさというとき自 ほうふくこうげき 美幸「そうよね。たとえばアメリカの報復攻撃のあと、 いろいろな人がアフガニスタンに対して援助をしたよ えんじよ ね。苦しんでいる人のために援助することは、日本の やれることのひとつじゃない ? 」 なかだ 洋ニ「そう。国と国との仲立ちをするとか、平和国家と さぐ してできることを探ったらいいと思うんだよ」 おざわりゆういち ・小沢隆一先生のコメント ここで考えてほしいのは、「日本がねらわれる可能 性」というけれど、日本をいきなり攻撃するような国が ほんとうにあると思うかい ? 日本のほうから攻撃する しせい 姿勢を示さないかぎり、そんな国はないんじゃないか けいざいてき な。少なくとも日本と経済的な取引の多い国や、日本 から経済援助を受けている国は、とても攻撃なんかで きないと、ぼくは思うよ。それと、 政府がつくろうと している有事法制は、じつは、日本が攻撃されたとき のための法律ではなくて、アメリカの戦争に日本の自 じちたいみんかん 衛隊が協力するさいに、国の機関や自治体、民間 きぎよう きようせいてき 企業にも強制的に協力させようという法律なんだ。 せいげん いはん こくみん じんけん 憲法第 9 条に違反し、国民の人権も大きく制限する こんな法律は、「備えあれば憂いなし」どころか、むし きけん ろ戦争の危険を生みだすものではないかな。 せし、ふ きかん きようりよく じよう