六法全書司 8 ・、 円呈円薫円 7 円呈円円 0 贈 旧 0 、冫録 O 田 0 00 録 1 以 5 5 ☆ 2 抜 税 六 ] 法ん法 版 格 会 六法験六委 価 員 新 委 、類六試育産 表 修 編呈 可 , 一員教財 編去法贈 六録 範〈利務説 4 9 模☆模デ公一 = 解「 3 2 〔編修代表〕位田隆一・最上敏樹 3 コンサイス条約集第 2 版 1 、 500 円 3 類型別中小企業のための会社法第 , 版柴田和史〔著〕 2 、 88 円 2016 全国憲法研究会〔編〕 2 、 600 円 憲法間題 % 姉崎洋一・荒牧重人ほか〔編〕 2 、 800 円 ガイドブック教育法新訂版 区 はじめての憲法学第 3 版中村睦男〔編著〕 2 、 68 円 畠山武道・下井康史〔編著〕 刊はじめての行政法第 3 版 3 、 300 円 京い師 第 2 版田山輝明〔著〕 2 、 300 円 成年後見読本 8 」」これまでとこれから 4 、 000 円 5 ム新 滝沢聿代〔著〕 刊選択的夫婦氏 堂海洋カハナンスの国際法 " 。 杉原高嶺・酒井啓亘〔編〕 2 、つ ~ 00 円 省国際法基本判例 , 三省堂編修所〔編〕 三ディリー法学用語辞典 1 、 CDOO 円 重要改正を織り込んだ最新の内容法令集の決定版・好評 * 発売中・ 編集代表 = 山下友信・山口厚 * 収録法令 856 件 ( 参照条文付き法令 48 件 ) マイナンバー法施行令 , 行政不服審査法施行令 , 国際平 和支援法 , 水銀汚染防止法 , 民事再生法施行規則 , 労働者職務対 応待遇確保法 , 女性活躍推進法 , 公正取引委員会意見聴取規則 , 消費者裁判手続特例規則 , 意匠国際登録ジュネープ改正協定。 個人情報保護法 , マイナンバー法 , 道路交通法 , 会社 法施行規則 , 民事訴訟規則 , 労働者派遣法 , 金融商品取引法 , 特 孵ー改正瀇 ! 人定所器改い入 許法 , 不正競争防止法。 前年版から改正のあった条文の条名に傍線を付し , 改 ・ー難レ , 第ⅱ録物・ 正の有無をわかりやすくした。 匯有難 * 巻末付録全国裁判所管轄区域表 , 各種手数料等一覧表 購入者限定「六法全書電子版」無料閲覧サービス昭和 32 年版から本年版までの六法全書が閲覧できる ! * 閲覧期間は平成 29 年 3 月 31 日まで Windows, Mac, iPad 対応 〒 101- 開 51 東京都千代田区神田神保町 2-17 http://www.yuhikaku.co.jp/ TeI : 03-3265-6811 Fax : 03-3262-8035 ( 営業部 ) ( 表示価格は税別 ) 菊判上製箱入・二分冊 6 , 548 頁 ・ 1 2 , 000 円 + 税 978-4-641-10476-1 主な特徴 六法全書 六法書 有斐閣匯
確かに , 国際的な広がりを持つ複雑かっ多様な取引 について , 商品・役務の需要者を取引の形式的な側面 だけで判断すると , 実態と乖離した法規制となること が懸念される。そのため , 問題となる取引やその取引 をめぐる競争の実態に即して需要者を判断する必要が 認められる。このことを踏まえれば , カルテル合意に よって取引に係る価格交渉・決定の自由が侵害される ことになれば , 市場が有する競争機能が損なわれるこ ととなるのだから , この取引に係る決定権限の所在に 着目して日本親会社を市場における一方当事者とした のも理解できる点はある ( どの取引に影響を与える意 図があったかに着目して同様の結論を導く見解とし て , 越知保見・ジュリ 1488 号 113 頁 ) 。 しかし , この一方当事者を特定するためには , 取引 を実際に行った者は誰であるかという外形的・形式的 な側面に加えて , 取引の相手方の認識 , 取引条件の決 定権限の所在 , 取引による利益の帰属や責任の所在 , 取引の対象となる商品の製造者 , 所有者等の諸々の事 情を勘案の上 , 取引の実態に即して判断される必要が ある ( 審判審決平成 23 ・ 3 ・ 9 審決集 57 巻 1 分冊 471 頁〔クボタ鋼管杭カルテル〕 ) 。これらの考慮要素は違 反行為者たる供給者を特定する目的で示されたもので はあるが , 本件のような販売価格カルテルでは , 供給 者の自由意思が相互に制約されているかが問題なので あって , 需要者の意思決定権限の所在は不当な取引制 限の要件からみて重要とは言い難い。独占禁止法 2 条 4 項の「競争」の定義に照らせば , 需要者とは供 給を受ける者を指し , 供給を受ける者との評価に際し ては , 行為主体要素としての「取引条件の決定権限の 所在」よりも「取引による利益の帰属や責任の所在」 の方が重要な考慮要素となると考えられる ( 同旨とし て , 植木俊哉編・グローバル化時代の国際法 91 頁 ~ 92 頁 [ 滝澤紗矢子 ] ) 。 ところが , 本判決は「取引条件の決定権限の所在」 を主たる要因として結論を導く一方 , 「取引による利 益の帰属や責任の所在」について全く言及していな い。本件では , 実際に取引を行った外国子会社の法人 格を事実上否認し , 契約の当事者といえない日本親会 社を取引の「需要者」として法適用するというのだか ら , 少なくとも上記考慮要素を検討しない限り , 取引 や競争の実態が適切に考慮されたとはいえないように 思われる ( 本件審決の小田切委員による補足意見も , この点に懸念を示したものであったと理解できる ) 。 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 98 また , 本判決で用いた市場画定手法は , 拘東カを 持って有効に機能している共同行為の存在それ自体が 競争を実質的に制限するものであることの推認を可能 ならしめる ( 今村成和・独占禁止法〔新版〕 64 頁 ~ 65 頁 ) という趣旨から認められるものである。これ を競争機能が損なわれる原因から逆算して需要者を特 定し , 本件合意の対象とすることで , 市場を画定する という手法と理解し , 需要者が日本所在であるため地 理的範囲も日本だと単純に結論付けるのは , 法解釈と して適切とは言い難い。この点は , 談合事案における 最判平成 24 ・ 2 ・ 20 民集 66 巻 2 号 796 頁〔多摩談 合〕でも一般的には採用しなかった市場画定手法を国 際カルテル事案で安易に用いた結果ともいえ , この最 判の調査官解説 ( 古田孝夫・最判解民事篇平成 24 年 度 201 頁 ) が懸念を示したように , 本件はより一般 的かっ客観的な観点から市場画定されるべき事案では なかったか ( 泉水文雄・ NBL 1062 号 64 頁 ~ 66 頁 は , 本件審決で画定された市場が実際よりも狭い点を 批判する ) 。入札を通じて競争関係も取引関係も単純 になりやすい談合事案と , 商社が介在するなど流通経 路が多様で競争関係も複雑なカルテル事案とでは , 供 給余力・参入等の競争圧力を検証する必要性にも差が あるのであって , 市場画定もより客観的に行われるべ きである ( カルテル事案で市場画定の問題が生じてい る他の事例として , 審判審決平成 27 ・ 9 ・ 30 公取委 HP 〔日本ェア・リキード〕 ) 。特に , 地理的範囲の画 定が重要な意味を持っ域外適用事案において , カルテ ル合意の対象から主観的な市場画定を行うのは , 結論 をミスリードすることに繋がり適当とはいえない。 Ⅲ . 管轄権の牴触に関する問題 本件合意が日本親会社を対象にしていたとする本判 決の構成は , 競争法の域外適用をめぐる国家管轄権の 牴触についての考え方にも影響を与える。 日本親会社を需要者とすることで管轄権の問題を回 避しようとした本件審決に対しては , 効果主義の議論 を事実上取り込んでいる ( 平山賢太郎・ジュリ 1484 号 7 頁 ) とか , 国際法上疑義ある受動的属人主義の 系譜に連なるもの ( 土田和博・公正取引 778 号 59 頁 ) といった理解がなされてきた。これに対し , 本判 決では , 「本件合意に基づく本件交渉等における自由 競争制限という実行行為」が日本親会社を対象に行わ れているので , 効果主義の検討は不必要で , 我が国独
提出された意見を参考に原案が再検討され , 平 成 28 年 1 月 21 日に成案が公表された。 原案の公表当初は , 成案の公表は平成 27 年 秋頃が予定されていたが , 多くの意見が寄せら れたことから慎重に検討が進められ ( 担当官解 説脚注 4 ) , 平成 28 年 1 月 21 日まで時間がか かった。原案の公表後になされた各国の裁判所 や競争当局における判断との整合性を図ったこ とや , 後述するように , 原案に対して各方面か ら強い意見主張がなされ , できるだけ皆の理解 を得られる指針を制定しようと説明の時間を十 分にとったことも , 成案の公表に時間がかかっ た理由と推察される。 2. 本一部改正の背景の補足 本一部改正に関する実務的な背景について , 補足しておきたい。 ( 1 ) 標準規格必須特許に基づく権利行使 についての従前の議論 標準規格必須特許に基づく権利行使の効力に ついては , 世界各地において古くから議論がさ れてきたところであるが ( 例えば , 岡田誠「標 準必須特許の権利行使をめぐる米国の状況」 ジュリ 1458 号〔 2013 年〕 29 頁 ) , 近時は , 主 にスマートフォン等の電子通信分野における競 争の中で大きな問題となり , 各国の裁判所や競 争当局によって判断が出されるようになってい た。近時の各国の議論については , 池田・前掲 29 頁等を参照されたい。 日本においても , 標準規格必須特許に基づく 権利行使については , 特に , ライセンス交渉 や , 特許権の価値評価の場面等において , 当事 者の頭を悩ませる問題として , 従来から存在し ていた。近時 , 活発に議論される一つの契機と なったのは , アップル対サムスン知財高裁大合 議事件であろう ( 知財高裁平成 26 年 5 月 16 日 判決〔判時 2224 号 146 頁〕及び同日決定〔同 号 89 頁〕 ) 。同事件では , 標準規格必須特許に ついて FRAND 宣言がされた場合における効 力が主要な争点となり , 差止請求権について は , 相手方が FRAND 条件によるライセンス を受ける意思を有する者である場合には権利の 濫用 ( 民 1 条 3 項 ) に当たり許されない旨が判 示された。 同事件において , 知財高裁は , 極めて異例で あるが , 現行法の枠内で国内・国外に広く意見 を募集し , 各方面から多数の意見が寄せられ た。ライセンス契約を締結する意思のある実施 者について差止請求権は認容されるべきではな いとの意見が比較的多く見られたが , ライセン ス契約を締結する意思のない実施者に該当する かについての判断基準の詳細については , 軌を ーにする意見は見出せなかった , とのことであ る。また , 信義則や権利濫用の法理による制限 を行うべきとの意見も数多く見られ , また , 独 占禁止法を活用すべきとの意見もあったが , そ の数は少数であった , とのことである ( 同判 ②本一部改正に関する当事者の利害状況 この問題に関する当事者の利害としては様々 なものが考えられるが , 大きく賛成・反対のそ れぞれの立場を代表する利害状況としては , 以 下のようなものがあると思われる。 まず , 世界で製品を販売しているグローバル 企業においては , 主要国の中で日本にのみ , 標 準規格必須特許に基づく差止請求権を制限する 一般的なルールがないとすれば , 日本において 特許権に基づく差止請求権を行使され , 自社の 製品が差し止められるという甚大な被害を受け る可能性がある。したがって , 公正取引委員会 が本一部改正を行い , 標準規格必須特許に基づ く差止請求権を制限しうる場面について一般的 な規定を設けることは , このような企業にとっ ては非常に意味のあることである。 他方 , 特に , 特許権を多数有する企業におい ては , 実務上 , 極めて強力な力を持つ差止請求 権が制限されることにより , 大きな損失を被る 可能性がある。すなわち , 他国に比べて必ずし も損害賠償額が高額とはならない日本において は , 特許権の権利行使が効果的であるのは , 差 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 59
、 ~ 、、。有斐閣 〒 101 ー 851 東京都千代田区神田神保町 2 ー 17 Tel : ()3 ー 3265 ー 6811 / Fax : 03 ー 3262 ー 8035 ( 営業部 ) ※表示価格は税別です。 http://www.yuhikaku.co.jp/ ・出版案内・ 東京大学教授・慶應義塾大学教授・東京大学教授・東北大学教授 中里実・佐藤英明・増井良啓・渋谷雅弘編 なかざとみのるさとうひであきますいよしひろ 別冊ジュリスト 228 号 ( 6 月中旬発売予定 ) しぶやまさひろ おける参照資料としても活用できる。収載判例を更新し , 法改正にも対応した最新版。 く検討事項〉を設け , 新たな視角から対象裁判例を再度考察できる。学習用のほか , 実務に 判例教材の定番シリーズ。く事実の概要〉く判旨〉く解説〉の構成に加え , 本書ではさらに 978 ー 4 ー 641 ー 1 1 529 ー 3 予価 2 , 600 円 + 税 240 頁 租税判例百選第 6 版 B 5 判並製 主 目 I 租税法序説 ( 1 ) 租税法律主義 ( 2 ) 租税公平主義 ( 3 ) 租税債権の性質 ( 4 ) 租税法の解釈と適用 Ⅱ租税実体法 ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) 課税要件総論 所得税 法人税 所得の年度帰属 国際課税 相続税・贈与税 ⑦消費税 ( 8 ) 流通税 ⑨固定資産税 ⑩附帯税 ( 11 ) 納税義務者の債権 Ⅲ租税手続法 租税争訟法 V 租税処罰法 資料 1 件 年月日別総索引 ( 判例解説 123 件 ) 別冊ジュリスト 227 号 いわむらまさひこ 岩村正彦編 東京大学教授 ( 発売中 ) B 5 判並製 社会保障判例百選第 5 版 244 頁 ・ 2 , 500 円 + 税 978 ー 4 ー 641 ー 1 1528 ー 6 社会保障分野における判例教材の決定版。 7 年ぶりの改訂となる第 5 版では , 第 4 版刊行以 降に出された重要判例を多数取り入れるとともに , 収録判例を更に厳選し件数を絞り込んだ。 新執筆陣のもと , 解説内容にも一層の充実を図った待望の 1 冊。 主 よ 目 次 生存権と生活保護基準 , 老齢加算廃止と生活保 護法・憲法 25 条 , 遺族補償年金と憲法 14 条など ( 11 件 ) Ⅱ医療保険 被保険者資格の喪失と保険給付 , 国民健康保険 税の減免要件 , 混合診療など ( 22 件 ) Ⅲ年金 障害基礎年金の支給要件と「初診日」の意義 , 厚生年金基金からの脱退など ( 14 件 ) 労災保険 上司とのトラブルを原因とする精神疾患の業務 起因性 , 特別加入の保険関係の成立 , 労災補償と 慰謝料など ( 23 件 ) V 雇用保険 雇用保険法上の労働者 , 雇用保険の基本手当受 給資格と被保険者期間の算定など ( 8 件 ) Ⅵ生活保護 永住外国人と生活保護法の適用 , 生活保護法に いう「世帯」の意義など ( 13 件 ) Ⅵ児童福祉・児童手当 市立保育所を廃止する条例の処分性など ( 8 件 ) Ⅷ障害者福祉・老人福祉・介護保険 障害者福祉サーピスの支給量など ( 14 件 ) 区被爆者援護等 在外被爆者の健康管理手当など ( 4 件 ) 計 117 件
れている中でした申込みの場合には , 他人に譲 渡等せずに自ら利用又は利益享受する意思を , ③反復的な取引関係等がある中での新規申込み の場合には , 従前の取引において当然の前提と なっている事実関係を守る旨の意思を , ④基本 契約等を前提にした個別契約の申込みの場合に は , 基本契約等で合意している事項を遵守する 意思を , それぞれ表示しているといえよう。 Ⅲ . 本判決の意義と位置付け 1 本判決の多数意見は , 「上記の事実関係の 下において , 暴力団関係者であるビジター利用 客が , 暴力団関係者であることを申告せずに , 一般の利用客と同様に , 氏名を含む所定事項を 偽りなく記入した『ビジター受付表』等をフロ ント係の従業員に提出して施設利用を申し込む 行為自体は , 申込者が当該ゴルフ場の施設を通 常の方法で利用し , 利用後に所定の料金を支払 う旨の意思を表すものではあるが , それ以上に 申込者が当然に暴力団関係者でないことまで表 しているとは認められない。そうすると , 本件 における被告人及び D による本件各ゴルフ場 の各施設利用申込み行為は , 詐欺罪にいう人を 欺く行為には当たらないというべきである」と 判示し , 挙動による欺罔行為性を否定した。 本判決の多数意見は , ゴルフ場が看板 , 約 款 , 利用細則等で暴力団関係者の施設利用を拒 絶する旨表示していたとしても , ビジター利用 客が施設利用を申し込む行為の意思解釈とし て , 原則的に , その本人が当該ゴルフ場の施設 を通常の利用方法 ( ゴルフのプレーによるコー ス利用 , 練習場での練習 , 食堂での飲食 , プ レー後の入浴等 ) で利用し , プレー後は料金を 支払う旨の意思を表示するものであって , それ 以上に申込者が暴力団関係者でないことを誓約 する旨の意思まで黙示的に表示しているとは認 められないと判断したものと解される。その前 提として , 被告人が施設利用を申し込む際に , フロント係の従業員から , 暴力団関係者でない 旨や , 暴力団関係者の施設利用を拒絶するとの 約款 , 利用細則等を遵守する旨を改めて確認さ 最高裁時の判例 れた事実はないこと , 被告人はビジター利用客 として自ら本件各ゴルフ場を利用したもので あって , 従前からの基本契約関係 ( 入会契約 , 会員契約 ) が存在していたわけでないこと , さ らに , 周辺のゴルフ場において , 本件各ゴルフ 場と同様に暴力団関係者の施設利用を拒絶する 旨の立看板等を設置し暴力団排除活動を推進し ながらも , 実際には暴力団関係者の施設利用を 許可又は黙認する例が複数あり , ゴルフ場の利 用客は当然に暴力団関係者でないといえる状況 になかったことなどが重視されたものと思われ る。 なお , 本判決には , 小貫芳信裁判官の反対意 見が付されている。同意見は , B 倶楽部の事件 については , 多数意見 ( 挙動による欺罔行為性 を否定して無罪 ) と同じであるが , C クラブの 事件については , 「同クラブは , ビジターのゴ ルフ場施設利用申込みにつき会員による紹介・ 同伴を原則としており , 会員の人物保証によっ て暴力団排除を実効性あるものにしようとして いた。このような措置を講じているゴルフ場に おける会員の紹介・同伴によるビジターの施設 利用申込みは , フロントにおいて申込みの事実 行為をした者が会員であるかビジターであるか にかかわらず , 紹介・同伴された者が暴力団関 係者でないことを会員によって保証された申込 みと評価することができるのであり , このよう な申込みは偽る行為に当たる」とし , 挙動によ る欺罔行為性を肯定している。 2 このように , 本判決は , 欺罔行為の内容 ( 財産的処分行為の判断の基礎となる重要な事 項か否か ) , 財産上の損害の有無を判断するこ となく , 挙動による欺罔行為性という観点か ら , 詐欺罪の成立範囲につき一定の限界を示し た事例であって , 重要な意義を有する。近時 , いわゆる法益関係的錯誤説等の立場から , 詐欺 罪の成立範囲の拡大傾向に懸念が示されており ( 佐伯仁志「詐欺罪 ( 1 ) 」法教 372 号 115 頁 , 橋 爪隆「詐欺罪 ( 下 ) 」法教 294 号 95 頁 , 西田典 之・刑法各論〔第 6 版〕 209 頁等 ) , 本判決は , そのような学界での議論状況にも沿うものと評 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 89
の重大な変化には主に企業移転 , 吸収合併 , 企 業資産の移転が含まれると労働部 5 ) は考えてい る。さらに実務上 , 経営悪化による事業部門の 廃止も客観的状況の重大な変化の 1 っとして考 えられる。 2. 経済的人員削減による労働契約解除 41 条は , 経済的人員削減の法定状況の 1 つ に該当し , 削減人数が 20 人以上 , あるいは削 減人数が 20 人に満たないが , 会社の全従業員 数の 10 % 以上に該当する場合 , 一定の手続を 踏まえたうえ , リストラを行うことができると 規定している。法定状況は , 以下のとおりであ る。 法定状況 1 : 企業破産法の規定に基づいて会 社の再編を行う場合 法定状況 2 : 生産・経営に重大な困難が発生 した場合 法定状況 3 : 企業が事業転換 , 重大な技術革 新 , 経営方式の調整によって , 労働契約の変 更後もなお , 人員削減の必要がある場合 法定状況 4 : その他労働契約締結時において 根拠とした客観的経済状況に重大な変化が生 じ , 労働契約を履行することができなくなっ た場合 3. 会社清算による労働契約の終了 44 条 5 号では , 使用者が営業許可証を取り 消され , 閉鎖を命じられ , 登記が抹消された場 1 ) 世澤律師事務所パートナー 2 ) 世澤律師事務所パートナー。また , 「虎門中央法律事 務所世澤外国法事務弁護士事務所 ( 外国法共同事業 ) 」に 所属する外国事務弁護士である。なお , 本稿は , 世澤律師事 務所の徐開元中国律師 , 朱誉鳴中国律師からの協力を得た。 また , 本稿の執筆にあたって , 西村あさひ法律事務所の野村 高志弁護士から全面的かっ適切なアドバイスをいただいた。 3 ) 本稿論述の便宜上 , 特別な説明がないかぎり , 以降 条数のみの場合 , 「労働契約法」の関連規定を意味する。 4 ) 「労働契約法」は労働契約の継続履行を強調してお り , 例え持分譲渡したとしても , 会社からの一方的な労働契 約の解除を許容しない。したがって , 持分譲渡はリストラの カテゴリに入れない。また , 破産解散は , 清算解散と同じく [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 36 合 , 又は使用者が繰上解散 ( 以下「清算」とい う ) を決定した場合 , 労働契約を終了する , と 規定している。したがって , 「公司法」及び会 社定款に規定する株主会 ( 株主総会 ) あるいは 董事会 ( 取締役会 ) が , 会社の清算を決定した 場合 , 会社は法に基づき , 従業員の労働契約期 間内に労働契約を終了することができる。 Ⅲ . リストラの法的手続及び留意点 リストラできる経営上の事由に法的根拠があ ると判断された場合 , その後どのような法的プ ロセスが必要とされるかについて , 以下検討す る。 1 . 客観的状況の重大な変化による 労働契約解除の法的手続 / 留意点 会社の客観的状況に重大な変化が生じ , 労働 契約を履行できない状況において , 会社は直ち に労働契約を一方的に解除することはできず , 労働者と協議のうえ , 労働契約を変更しなけれ ばならない。会社と従業員は労働契約の変更を 協議し , 合意に達した場合 , 双方は変更後の労 働契約を履行しなければならない。会社と従業 員が協議し , 合意できなかった場合 , 会社は労 働契約を一方的に解除することができる。 上記の労働契約の解除にあたっては , 会社は 30 日前に書面により労働者に事前通知しなけ ればならない。 30 日前に通知できない場合 , 1 カ月分の賃金を労働者に支払うことで , 事前通 44 条の適用となり , 法的手続が異なるが , 従業員対応の部 分においては , 類似のところが多い。 5 ) 「労働部による「労働法」の若干条項に関する説明」 ( 労弁発〔 1994 〕第 289 号 , 1994 年 9 月 5 日公布 , 1995 年 1 月 1 日施行 ) 26 条によれば , 本条の「客観的状況」とは不 可抗力又は労働契約の全部又は一部の条項を引き続き履行で きなくなる状況が生じた場合のこと , 例えば企業移転 , 吸収 合併 , 企業資産の移転等であり , かっ本法 27 条に掲げる客 観的状況を排除する。 6 ) 経済補償金の算出基準は法定されており , 基本的に は勤務年数が 6 カ月未満の場合は , 当該従業員の平均賃金 ( 直近 12 カ月の賃金総額の平均 ) の 0.5 カ月分 , 6 カ月以上 1 年未満の場合 , 当該従業員の平均賃金の 1 カ月分になる。
人又は未成年者がある者 一方 , 会社が経済的人員削減を行い , 6 カ月 以内に新たに人員を採用する場合 , 削減した人 員に通知し , 新たな人員と同等条件の下で削減 された人員を優先的に採用しなければならな 3. 会社の解散・清算による労働契約終了の 手続 / 留意点 会社の解散・清算による労働契約終了の法的 手続においては , 以下の点に注意する必要があ る。 ( 1 ) 解散事由の存在 会社に解散事由が存在することは , 会社が解 散・清算に入る基礎的な条件である。解散の事 由は「公司法」及び会社定款の関連規定に合致 する必要がある。実務上比較的よく見られるの は , 会社に重大な欠損金があり , 経営を継続す る能力がない , というものである。 ②会社清算行為の実施 会社の清算行為の実施には , まず正式決定を 下す必要がある。例えば , 「公司法」及び会社 定款の関連規定に基づき株主会又は董事会を招 集し , 会社清算の決定を下す。株主会決議乂は 董事会決議の招集手続 , 書面記録等の形式は , 法律及び会社定款の規定に合致する必要があ る 10 ) 。「中外合資経営企業法実施条例」及び 「外資企業法実施細則」の関連規定によると , 中外合弁会社及び外資企業が清算する場合 , 審 査認可機構の承認も必要である。即ち , 会社の 清算による労働契約の終了を実施する前に , 清 算について商務部門の承認を得なければならな ( 3 ) 法定通知手続の履行 会社の解散は , 従業員の密接な利益に関わる ため , 4 条の規定に基づき , 通知手続を履行す る必要があり , 解散に関する事項 , 例えば解散 10 ) 紛争まで発展した場合 , 人民法院 ( 裁判所 ) は一般 的に招集手続 , 会議記録 , 会議決議などに対し , 形式審査を 38 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 事由 , 解散時期 , 従業員処遇案などを , 会議で の伝達 , 資料配布 , E メール送信 , イントラ ネットへの掲載 , 公告貼出等の形式により , 労 働者に知らせなければならない。ただし , 会社 の清算解散の決定について労働者との協議は必 要としない。 ( 4 ) 経済補償金 解散・清算による労働契約終了の場合も 1 と同様に , 46 条 6 号に基づき , 会社が従業員 に対し経済補償金を支払わなければならない。 Ⅳ . 法的根拠の適用における主な争点 経営上の事由として「客観的状況に重大な変 化が生じた」状況 ( 例 : 資産譲渡 , 事業部門廃 止等 ) と , 「経済的人員削減」ができる状況 ( 例 : 生産・経営の重大な困難 , 事業転換 , 客 観的経済状況の重大な変化等 ) の両方が発生し ている場合 , どちらを法的根拠としてリストラ を行うかは , 難しい判断となる。まず , 経営上 の事由に関連する事実を理解し , どちらの条文 を適用するかについて慎重に法律分析を行う必 要がある。一方 , 各地方における法解釈の違い に注意する必要があり , 事前に労働部門の確認 を取得しなければならない。上記適用について の主な法的争点は , 以下のとおりである。 1 . 削減人数と 40 条 3 号との関係 削減人数が 41 条の法定基準人数 ( 20 人以 上 , あるいは削減人数が 20 人に満たないが , 会社の全従業員数の 10 % 以上に該当するとき ) に達するとき , 必ず 41 条を適用しなければな らないのか。つまり , たとえ , 経営上の事由が 40 条 3 号 ( 「客観的状況に重大な変化が発生」 ) にも該当する場合でも , 41 条 ( 経済的人員削 減 ) を適用しなければならないのか。 この点について , 明文規定が置かれていない 以上 , 解釈の余地がある。基本的には , 40 条 3 行う。
図 1 本稿の想定する持分譲渡 日本 ( 又は香港等 ) の出資者 譲渡 出資持分 中国の有限会社 ( 有限責任公司 ) 譲受人 ( 日本 , 香港 , 中国等 ) ストラの法的根拠及び実務的問題点」を参照さ れたい ) 。また , 特殊なケースでは , 従業員を 全員退職させ , 設備や在庫等の資産を処分し , 債権債務を全て処理したうえで , 不動産のみ 残った会社の持分を譲渡するということもあ る。興味深い論点を含む話であるが , 誌面の都 2. 持分譲渡の短所 合上 , 説明を割愛させて頂く。 なる場合は , 持分譲渡の実行前に当局からクリ 次に , 独占禁止法上の企業結合届出が必要と 等 ) を検討することになる。 ことはできず , 他の方法 ( 会社の解散・清算 なお引受け手が現れない場合 , 持分譲渡による 般に認められていない ) 。譲渡価格がゼロでも である ( ただし , マイナス対価とすることは一 ない限り , ゼロ ( 0 人民元 ) とすることも可能 価格は , 当該持分の価値評価額から大きく離れ 限り実行が不可能という点がある。持分の譲渡 として , 持分を譲り受けてくれる者が現れない 長所の多い持分譲渡であるが , 決定的な短所 2 ) 本稿において述べられた見解は , 筆者個人の見解で 護士 , カリフォルニア州弁護士。 1 ) 西村あさひ法律事務所。弁護士 , ニューヨーク州弁 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 22 他の弁護士の見解とは一切無関係である。 あって , 筆者の所属する法律事務所及び同事務所に所属する アランスを得ておく必要がある ( 後述Ⅲ 2 ) ため , その分の時間及び費用を要する。 皿手続及び所要時間 1 . 必要な手続 ( 一般 ) 持分譲渡に必要とされる一般的な公的手続 等 ) が入る。 4 ) 「 N 」の部分には具体的な数字 ( 例えば「 3 」 , 「 5 」 ( 内資企業 ) となる場合には , 新たな批准証書は発行されな 3 ) ただし , 持分譲渡の結果 , 外資が一切入らない会社 要求されるかは案件によって若干異なる可能性 出する必要がある。具体的にどのような文書が 合弁契約書を含め , いくつかの文書を当局に提 約書 , 変更後の定款及び ( 合弁会社の場合は ) 上記 ( a ) (b) の手続においては , 持分譲渡契 めるのが一般である。 ら N 日以内」 4 ) ) とする旨 , 持分譲渡契約で定 えば , 「新たな営業許可証の交付を受けた日か る。持分譲渡代金の支払時期は , ( b ) の後 ( 例 時 ( 認可時 ) に生じ , (b) によって公示され 行される 3 ) 。持分譲渡の法的効力は ( a ) の完了 書が , ( b ) が完了すると新たな営業許可証が発 の登記である。 ( a ) が完了すると新たな批准証 記 , 及び ( c ) 各種政府部門 ( 外貨管理局等 ) で は , ( a ) 商務部門の認可 , ( b ) 工商部門での登
破産管財人が破産債権者への配当を行うなど適 正かっ公平な清算を図ろうとするため乙に対し て当該配当金の返還を求めているなど判示の事 情の下においては , 乙が当該配当金の給付が不 法原因給付に当たることを理由としてその返還 を拒むことは , 信義則上許されない。 ( 補足意見がある。 ) 民法 708 条本文は , 「不法な原因のために 及び従前の検討 I . 本件の問題の所在 解説 1 するものにして破産者の権利を行使するものに 権利に属し破産管財人は債権者全員の為に行使 について , 「否認権なるものは各破産債権者の して破産者の給付した金員の返還を求めた場合 22 輯 2250 頁と , ②破産管財人が否認権を行使 て権利行使を否定した大判大正 5 ・ 11 ・ 21 民録 り」 ( 原文旧字・旧仮名遣い。以下同じ ) とし 者に於ても之を請求することを得ざるの筋合な れば債務者が請求することを得ざるものは債権 権者が其債務者に属する権利を行ふに他ならざ ついて , 「民法第 423 条の定むる代位訴権は債 いて不当利得返還請求権を代位行使する場合に ①給付者の債権者が民法 423 条の代位権に基づ 2 判例は , 第三者による権利行使のうち , てきた論点である。 ることが許されないのかは , 古くから議論され ように給付者以外の第三者もその返還を請求す 点は法文上明確ではなく , 本件の破産管財人の 果 , 要件 , 範囲をどのように考えるのかという いった説明がされている。しかし , 同条の効 理・不当利得・不法行為 ( 上 ) 157 頁 ) であると もの」 ( 四宮和夫・現代法律学全集 ( 10 ) 事務管 することができないという法の理想を表明する 者は , 自己の不法を主張して国家の救済を要求 の否定という形で , 法の是認しない行為をした 趣旨については , 「給付者の不当利得返還請求 求することができない。」と定めており , この 給付をした者は , その給付したものの返還を請 最高裁時の判例 非ず」などとして行使を肯定した大判昭和 6 ・ 5 ・ 15 民集 10 巻 6 号 327 頁が著名であり , 主 にこの 2 つの判例が議論の対象とされてきた。 もっとも , それほど議論の対象とされてきた ものではないが , ③破産管財人が管理処分権に 基づき返還請求する場合については , 大審院の 判例として , 「破産管財人は破産宣告当時破産 者に属する財産の範囲に於てのみ其の財産の管 理及び処分を為す権限を有するものにして破産 者は不法原因に基く給付に付不当利得返還請求 権を有せざるも其の破産管財人は該請求権を有 すと云ふが如き法理存することなき」 ( 大判昭 和 7 ・ 4 ・ 5 法律新聞 3405 号 15 頁 ) として , 破 産管財人の権利行使を否定したものがある ( な お , この判例の事案は , 破産者が , 株式取引所 の取引員である被告との間で「名板貸借」を し , 保証金名下に金銭を預託していたところ , 破産管財人がその金銭の返還を求めたという事 案であり , 上記昭和 6 年判例と同一の当事者の 事件である ) 。 3 これに対し , 破産管財人が管理処分権に 基づき行う権利行使に関して , 学説や戦後の下 級審裁判例 ( 特に本件のような無限連鎖講等の 事業を行っていた会社が破産開始決定を受けた 場合 ) は , 結論としては権利行使を認める旨の 立場がほとんどを占める。 学説の代表的な理由付けは , 「管財人の返還 請求などは , 非難性を阻却されるから , 拒否せ られない」とするもの ( 谷口知平・不法原因給 付の研究 18 頁 ) , 不法原因給付の理論は , 給付 者に対する懲罰的趣旨に基づいていることか ら , 差押債権者には適用されないことを前提と して , 管財人についても同理論が適用されない とするもの ( 伊藤眞・破産 172 頁 ) , 返還され た金員等はすべて破産財団に組み込まれて債権 者に対する配当財源になり , 不法原因給付者の 手元には渡らないことから , 裁判所による法的 保護を拒否する理由はないとするもの ( 伊藤眞 ほか・条解破産法〔第 2 版〕 595 頁 ) 等が挙げ られる。 下級審裁判例としては , 大阪地判昭和 62 ・ [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 79
自らの解釈が導けることを示した上で , 日米租税条約 の上記条項が事実上準拠する OECD モデル租税条約 の条項について OECD 租税委員会が作成し , OECD 理事会が加盟国に対し OECD モデル租税条約に準拠 する二国間条約の解釈において従うべきことを勧告す る OECD コメンタリーの記述を「補足的手段」とし て参照して自らの解釈を「確認」した ( 酒井啓亘ほ か・国際法 290 頁 ) ものと解される。本判決は引用 していないが , グラクソ事件最高裁判決 ( 最判平成 21 ・ 10 ・ 29 民集 63 巻 8 号 1881 頁 ) を念頭に置くも のと思われ , 妥当な条約解釈のあり方と言えよう。判 旨Ⅱが , 日米租税条約 5 条 4 項 ( e ) 号の「その他の」 という文言を根拠に ( a ) 号以下を「準備的又は補助的 な性格の活動」の例示と解した行論は文理解釈として 一定の説得力があるが , OECD モデル租税条約 5 条 4 項 (a) ~ ( d ) 号と「準備的又は補助的」要件の関係を めぐっては国際的にも見解が対立しており , ( a ) 号該 当性の判断においては「準備的又は補助的な性格の活 動」であることを要しない , という x の主張する立 場も解釈論として十分にあり得たところである ( 参 照 , 浅妻・前掲評釈 9 頁 ) 。本判決は , OECD モデル 租税条約に準拠した日米租税条約 5 条 4 項につき我 が国の有権解釈機関としての解釈を示したものとして 意義を有する。 ②「本件アパート等」が日米租税条約 5 条 1 項の 定義をみたすとの認定自体には異論の余地は乏しい が , 判旨Ⅳが「本件アパート」について「本件倉庫」 との一体性を理由に「恒久的施設に該当する」旨を述 べた点は興味深い。これは , 次の③で強調されている 「唯一の販売拠点」としての「本件アパート」の機能 がなければ ( すなわち「本件倉庫」のみでは ) 恒久的 施設該当性の判断を維持できなかったのではないか , との推論を導く。なお , On-site の人的関与がなくて も恒久的施設認定は可能という点は , 国際的にも受け 容れられた解釈である (OECD コメンタリー 5 条パ ラ 42.6 , Klaus Vogel on Double Taxation Conventions (4th ed. , 2015 ) , Art. 5 , para. 40 ) 。 ③「準備的又は補助的」基準のあてはめは細部に及 ぶ事実認定に依拠せざるを得ない (OECD コメンタ リー 5 条パラ 24 ) が , 本件で決め手となったのは , 「本件販売事業の事業形態」においては , 「唯一の販売 拠点」としての本件アパートの役割・機能と , ( 平成 18 年 11 月以降は専ら ) 本件倉庫における商品の保 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 122 管・発送・返品及び再発送業務が「本件販売事業にお ける契約条件の実現という観点からも」重要なもので あり , 両者が一体となって「本件企業の販売拠点 ( 事 業所 ) 」としての役割・機能を担っていた , という認 定である。「準備的又は補助的」基準の判定は当該事 業全体との関係における当該施設の機能・役割による べきであって , 活動自体の性質 ( 「倉庫」 ) や絶対量に よってなされるべきではないという考え方 (Vogel on DTC, supra, Art 5 , para. 285 圧 ) からは , 判旨 V は妥当と言えよう。 これに対して , 判旨 V に続く箇所で日本語取説書の 同梱作業が商品の経済的価値を高めるから「保管」 「引渡し」の範囲を超える等述べる部分については , ( 些か強引な認定であるとの印象はさておくとしても ) 判決の論理構成における位置づけが曖味である。判旨 Ⅱと V で本件アパート等の日米租税条約 5 条 4 項 ( a ) 号該当性は否定されているはずであり , 不要な判示で はなかったか。 Ⅲ . 争点 3 = 判旨Ⅵ・Ⅶについて 恒久的施設課税に帰属主義・ AOA を導入した平成 26 年改正後の法制度に鑑みて , 潜在的には最も興味 深い論点であったが , 本件では推計課税の合理性の問 題として処理された。推計課税の必要性と推計方法の 合理性 , という 2 段構えの判断枠組みは通説に従う ものと言えるが ( 金子宏・租税法〔第 21 版〕 852 頁 以下 ) , 特に X の米国における費用の扱いについて は , 推計の合理性が強く推定された結果 , 議論の深ま りを欠いた憾みなしとしない。とりわけ , AOA の下 での非居住者の事業所得の恒久的施設帰属所得算定 は , 今後の裁判例に残された課題と言えよう。 なお , 本判決に対して X は控訴し , 東京高裁平成 28 年 1 月 28 日判決 ( 判例集未登載 ) が既に出ている ( 控訴棄却・ X 上告受理申立中 ) 。