提出された意見を参考に原案が再検討され , 平 成 28 年 1 月 21 日に成案が公表された。 原案の公表当初は , 成案の公表は平成 27 年 秋頃が予定されていたが , 多くの意見が寄せら れたことから慎重に検討が進められ ( 担当官解 説脚注 4 ) , 平成 28 年 1 月 21 日まで時間がか かった。原案の公表後になされた各国の裁判所 や競争当局における判断との整合性を図ったこ とや , 後述するように , 原案に対して各方面か ら強い意見主張がなされ , できるだけ皆の理解 を得られる指針を制定しようと説明の時間を十 分にとったことも , 成案の公表に時間がかかっ た理由と推察される。 2. 本一部改正の背景の補足 本一部改正に関する実務的な背景について , 補足しておきたい。 ( 1 ) 標準規格必須特許に基づく権利行使 についての従前の議論 標準規格必須特許に基づく権利行使の効力に ついては , 世界各地において古くから議論がさ れてきたところであるが ( 例えば , 岡田誠「標 準必須特許の権利行使をめぐる米国の状況」 ジュリ 1458 号〔 2013 年〕 29 頁 ) , 近時は , 主 にスマートフォン等の電子通信分野における競 争の中で大きな問題となり , 各国の裁判所や競 争当局によって判断が出されるようになってい た。近時の各国の議論については , 池田・前掲 29 頁等を参照されたい。 日本においても , 標準規格必須特許に基づく 権利行使については , 特に , ライセンス交渉 や , 特許権の価値評価の場面等において , 当事 者の頭を悩ませる問題として , 従来から存在し ていた。近時 , 活発に議論される一つの契機と なったのは , アップル対サムスン知財高裁大合 議事件であろう ( 知財高裁平成 26 年 5 月 16 日 判決〔判時 2224 号 146 頁〕及び同日決定〔同 号 89 頁〕 ) 。同事件では , 標準規格必須特許に ついて FRAND 宣言がされた場合における効 力が主要な争点となり , 差止請求権について は , 相手方が FRAND 条件によるライセンス を受ける意思を有する者である場合には権利の 濫用 ( 民 1 条 3 項 ) に当たり許されない旨が判 示された。 同事件において , 知財高裁は , 極めて異例で あるが , 現行法の枠内で国内・国外に広く意見 を募集し , 各方面から多数の意見が寄せられ た。ライセンス契約を締結する意思のある実施 者について差止請求権は認容されるべきではな いとの意見が比較的多く見られたが , ライセン ス契約を締結する意思のない実施者に該当する かについての判断基準の詳細については , 軌を ーにする意見は見出せなかった , とのことであ る。また , 信義則や権利濫用の法理による制限 を行うべきとの意見も数多く見られ , また , 独 占禁止法を活用すべきとの意見もあったが , そ の数は少数であった , とのことである ( 同判 ②本一部改正に関する当事者の利害状況 この問題に関する当事者の利害としては様々 なものが考えられるが , 大きく賛成・反対のそ れぞれの立場を代表する利害状況としては , 以 下のようなものがあると思われる。 まず , 世界で製品を販売しているグローバル 企業においては , 主要国の中で日本にのみ , 標 準規格必須特許に基づく差止請求権を制限する 一般的なルールがないとすれば , 日本において 特許権に基づく差止請求権を行使され , 自社の 製品が差し止められるという甚大な被害を受け る可能性がある。したがって , 公正取引委員会 が本一部改正を行い , 標準規格必須特許に基づ く差止請求権を制限しうる場面について一般的 な規定を設けることは , このような企業にとっ ては非常に意味のあることである。 他方 , 特に , 特許権を多数有する企業におい ては , 実務上 , 極めて強力な力を持つ差止請求 権が制限されることにより , 大きな損失を被る 可能性がある。すなわち , 他国に比べて必ずし も損害賠償額が高額とはならない日本において は , 特許権の権利行使が効果的であるのは , 差 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 59
Number 経済法判例研究会 243 国際カルテル事件に おける需要者概念と 課徴金算定のあり方 プラウン管カルテル事件 ( サムスン SDI マレーシア ) 控訴審 広島修道大学教授 伊永大輔 Korenaga Daisuke 東京高裁平成 28 年 1 月 29 日判決 平成 27 年 ( 行ケ ) 第 37 号 , 審決取消請求事件 / 公取委 HP 事実 CJurist] June2016/ Number 1494 96 公取委は , 平成 22 年 2 月 12 日 , 本件合意は独占 定する旨を合意していた ( 以下「本件合意」という ) 。 価格について , 各社が遵守すべき最低目標価格等を設 プラウン管 ( 以下「本件プラウン管」という ) の販売 等を経て現地製造子会社等に対して販売するテレビ用 MT 映像ディスプレイら 10 社と共同して , 本件交渉 等」という ) 。原告 X ( サムスン SDI マレーシア ) は , 格や購入数量について交渉していた ( 以下「本件交渉 テレビ用プラウン管の仕様のほか四半期ごとの購入価 間で , 東南アジア地域の現地製造子会社等が購入する あるサムスン SDI ほか 10 社の中から選定した者との 気ほか 4 社は , テレビ用プラウン管製造販売業者で 我が国プラウン管テレビ製造販売業者のオリオン電 禁止法 2 条 6 項に規定する不当な取引制限に該当す るとして , X に対し 13 億 7362 万円の課徴金の納付 を命じた ( 訴外 2 社に排除措置命令 , 訴外 5 社に総 額 28 億 8130 万円の課徴金納付命令が行われた ) 。 X は課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をした が , 平成 27 年 5 月 22 日 , 公取委は請求棄却の審決 をした。本件審決の取消請求を扱ったのが本判決であ る ( 審決の取消しを争う 3 つの本件訴訟のうち , 最 初に示された司法判断 ) 。 請求棄却。 「我が国プラウン管テレビ製造販売業者は , ・・・現地製造子会社等が製造するプラウン管テ レビの生産 , 販売及び在庫等の管理等を行うととも に , プラウン管テレビの基幹部品であるテレビ用プラ ウン管について調達業務等を行い , 自社グループカ哘 うプラウン管テレビに係る事業を統括するなどしてお り , 必要に応じて現地製造子会社等の意向を踏まえな がらも , 本件交渉等を行い , 本件プラウン管の購入先 及び本件プラウン管の購入価格 , 購入数量等の重要な 取引条件を決定した上で , 現地製造子会社等に対して 上記決定に沿った購入を指示して , 本件プラウン管を 購入させていたものと認められる・・・・・・。すなわち , 本 件プラウン管の購入に関する実質的な契約交渉は , 我 が国に所在する我が国プラウン管テレビ製造販売業者 が , サムスン SDI ほか 4 社との間で行っていたもの であり , だからこそ , 本件合意は , サムスン SDI ほ か 4 社が我が国プラウン管テレビ製造販売業者との 交渉の際に提示すべき本件プラウン管の現地製造子会 社等向け販売価格の最低目標価格等を設定するもので あった。そうすると , 本件合意は , 正に本件プラウン 管の購入先及び本件プラウン管の購入価格 , 購入数量 等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国 プラウン管テレビ製造販売業者を対象にするものであ り , 本件合意に基づいて , 我が国に所在する我が国プ ラウン管テレビ製造販売業者との間で行われる本件交 渉等における自由競争を制限するという実行行為が行 われたのであるから , これに対して我が国の独占禁止 法を適用することができることは明らかである。」 「本件合意に基づく本件交渉等における自由 Ⅱ 競争制限という実行行為が , 我が国に所在する 我が国プラウン管テレビ製造販売業者を対象にして行
ことを確認されなかったなどの本件事実関係 ( 判文参照 ) の下では , 申込者が当然に暴力団 関係者でないことまで表しているとは認められ ず : 詐欺罪 0 = 0 、う人を欺く行為には当たらな ( 反対意見がある。 ) なく , 挙動による欺罔行為 , すなわち挙動の社 会的意味の解釈によって事実を偽ったと認めら れる場合 ( 積極的な欺罔行為はないが一定の言 動によって事実を偽る場合 ) も含まれると解さ れている。判例上も , 無銭飲食・無銭宿泊 ( 大 判大正 9 ・ 5 ・ 8 刑録 26 輯 348 頁 ) , 取込み詐欺 ( 最二小決昭和 43 ・ 6 ・ 6 刑集 22 巻 6 号 434 頁 ) , キセル乗車 ( 大阪高判昭和 44 ・ 8 ・ 7 刑月 1 巻 8 号 795 頁 ) , 譲渡目的の通帳等詐欺 ( 最 I . 問題の所在 三小決平成 19 ・ 7 ・ 17 刑集 61 巻 5 号 521 頁 ) , 被告人及び D は , 暴力団員であることを申 他の者を搭乗させる意図を秘した搭乗券の購入 告せず , 「ビジター受付表」等に氏名等を偽ら ( 最ー小決平成 22 ・ 7 ・ 29 刑集 64 巻 5 号 829 ずに記入し , ゴルフ場の施設利用を申し込んだ 頁 ) 等の事案において挙動による欺罔行為を認 だけであり , 積極的な虚偽申告はしていない。 めてきている。 そこで , 暴力団員であることを申告せずに「ビ 2 どのような場合に , 事実の黙秘を伴う挙 ジター受付表」等に氏名等を記入して施設利用 動 ( 態度 ) が「挙動による欺罔行為」となるか を申し込んだ行為が , 「人を欺く行為」 , 具体的 については , その挙動 ( 態度 ) にどのような事 には「挙動による欺罔行為」と評価できるかが 実が黙示的に表示されていると解釈すべきか ( どのような意思表示が包含されていると解釈 問題となる。 なお , 本件は , いずれも , 不作為による欺罔 すべきか ) , という問題に帰着する。その挙動 行為ではなく , 挙動による欺罔行為として起訴 ( 態度 ) が黙示的に虚偽を表示していると解釈 されている。 できる場合 , すなわち , 取引における重要な内 容であるため , 当事者間でそれが存在すること Ⅱ . 挙動による欺罔行為性 が当然であると意識しており , いわば「言葉に 1 刑法 246 条にいう「人を欺いて」とは騙 する必要がない」状況にあれば , 「挙動による 取の手段として人を錯誤に陥れるような行為を 欺罔行為」と認められる ( 橋爪隆「詐欺罪成立 することである。詐欺罪の欺罔行為といえるか の限界について」植村立郎判事退官記念論文集 否かは , ①欺く行為といえるか ( 欺罔行為の態 ( 1 ) 194 頁 ) 。 様 ) , ②欺いた内容・対象が財産的処分行為の 一般的な基準を設けることは困難であるが , 判断の基礎となる重要な事項か ( 欺罔行為の内 上記各判例の事案を整理すると , まずは挙動に 容 ) の両面から検討されることとなる。 よる意思表示の法律的解釈を基本とし , 従前か ①の欺罔行為の態様について見ると , 人を欺 らの当事者間の取引関係・基本契約 , 契約の際 の確認内容 ( 確認事項 ) , さらには取引慣行 , く手段・方法には制限がなく , 言語によると動 作 ( 挙動 ) によると , 直接的であると間接的で 社会的理解等を総合的に考慮して , 当該挙動が あるとを問わず , また , 作為によると不作為に 黙示的に表示する事項 ( 黙示的に包含する意思 表示 ) を解釈すべきことになろう。例えば , ① よるとに関わらない ( 大塚仁ほか編・大コンメ ンタール刑法〔第 2 版〕 ( 13 ) 29 頁 ~ 31 頁 [ 高 有償契約の申込みの場合には , 意思表示の解釈 橋省吾 ] , 団藤重光編・注釈刑法 ( 6 ) 184 頁 [ 福 として , 当然に代金等の支払意思・能力 ( 契約 田平 ] , 大塚仁・刑法概説各論〔第 3 版増補版〕 履行意思 ) を , ②契約時に本人確認がされるな 244 頁等 ) 。したがって , 欺罔行為には , 例え どした上 , 契約内容からして , 契約者本人が当 ば言語によって積極的に事実を偽る場合だけで 該財物の利用や利益の享受をすることが求めら 解説 88 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494
該当主る - 。」 , 「 FRAND 条件でライセンスを受 ける意思を有する者とみられる。」「当該規格を 採用した製品の市場における競争に悪影響を及 ばし , 公正競争阻害性を有することとなる。」 ( 下線は筆者追記 ) と断定的な記載がされてい これに対し , 原案では , 記載の行為に形式的 に当てはまれば一律に違法であると判断される という印象を受けるとして , 競争に影響を及ほ す場合に問題となることを明確にすべきとの指 摘が寄せられた。そこで , 成案では , 上記記載 は , 「他の事業者の事業活動を排除する行為に 該当する場合がある。」 , 「公正競争阻害性を有 するときには」 ( 下線は筆者追記 ) といった表 現に修正されたり , 記載が削除されたりした。 公正取引委員会の立場は原案から変更されたわ けではないが , 個別評価されることが明確化さ れたことは実務的には望ましいと考える。 4. 標準規格必須特許を譲り受けた者等 についての記載の明確化 原案では , 本一部改正の適用対象につき , 「規格の策定時に必須特許を有する者の行為で あるか , 規格の策定後に必須特許を譲り受けた 者の行為であるか , 又は必須特許の管理を委託 された者の行為であるかを問わない。」とされ これに対して , 成案では , 「自ら ていた FRAND 宣言をした者の行為であるか , FRAND 宣言がされた標準規格必須特許を譲り 受けた者の行為であるか , 又は FRAND 宣言 がされた標準規格必須特許の管理を委託された 者の行為であるかを問わない」とされ , FRAND 宣言がされた標準規格必須特許である ことが明確化された。 理論的には , FRAND 宣言をした者以外を縛 る理論としてライセンスの成立等 , 各種構成が 議論されているところではあるが , 結論として はほほ異存のないところと思われる。実務上 も , このような結論でなければ , 容易に本一部 改正の潜脱が可能となってしまい , また , 標準 規格必須特許であれば FRAND 宣言がされて 0 時論 いることは予期されているといえるので , 問題 はないものと思われる。 5. 「 FRAND 条件でライセンスを受ける意思を 有する者」の判断基準の記載の大幅な修正 (1) はじめに この点が , 本一部改正において最も激しい意 見の対立があった部分である。原案では , 「① なお , FRAND 宣言に反する必須特許の権利行 使が広く普及している規格を採用した製品の研 究開発 , 生産又は販売を困難とするものである ことに照らせば , ② FRAND 条件でライセン スを受ける意思を有する者ではないとの認定は 個別事案に即して厳格になされるべきである。 ③したがって , 例えば , ライセンス交渉の相手 方が , 一定の交渉期間を経てもライセンス条件 の合意に至らなかった場合に , 裁判所又は仲裁 手続においてライセンス条件を決定する意思を 示している場合は , FRAND 条件でライセンス を受ける意思を有する者とみられる。④また , ライセンスを受けようとする者が必須特許の有 効性 , 必須性又は侵害の有無を争うことそれ自 体は , FRAND 条件でライセンスを受ける意思 を否定する根拠とはならない。」 ( ①ないし④の 符号は筆者が追記 ) とされていた。 上記に対し , 権利者と利用者のバランスを欠 き , 権利者を萎縮させるおそれがあること , 違 反とは評価されないことにつながる考慮要素に ついても明確化すべきことなどを指摘する意見 が寄せられた。そこで , 成案では , 権利者・利 用者双方の記載のバランスを図り , 上記①ない し③は削除され , 代わりに , 「 FRAND 条件で ライセンスを受ける意思を有する者であるか否 かは , ライセンス交渉における両当事者の対応 状況 ( 例えば , 具体的な標準規格必須特許の侵 害の事実及び態様の提示の有無 , ライセンス条 件及びその合理的根拠の提示の有無 , 当該提示 に対する合理的な対案の速やかな提示等の応答 状況 , 商慣習に照らして誠実に対応しているか 否か ) 等に照らして , 個別事案に即して判断さ れる。」 ( 強調は筆者追加 ) という判断基準が記 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494
図 2 売上要件の判断① ( 単独出資の場合 ) 譲受人と対象会社の中国 譲受人と対象会社の中国 YES YES 売上がともに 4 億人民元 売上の合計が 20 億人民 元を超えているか ? を超えているか ? NO YES 譲受人と対象会社の全世 界売上の合計が 1 OO 億人 民元を超えているか ? 届出が必要 NO NO 届 出 は不要 図 3 売上要件の判断② ( 合弁会社の場合 ) 持分譲渡後の合弁当事者 全ての合弁当事者 ( 及び YES ( 及び対象会社 ) のうち YES 対象会社 ) の中国売上の 中国売上が 4 億人民元 合計が 20 億人民元を超 を超えている者が 2 社 えているか ? 以上存在するか ? NO 全ての合弁当事者 ( 及び 要 YES 対象会社 ) の全世界売上 の合計が IOO 億人民元 を超えているか ? NO NO 届出は不要 した日 ( 初回の提出日 ) より 2 カ月から 5 カ月 Ⅳ . 実務上の問題点及び対処方法 程度である。事案によってはさらに長期化する こともある。また , これに加えて書類準備にも 前述のとおり , 持分譲渡自体は比較的単純な 相当の期間を要する点にも留意されたい。 法律行為であるが , 実際には , それに伴い様々 な法律問題が生じ得る。以下では , 実務におい て比較的直面しやすい問題について論じる。 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 24
禁法が適用できるのも明らかとする。つまり , 日本親 会社を対象とする本件交渉等があれば , 客観的属地主 義の原則に適合するものと理解していると考えられる。 しかし「不当な取引制限」に該当する行為はカル テル合意であって , これに基づく本件交渉等ではない ( 合意場所も日本ではない ) 。そして , カルテル合意に 基づく本件交渉等という「実行行為」が地理的にどこ で行われたかも , 本判決では明らかにされていない ( 本件審決も同様である。他の国際事案との比較につ いては , 平山・前掲 7 頁 ) 。上記判示は , カルテル合 意を実現するために行われる需要者との価格交渉等が あれば , その需要者が所在する国内に競争制限効果が 及ぶことは明らかとする見解 ( 上杉秋則・国際商事法 務 42 巻 7 号 1008 頁 ) に依拠したと思われるが , れによれば国内市場効果を検証しない分だけ , 効果主 義よりも更に管轄権の牴触を避けるのは難しくなる。 本判決によれば , 自国の法令を外国での行為に適用す る際の抑制原理が自律的に働かない事態となるが , そ のこと自体に管轄権をめぐる問題の所在があることが 適切に理解されていないのではなかろうか。 外国政府との管轄権の牴触に関する本判決の問題意 識は低く , 傍論を示唆する「なお書」において , 直ち に欧米競争法の域外適用の考え方と整合性を欠くとは いえないとするに留まり , 不当な取引制限の要件解釈 で国際礼譲の概念を取り込もうとする姿勢を欠いてい る。この点 , 本判決では , 本件交渉等の対象が国内事 業者であることを理由に , EU でいう実施行為が日本 にあるとしたが , 欧州域内での直接・間接の販売を もって実施行為とする EU の判決とは , 販売によっ て実現した域内の競争制限効果が検証できない点で異 なる ( 土田・前掲 60 頁や越知・前掲 115 頁も国内に 流入した完成品への価格転嫁を前提として国内への影 響を見ている ) 。また , 米国での連邦控訴審判決 ( 本 判決では「大合議による決定」となっているが , 大合 議でも決定でもない ) との整合性についても , 外国子 会社が購入したが最終的に米国に流入しなかった部分 を反トラスト法の対象外と断じている点で , 本判決と は異なるように思われる ( 藤井康次郎 = 沼田知之・ NBL1054 号 82 頁以下が的確に要点をまとめてい る ) 。欧米と歩調を合わせる必要まではないが , これ らの判決が , 外国で行われた取引に対する自国の法適 用がもたらす潜在的な管轄権の牴触を回避しようとし た結果であることは尊重されてよい。管轄権の牴触に 経済法判例研究会 対する回避努力を条約や執行機関による調整等にのみ 委ね , 法解釈において配慮するという途を放棄する本 判決の姿勢のあり方については , 国際協調を重んじる 我が国憲法のもとで慎重な検討を要すると思われる。 Ⅳ . 課徴金算定における売上額の解釈 本判決は , 課徴金算定規定の解釈においても , 商品 の供給や代金の支払が外国で行われた場合の明示的な 除外規定がないことを根拠に , 形式的な法適用に徹し ている。しかし , 「売上額」の算定方法は , 収益の帰 属に関する企業会計慣行を尊重し , 企業会計原則にい う実現主義の原則を具体的な形で表現したものである ( 東京高判平成 9 ・ 6 ・ 6 判時 1621 号 98 頁〔シール談 合課徴金〕 ) 。企業会計原則上の考え方に準拠して「売 上額」を解釈すれば , たとえ「需要者」が日本親会社 であるとしても , 「当該商品」である本件プラウン管 の売上額は東南アジア地域で実現したものであって日 本国内で実現した売上額とはいえない。少なくとも , 本件プラウン管が搭載されたテレビを日本親会社が購 入しておらず , 間接ながらもカルテル合意による具体 的な競争制限効果が国内に及んでいない部分の売上額 を課徴金の基礎とすることは不可能と考えられるに の点への言及として , 村上政博・国際商事法務 43 巻 9 号 1334 頁 , 泉水・前掲 68 頁 ) 。この点に関し , 「当 該商品」は取引先が販売した完成品であるのに , その 主要原料の売上額を課徴金算定の基礎とした事例 ( 課 徴金納付命令平成 12 ・ 6 ・ 6 審決集 47 巻 420 頁〔沖 縄アルミサッシカルテル〕 ) があるが , これは市場に おける需要者に販売した完成品と関連付けることで具 体的な競争制限効果が及ぶ売上額を捉えたものであ り , 本件で行われた課徴金算定とは異なる。 現行の課徴金制度では本件合意を抑止するのに不十 分だとしても , それは本件合意の有する我が国市場へ の影響が軽微であることの反映であって , だからこそ 管轄権の牴触が回避可能だと考えるべきであろう。こ の点 , 諸外国に倣ってインポイスの宛先が日本国内で ある場合には , これも算定対象としてよいとする見解 ( 泉水・前掲 68 頁 ) もあるが , EU では , 競争が毀損 する場所を特定するための概念としてインポイスの宛 先が指標になる場合がある一方で , 契約地や引渡地で 競争が行われたと考えるのが原則 (Case COMP/394(h ー Marine Hoses, ll 427 ー 28 ) であって , 本件でこの指 標が有効といえるかは疑わしい。 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 99
I. はじめに 平成 23 年改正民訴法制定前 , 国際裁判管轄 を直接規定する法規はなく , リーディングケー スである「マレーシア航空事件」判決は , 民訴 法の土地管轄に関する規定その他民訴法の規定 する裁判籍のいずれかが日本国にあるときは , 被告を日本の裁判権に服させるのが条理に適う と判断した 1)0 また , 「ファミリー事件」判決 は , 「特段の事情論」によってこれに一定の歯 止めをかけた 2 ) 。 民訴法 5 条 1 号の義務履行地管轄について も , 義務履行地が日本にある場合に , 日本の国 際裁判管轄が認められ得るという前提のもと , 被告の予測可能性という観点から一定の場合に これを制限する解釈がなされていたが , どのよ うな場合に制限されるかは必ずしも明確ではな かった。 平成 23 年改正民訴法 3 条の 3 第 1 号は , 契 約上の債務の履行の請求を目的とする訴え等に ついて , 契約において定められた当該債務の履 行地が日本国内にあるとき , 又は , 契約におい て選択された地の法によれば当該債務の履行地 が日本国内にあるときに , 日本の裁判所に管轄 権を認め , 義務履行地管轄が認められる範囲を 明確化した。 ただ , 契約において債務の履行地を定める場 合には , 明示の合意に限らず , 黙示の合意によ 国際裁判管轄 一義務履行地管轄 前田康行 ( ①判決被控訴人代理人 ) 1 ) 2 ) 最判昭和 56 ・ 10 ・ 16 民集 35 巻 7 号 1224 頁。 最判平成 9 ・ 11 ・ 11 民集 51 巻 10 号 4055 頁。 る場合も含まれる 3 ) 。 ①判決は , 日本を義務履行地とする黙示の合 意が認められるかをめぐって , 民訴法 3 条の 3 第 1 号の適用が問題となった最初の裁判例のよ うである。 圧事案の概要 本件は , 清涼飲料水の製造及び販売等を目的 とする日本法人である原告 (X) が , 米国力リ フォルニア法人を被告 (Y) として , XY 間の 清涼飲料水に関する継続的売買契約に基づく売 買代金の支払を求めて , 平成 24 年 10 月 , 東京 地裁に提訴したものである。筆者は , Y の代 理人に就任をした。 Y は , 平成 22 ( 2010 ) 年 , カリフォルニア 州法に基づき設立され , 日本酒及びその他飲料 の米国内における販売を業とする法人である。 設立時の株主は , A ( 日本法人 ) , B ( 米国法人 ) 及び X であった。また , Y の設立時の取締役 には , A 代表者 , B 代表者及び X 代表者の 3 名が就任し , A 代表者が Y の最高経営責任者 に就任した。なお , Y は , 日本国内に事務所 又は営業所を有していなかった。 X は , 自らの ウエプサイトにて , ニューヨーク州マンハッタ ンにオフィスを有している旨明示していた。 X 及び Y は , X が製造する清涼飲料水 ( 本 件製品 ) を X が Y に対して販売をする継続的 売買契約を締結した ( 本件売買契約 ) 。本件売 買契約においては , X が Y の倉庫に本件製品 を納入し , Y が転売のために , 倉庫から本件 製品を出荷した時点を本件売買契約における引 渡しとした。なお , 本件売買契約には , 管轄及 び準拠法の選択についての合意は存しなかっ た。これに基づき , X は , 平成 23 年 12 月か ら平成 24 年 6 月 25 日まで本件製品を Y の米 国倉庫に納入をした。 平成 24 年 4 月 26 日付で , X 代表者は , Y 3 ) 佐藤達文 = 小林康彦編著「一問一答平成 23 年民事 訴訟法等改正」 ( 商事法務 , 2012 年 ) 37 頁。 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 67
元本確定期日後に一部の債権が譲渡された場合 には , 同様の問題を検討する必要があるものと 思われる ) , 本来的には , 当初の根保証契約等 において明示的な約定を置くことが望ましいも のと思われる。 ☆新ラインアップでますます充実☆ 最高裁時の判例 本判決は , 学説上も見解の分かれる根 Ⅳ 保証の随伴性について初めて明示的な判 断を示したものであり , 理論上及び実務上重要 な意義を有すると思われる。 去学孝文至 宀 特集・家族法のフロンティア 5 月 28 日発売 定価◆ 1440 円 2016 6 No. 429 【論点講座】 I Ⅱ Ⅲ Ⅳ V Ⅵ Ⅶ 夫婦別姓☆窪田充見 再婚禁止期間 ( 待婚期間 ) ☆前田陽一 親子関係不存在確認訴訟☆木村敦子 親権☆小池泰 非嫡出子の相続分☆本山敦 遺留分制度☆青竹美佳 遺産共有☆宮本誠子 巻頭言☆森田修 Way 0f Lawyers ☆宮崎裕子 判例クローズアップ 「債権法改正」の文脈ー新旧両規定の架 橋のために☆森田修 刑法各論の悩みどころ☆橋爪隆 【判例講座】 起案講義憲法☆蟻川恒正 【展開講座】 倒産実務の基礎ー債権者の視点で整理 【演習】 国際条約の世界☆玉田大 経済法入門☆泉水文雄 する☆鐘ヶ江洋祐・大川剛平 憲法☆井上武史 / 行政法☆下山憲治 「責任能力のない精神障害者の事故に関す る近親者等の損害賠償責任 ( 最高裁平成 28 年 3 月 1 日判決 ) 」☆米村滋人 【基礎講座】 行政救済法を学ぶ☆曽和俊文 民法☆三枝健治 / 商法☆福島洋尚 民訴法☆伊東俊明 / 刑法☆星周一郎 刑訴法☆加藤克佳 [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 77
役の責任追及が行われないおそれがあることを前提と する ( 最判平成 21 ・ 3 ・ 10 民集 63 巻 3 号 361 頁 , 北 沢・前掲 358 頁等 ) 。会社による責任追及の訴訟が係 属している場合は , この前提も崩れることになる。 確かに , 会社が精力的に訴訟を継続しない可能性は 否定できない。この点については , 会社法では , 原告 と被告の馴れ合いにより , 取締役の責任を追及する訴 訟カ坏当に終了することを防止するために , 事前の措 置として訴え提起の公告または株主への通知 ( 同法 849 条 4 項・ 5 項 ) を要求し , 訴訟の当事者でない株 主に訴訟に参加して原告による訴訟追行を牽制する機 会を与えている。これに加え , 事後的な措置として , 原告と被告が共謀して訴訟の目的である会社の権利を 害する目的で判決をさせたときは , 当事者でない株主 は確定した終局判決に対して再審の訴えをもって不服 を申し立てることができ ( 会社 853 条 ) , 確定判決と 同一の効力が認められる訴訟上の和解には , この再審 規定が類推適用できるとされている ( 北沢・前掲 384 頁 , 山田泰弘・新基本法コンメンタール会社法 ( 3 ) 〔第 2 版〕 455 頁 , 大阪地判平成 15 ・ 9 ・ 24 判時 1848 号 134 頁 ) 。 このような理解を踏まえると , 本件では , 仮に本件 和解に会社法上の再審事由に該当する瑕疵があるとす れば , 訴訟に参加していない株主 XI は和解無効確認 の訴えのほか , 再審の訴えを提起することも可能であ る。後者の手段を選択したときは , 再審事由および提 訴権者の点を除き , 民訴法の一般規定に服することに なるので , 再審事由を知った日から 30 日以内に提訴 しなければならない ( 民訴 342 条 1 項 ) 。本件の控訴 審判決 ( 東京高判平成 27 ・ 6 ・ 24 判例集未登載 ) に よれば , X らが予備的に再審の訴えを追加した時点 では , すでに再審の期間を徒過していたため , 再審の 訴えは不適法であって却下を免れない。もっとも , XI は理論上 , 別件訴訟における YI への補助参加の 申出と同時に期日指定の申立てをすることにより本件 和解の効力を争うこと , または再審事由を生じさせた ことについての YI の ( 代表 ) 取締役の責任を代表訴 訟で追及することもできると考えられるので , 和解無 効確認の利益が否定された場合に , X らには裁判上 の救済方法が一切残されないわけではない。 商事判例研究 平成 26 年度 17 履行にあたるとされた ける検収拒絶が債務不 システム開発契約にお 事例 東京大学大学院 張韻琪 Chang Yunchi 東京大学商法研究会 東京地裁平成 26 年 10 月 30 日判決 平成 23 年 ( ワ ) 第 31512 号 , X 対 Y, 平成 24 年 ( ワ ) 第 35054 号 ( 反訴 ) , Y 対 X, 請負代金請 求 ( 本訴 ) , 請負代金返還等請求 ( 反訴 ) 事件 / 判例時報 2257 号 70 頁 / 参照条文 : 民法 415 条 事実 する旨の基本契約を締結した。なお , 基本契約におい 運用準備・移行の 4 サービスごとに個別契約を締結 た。同年 3 月 , x と Y は , 要件定義 , 設計 , 構築 , の機能を網羅し , 要望事項を満たすとの記載があっ え , 提案書を提示した。本件提案書においては , 現状 さらに 15 年 2 月に , 現行システムの分析結果をふま 件システム」という ) として導入することを提案し , スタマイズして , Y の販売管理システム ( 以下「本 平成 14 年 , X は Y に対しパッケージソフトをカ 鋼の販売等を目的とする株式会社である。 とする株式会社であり , Y ( 被告・反訴原告 ) は特殊 関連して使用される部品および消耗品の販売等を目的 X ( 原告・反訴被告 ) は , 事務用機器並びにこれに [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 107
は被保全債権の準拠法と取消対象となる法律行為の準 拠法の累積適用を主張するが , この学説には , 債務者 と第三者が取消対象となる法律行為の準拠法として , 詐害行為取消権が認められない国あるいはその成立お よび効果に厳格な制限を課している国の法を選択する ことで , 同取消権の発動を封じるといった操作が行わ れる事態を許容しかねない , との難点が存在する ( 澤 木 = 道垣内・前掲 249 頁 , 法例研究会・法例の見直 しに関する諸問題〔 1 〕 126 頁 ) 。法律行為について当 事者自治の原則カ昿範に許容されている現状を踏まえ ると , 詐害行為取消権の成立および効力について取消 対象とされる法律行為の準拠法の適用を認めるとすれ ば , それはかかる法律行為に関与した当事者に詐害行 為取消権の発動を左右する権限を与えるに等しく , 準 拠法決定のあり方としての妥当性に疑問が残る ( ただ し , 久保・前掲 362 頁 ~ 363 頁は , こうした A 説に 対する批判があり得ることを認めたうえで , 「之は渉 外取引の保護上已むを得ない」と断ずる ) 。 また , A 説は詐害行為取消権の効力について累積 適用により双方の法が認める範囲に限るとするが , 実 際にはいずれの法の効果が弱いのかを評価するのが難 しい場合もあるだろう。また同取消権の効力と言って も , 比較法的に見ても偏差が大きいほか , 人的範囲 , 事項的範囲 , 金額の上限等の別に応じて , いずれの国 の法がより強い効果を付与しているかが異なる場合も 有り得る ( 瀬川信久編著・債権法改正の論点とこれか らの検討課題 116 頁 ~ 117 頁 [ 瀬川 ] ) 。これらのこ とを踏まえると , 詐害行為取消権の効果として , 複数 の法の累積範囲を抽出することには技術的な困難が伴 うと思われる。この点を本判決に即して説明すれば , 判旨Ⅱでは , 日本法とフランス法を比較して , 詐害行 為取消権の効果に関する累積範囲は前者である ( した がって , 日本法上の詐害行為取消権の方が相対的に効 果は弱い ) と判断するが , 必ずしもそうとは言い切れ まい。日本法上 , 詐害行為の効果は相対的ではあるに せよ , 取消しに伴い当該行為自体が無効とされるのに 対して , フランス法では , 詐害行為の有効性自体を維 持したうえで , 取消債権者との関係でその有効性を対 抗し得ないに止まる。また , 日本法では , 詐害行為が 取り消された場合に逸出財産が債務者の許に復帰する のに対して , フランス法では , 詐害行為の有効性が維 持される結果 , 逸出財産は受益者の許に留まるとされ ている ( 詐害行為取消権を巡る日仏の制度比較につい 渉外判例研究 ては , 瀬川編著・前掲 91 頁以下 [ 瀬川 ] を昭 ) : 彡・・い、 0 これらのことに鑑みると , 日本法上の詐害行為取消権 の効果の方が相対的に強いと評価することも可能であ る。このことから , 詐害行為取消権の効果に関して日 本法を以て双方の法の累積範囲とした本判決の結論に は疑問がある ( 西谷祐子「判批」平成 27 年度重判解 〔ジュリ 1492 号〕 297 頁 ) 。 なお , 詐害行為取消権の準拠法に関する私見は C 説である。理由は以下の 3 点である。 第 1 に , わが国において , ①詐害行為取消権の行 使形態が裁判上の請求に限定され , これが他の債権者 に対する手続上の公示機能を有すること , ②現行法 上 , 同取消権の効果は相対効として整理されているこ と等に鑑みると , 詐害行為取消権を訴訟上の権利 ( 手 続問題 ) として性質決定するのが適切であると考えら れる。また , 詐害行為取消権を巡っては , わが国も含 め各国内において , 実体法上の法的構成の問題と取消 訴訟・執行の問題が密接に連関している ( 瀬川編著・ 前掲 98 頁 [ 瀬川 ] ) が , かかる実態を踏まえると , む しろ詐害行為取消権を手続問題として位置付けて , 法 廷地法により処理する方が端的ではないかと思われる。 第 2 に , 詐害行為取消権と破産法上の否認権とで は , 手続的強制の度合いに違いはあるものの , 債務者 の責任財産の保全手段として , 両者の機能的類似性を 指摘することが可能である ( わが国の債権法改正論議 でも , 両者の類似性がより強く意識される傾向にある 〔潮見佳男・民法 ( 債権関係 ) 改正法案の概要 74 頁 以下〕 ) 。否認権について , 異論はあるが倒産手続開始 国法 ( 法廷地法に相当 ) に拠るとの見解が多数を占め ており ( 高桑昭 = 道垣内正人編・新・裁判実務大系 ( 3 ) 国際民事訴訟法〔財産法関係〕 527 頁 ~ 528 頁 [ 貝 瀬幸雄 ] , 石黒一憲・国際民事訴訟法 298 頁等 ) , 詐 害行為取消権を法廷地法に拠らしめることで , 抵触法 上の取扱いにおいても両者の間で一応の整合が得られ るであろう。 第 3 に , わが国においては , 詐害行為取消権は債 権者代位権に比べても手続的要素が強いことから , 債 権者代位権との対比においても , 手続問題として性質 決定する余地が大きいのではないかと考える。すなわ ち , わが国の債権保全制度としては , 債権者代位権と 並列して差押・転付命令の手続が具備されている。債 権者代位権を手続問題と性質決定した前掲・昭和 37 年東京地裁判決を巡っては争いがあるが , この点 , わ [ Jurist ] June 2016 / Number 1494 125