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2016 August # 1496 特集 国際的租税回避への 去的対応 Special Featu 「 e Page タックス・シェルターからタックス・コンプライアンスへ 中里実 14 ー会社法と租税法の融合の必要性 国際的脱税・租税回避への対抗 吉村政穂 19 バナマ文書の影響 「バナマ文書」に基づく課税処分及び 渕圭吾 24 脱税犯の訴追の可能性 一般的租税回避否認規定の適用が争われた裁判例 伊藤剛志 31 旧 M 事件とヤフー / IDCF 事件 一般的租税回避否認規定 宮崎裕子 37 実務家の視点から く国際的租税回避への法的対応における 選択肢を納税者の目線から考える〉 一般的租税回避否認規定について 否認理論の観点から 国際的情報収集 残余財産分配と決算報告承認決議無効 会社法判例速報 ー東京地判平成 27 ・ 9 ・ 7 ハラスメントの調査・認定申立てに対する 労働判例速報 調査委員会の不設置等の配慮義務違反性 一学校法人関東学院事件 東京高判平成 28 ・ 5 ・ 19 協調的行動が生じやすい市場における企業結合審査 井本吉俊 6 独禁法事例速報 ー公取委発表平成 28 ・ 3 ・ 18 バロディ商標と不登録事由 小林利明 8 知財判例速報 一知財高判平成 28 ・ 4 ・ 12 多数の会社名義による不動産取引収益の人的帰属 佐藤英明 10 租税判例速報 東京高判平成 28 ・ 2 ・ 26 文 岡村忠生 44 浅妻章如 51 弥永真生 2 水町勇一郎 4
の文言があるか否かを検討する見解 ( 中里実「課税管 に帰属するものということができるから , 権利義務の ・・・そうすると , 本件 轄権からの離脱をはかる行為について」フィナンシャ 帰属主体であると認められる。 ル・レビュー 94 号 18 頁 ) , ②設立根拠法令に法人格 各 LPS は , 上記のとおり権利義務の帰属主体である を付与する旨の文言があるだけではなく , 設立 , 組 と認められるのであるから , 所得税法 2 条 1 項 7 号 織 , 運営および管理等に係る規定等を検討して実質的 等に定める外国法人に該当するものというべきであり , ・・・本件各不動産賃貸事業は本件各 LPS が行うもの に判断する見解 ( 酒井克彦「米国 Limited Liability Company からの分配金に対する課税 ( 1) ー租税法 であり , ・・・・・・本件各不動産賃貸事業により生じた所得 は , 本件各 LPS に帰属するものと認められ , 本件出 上の法人概念と米国における法人該当性」比較法制研 究 29 号 56 頁 , 東京高裁判決 , 大阪高裁判決 ) , ③上 資者らの課税所得の範囲には含まれないものと解する のが相当である。したがって , 本件出資者らは , 本件 記①の方法により判断することを原則としつつ , 設立 各不動産賃貸事業による所得の金額の計算上生じた損 根拠法令上損益帰属主体として規定されているかを併 失の金額を各自の所得の金額から控除することはでき せて考慮するとの見解 ( 東京地裁判決 , 本件 1 審判 ないというべきである。」 決 , 原判決 ) に分かれる。 一方 , 内国私法準拠説は , 我が国の私法における法 評釈 人の属性を鑑み , 当該外国事業体がその属性を有する 判旨に賛成。ただし , 理由付けの一部 ( 後記「第 1 かにより法人該当性を検討すべきとする見解である 基準」 ) に疑問がある。 ( 水野忠恒・大系租税法 360 頁 , 今村隆「外国事業体 の『法人』該当性」税大ジャーナル 24 号 14 頁 , 木 I . 判断方法と当てはめ 村弘之亮・判評 638 号〔判時 2139 号〕 17 頁注 ( 3 ) , I. 判断方法 大阪地裁判決 ) 。両説の違いは , 外国私法準拠説がそ 本件では , 東京 ( 東京地判平成 23 ・ 7 ・ 19 判タ の判断基準を設立根拠法令に依拠しているのに対し , 内国私法準拠説は我が国の私法上の判断枠組みに外国 1400 号 180 頁 , 東京高判平成 25 ・ 3 ・ 13 訟月 60 巻 1 号 165 頁 ) , 大阪 ( 大阪地判平成 22 ・ 12 ・ 17 判時 事業体を当てはめて判断する点にある。 2126 号 28 頁 , 大阪高判平成 25 ・ 4 ・ 25 税資 263 号 これらを踏まえて本判決の判断方法をみると , まず 順号 12208 ) , 名古屋 ( 本件 1 審判決 , 原判決 ) での 判旨 I で設立根拠法令上の法的地位について , 「当該 各判決において , 本件各 LPS の我が国租税法上の法 組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組 人該当性カ竫われており , それぞれの判断方法が明ら みから , 当該組織体が当該外国の法令において日本法 かにされていたが , 結論や判断方法は異なっていた。 上の法人に相当する法的地位を付与されていること又 本判決は , 名古屋事件における最高裁判決であり , 各 は付与されていないことが疑義のない程度に明白であ LPS の法人該当性を肯定していた東京高裁判決 , 大 るか否かを検討する」 ( 第 1 基準 ) と判示している。 つまり , 本判決の第 1 基準では , 設立根拠法令の規 阪高裁判決については , 本判決と同日に上告不受理と なり判決が確定している。 定の文言や法制の仕組みを検討することによって法人 本件各 LPS のような外国事業体が法人に該当する 該当性を判断しており , これは上記外国私法準拠説の か否かについての上記各判決における判断方法は , 大 見解に立つものと考えられ , その中でも , 設立根拠法 きく外国私法準拠説と内国私法準拠説に分類すること 令の文言だけではなく , 法制の仕組みも併せて実質的 ができる ( これまでの判断枠組みについては , 横溝 に判断するとの立場 ( 外国私法準拠説②の見解 ) と分 大・ジュリ 1478 号 123 頁 , 今村隆「 LSP 事件最高裁 類できるだろう。 判決の意義と今後に与える影響」租税研究 800 号 296 次いで本判決では , 納税義務者を我が国の租税法上 頁 ) 。 「組織体のうちその構成員とは別個に租税債務を負担 外国私法準拠説とは , 外国事業体の設立準拠法国 させることが相当であると認められるもの」であると ( 地域 ) の法令により , 当該事業体に法人格を付与さ して , 「当該組織体が権利義務の帰属主体であると認 れているか否かを検討すべきとする見解である。同説 められるか否かを検討して判断すべきものであり , 具 はさらに , ①専ら設立根拠法令に法人格を付与する旨 体的には , 当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 112
Contents と「一 0 →④ ~ 0 一 0 、、一。 00 Pag e 経済法判例研究会期間限定キャンペーンの表示が 有利誤認表示に該当するとされた事例 消費者庁命令平成 28 ・ 2 ・ 16 商事判例研究 定款変更により退任となった取締役の損害賠償 東京地判平成 27 ・ 6 ・ 29 医療法人出資持分の他の社員に対する譲渡 福岡高判平成 26 ・ 3 ・ 26 不動産売却価額を低下させ得る貨貸借契約の否認 ー金沢地判平成 25 ・ 1 ・ 29 労働判例研究 遺族補償年金の支給要件と憲法 14 条 一地公災基金大阪府支部長 ( 市立中学校教諭 ) 事件 大阪高判平成 27 ・ 6 ・ 19 制度を特定しない相談者に対する 特別児童扶養手当の教示義務 ー大阪高判平成 26 ・ 1 1 ・ 27 租税判例研究 米国リミテッド・バートナーシップの 租税法上の「法人」該当性 最ニ小判平成 27 ・ 7 ・ 17 渉外判例研究 名誉・信用毀損、および不貞行為の 国際裁判管轄と準拠法 東京地判平成 26 ・ 9 ・ 5 山本裕子 87 高橋均 91 松井秀征 95 宇野瑛人 99 笠木映里 103 中野妙子 107 加藤友佳 111 種村佑介 115 受贈図書 Juri-site 119 120
、 ~ 、。有斐閣 〒 101 ー 851 東京都千代田区神田神保町 2 ー 17 TeI : 03-3265 ー 11 / Fax : 03-3262-8035 ( 営業部 ) ※表示価格は税別です。 http:〃www.yuhikaku.co.jp/ ・出版案内・ 東京大学教授・慶應義塾大学教授・東京大学教授・東北大学教授 中里実・佐藤英明・増井良啓・渋谷雅弘編 なかざとみのるさとうひであきますいよしひろ 別冊ジュリスト 228 号 ( 発売中 ) B 5 判並製 しぶやまさひろ おける参照資料としても活用できる。収載判例を更新し , 法改正にも対応した最新版。 く検討事項〉を設け , 新たな視角から対象裁判例を再度考察できる。学習用のほか , 実務に 判例教材の定番シリーズ。く事実の概要〉く判旨〉く解説〉の構成に加え , 本書ではさらに 978 ー 4 ー 641 ー 1 1529-3 ・ 2 , 600 円 + 税 240 頁 租税判例百選第 6 版 主 次 I 租税法序説 ( 1 ) 租税法律主義 ( 2 ) 租税公平主義 ( 3 ) 租税債権の性質 ( 4 ) 租税法の解釈と適用 Ⅱ租税実体法 ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) 課税要件総論 所得税 法人税 所得の年度帰属 国際課税 相続税・贈与税 別冊ジュリスト 227 号 いわむらまさひこ 岩村正彦編 東京大学教授 ( 7 ) 消費税 ( 8 ) 流通税 ⑨固定資産税 ⑩附帯税 ( 11 ) 納税義務者の債権 ( 判例解説 123 件 ) 年月日別総索引 資料 1 件 V 租税処罰法 Ⅳ租税争訟法 Ⅲ租税手続法 B 5 判並製 ( 発売中 ) 社会保障判例百選第 5 版 244 頁 ・ 2 , 500 円 + 税 978 ー 4 ー 641 ー 1 1528 ー 6 社会保障分野における判例教材の決定版。 7 年ぶりの改訂となる第 5 版では , 第 4 版刊行以 降に出された重要判例を多数取り入れるとともに , 収録判例を更に厳選し件数を絞り込んだ。 新執筆陣のもと , 解説内容にも一層の充実を図った待望の 1 冊。 主 よ 目 次 生存権と生活保護基準 , 老齢加算廃止と生活保 護法・憲法 25 条 , 遺族補償年金と憲法 14 条など ( 11 件 ) Ⅱ医療保険 被保険者資格の喪失と保険給付 , 国民健康保険 税の減免要件 , 混合診療など ( 22 件 ) Ⅲ年金 障害基礎年金の支給要件と「初診日」の意義 , 厚生年金基金からの脱退など ( 14 件 ) Ⅳ労災保険 上司とのトラブルを原因とする精神疾患の業務 起因性 , 特別加入の保険関係の成立 , 労災補償と 慰謝料など ( 23 件 ) V 雇用保険 雇用保険法上の労働者 , 雇用保険の基本手当受 給資格と被保険者期間の算定など ( 8 件 ) Ⅵ生活保護 永住外国人と生活保護法の適用 , 生活保護法に いう「世帯」の意義など ( 13 件 ) Ⅵ児童福祉・児童手当 市立保育所を廃止する条例の処分性など ( 8 件 ) Ⅷ障害者福祉・老人福祉・介護保険 障害者福祉サービスの支給量など ( 14 件 ) 区被爆者援護等 在外被爆者の健康管理手当など ( 4 件 ) 計 117 件
連載 / 国際ビジネス紛争処理の法実務 国際送達 THEME 第 5 回 0 ② ロ弁護士高取芳宏 ロ弁護士高松薫 TakatoriYoshihiro : ロ弁護士一色和良 Takamatsu Kao 「 u ー lsshiki Kazuo 編集 / 道垣内正人 ( 早稲田大学教授・弁護士 ) ・古田啓昌 ( 弁護士 ) ◎◎凹 C ◎ 56 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 ハーグ送達条約等の適用がある場合であって い。他方 , 当事者送達主義の国の当事者は , その手続は多大の時間と労力を要することが多 共助取決に従って外国当局等に嘱託されるが , ける送達及び告知に関する条約 ) や二国間司法 事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国にお 108 条に基づき , ハーグ送達条約 ( 民事又は商 の裁判所から外国の当事者への送達は , 民訴法 こうしたことを背景として , たとえば , 日本 施することが一般的である。 依頼を受けた代理人や送達実施人 ) が送達を実 送達主義の下では , 私人 ( 当事者自身又はその 達の実施は想定されていないのに対し , 当事者 の発動であると考えられており , 私人による送 下では , 送達の実施は国家主権 ( 民事裁判権 ) 事者送達主義を採用している。職権送達主義の 法系諸国の多くは当事者の責任で送達を行う当 訴 98 条参照 ) を採用しているのに対し , 英米 は裁判所の責任で送達を行う職権送達主義 ( 民 万国共通ではなく , 一般に大陸法系諸国の多く である。しかしながら , 送達の具体的な方法は とは , およそ文明国の民事訴訟に共通した手続 開始を知らせるとともに防御の機会を与えるこ 及的速やかに訴状及び呼出状を送達し , 訴訟の 原告が訴訟を提起した場合 , 被告に対して可 も , しばしば自国法に基づいて自ら日本国内の 相手方に対して送達を実施しようとすることが ある。このような送達の有効性は , 第一義的に は当該訴訟が係属している外国の裁判所が判断 することになるが , 後に , 日本の裁判所におい ても当該外国判決の承認・執行の場面でその有 効性が問題となる。 ①東京地裁平成 27 年 2 月 16 日判決 ( 2015WLJPCA02168004 ) は , 原告による法人 格否認の主張を認めて , 被告らに 90 億円の損 害賠償を命じた判決であるが , 多数の外国法人 ( 英領ヴァージン諸島法人 , マーシャル諸島法 人等 ) が被告 ( 弁論分離前の被告らを含む ) と されたことから , 訴状・呼出状の送達に多大の 時間と労力を要した。また , 東京高裁平成 27 年 9 月 24 日判決 ( 判例集未登載。平成 27 年 ( ネ ) 第 282 号 ) は , カリフォルニア州裁 判所の確定判決の執行を求めた事案において , 同州内に居住する被告 ( 日本人 ) に対して同州 登録送達人が実施した直接送達の有効性を否定 した原判決 ( 東京地判平成 26 ・ 12 ・ 10 〔 2014 WLJPCA12108005 〕 ) を覆して送達の有効性を 認め , 執行を認めた。 以下に御執筆の高取芳宏弁護士 , 一色和郎弁 護士は①判決の原告代理人を , 高松薫弁護士は 判決の原告・控訴人代理人をされた。 ( 道垣内正人・古田啓昌 )
轄裁判所送達によることとなった。 具体的には , YI への送達は , ①東京地裁の 担当裁判長→②東京地裁所長→③最高裁事務総 局→④外務省領事局→⑤在マーシャル諸島共和 国日本国大使館→⑥マーシャル諸島共和国外務 省→⑦マーシャル諸島共和国裁判所というルー トとなる 2 ) 。 そして , YI に対する訴訟は , 平成 26 年 5 月 に口頭弁論が終結され , 同年 6 月に請求認容判 決が言い渡された。もっとも , 口頭弁論終結日 の時点では , 訴状及び期日呼出状を含む書面の 送達が正式には確認できていない状況であっ た。当然 , 国際訴訟案件も国内訴訟案件と同 様 , 口頭弁論期日に十分に先立って訴状等が被 告に送達されている必要はあるが , かかる書面 の送達完了が口頭弁論終結時までに確認できて いなくとも , そのような確認を判決言渡期日ま でに行うことができれば判決の有効性は満たさ れる。本件においては , 平成 26 ( 2014 ) 年 1 月に送達文書が在マーシャル諸島共和国日本大 使館から発出されたことにつき裁判所として確 認が取れていた等の事情が存在したことから , 仮に判決言渡期日までに YI への送達の完了が 確認できなかった場合には , 同期日を取り消 し , 公示送達を行う方針を裁判所と協議し , ロ 頭弁論は終結された 3 ) 。その後 , 判決言渡期日 までに送達の完了が確認され , YI の擬制自白 に基づき請求認容判決が言渡された。 筆者らは引き続き X の代理人として YI 名義 の不動産につき強制執行手続を進めたが , 民事 執行法上 , 裁判所による強制競売の開始決定及 び配当期日の呼出状は債務者である YI に送達 される必要があることから ( 民執 45 条 2 項 , 民執規 59 条 3 項 ) , 強制執行手続は未だ完了し ていない。参考までに YI との関係で申し立て 2 ) 最高裁判所事務総局民事局監修・前掲注 D11 頁及び 24 頁参照。 3 ) このような状況下で弁論を終結し判決期日を指定す る対応につき , 古田啓昌「国際取引紛争処理をめぐる動きと 弁護実務の課題」ジュリ 1474 号 ( 2014 年 ) 63 頁参照。 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 58 た強制執行における国際送達の期間を紹介する と , 裁判所による強制競売の開始決定が平成 26 年 12 月になされ , 同決定のマーシャル諸島 共和国への送達完了が確認されたのが平成 27 年 8 月であり , 対象物件につき入札手続の開催 を経て落札者への売却許可決定が同年 11 月に 行われ , 現在は , 平成 28 年 10 月に設定された 配当期日の呼出状が YI へ送達されている状況 である 4 ) 。 ② Y2 グループへの国際送達 英領ヴァージン諸島は , ハーグ送達条約の締 約国である英国の属領であり , Y2 グループへ の送達は中央当局送達によって行われた。 より具体的には , Y2 グループへの送達は , ①東京地裁の担当裁判長→②東京地裁所長→③ 最高裁事務総局→④英国ロンドンの中央当局 (Her Majesty's Principal Secretary of State for Foreign Affairs) →⑤英領ヴァージン諸島 の指定当局 (The Registrar of the Supreme Court) というルートとなる 5 ) 。 Y2 グループを含む英領ヴァージン諸島法人 8 社は , 同国においても営業活動を行っていな い所謂ペーパーカンパニーであるが , 英領 ヴァージン諸島法上 , 法人には登録代理人が存 在し , この登録代理人には法人のため送達を受 領する権限が付与されている。 Y2 グループの 大半には , 住所が明らかにされた登録代理人が 選任されていたところ , これと同一の登録代理 人を選任している別の被告 2 社への送達完了の 確認から 1 か月が経過した段階になっても Y2 グループへの送達は確認できない状況であっ た。そこで , Y2 グループに対しては民訴法 110 条 1 項 4 号に基づく公示送達が行われた。 公示送達完了後 , 原告の主張立証が認められ 請求認容判決 6 ) を得たが , YI に対してと同様 , 4 ) マーシャル諸島共和国への送達に 8 か月程度かかる ことを考慮の上 , 配当期日までに送達の完了が確認できるよ う十分な余裕をもって同期日が設定された。 5 ) 最高裁判所事務総局民事局監修・前掲注 1 ) 11 頁 , 21 頁 , 40 頁及び 41 頁。
テッド・パートナーシップという外国の事業体 の法人性の有無 , 具体的には , 我が国の租税法 における「法人」の解釈とそのあてはめであっ ガイダント事件 4 ) と日愛租税条約事件 5 ) は , いすれも租税条約の相手国の居住者である匿名 組合員が日本の営業者から受けた匿名組合利益 分配金にかかる所得に対する課税の可否が争わ れた事案である。両事件の事実関係は異なって おり , 課税庁の主張も異なる部分があるもの の , いずれの事件においても , 課税庁は , ①租 税条約の濫用 ( 条約漁り ) は租税回避であると いう主張 , 及び②課税処分の対象となった所得 が日本でも外国でも課税されていないという国 際的二重非課税は租税回避であるという趣旨の 主張をしていた。上記の①と②は , いずれも , 課税庁がする典型的な「国際的租税回避」の主 張である。ところが , いずれの事件において も , 裁判所 ( いすれも東京高裁 ) は , ①につい ては , 適用される租税条約に根拠規定がなけれ ば , 当該租税条約の適用を排除することはでき ないという理由で , ②については , 相手国にお ける課税の有無の判断は , 日本において課税さ れるべきか否かとは別次元の判断であって日本 で課税されるか否かの判断には無関係であると いう理由で , 表現は異なるものの実質的に同趣 旨の見解を示して課税庁の主張を斥けている。 これらの事件における課税庁による「租税回 避である」という主張は , 課税処分の適法性を 法的に基礎づける主張としてなされていたとは 言い難い。他方で , やや異なる様相をみせてい たのが , 日本の銀行による外国税額控除枠の控 1 ) 本稿が念頭に置いているのは , 国境を跨ぐ取引等の 課税取扱いが争点となる事案の税務訴訟のうち , 同族会社の 行為計算否認規定や移転価格税制 , 特定外国子会社合算税制 など「租税回避」に対する対抗策として立法された個別の税 制に基づく課税処分の適法性が争われた訴訟以外の訴訟であ る。 2 ) 3 ) 4 ) 38 最判平成 23 年 2 月 18 日判タ 1345 号 115 頁。 最判平成 27 年 7 月 17 日民集 69 巻 5 号 1253 頁。 東京高判平成 19 年 6 月 28 日判タ 1275 号 127 頁 ( 最 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 除余裕枠を利用して利益を上げる取引に課され た外国法人税が外国税額控除対象か否かが争わ れ , 控除対象とすることが否定された最高裁判 例 6 ) の事案における課税庁の主張である。この 事件では , 課税庁による「租税回避である」と いう主張が , 外国税額控除にかかる条文 ( 法人 税法 69 条 ) の限定解釈の主張というかたちで , 具体的な条文に定められている課税要件の解釈 についての主張として展開されていた点が特徴 的である。 これらの税務訴訟における裁判所の判断は , 「租税回避である」か否かによってではなく , 法律条文に定められた課税要件の解釈を明らか にし , その解釈を前提として課税要件が充足さ れたか否かを検討するという構造でなされてい る。司法判断がこのような構造でなされること は , 租税法律主義という大原則 7 ) を我が国が採 用していることの帰結である。武富士事件最高 裁判決が指摘しているように , 「租税回避であ る」から否認して課税すべきであるというの は , 立法論でしかない。 Ⅱ . 「租税回避である」という 課税庁の主張と法改正の緊密な関係 さて , 上記 I で例に挙げた事件において , 課 税庁が「租税回避である」と主張した点につい ては , それぞれの事件後に次のような法改正が なされている。 ( 1) 武富士事件では , 納税者は , 平成 9 年に 日本から香港に転出した日本国籍保有者であ り , 平成 11 年末に課税処分の対象となった贈 与を受けている。そして , その直後の平成 12 決平成 20 年 6 月 5 日上告不受理により確定 ) 。 5 ) 東京高判平成 26 年 10 月 29 日 ( 東京高等裁判所平成 25 年 ( 行コ ) 第 401 号・判例集未登載 , LEX/DB 文献番号 25505528 。平成 28 年 6 月 10 日付け最高裁上告不受理決定に より確定 ) 。 6 ) 最判平成 17 年 12 月 19 日民集 59 巻 10 号 2964 頁。 最判平成 18 年 2 月 23 日訟月 53 巻 8 号 2447 頁も参照。 7 ) 租税法律主義については , 金子宏「租税法〔第 21 版〕』 ( 弘文堂 , 2016 年 ) 73 頁以下参照。
皿ヤフー / IDCF 事件 1 . 事案の概要 ヤフー / IDCF 事件は , ソフトバンク株式会 社 ( 以下「ソフトバンク」という ) とヤフー株 式会社 ( 以下「ヤフー」という ) の間で行われ た一連の M&A 及び組織再編取引が問題と なった事案である。 ソフトバンクの完全子会社であったソフトバ ンク IDC ソリューションズ株式会社 ( 以下 「 IDCS 」という ) は , 平成 20 年 3 月末時点で 約 666 億円の繰越欠損金を有しており , IDCS の当時の利益に照らして , 繰越欠損金を償却す るには相当な期間がかかることが見込まれ , ま た , 繰越欠損金のうち平成 14 年 3 月期に発生 した約 124 億円は , 平成 22 年 3 月期以降は損 金算入が認められない ( 期限切れとなる ) 状況 にあった。 このような状況において , 概要 , 以下のよう な取引が行われた。①平成 20 年 12 月 , ヤフー の代表取締役であった A 氏が IDCS の取締役 副社長に就任 ( 以下「本件副社長就任」とい う ) 。②平成 21 年 2 月 2 日 , IDCS が新設分割 により新会社 ( 株式会社 IDC フロンティア。 以下「 IDCF 」という ) を設立。③同月 20 日 , IDCS がヤフーに対し IDCF の全株式を譲渡。 ④同月 24 日 , ソフトバンクがヤフーに対して IDCS の全株式を譲渡。⑤同年 3 月 30 日 , ヤ フーが IDCS を吸収合併。 ヤフー事件 6 ) は , ヤフーが平成 21 年 3 月期 に係る法人税の確定申告にあたり , 法 57 条 2 項の規定に基づき IDCS の欠損金 542 億円余を 自己の欠損金とみなして損金の額に算入した点 が争われたものである。組織再編税制では , 資 本関係のあるグループ会社間での合併・分割等 の組織再編は , 共同で事業を営むための組織再 6 ) 最ー小判平成 28 年 2 月 29 日裁判所 HP ( 控訴審は 東京高判平成 26 年 11 月 5 日訟月 60 巻 9 号 1967 頁 , 第 1 審 は東京地判平成 26 年 3 月 18 日判時 2236 号 25 頁 ) 。 特集 / 国際的租税回避への法的対応 編成に比べて適格組織再編成に該当するための 要件が緩和されていることから , 繰越欠損金を 有する会社を新たにグループ内に取り込み , グ ループ内の法人と適格組織再編成を行うことに よって繰越欠損金を利用する租税回避行為の発 生が懸念された。そのため , 法 57 条 3 項は , 適格合併に係る合併法人と被合併法人との間の 支配関係が合併に係る事業年度の開始の日の 5 年前以後に生じている場合には , いわゆる「み なし共同事業要件」を充足する場合にのみ , 繰 越欠損金の引継ぎを認めている。みなし共同事 業要件の充足方法は , 大別して 2 つあり , (a) 事業の相互関連性に関する要件 , 事業の相対的 な規模に関する要件 , 被合併等事業の同等規模 継続に関する要件及び合併等事業の同等規模継 続に関する要件の全てに該当するか , ( b ) 事業 の相互関連性に関する要件及び特定役員の引継 ぎに関する要件 ( 以下「特定役員引継要件」と いう ) のいずれにも該当することが必要とな る。本件では , ヤフーと IDCS の支配関係が生 じたのは④の時点であり , その直後にヤフーと IDCS が合併したものであるから , ヤフーが IDCS の欠損金を引き継ぐためには「みなし共 同事業要件」を充足する必要があった。そし て , ヤフーは , 本件では (a) は満たさないもの の , ⑤の合併の際にヤフーの代表取締役であっ た A 氏が IDCS の取締役副社長に就任してい たため , 特定役員引継要件を満たし , 事業の相 互関連性に関する要件も満たしていることか ら , ( b ) のみなし共同事業要件を充足するとし て , 確定申告を行った。これに対して , 課税当 局は , 組織再編成に係る行為・計算の否認規定 である法 132 条の 2 を適用し , IDCS の未処理 欠損金額をヤフーの欠損金額とみなすことを認 めず , 更正処分等をした。 IDCF 事件 7 ) は , ②の新設分割 ( 以下「本件 7 ) 最二小判平成 28 年 2 月 29 日裁判所 HP ( 控訴審は 東京高判平成 27 年 1 月 15 日裁判所 HP , 第 1 審は東京地判 平成 26 年 3 月 18 日判時 2236 号 47 頁 ) 。 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 33
した感も否めない。むしろ , 端的に社員総会の決議事 項ではない , としてもよかったのではないか。 1 社員の退社時における出資持分の払戻し Ⅲ に関する扱いについて , 医療法は , もつばら定 款の定めに委ねている ( 44 条 2 項 7 号参照 ) 。つま り , 社員資格を喪失した者は払戻しを請求することが できる旨の定款規定があって初めて , 払戻請求権が肯 定される。ところが本判決は , Y においてこの種の 定款規定が存在したか否かの認定をせず , X に払戻 請求権があることを当然の前提としている。おそらく 本件定款には上記趣旨の規定が存在していたのだろう が , この点を明らかにせずに出資持分払戻請求を認め ている点は相当の問題がある。 この点をひとまず措くと , 問題となるのは , 払戻し の対象となる出資持分をどのように評価するかである ( 払戻しの対象が出資額に限定されるのか否かという 論点もあるが , 本件では X も Y も限定されないこと を前提として , 特に争っていない。この点については 前掲最判平成 22 ・ 4 ・ 8 参照 ) 。判旨Ⅲのいうとおり 退社時点における Y の総資産の客観的価額に従って 出資持分の払戻請求が認められるとした場合 , 問題は この総資産の客観的価額をどのように評価するかであ る。本件では , X が純資産価額を基礎としてこれを 評価して請求を行ったのに対して , Y は類似業種比 準方式によるべきだとしてこれを争った。 2 医療法人の出資持分の評価に関する先例とし て , その一定の割合を占めるのは , 相続税法上の財産 評価が問題となったものである ( たとえば前掲最判平 成 22 ・ 7 ・ 16 , 名古屋高判平成元・ 2 ・ 27 税資 169 号 400 頁 , 名古屋地判昭和 63 ・ 4 ・ 25 税資 164 号 227 頁 , 東京高判昭和 54 ・ 4 ・ 17 行集 30 巻 4 号 762 頁 , 東京地判昭和 53 ・ 4 ・ 17 行集 29 巻 4 号 538 頁 ) 。 の類型の事案において , 出資持分の評価は , 国税庁の 財産評価基本通達 ( 評価通達 ) に依拠することになる ( 医療法人の出資持分については , かっては純資産価 額で評価していたが , 現在では従業員数等に応じて類 似業種比準方式が採用されている ) 。他方 , 本件のよ うな出資持分の払戻請求が行われた事案では , いずれ も純資産価額方式が用いられてきた ( たとえば前橋地 判平成 18 ・ 2 ・ 24 民集 64 巻 3 号 623 頁 , 東京地判平 成 15 ・ 11 ・ 18 金判 1191 号 46 頁 , 浦和地判平成 10 ・ 2 ・ 20 労判 787 号 76 頁 , 東京高判平成 7 ・ 6 ・ 14 高民集 48 巻 2 号 165 頁 ) 。 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 98 本判決は , Y の事業継続を前提とした評価を行う べきだとしつつ ( これは過去の裁判例でも同様にいわ れている ) , 医療法人については通常の取引相場 ( 取 引市場 ) がないとして , 類似業種比準方式による評価 を採用した。出資持分払戻請求の事案において , 純資 産価額方式を採用した過去の下級審裁判例とは異な り , 相続税法上の評価通達を参考にしているというこ とからすると , 従前の判断枠組みとはひとまず異なる ともいえる ( もっとも , 従前の事案ではそもそも純資 産価額方式が用いられることについて争いがなかった 事案であり〔評価に関する別の点が争いとなってい た〕 , 評価方式の選択が争われたのは本件が初めてで ある ) 。 ちなみに医療法人の場合 , 剰余金の配当カ噤止され ている点で配当還元方式を用いることは選択肢として ない。収益還元方式については , 医療法人が収益の最 大化を目的とする法人でないことからすると , これだ けに限定して用いるのはやや理論的な説明に苦慮する ところがある。しかし , 医療法人とてある程度安定的 な収益を目指さざるをえず ( 当該収益を報酬や給与の 形で構成員に分配する ) , その実態において閉鎖的な 株式会社とそう大差があるとも思えない。その意味で は , 収益還元方式の利用は選択肢の 1 っとしてあっ てもよいのではないか。 そもそも , 相続税法上の財産評価が問題となってい るのではない本件で , 評価通達に依拠していることの 合理性は乏しく , 本判決でもこれに依拠することにつ いての積極的な説明はない。その意味では , 本件が先 例と異なり , 類似業種比準方式を採用しているのはい ささか理解に苦しむのも事実である ( 実はただ評価額 を下げるためだけにこの方式を採用したのではないか と勘繰りたくもなるところである ) 。他方で , 先例が 採用してきた純資産価額方式については , 清算を前提 としていることの不自然さがあり , これも直ちに採用 するには疑義がある。この点に関する裁判所の判断 は , 結局のところ当事者の主張に制約されたところが あるのだろうが , 釈明権を行使するなどして ( 民訴 149 条 ) , 収益還元方式も含む他の合理的な評価方法 を模索するということもあってよかったかもしれな