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1. ジュリスト 2016年8月号

、。ー。有斐閣 ・出版案内・ 〒 10 ト 851 東京都千代田区神田神保町 2 ー 17 TeI : 03 ー 3265 ー 6811 / Fax : 03 ー 3262-8035 ( 営業部 ) ※表示価格は税別です。 http:〃www.yuhikaku.co.jp/ アシア法務解説書の決定版 西村あさひ法律事務所編 ほうりつじむしょ にしむら A 5 判並製カハー付 ( 8 月下旬発売予定 ) ベトナムのビジネス法務 300 頁 予価 3 , OOO 円 + 税 くアジアヒジネス法務の基礎シリーズ〉 978 ー 4 ー 641 ー 04819 ー 5 マーケットとしても , 生産拠点としても注目を集めるベトナム。そんな変化の激しいベトナ ムの法制度を , 企業の進出段階に応じてわかりやすく解説したベトナム法務解説書の決定版。 2015 年 7 月に施行された 2014 年投資法や 2014 年企業法にも対応。 主 目 次 Ⅲ現地での事業連営 1 ベトナムの投資環境及 び進出動向 2 法制度の特徴 Ⅱ進出 1 2 3 4 事業体比較 外資規制 官民連携のインフラス トラクチャープロジェ クトに関する法制 ベトナムへの進出 1 2 3 4 5 6 7 8 9 2014 年企業法 契約法及び為替管理 労働法 知的財産権 税務 資金調達・担保 不動産 紛争解決 コンプライアンス 国際法の本質を見つめ直す Ⅳ撤退 1 ベトナム現地法人の清算 手続 2 外国法人の駐在員事務所 又は支店の閉鎖 3 整理解雇及び解散解雇 4 清算以外の撤退方法 5 倒産法制 6 その他の倒産・再生手続 V 終わりに ( 8 月下旬発売予定 ) やまもとそうじ 山本草ニ著 元東北大学名誉教授 かねはらあっ 兼原敦子・森田章夫編 もりたあきお 上智大学教授・法政大学教授 A 5 判上製カハー付 国際行政法の存立基盤 700 頁 予価 1 1 ,000 円 + 税 978 ー 4 ー 641 ー 04677 ー 1 著者が遺した多くの論攷の中から , 今後の国際法学を研究していく上で重要な 19 篇を厳選 して 1 冊に。次代の国際法研究を担う研究者だけに留まらす , 国際関係に関する法的側面か らの理解を深めたいすべての人に必読の書 第一部実定国際法の基盤 国際行政法の存立基盤 国際行政法 目 政府間国際組織の国際責任 次 国際法の国内的妥当性をめぐる論理と法制 度化 一方的国内措置の国際法形成機能 国際紛争要因としての対抗力とその変質 国際紛争における協議制度の変質 国家責任成立の国際法上の基盤 第ニ部実定国際法の個別的展開 経済開発協定における国際協力概念の変質 国際経済法における相互主義の機能変化 原子力安全をめぐる国際法と国内法の機能 分イヒ 南極資源開発の国際組織化とその限界 島の国際法上の地位 宇宙開発 第三部山本国際法学の原点と到達占 セルデン海洋論の実証的根拠 中世海洋国際法概念とその変容 排他的漁業権概念の歴史的展開 JAPANESE APPROACHES AND ATTI- TUDES TOWARDS INTERNATIONAL LAW 国際法の展開と学説の役割

2. ジュリスト 2016年8月号

の考慮要素の 1 っとすべきである。 このように考えるならば , 第三者による婚姻侵害が 法適用通則法 20 条のもとで同 25 条に定める準拠法 と同一の法に附従的に連結される可能性を否定すべき ではないであろう。とくに本件のように Y と XI ら夫 婦の本国法が同一とみられる場合には , ここでの附従 的連結が第三者 (Y) の予測を害することもないと思 われる。しかし , 本件では不貞行為がニューヨークで 行われるなど , 上記以外に日本との結びつきがそれほ ど強いわけではないから , 法適用通則法 17 条に従い ニューヨーク州法を適用した判旨Ⅲの判断は , 結論的 には妥当であった。 そうすると , 今度は法適用通則法 17 条にいう「加 害行為の結果が発生した地」 ( 結果発生地 ) の解釈が 問題となる。学説上は , 被害者が不貞行為の事実を 知った当時の被害者の居住地とする見解 ( 佐藤文彦・ 平成 25 年度重判解〔ジュリ 1466 号〕 301 頁 ) や , 婚 姻の身分的効力に関する同 25 条に定める地が結果発 生地になるとする見解 ( 村上幸隆・戸籍時報 717 号 22 頁 ) などがある。判旨Ⅲは上記のいずれとも異な り , 「不貞行為の当時」の「 XI の生活の本拠」を基準 としている。これは不貞行為 , すなわち加害行為の当 時の被害者の住所地または常居所地を基準としたとみ ることもできるが (See Webb and North, Thoughts on the PIace of Commission of a Non-Statutory Tort, 14 1. C. L. Q. 1314 , p. 1354 ) , むしろ , 夫婦間の 「関係」的利益の侵害は夫婦の婚姻共同生活地で発生 するとの立場から , 本件では XI と X2 の生活の本拠 が一致しないために , X2 が XI の居住するニュー ヨークに渡航して同地で婚姻共同生活を営んでいた点 を重視したものとして , 判旨の考え方を積極的に評価 したい。 2 判旨Ⅳは , Y がニューヨークにおいてメールを 送付して行った名誉毀損行為と日本においてしたそれ とを一括し , Y の名誉毀損行為が日本語でなされて いたことやその相手の多くが日本国内に所在していた ことなどから , XI の常居所地 ( 法適用通則法 19 条 ) であるニューヨークよりも日本が密接関係地 ( 同 20 条 ) といえるかどうかを検討している。しかし , 国際 裁判管轄につき加害行為をニューヨークと日本とで分 けてとらえるならば ( 上述Ⅱ 2 参照 ) , 20 条における 密接関係地の検討も名誉毀損行為ごとに行う方が親和 的である。本件では Y の名誉・信用毀損行為の時間 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 118 的・内容的近接性によってこの点が曖味であるけれど も , たとえば名誉毀損情報の内容が異なる場合や , 内 容が同一であっても発信に時間的間隔がある場合など には , それぞれ別個の行為として準拠法を考えること になると思われる ( 渡辺惺之「インターネットによる 国際的な民事紛争と裁判」高橋和之ほか編・インター ネットと法〔第 4 版〕 357 頁参照 ) 。 3 最後に , 本判決の法適用通則法 22 条 2 項の適 用の仕方 ( 判旨 V ) は首肯できない。本判決は同項を 根拠に日本法のみによって慰謝料額を認定しようとす るけれども , これでは日本法がニューヨーク州法より も高額な慰謝料額を認定する場合に不当な結果をもた らすことは明らかであり , 同項の適用を誤ったものと いうべきである。 本判決の評釈として , 長秀之・ NBL 1060 号 73 頁 がある。なお , 脱稿後に中西康・平成 27 年度重判解 ( ジュリ 1492 号 ) 302 頁に接した。

3. ジュリスト 2016年8月号

損害が生じた」かどうかである ( 乙事件でも民訴法 3 条の 3 第 8 号の解釈として同旨。ただし , ⑤判決を 再整理した⑥最判平成 26 ・ 4 ・ 24 民集 68 巻 4 号 329 頁に依拠する点で異なる ) 。そのうえで判旨は , Y に よる名誉毀損行為の一部が日本国内に向けてメールを 送信する等の方法で行われていることから日本国内に 不法行為地があるとして , XI および X2 に対して 「日本でされた名誉毀損行為に係る損害賠償請求につ いて」のみ日本の国際裁判管轄を肯定した ( 管轄原因 こでは割愛す 事実と本案要件事実の符合の問題は , る ) 。判旨は加害行為地と結果発生地のいずれによっ て国際裁判管轄が認められるかを明らかにしていない が , 乙事件で民訴法 3 条の 3 第 8 号かっこ書 ( 予見 可能性の有無 ) に言及していないことからすれば , 結 果発生地のみならず , 加害行為地もわが国にあること を前提とするものというべきであろう。ただこのよう な解釈による場合 , Y による一連の行為のいずれが 「被告が日本においてした行為」とされたのか , その 法律構成を明示することが望ましい ( 木棚照ー・リ マークス 25 号 150 頁参照 ) 。 2 つぎに判旨Ⅱは , 「ニューヨークにおいてメー ルを送付して行った名誉毀損行為」にかかる損害賠償 請求について , 前掲⑤判決 ( 乙事件では民訴法 3 条 の 6 前段 ) に依拠しつつ , 上述の「日本でされた名 誉毀損行為に係る損害賠償請求」との客観的併合を認 こから , 判旨は国際裁判 めるかどうかを検討する。 管轄との関係では本件の加害行為をニューヨークと日 本とで分けてとらえ ( 上述 1 参照 ) , 権利侵害 ( 同一 人の名誉・信用等の侵害 ) も法域毎に複数あると考え ていることがうかがえる。本件では , 1 つの法域から 複数の法域へ同じ内容のメールが時間的間隔を置かず に送信されていた可能性があり , これを 1 つの加害 行為から被害者が複数の法域に有する法的利益を同時 的に侵害する損害拡散型不法行為とみる余地もあった ように思われる。しかし , 判旨がそうした構成をあえ てとらなかったのは , このような場合 , いずれにせよ わが国では客観的併合にもとづく管轄を認めるかどう かが問題となるからである ( 中西康「出版物による名 誉毀損事件の国際裁判管轄に関する欧州司法裁判所 1995 年 3 月 7 日判決について」論叢 142 巻 5 = 6 号 211 頁参照 ) 。そこで客観的併合の要件を検討するに , 本件では , 双方の請求の事実的基礎が時間的・内容的 に近接しており , また , 不貞行為にもとづく慰謝料請 渉外判例研究 求についての判断結果が名誉毀損行為の成否または損 害額に影響を及ほしうるという点で統一的審理が必要 なものでもある。したがって , ニューヨークで行った 名誉毀損行為にもとづく請求のみならず , 上記 ( 1) 請 求についても日本でされた名誉毀損行為にもとづく請 求との関連性が認められるとした判旨の判断に賛成す る ( 渡辺惺之「客観的併合による国際裁判管轄」石川 明先生古稀祝賀・現代社会における民事手続法の展開 ( 上 ) 392 頁参照 ) 。 1 第三者による婚姻侵害にもとづく請求の Ⅲ 準拠法については , これを婚姻の効力の問題と 解し , 当事者の属人法によらしめるべきであるとする 立場 ( とくに第三者と夫婦の属人法が同一である場合 につき , Staudinger/Gamillscheg ( 1973 ) Art. 14 EGBGB Rn. 187 参照 ) , 不法行為の問題とする立場 ( 溜池良夫・昭和 52 年度重判解〔ジュリ 666 号〕 252 頁 ) , および , 不法行為と婚姻の身分的効力の二重の 性格をもっ法律関係として両準拠法の累積適用を主張 する立場 ( 澤木敬郎・ジュリ 655 号 329 頁 ) がある。 わが国の裁判例は一貫してこれを不法行為の問題と性 質決定しており ( 前掲①および③判決参照 ) , 判旨Ⅲ もこの立場に従う。この点 , 婚姻侵害は夫婦間の「関 係」的利益の侵害であると考えられ (See Prosser and Keeton on the Law of Torts, 5th ed. , 1984 , p. 915 ) , これを婚姻の身分的効力 ( ないし離婚 ) の問 題として夫婦の属人法 ( 夫婦間の関係の準拠法 ) によ らしめることには十分な理由がある。しかし , それが 本件のように夫婦という特別の身分関係にない第三者 との間で問題となる場合であっても , 無条件に夫婦間 の関係の準拠法に従わせることは疑問であり ( 溜池良 夫「第三者による婚姻侵害に基づく不法行為の準拠 法」同・国際家族法研究 152 頁参照 ) , なにより , 当 該第三者の予測を害するであろう。また , 不法行為準 拠法と婚姻の身分的効力の準拠法とを累積適用する立 場も , 婚姻侵害が夫婦間の「関係」的利益の侵害であ ることを考慮したものと解しうるが , それでも , 1 つ の法律関係を二重に性質決定することは妥当でない ( 溜池・前掲研究 154 頁 ~ 155 頁参照 ) 。以上は厳格 な不法行為地法主義をとる法例 ( 旧 ) 11 条 1 項のも とで活発に議論されてきた論点である。そのため , 不 法行為準拠法の連結方法そのものが柔軟化した法の適 用に関する通則法 ( 以下「法適用通則法」という ) の もとでは , これを同 17 条以下で準拠法を決定する際 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 117

4. ジュリスト 2016年8月号

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5. ジュリスト 2016年8月号

趣旨等から , 当該組織体が自ら法律行為の当事者とな ることができ , かっ , その法律効果が当該組織体に帰 属すると認められるか否かという点を検討する」 ( 第 2 基準 ) と判示し , 権利義務帰属主体性の有無を設立 根拠法令の規定の内容や趣旨等から判断するとした。 この第 2 基準は , 上記内国私法準拠説に立つものと 考えられる。さらに本判決は , 権利義務帰属主体性の 具体的要件として , ①当該組織体が自ら法律行為の当 事者となること , ②その法律効果が当該組織体に帰属 すると認められることの 2 点をあげており , この両 方を満たした場合に , 当該組織体に権利義務帰属主体 性があると認められると判示した。 2. 事実関係の当てはめ 本件 1 審判決では法人該当性の判断基準について , 設立根拠法令の文言を検討し , 「さらに , より実質的 な観点から」損益帰属主体性を検証すべきとしていた ( 東京高裁判決でも , 「併せて検討すべき」と判示され ている。藤谷武史・ジュリ 1470 号 105 頁 ) 。これに 対して本判決は , 第 1 基準と第 2 基準の関係性につ いて , 第 1 基準を適用することにより事業体の法的 地位が明白であるかを検討し「これができない場合 には , 次に」第 2 基準によって検討すると判示して いることから , 第 1 基準で事業体の法的地位が明白 になった場合には , 第 2 基準を適用しないことが想 定されている。 そこでまず第 1 基準の当てはめをみると , 設立根 拠法令の規定の文言として , 州 LPS 法 201 条 ( b ) 項 「 separate legal entity 」に着目し , 「州 LPS 法におい て同法に基づいて設立されるリミテッド・パートナー シップが「 separate legal entityJ となるものと定め られていることをもって , 本件各 LPS に日本法上の 法人に相当する法的地位が付与されているか否かを疑 義のない程度に明白であるとすることは困難であ」る と判断している。これは , 日本法上の法人に相当する 法的地位が付与されていることが明らかな場合とし て , デラウェア州一般会社法上の株式会社 (cor- poration) についての規定にある「 a b0dY corporate 」 ( 同法 106 条 ) と比較した結果 , 設立根 拠法令からの法的地位の判断が困難と結論付けたもの である。 次に第 2 基準については , 州 LPS 法の規定内容に おいて , LPS にその名義で法律行為をする権利を付 与し , その法律効果が LPS に帰属することを前提と 租税判例研究 していること ( 州 LPS 法 106 条 ( a ) ( b ) 項 ) , さらに , 同規定とパートナーシップ持分と LPS 財産について の規定 ( 同法 701 条 ) との整合性から , 第 2 基準の 上記 2 要件を満たしているとして , 本件各 LPS の権 利義務帰属主体性を認めている。 なお , 本判決では「外国法に基づいて設立された組 織体」として , 「事業体」ではなく「組織体」という 文言が用いられている。原判決および上告受理申立書 において「事業体」と表記されているにもかかわら ず , あえて「組織体」を用いた理由としては , 本判決 が明らかにした判断方法の適用対象の前提として , 外 国法に基づいて組織されたという点を強調し , 権利能 力なき社団を含まないことを意識したのではないだろ うか ( なお , 最高裁による本判決英訳では「組織体」 が「 entity 」と翻訳されている ) 。 Ⅱ . 租税法上の法人概念と 借用概念論 本件各 LPS に係る租税法上の法人概念については , 判断枠組みの出発点に借用概念論を用いた大阪地裁判 決に比して , 東京地裁判決や本件 1 審判決では補完 的な言及にとどまってはいたが , いずれも統一説の立 場を明言していた。これに対して本判決では , 借用概 念について正面からふれずに , 「国際的な法制の調和 の要請等」から第 1 基準を , 我が国の法人の属性で ある「権利義務の帰属主体」性から第 2 基準を導き 出している。 そこで , 第 2 基準を導き出した「前者の観点」を みると , まず所得の帰属の判断について租税法上の法 人に該当するかを問題として , そこから「納税義務者 としての適格性」へと論理を進めている。このように 本判決が , 租税法上の法人該当性から私法上の法人で はなく , 納税義務者の適格性へと進めた理由として は , 私法上の法人概念が必ずしも明白ではないこと や , 私法上の法人と法人税法上の納税義務者が完全に は一致しないことが考えられる ( 水野忠恒「租税法に おける組合と法人との区別をめぐる基準ーーアメリカ 合衆国デラウェア州法のもとに設立された LPS の損 益の帰属の可否」国際税務 36 巻 5 号 124 頁 ) 。これ らを踏まえて , 本判決は租税法上の法人該当性を第 2 基準の始点としつつも , あくまで「組織体が法人とし て納税義務者に該当するか否か」を軸として論理を展 開させたのではないだろうか。そうすると , [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 113

6. ジュリスト 2016年8月号

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7. ジュリスト 2016年8月号

" ュリ入ト 、。 ~ 。有斐閣 〒 10 ト 851 東京都千代田区神田神保町 2-17 Tel : 03-326 ト 6811 / Fax : 03 ー 3262 ー 8035 ( 営業部 ) ※表示価格は税別です。 http:〃www.yuhikaku.co.jp/ QuarterIy ー Jurist ・出版案内・ ・好評 * 発売中・ 研究欄を中心に , より高度な法知識の理解と獲得に向けた , 資料性の高い 1 冊を目指す。 幅広い法分野・法事象を対象に核心にせまる理論考察を行う法律学究誌。重厚な特集と学術 各 2 , 667 円 + 税 〔ジュリスト増刊〕 B5 判並製 と き 特集 1 環境条約の国内実施ー国際法と国内法の関係 2 改正行政事件訴訟法施行 1 0 年の検証 特集 1 障害者権利条約の批准と国内法の課題 978-4-641-21309-8 特集憲法 " 改正 " 問題ー国家のあり方とは 2 現代相続法の課題 特集 1 法務と数理的思考 2 国際関係法上の喫緊の課題 特集 1 社会保障制度改革一議論の道程と今後の展亡月 2 団体訴訟の制度設計 特集 1 「新たな刑事司法制度」の構築 特集憲法の現況 特集刑の執行猶予の多角的検討 特集土地法の制度設計 ー複数の者が関与する損害発生における複層性の検討 特集不法行為制度のあり方を考える 特集憲法のあの瞬間 2016 年春号 ( 17 号 ) 248 頁 978-4-641-21317-3 2016 年冬号 ( 16 号 ) 220 頁 978-4-641-21316-6 2015 年秋号 ( 15 号 ) 256 頁 978-4-641-21315-9 2015 年夏号 ( 14 号 ) 228 頁 978-4-641-21314-2 2015 年春号 ( 13 号 ) 208 頁 978-4-641-21313-5 2015 年冬号 ( 12 号 ) 264 頁 978-4-641-21312-8 王 2014 年秋号 ( 1 1 号 ) 248 頁 978-4-641-2131 1 - 1 2014 年夏号 ( 10 号 ) 208 頁 978-4-641-21310-4 2014 年春号 ( 9 号 ) 2014 年冬号 ( 8 号 ) 248 頁 978-4-641-21308-1 2013 年秋号 ( 7 号 ) 244 頁 978-4-641-21307-4 2 星野英一先生の人と学問 特集震災と民法学 特集いま , 選挙制度を問い直す 特集團藤重光先生の人と学問 特集重要判例からみた行政法 特集 1 裁判員制度 3 年の軌跡と展望 2 国際化時代における家族法の課題 特集憲法最高裁判例を読み直す 204 頁 978-4-641-21306-7 252 頁 978-4-641-21305-0 2 1 6 頁 978-4-641-21304-3 240 頁 978-4-641-21303-6 276 頁 978-4-641-21301-2 232 頁 978-4-641-21300-5 2013 年夏号 2013 年春号 2013 年冬号 2012 年秋号 2012 年夏号 2012 年春号 ( 6 号 ) ( 5 号 ) ( 4 号 ) ( 3 号 ) ( 2 号 ) ( 1 号 )

8. ジュリスト 2016年8月号

Number 労働判例研究 1279 遺族補償年金の 支給要件と憲法 14 条 一地公災基金大阪府支部長 ( 市立中学校教諭 ) 事件 フランス国立科学研究センター 研究員・ポルドー大学所属 東京大学労働法研究会 笠木映里 Kasagi Eri 大阪高裁平成 27 年 6 月 19 日判決 平成 25 年 ( 行コ ) 第 211 号 , 地方公務員災害補償 基金対甲野太郎 , 遺族補償年金等不支給決定処 分取消請求控訴事件 / 労働判例 1125 号 27 頁 / 参照条文 : 憲法 14 条・ 25 条 , 地方公務員災害 補償法 32 条 1 項 , 同法附則 7 条の 2 第 2 項 本件は , x が妻 A ( 地方公務員 ) の公務に 事実 で , 地公災法 32 条 1 項ただし書 1 号及び同法附則 7 本件各処分については , A の死亡当時 X は 51 歳 件各処分の取消しを求めた事案である。 ( 以下 , 「本件各処分」 ) をしたため , X が Y に対し本 平成 23 年 1 月 5 日付でいずれも不支給とする処分 族特別給付金の支給請求をしたところ , 処分行政庁が 族補償年金 , 遺族特別支給金 , 遺族特別援護金及び遺 公務員災害補償法 ( 以下 , 「地公災法」 ) に基づき , 遺 の大阪府支部長 ( 以下 , 「処分行政庁」 ) に対し , 地方 と認定された ) につき , Y ( 地方公務員災害補償基金 ) 成 22 年。公務により精神障害を発症し自殺したもの よる死亡 ( 平成 10 年。公務災害の認定は , 平 条の 2 第 2 項に定める要件に該当しないこと等が理 由とされていた。 地公災法 32 条 1 項は , 職員の死亡の当時そ Ⅱ の収入によって生計を維持していた配偶者のう ち , 妻については年齢を問わず遺族補償年金を受給で きるものと定めているのに対し , 夫については , 60 歳以上 ( 同法附則 7 条の 2 第 2 項により 55 歳以上 ) との要件 ( 年齢要件 ) を定め , 遺族補償年金の受給要 件について妻と夫とを区別している ( 以下 , 「本件区 別」 ) 。本件区別が憲法 14 条 1 項ないし市民的及び政 治的権利に関する国際規約 26 条 , 経済的 , 社会的及 び文化的権利に関する国際規約 3 条に反するか否か が , 本件の争点である ( 以下では , 憲法 14 条 1 項に 関わる部分だけを検討対象とする ) 。 原判決 ( 大阪地判平成 25 ・ 11 ・ 25 労判 1088 Ⅲ 号 32 頁 ) は , 本件区別は , 立法当時 ( 昭和 40 年代 ) においては合理性のある内容であったが , 今日 では不合理な差別的取扱いであり憲法 14 条 1 項に反 するとして , x の請求を認容し本件各処分を取り消 した。同判決に対して Y が控訴した。 控訴認容 ( 請求棄却 ) 。 1 昭和 40 年・ 41 年の遺族補償等の年金化 に係る改正以前に「労災保険法・・・・・・及び国公災 法・・・・・・が定めていた遺族補償 ( 一時金・・・・・・ ) ・・・・・・の性 格は損害補償であった」。「・・・・・・労災保険法及び国公災 法に・・・・・・年金制が導入され ( 遺族補償等の年金化に係 る改正 ) ・・・・・・遺族補償年金については , 受給資格のあ る遺族を , 労働者・職員の死亡の当時その収入によっ て生計を維持していた者に限定し ( 生計維持要件 ) , さらに , 妻以外の者に・・・・・・は」年齢要件及び障害要件 ( 一定の障害状態にある者を受給者とする旨の要件 ) が定められた。一方 , 遺族補償一時金については生計 維持要件・年齢要件・障害要件のいずれも定められな かった。「上記改正は・・・・・・遺族の被扶養利益の喪失を 瞋補し , 遺族の生活を保護することを目的とする社会 保障制度として遺族補償年金を創設し・・・・・・遺族補償年 金の支給がされないときに , 遺族補償一時金が支給さ れる仕組みとし , 遺族補償一時金の支給により損害補 償を図ったもの・・・・・・である」。 労災保険法及び国公災法上の「遺族補償年金は , 基 本的に社会保障制度の性格を有する」。「地公災法の定 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 103

9. ジュリスト 2016年8月号

、。ー。新有斐閣 〒 101 ー 851 東京都千代田区神田神保町 2 ー 17 Tel : 03 ー 3265 ー 6811 / Fax : 03 ー 3262 ー 8035 ( 営業部 ) ※表示価格は税別です。 http://www.yuhikaku.co.jp/ ・出版案内・ 法学教室ライブラリィ きたむらかずおふかさわりゅういちろう いいじまじゅんこ 北村和生・深澤龍一郎・飯島淳子・磯部哲著 立命館大学教授・九州大学教授・東北大学教授・慶應義塾大学教授 A 5 判並製カハー付 事例から行政法を考える・ 458 頁 3 , 400 円 + 税 978 ー 4 ー 641 ー 1 3187 ー 3 法学教室の好評連載を単行本化。具体的な事例問題 20 問とそれを解くための豊富な資料を 掲載。さらに , 各事例で問われている論点 ( 「 CHECK PO 爪 T 」 ) , 「関連問題」とその 「 COMMENT 」を新たに収録し , より使いやすいものになっている。 【第 1 部標準編】 めぐる紛争 主 事例①地下水保護条例をめぐる紛争 事例⑩ごみ処理広域化をめぐる利益調整のあり方 事例②公の施設の利用許可をめぐる紛争 事例⑩と畜場法に基づく検査をめぐる紛争 目 事例③地方公務員の懲戒処分に対する司法審査 事例⑩宅地造成等規制法による規制権限をめぐる紛争 次 事例④老人福祉施設の民間化をめぐる利益調整のあ 事例⑩親水公園の管理をめぐる紛争 事例⑩課税処分をめぐる利益調整のあり方 り方 事例⑤社会保障給付決定とその返還をめぐる紛争 事例⑩予防接種健康被害の救済と個人情報 事例⑥廃棄物法 7 条 1 項および浄化槽法 35 条 1 項に 事例⑩法に基づく提出文書と情報公開 基づく営業許可をめぐる紛争 事例⑦都市計画法 53 条 1 項に基づく建築許可をめぐ 事例⑩道路運送法上の公示をめぐる紛争 る紛争 事例⑩農地の強制竸売と転用をめぐる紛争 事例⑧墓地経営許可をめぐる利益調整のあり方 事例⑩入管法に基づく退去強制をめぐる紛争 事例⑨障害者総合支援法に基づく勧告および処分を 事例⑩まちづくり事業をめぐる利益調整のあり方 新基本民法シリーズ第 4 弾 ! おおむらあっし 大村敦志著 東京大学教授 新基本民法 5 契約編 . A5 判並製カノヾー 260 頁 1 , 900 円 + 税 各種契約の法 978 ー 4 ー 641 ー 13742 ー 4 中心に契約法制のかたちを概観する 2 色刷りで重要ポイントが一目でわかるほか , 章ごと にまとめのページを置き , 知識の確認と定着を図っている。債権法改正案にも対応。 第 1 節賃貸借 (UNIT 6 / 7 ) はじめに 総論各種の契約 (UNIT I) 第 2 節消費貸借等 (UNIT 8 ) 目序章契約の成立 (UNIT 2 ) 第 3 節雇用・請負・委任等 (UNIT 9 ) 次第 1 章財貨移転型の契約 : 売買 第 3 章組織型の契約 : 組合など (UNIT 10 ) 第 1 節売買の効力 (UNIT 3 / 4 ) 第 4 章好意型の契約 : 贈与・使用貸借など 第 2 節売買の解除 (UNIT 5 ) (UNIT 11) 第 3 節売買類似の契約 (UNIT5) 第 5 章その他の契約 (UNIT 12 ) 第 2 章財貨非移転型の契約 補論類型思考と法 (UNIT 13 ) ■シリーズ既刊 * 好評発売中・ 新基本民法 2 物権編 - 財産の帰属と変動の法 222 頁・ 1 , 7 開円 + 税 ( 978 ー 4 ー 641 ヨ 3723 ー 3 ) 新基本民法 6 不法行為編ー法定債権の法 224 頁・ 1 , 7 開円 + 税 ( 978 ー 4 ー 641 ー 13721-9 ) 新基本民法 7 家族編ー女性と子どもの法 226 頁・ 1 , 700 円 + 税 ( 978 ー 4--641 ー 13694 ー 6 ) ( 発売中 ) いそべてつ 【第 2 部応用編】 ( 発売中 ) 『基本民法Ⅱ債権各論』から契約編を抜き出しリニューアル。契約各則から出発し , 売買を 0 = =

10. ジュリスト 2016年8月号

Number 渉外判例研究 647 名誉・信用毀損 , および不貞行為の 国際裁判管轄と準拠法 首都大学東京准教授 渉外判例研究会 種村佑介 Tanemura Yusuke 東京地裁平成 26 年 9 月 5 日判決 平成 23 年 ( ワ ) 第 13312 号 ( 甲事件 ) , 平成 24 年 ( ワ ) 第 31937 号 ( 乙事件 ) , 甲野花子対乙山春子 ( 甲事件 ) , 甲野太郎対乙山春子 ( 乙事件 ) , 損害 賠償請求事件 / 判時 2259 号 75 頁 / 参照条文 . 平成 23 年法律第 36 号による改正前民事訴訟法 5 条 9 号・ 7 条 , 民事訴訟法 3 条の 3 第 8 号・ 3 条の 6 , 民事訴訟法附則 2 条 1 項 , 法の適用に 関する通則法 17 条・ 19 条・ 20 条・ 22 条 2 項 事実 X2 および Y がいずれも日本国籍を有することは , 当 旬頃にニューヨークにおいて不貞行為をした (XI, を続け , 平成 22 年 5 月頃および同 8 月ないし 9 月上 の婚姻後も互いに配偶者がいることを知りながら交際 ョークに居住 ) は平成 21 年 10 月に知り合い , XI と X2 と被告 Y ( 平成 20 年 6 月 18 日頃からニュー 活を営んでいた。 が日本からニューヨークに渡航して同地で夫婦共同生 仕事を行うようになり , XI との婚姻後は夫である X2 ク」という ) に渡航したが , その後 X2 は日本中心で ニューヨーク州ニューヨーク市 ( 以下「ニューヨー した夫婦である。 XI らは平成 8 年頃アメリカ合衆国 原告 XI と原告 X2 は , 平成 22 年 2 月 15 日に婚姻 事者間に争いがない ) 。 XI は X2 の浮気を疑い , X2 が Y との不貞行為を認めたため , XI は , Y の夫に対し , X2 と Y が不貞行為をした旨の電子メール ( 以下 「メール」という ) を送るなどの行為をした。これを 受けて Y は , 平成 22 年 9 月 20 日から同月 25 日にか けて , ニューヨークおよび日本における X2 の知人等 に対し , X2 と Y が不貞行為をしていないのに , XI が不貞行為を疑い , Y の夫の職場に押しかけて困っ ている , X2 が精神病であるといった内容のメールを 送るなどの行為をした。 XI は , Y が X2 と不貞行為をしたうえ , X2 の知人 等に対し上記内容のメールを送付するなどの名誉毀損 行為をしたとして , Y に対し , 不法行為にもとづく 損害賠償請求訴訟を提起した ( 甲事件 ) 。また X2 も , Y が X2 の知人等に対し上記内容のメールを送付する などの名誉毀損および信用毀損行為をしたとして , Y に対し , 不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟を提起 した ( 乙事件。なお , 平成 23 年法律第 36 号による 改正後の民事訴訟法〔以下「民訴法」という〕の規定 は , 同法の施行期日〔平成 24 年 4 月 1 日〕前に Y が 訴状の送達を受けた甲事件には適用されないが , 乙事 件には適用される〔民訴法附則 2 条 1 項〕 ) 。 判旨 生じたとの客観的事実関係も証明されている。」「よっ Y が日本においてした行為により XI の法益に損害が 文面は , ・・・ XI の名誉を毀損する内容であるから , 本国内に不法行為地がある。また , ・・・・・・本件メールの る方法及び電話をかける方法で行われているから , 日 本国内の東京都及び神奈川県に向けてメールを送信す 「 Y による XI に対する名誉毀損行為の一部は , 日 が相当である」。 との客観的事実関係が証明されれば足りると解するの いてした行為により原告の法益について損害が生じた 轄を肯定するためには , 原則として , 被告が日本にお 法 5 条 9 号 ) に依拠して日本の裁判所の国際裁判管 き , 民訴法の不法行為地の裁判籍の規定 ( 改正前民訴 れた不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につ 「日本に住所等を有しない被告に対し提起さ 記と略同様 ) 。 当する部分が民訴法 3 条の 6 に依拠するほかは , 下 法 3 条の 3 第 8 号および後掲⑥判決に , 判旨Ⅱに相 一部認容 ( 乙事件では , 判旨 I に相当する部分カ眠訴 [ Jurist ] August 2016 / Number 1496 115