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検索対象: ビジネス法務 2016年10月号
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1. ビジネス法務 2016年10月号

ある」と表現したのである。よって , 取引当 法経営額が大きければ大きいほど , 命じられ 事者に限らず , 「取引に影響を及ばす可能性 る過料も大きくなり , 過料についてこれまで の「過料金額は 1 万元以上 20 万元以下とす のある第三者」はいずれも主体となる可能性 る」という絶対値による制限がなくなった。 がある。 よって , 違法経営額が 60 万元に達すれば , れまでの最高の過料限度額を超える可能性も 2 贈賄行為の完了の要否 あり , 継続的で長期に及ぶ大型の取引行為に 改正稿では , 商業賄賂の目的が「商品を販 ついては , その過料が天文学的数字になるお 売または購入する」から「取引の機会または 競争上の優位性の獲得をはかる」に修正され それがあることを強く認識する必要がある。 ており , その範囲が拡大されたことに疑いは ない。特に注意すべきは , 改正稿における商 不正競争行為に対する規制の 業賄賂は直接供与や収受のみならず , 供与や 収受の約束も含まれている点であり , すなわ ち , 贈賄行為の完了を要求していない点であ 1 関連条項の連用性の向上 改正稿では , いくっかの典型的な不正競争 る。さらに注意すべきは , 従業員が商業賄賂 を利用して事業者のために取引の機会または 行為 , たとえば市場混同 , 誤解を招く商業宣 競争上の優位性の獲得をはかった場合 , 事業 伝等の行為に対しより詳細な規定を置き , 関 者の行為であると認定されるが 4 , 従業員が 連条項の運用性を向上させた。たとえば , 事業者の利益に反して賄賂を収受したことを 「市場混同行為」として 5 条に定める行為を 正明する証拠を有する場合は , 事業者の行為 概括的に列挙し , 市場混同および商業標章の 意味を定義し , 「商標法」と結びつけて , 他 とみなされないと明確に定めた点である。現 在 , 多くの企業が形式上商業賄賂行為を禁止 人の登録商標 , 未登録の馳名商標を企業名称 中の商号として使用し , 公衆を誤導し , 市場 しているが , 実際のところ関連する営業担当 者に多くの経費限度枠を与えており , その経 混同をもたらす不正競争行為を規制すること を明確に定めた。改正稿は , 誤解を招く商業 費の具体的な使用について規範を設けずに 従業員が行う贈賄行為に対し「見て見ぬ振 宣伝に対しより詳細な規定を置き , 誤解を招 り」をしている。このような場合 , 今後は く虚偽宣伝には虚偽の宣伝のみならす , 関連 する公衆を誤解させる宣伝も含まれることを 「知らなかった」という理由で抗弁すること が難しくなり , 企業も従業員の行為に対し責 明確に定めた。また , 改正稿では , 営業秘密 事件の挙証責任に関する規定を整備し , 不当 任を負わなければならなくなる。 な景品付販売の表現形式を補充して整備し , 抽選式の景品付販売促進の最高賞金額を適切 3 過料制限の撤廃 に引き上げた 5 このほか改正稿は , 事業者の違法行為に対 する処罰を大幅に強化し , 監督検査部門は情 2 不正競争防止法の適用範囲の拡張 状に応じて違法経営額の 10 % 以上 30 % 以下の 過料に処する旨を定めた。言い換えれば , 違 このほか , 改正稿 14 条に包括条項を追加 4 国家工商行政管理総局が「不正競争防止法」に基づき制定・公布した「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」にもかかる内 容が定められているが , これまで法律レベルにおいてこのような規定は定められていなかった。 5 改正稿は , 抽選式の景品付販売促進における景品の最高額を , 現行法の 5 , OOO 元から 2 万元に引き上げた。 一三ロ 130 ビジネス法務 2016.10

2. ビジネス法務 2016年10月号

0 \ もっと伝わる法務英語 / PIain EngIish で簡潔に① はじめに一一就業規則とは 英文就業規則 では , 英文で就業規則を作成するうえでの留意点をあげることにする。 ある。ただ , 外国人にも理解できるよう , 英文で就業規則を作成する意義は大きい。本稿 際 , 外国人専用の就業規則は , 特に必要はない。国籍による差別は禁止されているからで 外資系企業に限らず , 日本企業でも , 外国人を雇うケースは増えている。外国人を雇う 特定社会保険労務士倉田哲郎 倉田国際労務管理事務所 就業規則は , 労働基準法により , 常時 10 人 以上の労働者を使用する事業所に , 作成・届 出が義務付けられている。法により作成しな ければならないというだけではなく , 労務管 理上ひいては経営上 , 大変重要な意味を持っ 文書である。特にわが国では , 従業員を採用 し , 雇用するうえでのさまざまな労働条件 を , 個々人ごとに交渉で決めるということを せず , 就業規則により , 職場全体で統一的画 一的に決定するという法的規範性がある。ま た , いったん決定した労働条件は , 経営上の 必要が生じても , 簡単には変更できないこと が多い。特に , 労働者の不利益になるような 変更は , きわめて難しいのが実情である。あ とからの不利益変更が難しいからといって , 最初から使用者に都合のよいことばかり盛り 込んでも , その内容が「合理的でない」と判 断されるような場合は , 無効になってしま う。経営者にとっては , 大いに注意を要する ものなのである。 英文就業規則作成にあたっての 留意点ーー原文の見直し 般の読者には理解しづらいようなものがしば と難解な表現を使い , 法律の専門家でない一 には , 一見格調は高いように見えるが , わざ い。既存の英文の契約書や就業規則などの中 いまいさを排除したものでなければならな る文書は , 読者にとって , わかりやすく , あ 就業規則に限らず , 人の権利義務にかかわ Plain English のすすめ かじめ日本語の文章をよく見直しておきたい。 場合もある。翻訳を始めるに当たっては , あら 日本語の規程の文章に単純な校正ミスがある にも解釈できる表現があったりする。また , すると , 主語があいまいであったり , 何通り 既存の日本語の規程を英語に変換しようと 24 ビジネス法務 2016.10

3. ビジネス法務 2016年10月号

中国「不正競争防止法」全面改正へ に該当し , いかなる場合が「合理的でない」 の手段で賄賂行為を行うことにより商品を販 に該当するか , すなわち「正当化事由」の確 売または購入してはならない。帳簿に記帳す 定についての規定が現時点では明確ではな ることなく密かに相手側の組織または個人に く , 今後個別のケースにおいて徐々にルール リべートを贈ることは , 贈賄行為として処分 が確立されていくものと考えられるが , 行政 する。相手側の組織または個人から , 帳簿に 機関および司法機関に大きな自由裁量権が残 己帳することなく密かにリべートを受け取る されるおそれがある。特に注意すべきは , 改 ことは , 収賄行為として処分する。事業者は 正稿が , 違法行為の処罰について違法経営額 商品を販売または購入するときに , 明示的方 の同額以上 5 倍以下の過料に処し , 違法経営 法で相手側に値引きすることができ , イ中介人 額がない場合 , または違法経営額を計算でき に手数料を支払うことができる。事業者が相 ない場合は , 情状に基づき 10 万元以上 300 万 手側に値引きし , 仲介人に手数料を支払うと 元以下の過料に処すると明確に定めた点であ きは , 必ず事実どおりに記帳しなければなら る。違法経営額 ( 一般的に原価または費用を ない。値引き , 手数料の支払を受けた事業者 控除する前のすべての売上高を指す ) に基づ は , 必ず事実どおりに記帳しなければならな き計算されるため , 当該過料金額が「独占禁 い」と定めている。 止法」における処罰金額に比べはるかに高く 他方 , 改正稿では , 概念追加列挙方式を採 なる可能性がある 3 。まさにこの条項によっ 用して商業賄賂の概念および典型的な商業賄 て極めて大きな影響がもたらされる可能性が 賂行為を明確に定めたが , 現行法で使われて あるため , 改正稿は , 一般的な不正競争行為 いる「帳簿に記帳することなく密かに」や が県レベル以上の監督検査部門によって処罰 「事実どおりに記帳」等の表現は削除された。 されるのと異なり , 相対的に優位な地位を濫 改正稿は , 「商業賄賂とは , 事業者が取引相 用した違法行為に対してはさらに上級の地級 手または取引に影響を及ばす可能性のある第 市レベル以上の監督検査部門によって処罰を 三者に対し , 経済的利益を供与し , またはそ 行わなければならないことを要求したのであ の供与を約束することによって , それが事業 る。とはいえ , 中国は範囲が非常に広いた 者のために取引の機会または競争上の優位性 め , 各地の法律執行の基準や程度を統一する の獲得をはかるよう誘導することを指す。経 ことができるか否かは , 今後考察するに値す 済的利益の供与またはその供与の約束は商業 る問題の 1 つである。したがって , 資金およ 贈賄にあたり , 経済的利益の収受または収受 び技術の面において中国企業に比べ比較的に の同意は商業収賄にあたる」と明確に定め 強い実力を有する日系企業としては , 相対的 た。実際の商業賄賂事件においては , 贈賄主 に優位な地位の濫用に関する制度の導入およ 体は , 取引相手のみならず , 贈賄主体の目的 びその運用を注視していく必要がある。 達成を幇助する能力を有する第三者に対して も贈賄を行う可能性がある。収賄主体は , 通 常 , 取引と密接な関係にあり , かっ取引に影 商業賄賂規制の強化 響を及ばす能力を有する者であり , 一般的に はイ中介機構 , プローカー , 政府関連部門の職 1 記帳への記載の要否 員等がこれにあたり , これらの収賄主体の本 現行法は , 「事業者は , 財産またはその他 質的な特徴を「取引に影響を及ばす可能性の 3 「独占禁止法」における市場支配的地位濫用行為に対する処罰基準は前年売上高の 1 % から 1 0 % までである。 一三ロ 129 ビジネス法務 2016.10

4. ビジネス法務 2016年10月号

し , 「不正競争防止法」の適用範囲を拡張し た。 14 条は , 「事業者は , 他人の合法的権益 を損ない , 市場の秩序を乱すその他の不正競 争行為を行ってはならない」と規定した。ま た , 行政法律執行機関による一般条項の正確 な適用を保証し , 濫用の現象が生じることを 防ぐため , 同条 2 項において「前項に定める その他の不正競争行為は , 国務院工商行政管 理部門が認定する」と明確に規定した 6 。 これらの関連改正における改正内容は多岐 にわたり , 微に入り細を穿つものであるため , 関連の不正競争行為にかかわる可能性のある 企業 , またはその他の関連企業の不正競争行 為によって悩まされている日系企業にとって は , 自社の経営活動および業務分野に関連す る法律の改正動向を的確に把握し , 相応の解 決策を検討することが可能となるであろう。 朝法律執行力の強化 改正稿では , 法律執行手段および法律責任 に関する規定を充実させ , 法律執行手続をよ り明確にし , 法律責任をより厳格にした。改 正稿 15 条は , 不正競争行為の監督管理手段を 列挙し , 被調査行為に関連する営業所または その他の場所に立ち入って検査すること , 不 正競争行為の疑いのある財産に対し封印 , 差 押えを実施すること , 違法資金の移転または 隠匿を証明する証拠があるときは , 司法機関 に凍結を申し立てることができること等を定 めた。改正稿によれば , 監督検査部門が法に 基づき行う調査に対し , 法定の事由によらず に関連資料 , 状況の提供を拒み , 虚偽の資 料 , 状況を提供し , 証拠を隠蔽し , 廃棄し , 移転し , またはその他調査行為を拒否し , 妨 中国「不正競争防止法」全面改正へ創 害する行為があったときは , 監督検査部門が 是正を命じ , 過料に処するとされている。 改正稿は , 不正競争行為を遅滞なく差し止 めることができるように , すべての不正競争 行為に対し行政法律責任を規定した。さら に , 改正稿は , 多くの行政処罰の最高金額を 引き上げ , 不正競争行為の懲罰力を高め , 法 律による抑止力を強化した。また , 改正稿 17 条は , 消費者が不正競争行為による侵害を 受けた場合も , 法に従い直接人民法院に訴訟 を提起できることを定め , 不正競争防止法の 執行方法をさらに拡大した。 改正稿が正式な法律規定となるには , さら に「審議 , 議決 , 公布」の法定手続を経る必 要がある。現時点では , 具体的な所要期間を 正確に予測するのは難しいが , それほど長く はかからないと思われる。特に , 改正稿の規 定において相対的に優位な地位の濫用に対す る規制の導入および商業賄賂規制の改正が多 く採り入れられており , 当該規定は最終的な 法律文書においても定められる可能性が高 い。よって , 関連企業としては , 改正稿の内 容をふまえ , できる限り早く自社のコンプラ イアンス体制を強化し , 法律リスク管理体制 を構築し , 改善すると同時に , 内部審査を定 期的に行い , 関連法律の改正動向および自社 の経営の実情に基づき , 関連コンプライアン ス業務をさらに改善していくことが望まれる。 原浩 ( ユ工ンジェ ) 中国政法大学比較法学研究院講師 , 法学博士。 6 これに関連して , 27 条では , 「事業者が本法 1 4 条の規定に違反し , 不正競争行為を行った場合は . 監督検査部門は違法行為 の停止を命し情状に応じて 1 0 万元以上 300 万元以下の過料に処する。犯罪を構成する場合は , 法に従い刑事責任を追及す る」という相応の法律責任を規定した。 ビジネス法務 2016. IO 131

5. ビジネス法務 2016年10月号

【図表】各分野について予想される影響 英国の EU 離脱による企業法務への影響郞 生じうる影響 保険業 通信事業 航空業 鉱業 分野 金融業 英国が EEA 協定に参加しない場合 , 「パスポート制度」を使った EU 域内でのサービス提供 ができなくなるため , EU 加盟国内に子会社を設立したり事業許可を得る必要が生じる。 また , ロンドンの金融センターとしての魅力が低下し , 欧州拠点が他の EU 加盟国へ移転 されることもありうる。 上記の金融業一般と同じく「パスポート制度」の問題があるほか , 2016 年 1 月に EEA で 導入された保険監督制度である「ソルべンシーⅡ」における同等性評価を英国の保険監督 制度が受けられるかという点が問題となりうる。 電気通信事業への規制について , 英国はどちらかというと規制緩和を求める立場から EU 内の立法・規制に影響を及ばしていたため , EU 離脱によってその影響力が小さくなった 場合 , 規制が強化される方向へと進む可能性がある。 またローミング料金の上限を規制する EU 規則により , EU 内でのローミング通信は比較的 低料金であった ( さらに , 1 5 年 1 0 月に欧州議会で承認された法案により , 1 7 年 6 月から EU 域内でローミング料金がなくなる予定である ) が , 英国の利用者はこのような恩恵を受け られないこととなりうる。 英国で事業許可を得ていた航空会社は , 自由化が進んだ EU 域内の航空市場へのアクセス を失うおそれがある。また , 英国政府は , EU が航空協定やオープンスカイ協定を結んで いた国と , 個別に協定を結びなおす必要が生じる。 英国は鉱業製品を多く EU 市場に輸出しており , 製品の安全性基準については離脱後も EU の規制水準を維持することになると予想される。また , 労働者の安全確保 , 鉱山環境の保 全に関しても , 規制の大きな変動は見込まれない。 9 各種業法 紙幅の関係上 , EU 離脱によって影響を受 けうる各業種 , 各分野に関連する法律・実 務 , すべてを網羅することはできないが , 影 響を受けうる典型的な業種・分野について は , 【図表】を参考にされたい。 おわり 以上 , 仮定的かっ暫定的な内容ではある が , EU 離脱がもたらす法的問題点について 検討を加えた。 繰り返しになるが , 現時点でただちに企業 法務への影響が生じるわけではない。また , 英国・ EU 間の本格的な交渉が始まっていな い現時点においては , EU 離脱による影響の すべてを予想することは難しい。ただ , 逆説 的にはなるが , このような先行きが不透明な 状況において , 最も恐ろしくかっ悪影響が大 きいのは , 漠然とした不安感の中 , 思考停止 に陥ったり , 重要な意思決定が不当に遅れた りすることである。この過渡期において重要 なことは , これから始まる長い交渉プロセス を注視し , EU 離脱による大きな混乱を避け るよう備えることである。本稿の分析がその 一助になれば幸いである。 石田雅彦 ( いしだまさひこ ) ディーエルエイ・バイバー東京バートナーシップ外国 法共同事業法律事務所バートナー ( コーボレート部門 代表 ) 。弁護士・ニューヨーク州弁護士。東京大学大学院・ コロンビア大学ロースクール ( フルブライト奨学生 ) 。 「米国 JOBS 法の成立から 1 年」本誌 201 3 年 10 月号 等 , 執筆・講演多数。専門分野は M & A , キャピタルマ ーケツツ , 国際取引 , 競争法等。 丸山翔太郎 ( まるやましようたろう ) ディーエルエイ・バイバー東京バートナーシップ外国 法共同事業法律事務所アソシェイト。弁護士。東京大 学法学部卒業・同法科大学院修了。多国籍企業に関す るものを中心に M & A その他企業法務を取り扱う。 ビジネス法務 2016.10 61

6. ビジネス法務 2016年10月号

った場合の効果について , 事業譲渡等指針に 明確な定めはないが , ①上記事前協議は , 法律 の規定に基づくものではないこと , ②事業譲 渡等指針において , 行うことが「適当である」 と定められているに過ぎないこと , ③法律に 基づく 7 条措置ですら , 努力義務規定である ことを理由に , その違反のみでは会社分割に よる労働契約承継の効力を左右する事由にな 、 1 9 らないとされていると等に鑑みると , 事 前協議が不存在または不十分であったことの みを理由として , 労働契約承継の効果が否定 されるものではないものと考えられる。 しかしながら , 事業譲渡等指針策定の趣旨 に鑑みると , 承継予定労働者の承諾または同 意の任意性が争われる場合は , 事前協議が不 存在または不十分であった事実は , その任意 性を否定する方向に働く重要な判断要素にな るものといえよう。 3 その他の留意事項 労働契約承継に対する不承諾のみを理由と する解雇 , 事業譲渡のみを理由とする解雇等 は , 労働契約法 16 条により , 権利濫用に該当 するものとされている ( 事業譲渡等指針 2 項 1 また , 労働者が不当に承継から排除された 場合は , 黙示の合意の認定 , 法人格否認の法 理等を理由として譲受会社等へ労働契約が承 継される可能性が示されている ( 事業譲渡等 指針 2 項 1 (4)) 。 19 前掲日本アイ・ビー・エム事件。 譲渡前であっても , 労働組合との団体交渉に 雇用主ではなくても , また , 譲受会社は事業 えて , 上記 1 2 ( 5 ) で述べたのと同様 , 直接の て , 過去の裁判例 , 労働委員会命令例をふま さらに , 団体交渉に関する留意事項とし 組織変動に伴う労働関係法制の実務対応 朝合併 が示されている ( 事業譲渡等指針 2 項 2 ( 2D2 応ずべき使用者に該当する可能性があること 応業務等を扱う。 般 , 訴訟のほか , 企業法務一般・コンプライアンス対 院卒業。 1 0 年 T Ⅵ総合法律事務所に入所。労働関係全 2005 年一橋大学法学部卒業 , 08 年一橋大学法科大学 鈴木弘記 ( すずきひろき ) の実務〔第 2 版〕』 ( 共著 , 商事法務 , 2014 ) など。 本法規出版 , 2014 ) , 「シチュエーション別提携契約 & チェック労務コンプライアンスの手引」 ( 共著 , 新日 働関係全般 , M & A を専門とする。主な著書は「フロー 所に入所。東京弁護士会労働法制特別委員会所属。労 2005 年中央大学法学部卒業。 07 年 T Ⅵ総合法律事務 近藤圭介 ( こんどうけいすけ ) とが肝要といえよう。 らの内容を正確に把握し , 確実に履践するこ である。円滑な組織再編の実現のため , これ いて , 従前の実務上の対応の修正を迫るもの たは事業譲渡の際の労働契約承継の手続につ 以上のとおり , 本改正は , 特に会社分割ま 朝おわりに 譲渡等指針 3 項 ) 。 容が改めて周知されるに留まっている ( 事業 るが , 事業譲渡等指針においては , 同様の内 ものであることとの留意事項が周知されてい る労働条件についても , そのまま維持される れるものであること , ②労働契約の内容であ 約についても , 存続会社等に包括的に承継さ 知 21 において , ①消滅会社の労働者の労働契 合併に関しては , すでに , 厚生労働省の通 2 。事業譲渡前の譲受会社の使用者該当性につき , 中労委平 20.2.20 命令集 140 集 8 1 3 頁 ( 盛岡観山荘病院事件 ) 。 21 厚生労働省大臣官房地方課長および厚生労働省政策統括官から各都道府県労働局長宛ての平成 1 5 年 4 月 ] O 日付け「営業譲渡 等に伴う労働関係上の問題への対応について」と題する通知。 ビジネス法務 2016.10 89

7. ビジネス法務 2016年10月号

0 朝新 0 い 中国「不正競争防止法」全面改正へ 一重要項目と日本企業への影響 中国政法大学比較法学研究院 講師原吉 中国の「不正競争防止法」は 1993 年一公布・施行されて以来 , 23 年間いかなる改正も行 われなか。た。 23 年 0 = わたる中国 0 市 ; 経済 0 急速な発展を経て現在 0 「不正競争防止 法」 ( 以下「現行法」という ) は , 関連する市場経済活動を調節する重要法律の 1 っとし て , 絶えず発生する各種の不正競争の現実的な問題に直面し , すでに時代遅れとなってお り , 改正の必要性に迫られている。しかし , 当該法律は非常に重要な法令であるため , 各 方面の軋轢も非常に激しく , ゆえに , これまで同法の改正を進めることができなかった。 先ごろ , 国務院の法制弁公室は , 「不正競争防止法 ( 改正草案審議提出稿 ) 」 ( 以下「改正 稿」という ) を正式に公表し , 法律改正のための重要な第一歩を踏み出した。今回の改正 内容は , 現行法 33 条のうちの 30 条におよび , そのうち 7 条が削除され , 新たに 9 条が追加 され , はじめての全面的な改正ということができる。本稿では , 改正稿における重要な内 容に注目しながら , 企業における対応策を検討していく。 ものである。独占禁止法がない時代 , これら 朝独占禁止法との関係の整理 の規定は競争秩序を規律する役割を果たして きたが , 2008 年に中国において「独占禁止 現行法は合計で 11 種類の違法行為を規定し 法」が公布されて以降 , これらの違法行為は ており 1 このうち , ①公益事業企業による 「独占禁止法」によっても禁止されるように 独占的地位の濫用 , ②政府およびその所属部 なり , これにより法律適用の問題が生じるよ 門による行政権限の濫用による競争の制限・ うになった。このため , 今回の改正稿では上記 排除行為 , ③競争相手の排斥を目的としたダ の①②③④の競争制限行為を削除したが , ⑤ ンピング行為 , ④抱き合わせ販売および条件 通謀入札行為についてはそのまま残された 2 。 付取引行為 , ⑤通謀入札行為は , 競争を制限 また , 「独占禁止法」により規制できないが する性質を備え , 独占行為的な色合いが強い 競争排除の性質を有する「相対的に優位な地 1 当該 1 1 種類の行為は , 具体的に . 模倣行為 , 市場支配的地位濫用行為 , 行政独占行為 , 商業賄賂行為 , 誤解を招く虚偽広告 行為 , 営業秘密侵害行為 , 競争相手の排斥を目的としたダンピング行為 , 抱き合わせ販売および条件付取引行為 , 巨額懸賞販 売行為および詐欺的な景品付販売行為 , 競争相手を貶める行為 , 通謀入札行為を含む。 127 ビジネス法務 2016.10

8. ビジネス法務 2016年10月号

座談会 株主総会プロセスの電子化をめぐる諸論点 ( 中 ) いパターンもある一方で , 関係書類については 別途論点となります。 特に個人株主を考えたとき , 書面請求をどう 個別承諾がなくとも Web サイトに掲載すれば よいということになっています。各国各様であ すればよいのかが制度設計上の論点となりま す。これも法律として対応するのではなく任意 るわけですが , 少なくとも書面で送ることを前 の対応に任せる案と , 法律上で請求権をつくっ 提としない制度ができつつあるというわけです。 てしまうという案があり , さまざまな議論があ 1 株主の個別承諾の世界からの脱却 りました。企業側からは法律上で書面請求権を 作ると特に株主数が多い企業はそもそも電子化 武井 : そのうえで , 書面提供または電子提供と しないだろう , という強い意見が出されました する情報の範囲についてです ( 報告書 29 ~ 30 頁・ 提言 8 ~ 9 頁 ) 。本経産省総会電子化研究会で ( 報告書 33 頁 ) 。書面請求権が法律上で定められ は , ①株主総会の基本的情報および②法令上 , ると , 書面を送らなければいけない株主と , 書 面を送らなくてよい株主という 2 つのグルーピ 株主総会前に提供すべきと規定された情報が掲 ングをしなければなりません。今でも何千人も 載された Web サイトのアドレスは , 従来どお り書面通知が望ましいとされています。③議決 何万人もの個人株主がいる企業では , ただでさ 権行使書面も当分の間は , 株主からの個別承諾 え株主との間でコミュニケーションにミスが起 を得ない限り , 書面により通知することとする きないように神経を払っているところ , このグ ルーピング作業が追加で現場で生じる負荷は大 のが望ましいということになりました。そし 変大きいことになります。こうしたグルーピン て , それ以外の情報 , 現行制度上の④株主総会 参考書類 , ⑤事業報告 , ⑥計算書類・連結計算 グ処理が必須となる法令上の書面請求権が導入 こうした企業の多くは , 今までどお 書類 , ⑦会計監査報告・監査報告に相当する情 されると , 報をまず電子提供すべきだということですね。 り全株主に対して紙媒体で送ることを選択する 日置 : はい , それら ( ④ ~ ⑦の書類 ) について ことになるでしよう。こうした現実の動機論を は , 個別承諾がなくても Web 経由で提供でき ふまえて , 法律上の書面請求権について制度設 るようにすべきということです。 計の議論をしなければなりません。 尾崎 : 現行法がどうなっているかを確認する 武井 : ありがとうございます。 と , 株主ごとに事前の個別承諾をとって初めて 2 実務現場が電子化に進む動機が醸成され 当該株主に対して電磁的な方法が使えるわけで る制度設計の重要性 す。そして , Web 開示の場合でも , 書面請求 , 武井 : 次に , 電子提供するのにどのような手続 つまり紙が欲しいと言われた場合にはこれに応 を求めるかというのが 2 つ目の論点になってい えなければなりません。やはり , 紙を前提とし た制度になっています。全面的に電子的情報だ ます。 まず電子提供の採用に関して , 株主総会決議 こうした事前の個別承諾の けでよいとなると , か , それともアメリカやカナダのような取締役 仕組みはないほうがよいし , 書面請求もないほ 会決議かという 2 つの うがわかりやすいわけですが , そこまで思い切 って制度変更ができるかどうかです。 案があります。なお , しかし , 最初に申しましたように , 紙の全廃 どちらのパターンでも に関してはなかなか難しい部分があります。電 株主からの書面請求は 尾崎安央 ( おさきやすひろ ) 早稲田大学法学学術院教授 早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学助手 専任講師・助教授を経て現職。専門は会社法・企業会計法・商品先物取引法・金融商品取引法。 本座談会に関連ある最近の論文に , 「株主総会に関する現状と課題」ジュリスト 1495 号がある。 63 ビジネス法務 2016.10

9. ビジネス法務 2016年10月号

を開催した。同研究会は , 近時 , 取締役会の役割 として , 意思決定を迅速化するとともに , モニタ リング機能を強化したガバナンス体制を志向する 企業が増加しているところ , こうした企業の動向 をふまえ , 取締役会の機能向上を図る場合の考え 方や実務について検討を行うことを目的に開催さ れたものである。具体的には , ①取締役会の役割・ 機能 , ② CEO の選定・後継者計画 , インセンテ イプ付与 , ③社外取締役の役割 , 社外取締役の人 材の質的・量的な向上 , ④監査等委員会設置会社 の活用などのテーマが検討される見込みであり , 来年 2 月頃を目途に報告書を取りまとめるものと されている。 ( 奥山健志 ) 法務省 , 商業登記の申請書に添付する外国人 の署名証明書について当該外国人の本国官憲 が作成したものでも差し支えない旨を確認 7 月 1 日 , 法務省は , 平成 28 年 6 月 28 日以降に おいては , 商業登記の申請書に添付する外国人の 署名証明書については , 当該外国人が居住する国 等に所在する当該外国人の本国官憲が作成したも のでも差し支えないこととされた旨を公表した。 従来の手続では , たとえば , 米国人を代表者と して商業登記を行う場合には , 当該米国人が米国 に一度帰国して署名証明を取得するか , 来日して 米国大使館で署名証明を取得する必要があった が , 今回の変更により , 当該米国人の居住国 ( た とえばシンガポール等 ) の米国大使館で発行され る署名証明で足りることとなったものである。 日本における外国法人の登記手続を軽減するも のであり , 登記実務に影響を与えることから , 確 されたい。 ( 金丸祐子 ) 消費者庁 , 「公益通報者保護法を踏まえた 内部通報制度の整備・運用に関する民間事 業者向けガイドライン」 ( 案 ) を公表 7 月 8 日 , 消費者庁は , 「公益通報者保護法を ふまえた内部通報制度の整備・運用に関する民間 LEGAL HEADLINES 事業者向けガイドライン」 ( 案 ) を公表し , パプ リックコメントを開始した。 近時の企業不祥事では , 内部通報制度が存在し たものの , 制度が機能しなかったとの指摘もなさ れているところであり , 今回のガイドラインは , 「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検 討会」第 1 次報告書 ( 平成 28 年 3 月 ) 等をふまえ , 内部通報制度の実効性の向上を図るため , ①通報 者 , ②経営者 , ③中小事業者 , ④国民・消費者の 4 つの視点から , 従来のガイドラインを見直し , 事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項 を具体化・明確化している。 ビジネス法務 2016.10 9 開するため運転して会社に戻るに当たり , あわせ ることになり , 歓送迎会の終了後に当該業務を再 ける自己の業務を一時中断してこれに途中参加す しないわけにはいかない状況に置かれ , 会社にお 会社の事業活動に密接に関連する歓送迎会に参加 したこと等を認定したうえで , 会社の指示により ったあと会社に戻ろうと予定していた最中に発生 戻らなければならず , 交通事故は同僚を自宅に送 員が歓送迎会の後上記資料の作成のために会社に が全額経費として負担していたこと , 当該元従業 これに対し , 最高裁は , 歓送迎会の費用を会社 づく「業務災害」には該当しないと判断されていた。 発生したものであり , 労働者災害補償保険法に基 いては , 自主的に参加した飲み会からの帰り道に 生した交通事故であるが , 第 1 審および原審にお ら同僚を送って会社に戻ろうとしていた途中で発 本件は , 当該元従業員が会社主催の歓送迎会か 働災害に該当する旨認定をした。 ついて , 原審を破棄し , 第 1 審を取り消して , 労 り道で発生した交通事故により死亡した従業員に 7 月 8 日 , 最高裁は , 会社主催の歓送迎会の帰 起きた交通事故を労災と認定 最高裁 , 会社の歓送迎会からの帰り道で ( 奥山健志 ) をふまえたうえで改正がなされる見込みである。 平成 28 年度上半期中には , パプリックコメント

10. ビジネス法務 2016年10月号

次審査終了前に取下げを行った件数が 8 件と やや多いように見えるが , 企業結合計画その ものが会社の事情で取りやめになったもの , 審査準備が不足で再届出を念頭に置いて取り 下げたもの , 規制される可能性が高いと判断 して規制される前に取り下げたものなどが含 まれていると推察される。 朝企業結合審査の動向 平成 27 年度の事例を , 審査対象の商品 , 地 理的範囲 , 合算市場シェア , 判断の鍵となる 競争圧力・判断の決め手 , 経済分析の活用の 有無 , 進んだ審査段階 , および , 審査結果か ら整理したものが【図表 2 】である。なお , 主要商品の所に括弧で , 垂直・混合とあるも のは , それぞれ垂直型および混合型企業結合 に関わり審査された部分を示している。括弧 の注意書きがないものはすべて水平型企業結 合として審査された部分を指す。 平成 27 年度の公表事例における公取委の審 査アプローチは , 合算市場シェアが高いとし ても , 複数の判断要素を根拠として , 市場競 争への影響の有無について評価するという方 法論を採用しており , 大枠で見ればこれまで 通りである 1 。たとえば , 事例 6 の SSD の市 場においては合算市場シェア 75 % という水準 であっても , 競争事業者 , 隣接市場 , 需要者 からの競争圧力の存在を根拠として , 競争の 実質的制限にはならないという判断が示され ており , 市場シェアの高さが規制の絶対的な 根拠でないことがわかる。 平成 27 年度においては , 7 件もの垂直・混合 型の企業結合事例が取り上げられており , 競 争事業者の排除を懸念した総合的事業能力に ついても言及されている ( 事例 10 および事例 11 ) のは , 新しい傾向といえるかもしれない。イ ンテル・アルテラの事例以外においては , 当 事会社と対等または対等以上に競争すること ができる事業者の存在を理由に , 競争者の排 除による競争制限の問題は起きないと判断し ている。インテル・アルテラの事例においては , インテルが 95 % 以上の高い市場シェアを有す る X86 系 CPU とアルテラの FPGA チップとの抱 き合わせによる市場閉鎖の懸念が高かったと 考えられるが , インテルがアルテラと競合する FPGA の競争事業者に対して FPGA を製造する に当たって必要なライセンスを行っている等の 理由を根拠に問題は生じないと判断している。 経済分析をより重視する姿勢は引き続き堅 持されている。平成 27 年度は , 2 事例にとど まっているが , 経済分析に依拠した判断を行 ったことが明らかにされている。特に , 事例 9 のコンビニエンスストアの統合について は , 第 2 次審査に進まなかったものの , 相当 程度時間と手間をかけた経済分析が行われた ことがうかがわれるものとなっている。 以下では , 公表された事案で唯一第 2 次審 査に進んだ , 事例 3 の大阪製鐵と東京鐵鋼の 事例と , 丁寧な経済分析の積み重ねによる審 査が行われた事例 9 のファミリーマートとユ ーの事例について解説する 2 大阪製鉞による東京鋼鉞の株式 一般形鋼 , 棒鋼等を製造販売する大阪製鐵 1 NE 日 A 工コノミックコンサルティング編「企業結合規制の経済分析」 ( 中央経済社 , 2014 ) 5 1 ~ 55 頁参照。 2 その他 , 特徴のある事例としては以下のようなものがある。事例 1 では , 平成 26 年度の王子・中越パルプの事例でも審査され た , 両更クラフト紙の分野の企業結合が審査された。王子・中越の際には , 特に協調行動の懸念が高まるとして両当事会社の経 営の独立性が維持されるような問題解消措置が求められた。平成 27 年度の日本製紙・特種東海製紙の計画は , この問題解消 措置が根拠の一部となって有力な競争事業者が複数存在するとして企業結合計画が認められている。事例 5 では , 当該分野で は統合により事実上独占になることから , 一方の会社の事業の譲渡を届出時から申し出ることによって規制を回避している。 106 ビジネス法務 2016.10