理や業務遂行にどのような影響を与えてい るのかについて、今回、八省の一一地方機 関で勤務する職員の人事管理を担当する部 局 ( 職種等の別による人事グループごとに 一七部局 ) から聞き取りを行った。その結 果を踏まえ、これらの影響について整理す ると次のとおりである。 ア人事管理に与える影響 の若年層の能力開発の不足と相談相手 の不在等 若年層については、係員の人数が減 少する中で、少ない係員に庶務的事務 が集中する上、各課に配置させる必要 から様々な仕事を広く浅く経験させる ことになり、特定の分野で専門的に じっくりと現場経験を積ませるなどの 必要な能力開発が難しくなってきてい る。 さらに、定員削減により係長の候補 となる係員が不足しているため、経験 年数の短い係員に係長心得を発令して 係長級の仕事を行わせる府省もあり、 こうした点でも係員の負荷が増してい る状況がみられる。 また、以前と比べ、配属された部署 で周囲に同年代の係員が少なくなり、 かっ、比較的年齢の近い中堅層の先輩 が多忙なこともあり、相談相手が年齢 の離れた高齢層の役職者になる場合が 多いが、若年層にとっては世代間 ギャップや年長者に対する遠慮もあっ て円滑なコミュニケーションが図れ ず、一人で悩みを抱え、離職や心の健 康の不調の問題につながる場合もみら れる。世代間ギャップ以前の問題とし て、職場内外での仕事を離れたコミュ ニケーションの機会が昔と比べて減少 し、人間関係が希薄になっていること が問題であるとの指摘もある。 他方、最近では、昔のように上司が 部下に対しプレッシャーがかかるよう な厳しい指導を行うとパワー ハラス メントの問題が発生することが懸念さ れるため、部下への指導が昔と比べて 優しくなっているとともに、上司が仕 事を部下に任せないで自分で処理して しまう場合も増えており、若い職員の 間に「指一小待ち」が増加しているとの 指摘もある。 国中堅層の業務負担の増加と能力開発 の不足 中堅層の職員には、若年層の人数が 減少することにより係長に昇任しても 部下のいない者 ( 以下「一人係長」と いう。 ) が増加している。定員削減の 下で従来と同様の業務を遂行するた め、実施業務を中心に民間事業者や非 常勤職員を活用することとなるが、そ 2 れらの者には任せられない行政機関と報 して行うべき外部との調整業務等の , っ院 ちこれまでは係員が行ってきた仕事も人 号 中堅層がカバーしなければならないな 月 ど、業務負担が増していると言われて また、こうした勤務環境の変化に伴 、中堅層の職員が多忙となって、当 局として本来必要と考えている業務に 係る能力開発が十分にできていないと いう問題が生じている。とりわけ、若 年層の人数が減少して一人係長が増加 した結果、中堅層が後輩の育成や指導、 支援といった将来の管理職要員として 不可欠なマネジメント業務の経験を職 場で積む機会が減少していることにつ いて中・長期的な業務管理の上から懸 念する声が強い。 さらに、技術系の職員については、 現場業務の民間事業者への委託 ( アウ トソーシング ) が進んだ結果、若年層 から中堅層にかけて現場での多様な勤 務経験を積む機会が減少しているた め、現場経験を通じてでないと身に付 かない技能・ノウハウが継承されにく くなっており、技術者としての技術力 や応用力が従来と比べ低下するのでは ないかとの懸念もある。
平成 28 年公務員白書 0 若年層、中堅層を中心とする計画的 な人事異動・配置上の支障 若年層については絶対数が少ないた め、人事当局が本来配置・昇任させた いポストに対して人数が不足してお り、計画的な人事管理に支障を来して いる。また、前述のように、若年層、 中堅層ともに、係員として必要な専門 的な現場経験や係長として必要なマネ ジメント業務の経験などが不足してい るため、昇任・昇格候補者や管理職要 員としての適任者の数が足りなくなる という問題がみられる。 さらに、人員構成上の谷となってい る世代や凹みの年齢 ( 年次 ) がある場 合、その世代や年次よりも下の世代や 年次の職員から登用する必要が生じる が、それらの職員も必ずしも十分な業 務経験を積んでいないことがあり、計 画的な人事異動・配置に支障が生じる という問題もある。 国職員全体のモチベーションの低下 人数の多い世代である中堅層、高齢 層の職員は、自分達より先輩の世代と 比べてポストが足りずに昇任・昇格が 遅れることに対する不公平感があるの に加え、若年層の人数の減少によりい つまでも下位職位の業務もカバーしな ければならないため、モチベ 1 ション が低下しているという問題がみられる。 一方、若年層には、庶務的な一般業 務に追われて専門性が身に付かず、ま た、後輩が採用されない上、先輩世代 の昇進の遅れの影響で自分達も昇進が 遅れており、悩みを相談する身近な相 手もおらず、モチベーションが低下し ているという指摘がある。 イ業務遂行に与える影響 ( 技能・ノウハ ウの継承 ) 行政の継続性の観点から組織として蓄 積されていかなければならない技能やノ ウハウが、年齢別人員構成の偏りとそれ に伴う業務のアウトソーシングにより、 上の世代から下の世代に円滑に継承され なくなっていること、あるいは将来的に 継承が円滑に進まなくなる可能性がある ことが、各府省の地方機関に共通の問題 として強く懸念されている。 特に、若年層だけでなく中堅層の職員 も減少している前記の地方機関の例や 直轄事業のアウトソーシングが進んだ技 術系の人事グループには、高齢層が退職 してしまうまでの間に有効な手を打たな いと近い将来ノウハウが一気に散逸して しまうとの危機感が強い。 なお、地方機関において継承されるべ き技能・ノウハウとしては、資料・文書 の作成方法やマネジメントのほか、交渉、 調整、検査、監視、取締り、監査、調査、 分析・鑑定などの各種業務に係る長い経 験に基づいて蓄積された知見、能力、人 脈、過去の経緯に関する知識等が挙げら れる。 若年層が極端に少ない人員構成に対応し た地方機関の人事管理等の取組 各府省は、年齢別人員構成の偏りが地方 機関の人事管理や業務遂行に影響を与えて いるとの認識の下で、若年層の人数の減少 に対応するため、あるいは上の世代から下 の世代に技能・ノウハウを円滑に継承でき るようにするため、地方機関における人事 管理や業務管理に関してどのような取組を 行っているのか又は今後行っていくのかに ついて、人事管理担当部局の聞き取り結果 を踏まえて整理すると次のとおりである。 ア新規採用の確保 業務の見直しを行った上で、必要な定 員数を再検討し、定年まで職員が均等に 在職したとする場合の各年度の必要採用 者数を確保することを基本として省全体 の人員体制の見直しに取り組んでいる府 省もある。こうしたところでは、組織活 カ維持の観点や技能・ノウハウの継承の 観点から、各地方機関において可能な限報 り新規採用者を増やして、年齢別人員構院 事 成を平準化していきたいと考えている。 人
在職期間長期化に伴う課題 国においては、第 1 章において述べたよう に、民間企業や公共セクターへの再就職規制 の強化や年金支給開始年齢の引上げに伴う在 職期間の長期化により、五〇歳台の職員層が 増加し、若手・中堅職員の昇進ペースが遅れ ていることから、組織全体の活力が低下して いるのではないかという問題がある。 この問題に対しては、組織活力を維持する 観点から、マネジメント能力が低い者は管理 職に登用しないこと等を含め、能力・実績に 基づくメリハリのついた昇進管理に変えてい くこと、ラインによる単線型のキャリアパス 書 白 だけではなく、専門性の高いスタッフ職等を 員 務 活用した複線型人事管理を行うことにより、 公 職員が公務で培った能力と経験を適切に活用 年 すること等が考えられる。これらに加え、若 成 年層・中堅層の職員を能力・実績に応じて登 平 用することにより昇進スピードが速まれば、 個々の職員のモチベーションを向上させる効 果が期待できる。また、こうした人事管理を 在躾況の変化がもたらす 第 3 章 と人事壘の対応 第 1 節問題の所在 行うことは、高い専門性を持ったべテラン職 員が抱える技能やノウハウを下の世代に円滑 に継承していくためにも必要と考えられる。 地方機関に象徴的な若年層が極 端に少ない人員構成と課題 第 1 章において述べたように、人事行政面 においては、早期退職慣行の是正が進み在職 期間が長期化し、従前に比べ高齢層の退職者 数が減少する一方で、政府の総人件費抑制方 針の下、行政機構をスリム化するため、継続 的な定員削減や新規採用抑制の取組が進めら れてきた結果、各府省の職員の在職状況は、 , 前に比べて、特に地方機関において若年層 の職員が極端に少なくなっている実態があ る。こうした状況に対応するため、各府省は、 各種業務の効率化・集約化や電子化等の省力 化に向けた取組を進めてきているほか、民間 事業者やコンサルタント会社などへの事務・ 事業のアウトソーシングを可能な限り進めて きている。また、事務補助としての非常勤職 員の活用に加え、従来は若年層の係員が担っ ていた定型的な業務を非常勤職員に代替させ るといった措置も講じられてきている。なお、 係員業務の非常勤職員での代替については秘 書的業務や定型的業務を中心に本府省におい ても進められている。 その反面、限られた定員の中で、公務の現 場では、人員構成の偏りとそれに伴う事務・ 事業のアウトソーシングや非常勤職員の活 用・代替が進んだことにより、将来それぞれ の地方機関を管理者として支える存在になる はずの若年層や中堅層の職員が年齢や勤務年 数に応じた必要な業務経験を十分に積めない などの人事管理上の大きな課題が生じている とともに、行政の継続性の観点から組織とし て蓄積されていかなければならない技能やノ ウハウが世代間で円滑に継承されなくなると いう業務遂行上の重大な支障が生じてきてい る。 そのため、若年層が減少することに伴って 生ずる課題としては、次が挙げられる。 ①事務・事業のアウトソーシングについて は、前述のように、地方機関における行政 執行機能をどこまで民間事業者等にアウト ソーシングすることが可能なのかという間 題がある。今後は、アウトソーシングの限 界をよく認識し、むしろ行政機能の充実・ 強化について考えていくことも必要となる であろう。 ②各府省の常勤職員の人事管理において は、新規採用を確保していくことに加え、 若年層の能力開発を図り、中堅層の専門性 やマネジメント能力を向上させるために は、今後どのような人材育成を行っていく報 必要があるのかが課題になるほか、既に存院 在する若年層世代の人員構成上の谷の問題人 2
平成 28 年公務員白書 三月上旬までにかけて、職員の年齢別人員構 成に特色があり、国と同様の問題意識を有し ている六つの地方公共団体を対象に、一般行 政職職員の在職状況及び年齢別人員構成を適 正化するための取組等について聞き取り調査 を行った。結果の概要は次のとおりである。 年齢別人員構成の状況 各年齢層の割合の変化については、一〇 年前と比べて、新規採用者数の回復に伴い 「三〇歳未満」が増加するとともに、再任 用者数の増加により「六〇歳以上ーが増加 したとする団体が多い。一方、新規採用抑 制等が行われた年齢層である「三〇 5 三九 歳」が減少したとする団体が多い 次に、各団体において、本来必要と考え る職員数よりも実際の職員数が多い年齢層 ( 以下「職員数が多い年齢層」という。 ) 及び本来必要と考える職員数よりも実際の 職員数が少ない年齢層 ( 以下「職員数が少 ない年齢層」という。 ) については、前者 は「五〇 5 五九歳」が最も多く、次いで 「四〇 5 四九歳」が多い。一方、後者は「三 〇 5 三九歳」が最も多く、次いで「三〇歳 未満」が多い。 年齢別人員構成に偏りを生じた原因 前記①で述べた職員数が多い年齢層が生じ た原因としては、「バブル期の採用拡大」な ど過去の一時期における大量採用を挙げた団 体が多い。一方、職員数が少ない年齢層が生 じた原因としては、「過去の採用抑制」や 「職員数の削減」を挙げた団体が多い。 ③職員の年齢別人員構成の偏りによる影響 ア職員数が多い年齢層があることによる 影響 職員数が多い年齢層があることによる 影響については、職員数が多い年齢層及 びその下の年齢層における「昇任・昇格 の遅滞」や、職員数が多い年齢層の「モ チベーションの低下」及び「計画的な育 成が行えない」を挙げた団体が多い。 イ職員数が少ない年齢層があることによ る影響 職員数が少ない年齢層があることによ る影響については、職員数が少ない年齢 層の「計画的な育成が行えない」、「昇 任・昇格候補者や幹部要員の不足ー及び 「業務量の増加」を挙げた団体が多い。 また、中堅層や高齢層から職員数が少な い若手・中堅層への「技能継承ができな い」を挙げた団体が多い。 ④職員の年齢別人員構成の偏りが生じてい ることへの対応 ア職員数が多い年齢層があることへの対応 職員数が多い年齢層があることへの対 応については、「昇任・昇格における厳 格な選抜」や「新たな職を設置して中堅 層・高齢層の職員を配置」のほか、早期 退職の勧奨やその際の退職金割増率の引 上げ、勧奨退職年齢の早期化などの取組 が行われている。 イ職員数が少ない年齢層があることへの 対応 職員数が少ない年齢層があることへの 対応については、「新規採用の拡大」、 「中途採用の拡大」及び「研修の充実」 を挙げた団体が多い。そのほか、「再任 用職員の活用」、「非常勤職員の活用」、 「任期付職員の活用」、「業務の民営化・ 外部委託等の推進」、「昇任・昇格におけ る厳格な選抜」、「抜擢人事の推進」、「給 与制度・人事制度の見直し」などの取組 が行われている。 ⑤再任用職員の活用 再任用職員に期待することについては、 「知識・経験の後輩への継承」、「職場にお ける相談役」及び「一担当者としての着実 な業務遂行」を挙げた団体が多い。そのほ か、「知識・経験をいかした高いパフォー マンス」、「職場内での円滑なコミュニケー ション」及び「仕事への高いモチベーショ 報 ン」が挙げられた。 一方、再任用職員の活用に際して困難を院 事 人 感じていることについては、「モチベー 5 2
凹 従業員数が少ない年齢層があることによる影響 ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) 4 ・ ・ 4 ・ 昇進候補者や幹部 要員の不足 若年・中堅層への技能継承 ができない 計画的な人事異動・配置 が行えない 計画的な育成が行えない 従業員数が少ない年齢層 の業務量の増加 従業員数が少ない年齢層 のモチベーションの低下 業務の非効率 従業員数が少ない年齢層 以外の層の業務量の増加 従業員数が少ない年齢層 以外の層のモチベーションの低下 その他 特に問題を感じていない 従業員数が多い年齢層があることへの対応 ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) 7 ′ 0 4 中高齢層の活用 賃金制度・人事制度の見直し 昇任・昇格における厳格な選抜 研修の充実 女性の登用の推進 高度専門職制度の活用 中途採用の拡大 非正規従業員の活用 業務の外部化、業務範囲の縮小 抜擢人事の推進 他社等への出向・派遣等の拡大 退職勧奨等による人員削減 その他 特に取リ組んでいる事項はない 22 人事院月報 2016 7 月号
おわりに この報告では、昨年の給与勧告時の報告か ら更に踏み込んで、国家公務員の在職状況を 本府省、地方機関に分けて分析した上で、各 府省人事当局からの聞き取り結果を踏まえ、 年齢別人員構成になぜ偏りが生じてきている のか、とりわけ若年層が極端に少ない人員構 成が各府省の人事管理や業務遂行にどのよう な影響を与えているのか、また、各府省はそ れに対してどのような取組を行っているのか について考察した。 その結果、年齢別人員構成の偏りは特に地 方機関において顕著であり、多くの地方機関 では既に技能やノウハウの円滑な継承の支障 となるとともに、国家公務員の人事管理にも 大きな影響を与えている実態が明らかになっ た。人事院としては、今回、このような在職 状況の実態を明らかにすることにより、行政 の円滑な遂行や国家公務員の人事管理におけ めには、その有する専門性に基づき即戦力 となるようなポストに配置することが適当 と考えられることから、各府省において、 職員の専門性を強化するための長期的な人 事管理に努める必要がある。さらに、例え ば、五〇歳台後半の職員について、再任用 後に従事することが見込まれる業務を念頭 に置いて、特定分野の専門性を高めるよう な人事配置を行うことも考えられる。 る中・長期的かつ重要な課題が存在すること について、関係各方面が問題意識を共有する ことが大切であると考えている その上で、各府省が年齢別人員構成の偏り に対応するに当たっての人事管理上の課題を 抽出し、一〇年後、一一〇年後を見据えて能率 的で活力ある公務組織を維持していくための 対応について問題提起を行った。その際、問 題の所在として、 ①本府省を中心に、在職期間の長期化によ り五〇歳台の高齢層職員が滞留して若手・ 中堅職員の昇進ペースが遅れており、組織 全体の活力が低下しているのではないかと の懸念があり、職員が公務で培った能力・ 経験を適切に活用することが重要であるこ と ②地方機関に象徴的な若年層が極端に少な い人員構成の下で、各府省は、新規採用の 確保、若年層や中堅層の育成、中途採用な どの人事管理上の課題に取り組んでいく必 要があること ③行政事務の遂行に当たっては業務量に見 合った適正な人員が確保されることが基本 であること を挙げ、これら三つの問題を中心とする 諸々の課題について、各府省や制度官庁等 0 に人事管理上の対応についての今後の検討報 院 を求めたところである。 事 人 具体的な問題提起の内容は第 3 章に記載の とおりであり、各府省等においてこれらの問 題提起を参考にして前広に検討が進められる ことを期待するとともに、人事院としても、 人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の 代償措置を担っている第三者・専門機関の責 務として、国家公務員の採用から退職に至る までの公務員人事管理全般にわたり、中・長 期的な視点も踏まえた総合的な取組を引き続 き進めていきたい。
: 地方公共団体 ( 地方公務員 ) の年齢別在職状況 ( 一般行政職 ) ( 地方公務員給与実態調査 ) ( 単位 : 人 ) 80 ′ 0 70 ′ 000 60 ′ 000 50 ′ 000 40 ′ 000 30 ′ 80 20 ′ 80 10 ′ 0 平成 26 年 834.129 人 平成 17 年 93 乙 116 人 ー平成 26 年 ー平成 17 年 地方公共団体における在 を 員 職状況の実例と取組 8 0 ′ 5 5 職 務 時 地方公共団体全体の在職状況 短 員 職 2 3 用 任 地方公共団体の一般行政職職員 ( 教育公務 再 0 1 ・ 一 J 員、警察官、臨時職員、特定地方独立行政法 9 人職員及び特定地方独立行政法人臨時職員に 該当する職員以外の常勤の職員のうち、税務 職、医師・歯科医師職、看護・保健職、福祉 異職、消防職、企業職、技能労務職等のいずれ 2 3 者 にも該当しない職員 ) について、総務省の地 職 方公務員給与実態調査に基づき、全団体の平 成一一六年における年齢階層別人員構成を平成 8 3 3 家 国 一七年と比較したのが図絽である。 の 章 平成一七年の時点では若年層 ( 三二・ 第 歳 ) をピークとする山と高齢層 ( 五四・五五 象 23 歳 ) をピークとする二つの山が存在してい 者 職 た。これらの山が、平成一一六年の時点で、前 在 の 者は中堅層 ( 四〇 5 四三歳 ) をピークとする 在 現 8 山にシフトし、後者は定年退職を迎えて山が 月 なくなっている。この間に、全団体の一般行 年 毎政職職員の数は約一〇万三、〇〇〇人減少し 査 ( 平成一七年九三七、一一六人↓平成一一六年 2 3 調 22 態八三四、一一一九人 ) 、平均年齢は〇・三歳 ( 四 与 2 2 給 三・一歳↓四二・八歳 ) 低下している。 員 9 下務 ) 第 1 章で見た平成一一七年の国家公務員 ( 全 1 以公む 組織 ( 行政職俸給表曰 ) ) の在職状況と地方 公共団体における一般行政職職員の平成一一六 第 2 節 2 年の在職状況を比べると、中堅層 ( 四〇 5 四報 院 三歳 ) をピークとする山が生じている点は共 事 通しているが、地方公共団体では高齢層の山人 号 はなくなり、四六 5 五七歳の在職者が大幅に 月 減少している。また、国と同様に一一八 5 三七 歳の職員は大幅に減少しているものの、一一七 歳以下の職員は増加している。全体の平均年 齢も低下しており、地方公共団体においては、 定年退職等により抜けた人員を、新規採用を 中心に補充している実情にあると考えられる。 このように、地方公共団体全体として年齢 別人員構成はおおむね平準化してきている が、この間に職員数は一〇万人超減少してお り、採用者数も従前の水準まで回復している わけではない。これは地方公共団体において 定員の適正化に取り組んできた結果が大き 一方で、住民サービスの充実の要請に応 えるため、各団体では、窓口業務の見直しゃ 庶務業務の集約化など事務・事業の見直し、 の活用等による業務の効率化、民間委 託等の推進や地方独立行政法人制度の活用、 指定管理者制度や—の活用、嘱託職員や 非常勤職員の活用などの取組を進めてきてい る。これらに加え、市町村合併等による行政 組織の統廃合も行われている。 年齢別人員構成に偏りのある地 方公共団体の例 今回、人事院は、平成一一八年一月下旬から
書 白 員 務 公 〉 8 2 成 れているが、現状では、希望に反して短時 間勤務となる再任用職員が一定割合存在す るほか、再任用職員の職務が補完的である といった状況となっている。しかしながら、 特に地方機関では若年層や組織によっては 中堅層までも極端に少ない人員構成となっ ている状況において、今後二〇年間にわ たって多くの職員が定年に達することにな る。そのため、高齢層が過去から蓄積して きた行政の現場における技能やノウハウの 散逸が懸念されており、行政の継続性の観 点から中堅層や若年層への継承が課題と なっている。こうした中で、国においても 民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を 実現することを通じて、再任用職員の能力 及び経験を職務執行の中で本格的に活用し ていくことが不可欠である。再任用職員に とっても、現在のような補完的な再任用の 運用では、公務能率や職員の士気の低下、 生活に必要な収入が得られないなどの問題 が深刻化するおそれがある。 また、平成三八年度にかけて年金支給開 始年齢が段階的に六五歳に引き上げられる ことにより、今後、各府省においては、再 任用希望者が増加していくことが見込まれ ること等を考慮し、それぞれの定員事情や 人員構成の特性等を踏まえた計画的な人事 管理に努めるとともに、当面、再任用職員 の能力及び経験を有効に活用できる配置や 組織内での適切な受入体制の整備等を進め る必要がある。これらの取組に当たっては、 民間企業と異なり国の場合は厳格な定員管 理があるため困難な面もあるが、前記のよ うな問題に対応する必要性が高まっている ことから、フルタイム中心の勤務の実現に 向けた一層の工夫が求められる。 将来の行政を担う新規採用者について 中・長期的に人員構成を平準化するために 必要な数を毎年確保しつつ、人員構成上の 山を形成している高齢層職員が今後大量に フルタイム勤務を希望した場合の過渡的な 定員増に対応できるよう、例えば、向こう 数年間過渡的に必要となる定員数を算出し て前倒しで措置し、毎年必要数に限り使用 を認めるとともに、不要となった際には回 収するような定員上の工夫について検討が 必要である。 人事院としては、引き続き公務内外にお ける高齢期雇用の実情等の把握に努めつ つ、各府省において再任用職員の能力及び 経験の一層の活用が図られるよう取り組む とともに、意見の申出を踏まえ、雇用と年 金の接続の推進のため、関連する制度を含 め、適切な措置がとられるよう、引き続き 必要な対応を行っていくこととしたい。 再任用職員の本格的活用に向けた取組 各府省における再任用職員としての採用 については、定員上の制約から希望に反し て短時間勤務となるものを除けば職員の希 望に応じて行うことが基本であり、また、 その職務は、定年時における役職や級格付 に応じて係長級や係員に機械的に決定され る場合がほとんどとされる。現在、再任用 に関しては、定年時点でのマインドの転換 やモチベーションの維持、経験や能力と仕 事のマッチング、職場での人間関係等が各 府省において課題となっている。このため、 今後、再任用を本格的に活用するためには、 各府省が再任用を行うに際し、再任用後の 役割や処遇を研修の機会等を通じて人事担 当部局から情報提供し、意識の切替えを促 していくことや、再任用希望者一人一人の 能力や適性をしつかりチェックした上で任 用を行うことが大切である。人事院として も、各府省がこうした研修を円滑に実施で きるようどのような支援が可能か検討して いきたい。 あわせて、再任用を希望する職員に対し ては、再任用後に期待される役割や心構え 等について、定年前の段階から十分に理解 させておくとともに、再任用職員を受け入 れる部署においても、再任用職員の能力及 び経験の本格的活用に向けて管理職員等の 意識改革に取り組むことなどにより、再任 用職員の意欲の向上を図ることが重要であ る。また、各府省において再任用後の勤務 実績に応じてより上位の職務の級に格付す報 月 院 ること等も考えられる。 なお、再任用職員を本格的に活用するた人 9 3
平成 28 年公務員白書 た現場のニ 1 ズなどの情報を本府省に伝え、 本府省はそれを制度や予算に適切に反映する というようなサイクルがあり、両者は相互に 有機的に連携して機能を発揮する、いわば 「車の両輪」である。 仮に、企画・立案部門である本府省を重視 するあまり、執行部門である地方機関に本来 の業務量に見合わない過少な人員しか配置さ れないとすれば、執行事務の円滑な遂行に支 障が生じ、結果的に本府省の企画・立案機能 も十全に発揮されない事態が生じるおそれが ある。また、前述のように地方機関を有する 府省の多くでは地方機関採用者を本府省に異 動させて勤務させる人事管理を行っている が、地方機関においても業務遂行に必要な人 員を確保する必要があるため、地方機関の業 務遂行に支障が生じるような数の職員を本府 省に供給することはできない。そのため、地 方機関の若年層の職員数の減少は、本府省に 供給できる職員数の減少にもつながり、結果 的に本府省の業務遂行や人事管理にも影響を 与えることになる。 したがって、本府省と地方機関の人員の配 置を考えるに当たっては、このような企画・ 立案と執行の相互依存関係を十分に意識した 上で、最適な配置を考えることが必要となる。 本府省における課題 今回、一府九省の本府省で勤務する職員の 人事管理を担当する部局 ( 職種等の別による 人事グループごとに一五部局 ) を対象に行っ た聞き取りの結果によると、本府省に特有の 人事管理上の問題があることが明らかになっ た。例えば、早期退職慣行の見直しや在職期 間の長期化の影響で五〇歳台の職員が滞留 し、管理職層を中心に「上が詰まって昇進が 従来より遅れる」という問題を指摘する意見 や、平成一 = 一年の中央省庁等改革以降、内閣 機能強化のため各府省から内閣官房等への出 向が増加し、そのことが各府省本体の人材確 保に影響を与えている等の意見が多かった。 これらの問題は、本府省における幹部職員 の退職管理や本府省の業務体制の変化に起因 するものであり、次のように、本府省の幹部 職員及び幹部要員の人事管理を中心に顕在化 している。 在職期間の長期化による若手・中堅の士 気や組織活力への影響 近年、早期退職慣行の是正のための幹部 職員の勧奨退職年齢の段階的引上げ ( 平成 一四年一一一月一七日閣僚懇談会申合せ ) 、 各府省人事当局による再就職あっせんの禁 止 ( 平成一九年改正国公法 ) 、独立行政法 人等の役員人事について公務員が就い ているポストの後任者を任命する場合等の 原則公募による選考の導入 ( 平成一一一年九 月二九日閣議決定 ) 等の措置が講じられて きており、平成一一五年一一月には国家公務 員退職手当法施行令の一部改正により、勧 奨退職が廃止されるとともに、早期退職募 集制度が導入された。そのため、現在では、 定年前に勧奨を受けて退職する管理職員や 幹部職員はいなくなり、定年退職者や地方 公共団体等への辞職出向者を除くと、自己 都合による辞職者や早期退職募集制度を利 用した辞職者のみとなっている ( 指定職及 び本府省課長級 ( 行政職俸給表曰八級以 上 ) の辞職者数 ( 定年退職者は含まれな い。 ) 【平成一七年度五五一人↓平成一一六年 度四三一人 ) 。 こうした状況の下で、管理職員や幹部職 員の平均年齢が上昇し ( 〔指定職〕平成一 七年五四・八歳↓平成一一七年五六・四歳、 〔本府省課長級〕 ( 行政職俸給表曰九級 ) 平成一七年五〇・六歳↓平成一一七年五三・ 三歳、 ( 行政職俸給表曰八級 ) 平成一七年 五〇・四歳↓平成二七年五二・四歳 ) 、上 位役職のポスト不足もあって昇任までに要 する勤務年数が従来よりも長くなっており ( 指定職の年齢層別在職者数に占める五六 歳以上六〇歳未満の人数【平成一七年一一〇 四人↓平成二七年四一一六人 ) 、職員の新陳報 代謝が進まない中、昇進の遅れにより若院 人 手・中堅職員のモチベーションが低下し、 9 0
ションの維持」が最も多く、次いで「経験 や能力と仕事のマッチング」、「定年時点で の職員のマインドの転換」が挙げられた。 そのほかでは、「処遇への納得感の向上」 や「職場での良好な人間関係の確保」が挙 げられた。 ⑥地方公共団体における特徴的な取組 今回の調査対象団体で年齢構成の偏りに 対応して行われている特徴的な取組とし て、次が挙げられる。 ( 人材確保 ) ア年齢構成の凹みを埋めるため、経験 者採用や社会人採用の年齢制限撤廃等 による中途採用の拡大、人事評価制度 等を活用した若い世代の優秀者の選 抜・登用などの取組が行われている。 ( 人事管理や人材育成 ) イ若い職員の専門性を強化するため、 採用後早い段階で職員自身に特定の専 門分野を選択させ、その分野を基軸に 人事異動を行う取組が行われている。 ウ各職場における人材育成 (0-+") を強化するため、各班に「 O-+«リー ダー ( 原則班長 ) 」を設置して組織全 体で班員を育てる取組や、新任主査級 職員 ( 三六 5 四〇歳前後 ) を対象に 「ジュニアボード」を各部局に設置し ( 再任用職員の本格的活用 ) オ再任用職員を戦力として活用するた め、フルタイム・短時間勤務を問わず、 できるだけライン職に組み込むととも に、再任用職員向けの研修の充実を図 るなどの取組が行われている。 て五人程度で各部局の政策課題や組織 運営課題を検討・実践し、高い成果に は知事表彰を与えるなどの取組が行わ れている。 工中堅層・高齢層のモチベーションを 維持するため、スタッフ的なポストを 増設し、これらの職員に若手職員の育 成・指導を含め様々な役割を担わせる ことや、係長級昇任試験について従来 の三〇歳台、四〇歳台の区分に加え、 五〇歳台の職員を対象とする区分を新 設すること等の取組が行われている。 2016 7 月号人事院月報 26