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検索対象: 人事院月報 2016年07月号
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1. 人事院月報 2016年07月号

化 ( 平成一六年四月 ) 、社会保険庁の廃 止 ( 平成一二年一二月、翌二二年に特殊 法人日本年金機構が発足 ) が行われたこ とに加え、定員純減計画 ( 平成一八年度 5 一一二年度 ) や新規採用抑制 ( 平成一一三 年度 5 一一五年度 ) といった施策が講じら れたことにより、国家公務員の職員数は 急減している。 こうした取組の結果、一〇年前 ( 平成 一ー七年 ) と比べても、国家公務員の人数 ( 実員べース ) は給与法適用職員全体で 約三万五、〇〇〇人 ( 平成一七年一一八九、 九四九人↓平成一一七年一一五四、七八一人 ) 減少し、そのうち行政職俸給表曰適用職 員が約一一万八、〇〇 0 人減少している。 第 2 節課題と人事管理上の対応 前節で述べた課題への対応を含め、各府省 は、定員や運用の制約がある中で、第 1 章で 書 白 述べたように、新規採用の確保や中途採用・ 員 務 再任用の活用といった人事管理上の取組を進 公 めてきている。ここでは、本府省及び地方機 関がそうした人事管理上の取組を行っていく 成 上での課題を挙げるとともに、それぞれの課 平 題に対する対応についての各府省や制度官庁 等が今後検討するに当たっての参考となるべ く、現時点で考えられる種々の問題提起を行 , っこととしたい。 公務に必要とされる多様な人材 の確保に関する課題 第 1 章及び第 2 章で述べたように、国だけ でなく、聞き取り調査を行った民間企業や地 方公共団体においても、組織の人員構成に山 や谷が生じた原因として大量採用や採用抑制 といった採用時点の問題が挙げられた。その 結果生じた人員構成上の山や谷の存在は、組 織における技能やノウハウの継承など業務の 継続性に影響を与えるだけでなく、人材の質 の確保や業務多忙による士気の低下、人材の 育成にも支障を及ぼしており、最悪の場合に は若年層の離職にもつながる人事管理上の重 要な問題である。 中長期ビジョンの設定 行政がその課題に的確に対応していくた めには、公務に期待される多様な人材を計 画的かっ安定的に確保することが必要であ る。そのため、各府省等において、一〇年 後、一一〇年後に、職員の人員構成がどのよ うになっているか、公務にどのような人材 が必要となるかという展望を持ち、また、 それを踏まえてどのように人材育成に取り 組んでいくかといった先を見据えた人事管 理の中・長期的なビジョンを設定し、当面 の採用活動にとどまらない人事戦略によ り、人材確保に取り組んでいくことが考え られる。 具体的には、府省ごとに、中・長期的な 新規採用者数の目安や求められる人材像、 採用後の専門性等に応じたキャリアパスを 示すことなどにより、優秀な学生が公務に 関心を持つような措置を講じていくことが 重要である。 若年層から見た公務の魅力の向上と発信 第 1 章で述べたように、少子化の中で一 般職試験の受験者層を中心に学生の地元志 向が強まっており、地方出身者の本府省へ の採用が難しくなったとの声があるほか、 地方機関においても転勤を嫌って学生がよ り転勤の少ない地方公共団体などへの就職 を優先する傾向が強まっていると言われて いる。また、そもそも国家公務員の仕事内 容等についての具体的イメージが持たれて いないことや、定員や働き方改革の不足等 から国家公務員の職場が慢性的に長時間労 働であると思われていること等により、民 間企業や地方公共団体との人材獲得の一層 の競合の下、国家公務員の人材確保が困難 である状況となっている。こうした状況の 中で有効な取組を行っていく必要がある。 公務に必要とされる多様な人材を確保す るためには、まず、本節 3 に述べる働き方報 の改革と勤務環境の整備を行うことが重要院 であり、これらと併せて、公務の魅力を向人 9 2

2. 人事院月報 2016年07月号

国家公務員の在職状況 ( 年齢 . 第 1 章 、人員構成 ) の変化と課題 員 公 国家公務員の在職状況の 第 1 節 変化 成 国の行政機関には、本府省 ( 府、省、委 員会、庁等 ) 、審議会等、施設等機関、特 別の機関、地方機関 ( 地方支分部局 ) があ が大量に定年退職していくことになり、こ る。このうち本章では本府省と地方 のままの姿で一一〇年後を想定すると、公務機関の在職状況に焦点を当てて考察 で経験を積んだ管理職員やべテラン実務者することとする。本府省では制度の が極めて少なくなることになる。 企画・立案、予算業務、対外的な政 本報告では、このような年齢別人員構成策等の調整、国会対応業務、国際業 の偏りがなぜ生じてきているか、とりわけ務等を行っており、地方機関では主 として制度や予算の執行に関する事 若年層が極端に少ない人員構成が公務の人 事管理や業務遂行にどのような影響を与え務を行っている。それらに勤務する 国家公務員の人事管理もそれぞれの ているのか、また、各府省はそれに対しど のような取組を行っているのかについて考行政ニーズに応じて運用されている。 本節では、国家公務員の在職状況 察し、各府省がこのような人員構成上の偏 について、全組織、本府省、地方機 りに対応するための人事管理上の課題を抽 関のそれぞれの特色等を見てみるこ 出した上で、一〇年後、一一〇年後の公務の ととする。 在り方を見据えて能率的で活力ある公務組 織を維持していくための対応について、現 時点で考えられる種々の問題提起を行うこ ととしたい。 表 全組織 俸 政 行 国の全組織に勤務する一般職国家 組 公務員のうち一般の行政事務を行っ 全 ている常勤の行政職俸給表曰適用職 員の平成一一七年における年齢階層別 職 の在職者数を一〇年前 ( 平成一七 年 ) と比較したのが図 1 である。 年 図 1 ( 国家公務員給与等実態調査 ) ( 単位 : 人 ) 平成 27 年 14L697 人 平成 1 7 年 169.697 人 1 000 1 2 ′ 000 9 ′ 000 ー平成 27 年 ー平成 17 年 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 32 34 36 20 30 19 59 以上 51 53 57 55 43 45 47 35 37 39 41 33 ( 歳 ) ( 注 ) 国家公務員給与等実態調査は、毎年 1 月 15 日現在の在職者 ( 1 月 16 日から 4 月 1 日までの間の定年退職者及び離職者並びに再任用職員等を除き、年齢は当該年 の 4 月 1 日時点の満年齢とする。 ) を対象としている ( 以下同じ。 ) 。 8 05 人事院月報洳 .803

3. 人事院月報 2016年07月号

: 地方公共団体 ( 地方公務員 ) の年齢別在職状況 ( 一般行政職 ) ( 地方公務員給与実態調査 ) ( 単位 : 人 ) 80 ′ 0 70 ′ 000 60 ′ 000 50 ′ 000 40 ′ 000 30 ′ 80 20 ′ 80 10 ′ 0 平成 26 年 834.129 人 平成 17 年 93 乙 116 人 ー平成 26 年 ー平成 17 年 地方公共団体における在 を 員 職状況の実例と取組 8 0 ′ 5 5 職 務 時 地方公共団体全体の在職状況 短 員 職 2 3 用 任 地方公共団体の一般行政職職員 ( 教育公務 再 0 1 ・ 一 J 員、警察官、臨時職員、特定地方独立行政法 9 人職員及び特定地方独立行政法人臨時職員に 該当する職員以外の常勤の職員のうち、税務 職、医師・歯科医師職、看護・保健職、福祉 異職、消防職、企業職、技能労務職等のいずれ 2 3 者 にも該当しない職員 ) について、総務省の地 職 方公務員給与実態調査に基づき、全団体の平 成一一六年における年齢階層別人員構成を平成 8 3 3 家 国 一七年と比較したのが図絽である。 の 章 平成一七年の時点では若年層 ( 三二・ 第 歳 ) をピークとする山と高齢層 ( 五四・五五 象 23 歳 ) をピークとする二つの山が存在してい 者 職 た。これらの山が、平成一一六年の時点で、前 在 の 者は中堅層 ( 四〇 5 四三歳 ) をピークとする 在 現 8 山にシフトし、後者は定年退職を迎えて山が 月 なくなっている。この間に、全団体の一般行 年 毎政職職員の数は約一〇万三、〇〇〇人減少し 査 ( 平成一七年九三七、一一六人↓平成一一六年 2 3 調 22 態八三四、一一一九人 ) 、平均年齢は〇・三歳 ( 四 与 2 2 給 三・一歳↓四二・八歳 ) 低下している。 員 9 下務 ) 第 1 章で見た平成一一七年の国家公務員 ( 全 1 以公む 組織 ( 行政職俸給表曰 ) ) の在職状況と地方 公共団体における一般行政職職員の平成一一六 第 2 節 2 年の在職状況を比べると、中堅層 ( 四〇 5 四報 院 三歳 ) をピークとする山が生じている点は共 事 通しているが、地方公共団体では高齢層の山人 号 はなくなり、四六 5 五七歳の在職者が大幅に 月 減少している。また、国と同様に一一八 5 三七 歳の職員は大幅に減少しているものの、一一七 歳以下の職員は増加している。全体の平均年 齢も低下しており、地方公共団体においては、 定年退職等により抜けた人員を、新規採用を 中心に補充している実情にあると考えられる。 このように、地方公共団体全体として年齢 別人員構成はおおむね平準化してきている が、この間に職員数は一〇万人超減少してお り、採用者数も従前の水準まで回復している わけではない。これは地方公共団体において 定員の適正化に取り組んできた結果が大き 一方で、住民サービスの充実の要請に応 えるため、各団体では、窓口業務の見直しゃ 庶務業務の集約化など事務・事業の見直し、 の活用等による業務の効率化、民間委 託等の推進や地方独立行政法人制度の活用、 指定管理者制度や—の活用、嘱託職員や 非常勤職員の活用などの取組を進めてきてい る。これらに加え、市町村合併等による行政 組織の統廃合も行われている。 年齢別人員構成に偏りのある地 方公共団体の例 今回、人事院は、平成一一八年一月下旬から

4. 人事院月報 2016年07月号

上し、その魅力を発信することが必要であ る。各府省においては、若年層から見た国 家公務員の働き方、仕事内容、キャリアパ ス等に関する魅力について改めて検証し、 具体的イメージを持ってもらえるよう、こ れまで以上に積極的な o-æに努めることが 肝要である。人事院としては、公務への人 材の供給構造の現状を幅広く把握すること とし、学生等の就業意識、民間企業や地方 公共団体と比較した国家公務員の仕事の魅 力や働き方の違い等について分析等を行っ ていく。また、各府省や大学等と連携して、 啓発活動及び人材確保活動の場を広く設定 し、そういった場を積極的に活用する。そ の際、地方機関における人材確保も重要で あることから、地方事務局 ( 所 ) と連携し て、大学懇談会の拡充のほか、大学教授等 とのネットワークづくり及び関係強化、学 生等を対象とした新たな取組などを積極的 に推進している。今後とも、各地方事務局 ( 所 ) において、各管内出先機関と協力し つつ、誘致活動を拡充・強化していきたい。 さらに、国家公務員志望者の裾野の拡大に 向け、様々な媒体を利用して情報を得てい る学生等に対して働きかけを行うため、 ソーシャル・ネットワーキング・サービス (nzn) 等によるを更に充実させて いきたい。 また、女性の採用者数を着実に増加させ ていくため、より多くの優秀な女性に国家 公務員採用試験を受験してもらうよう誘致 活動を強化していくことが重要である。人 事院は、従来から意欲ある女性を公務に一 層誘致するため、セミナー、説明会の開催 等の取組を行っているところであり、今後 とも、各府省や大学等と連携しつつ、各種 人材確保活動等を近じた働きかけを行って いきたい。あわせて、働き方の改革と勤務 環境の整備を図り、その魅力を発信してい くことも有効と考えられる。また、これま で採用者数の多かった専攻分野以外の分野 からも有為な人材を幅広く採用できるよ う、平成一一八年度から、国家公務員採用総 合職試験「政治・国際」区分の試験内容を 変更したところであり、今後とも、複雑・ 多様化する行政課題に対応した人材確保に 資するよう必要な対応を行う。なお、大学 における学科系統別女子学生の割合をみる と、特に、工学が低い状態にあるなど、国 家公務員志望者の拡大については、おのず から限界があることにも留意する必要があ る。そのため、政府全体として、女子高校 生等に対して、将来の職業選択を見据えた 進路決定ができるような働きかけを行って いくことも求められる。 さらに、採用した女性職員が幅広い土俵 で活躍していけるよう適切に育成していく ことが必要であり、ライフィベントの時期 も考慮した柔軟で多様な勤務経験の付与に 取り組んでいく必要がある。そうした中で、 0 3 人事院としても、女性職員を対象とする研報 院 修において業務遂行能力やマネジメント能 事 力の開発等の機会を提供するなど女性の登人 号 用推進のための取組を引き続き行う。 月 経験者採用試験の活用 各府省の人事管理においては引き続き、 新規学卒者を採用し部内で育成していくこ とが基本となるものと考えられるが、採用 抑制の影響等により人員構成上凹んでいる 年齢層に対処するためには、各府省の採用 計画の中に中途採用を適切に位置付け、そ の拡大を図っていくことが考えられる。し かしながら、現状においては、各府省の人 材採用育成計画の中で、中途採用者が重要 な人材供給源として位置付けられていない こと、また、一般に、民間企業等に就職し 経験を積んだ者が、国家公務員に中途採用 される道があることについてあまり知られ ていないことから、経験者採用試験の申込 者に各府省の求める人材が必ずしも十分に 得られていないという課題がある。このた め、各府省が中途採用者として求める人材 に、国家公務員になるルートの一つとして 経験者採用試験があることを広く認知して もらうことが重要であり、各府省が求める 人材が存在する分野を把握した上で、そう した人材層に向けて経験者採用試験を情報 伝達するなど、各府省と協力して効率的な 人材確保活動を行っていくこととする。そ へこ

5. 人事院月報 2016年07月号

おわりに この報告では、昨年の給与勧告時の報告か ら更に踏み込んで、国家公務員の在職状況を 本府省、地方機関に分けて分析した上で、各 府省人事当局からの聞き取り結果を踏まえ、 年齢別人員構成になぜ偏りが生じてきている のか、とりわけ若年層が極端に少ない人員構 成が各府省の人事管理や業務遂行にどのよう な影響を与えているのか、また、各府省はそ れに対してどのような取組を行っているのか について考察した。 その結果、年齢別人員構成の偏りは特に地 方機関において顕著であり、多くの地方機関 では既に技能やノウハウの円滑な継承の支障 となるとともに、国家公務員の人事管理にも 大きな影響を与えている実態が明らかになっ た。人事院としては、今回、このような在職 状況の実態を明らかにすることにより、行政 の円滑な遂行や国家公務員の人事管理におけ めには、その有する専門性に基づき即戦力 となるようなポストに配置することが適当 と考えられることから、各府省において、 職員の専門性を強化するための長期的な人 事管理に努める必要がある。さらに、例え ば、五〇歳台後半の職員について、再任用 後に従事することが見込まれる業務を念頭 に置いて、特定分野の専門性を高めるよう な人事配置を行うことも考えられる。 る中・長期的かつ重要な課題が存在すること について、関係各方面が問題意識を共有する ことが大切であると考えている その上で、各府省が年齢別人員構成の偏り に対応するに当たっての人事管理上の課題を 抽出し、一〇年後、一一〇年後を見据えて能率 的で活力ある公務組織を維持していくための 対応について問題提起を行った。その際、問 題の所在として、 ①本府省を中心に、在職期間の長期化によ り五〇歳台の高齢層職員が滞留して若手・ 中堅職員の昇進ペースが遅れており、組織 全体の活力が低下しているのではないかと の懸念があり、職員が公務で培った能力・ 経験を適切に活用することが重要であるこ と ②地方機関に象徴的な若年層が極端に少な い人員構成の下で、各府省は、新規採用の 確保、若年層や中堅層の育成、中途採用な どの人事管理上の課題に取り組んでいく必 要があること ③行政事務の遂行に当たっては業務量に見 合った適正な人員が確保されることが基本 であること を挙げ、これら三つの問題を中心とする 諸々の課題について、各府省や制度官庁等 0 に人事管理上の対応についての今後の検討報 院 を求めたところである。 事 人 具体的な問題提起の内容は第 3 章に記載の とおりであり、各府省等においてこれらの問 題提起を参考にして前広に検討が進められる ことを期待するとともに、人事院としても、 人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の 代償措置を担っている第三者・専門機関の責 務として、国家公務員の採用から退職に至る までの公務員人事管理全般にわたり、中・長 期的な視点も踏まえた総合的な取組を引き続 き進めていきたい。

6. 人事院月報 2016年07月号

人事院は、公務の民主的かっ能率的な運題、特に、人材の確保及び育成、柔軟で多特別テーマとして「在職状況 ( 年齢別人員 営を国民に対し保障するという国家公務員様な働き方の実現、勤務環境の整備等に対構成 ) の変化と人事管理への影響」と題 し、国家公務員の在職状況に偏りが生じて 法の基本理念の下、人事行政の公正の確保応した人事施策の策定・推進に取り組んで いくことが重要であると考えており、今後 きている要因、とりわけ若年層が極端に少 と職員の利益の保護等その使命の達成に努 め、人事行政の面から我が国の行政の一翼 とも人事行政の公正の確保及び労働基本権ない人員構成が各府省の人事管理や業務遂 制約の代償機能を担う第三者・専門機関の 行に与える影響、それに対する各府省の取 を担ってきており、人事院勧告制度をはじ 組について考察し、能率的で活力ある公務 めとする公務員制度は、行政運営の基盤と 責務として、適切にその役割を果たしてい 組織を維持していくための対応について記 して重要な機能を果たしてきた。 く所存である。 述している。第三部では、平成一一七年度の 人事院の業務状況について、各種資料を掲 本報告書の構成は、一一編からなり、第一 行政においては、経済の再生や地方の活 編は「人事行政」全般について、第二編は載して詳細に記述している。 性化等の複雑・高度化する課題に迅速かっ 「国家公務員倫理審査会の業務」の状況に 的確に対応していくことが求められている 本報告書により、人事行政及び公務員に ついて記述している。このうち第一編は三 が、退職管理の見直しゃ採用抑制等により、 行政を担う国家公務員の在職状況が変化し部からなり、第一部は、適正な公務員給与対する理解が一層深まることを願うもので ており、これに対応していくため、関係各を確保するための給与勧告等、職員の勤務ある。 環境を整備するための各施策、多様な人材 方面が連携し、中・長期的な視点も踏まえ、 の確保・育成等のための取組、人事行政分 それぞれの役割を適切に果たしていくこと が必要となっている。人事院としては、将野における国際協力及び化の推進など 平成一一七年度における人事行政の主な動き 来にわたって能率的で活力ある公務組織を について記述している。次いで第一一部では、 確保する観点から、現下の人事行政の諸課 2016 7 月号人事院月報 02

7. 人事院月報 2016年07月号

在職期間長期化に伴う課題 国においては、第 1 章において述べたよう に、民間企業や公共セクターへの再就職規制 の強化や年金支給開始年齢の引上げに伴う在 職期間の長期化により、五〇歳台の職員層が 増加し、若手・中堅職員の昇進ペースが遅れ ていることから、組織全体の活力が低下して いるのではないかという問題がある。 この問題に対しては、組織活力を維持する 観点から、マネジメント能力が低い者は管理 職に登用しないこと等を含め、能力・実績に 基づくメリハリのついた昇進管理に変えてい くこと、ラインによる単線型のキャリアパス 書 白 だけではなく、専門性の高いスタッフ職等を 員 務 活用した複線型人事管理を行うことにより、 公 職員が公務で培った能力と経験を適切に活用 年 すること等が考えられる。これらに加え、若 成 年層・中堅層の職員を能力・実績に応じて登 平 用することにより昇進スピードが速まれば、 個々の職員のモチベーションを向上させる効 果が期待できる。また、こうした人事管理を 在躾況の変化がもたらす 第 3 章 と人事壘の対応 第 1 節問題の所在 行うことは、高い専門性を持ったべテラン職 員が抱える技能やノウハウを下の世代に円滑 に継承していくためにも必要と考えられる。 地方機関に象徴的な若年層が極 端に少ない人員構成と課題 第 1 章において述べたように、人事行政面 においては、早期退職慣行の是正が進み在職 期間が長期化し、従前に比べ高齢層の退職者 数が減少する一方で、政府の総人件費抑制方 針の下、行政機構をスリム化するため、継続 的な定員削減や新規採用抑制の取組が進めら れてきた結果、各府省の職員の在職状況は、 , 前に比べて、特に地方機関において若年層 の職員が極端に少なくなっている実態があ る。こうした状況に対応するため、各府省は、 各種業務の効率化・集約化や電子化等の省力 化に向けた取組を進めてきているほか、民間 事業者やコンサルタント会社などへの事務・ 事業のアウトソーシングを可能な限り進めて きている。また、事務補助としての非常勤職 員の活用に加え、従来は若年層の係員が担っ ていた定型的な業務を非常勤職員に代替させ るといった措置も講じられてきている。なお、 係員業務の非常勤職員での代替については秘 書的業務や定型的業務を中心に本府省におい ても進められている。 その反面、限られた定員の中で、公務の現 場では、人員構成の偏りとそれに伴う事務・ 事業のアウトソーシングや非常勤職員の活 用・代替が進んだことにより、将来それぞれ の地方機関を管理者として支える存在になる はずの若年層や中堅層の職員が年齢や勤務年 数に応じた必要な業務経験を十分に積めない などの人事管理上の大きな課題が生じている とともに、行政の継続性の観点から組織とし て蓄積されていかなければならない技能やノ ウハウが世代間で円滑に継承されなくなると いう業務遂行上の重大な支障が生じてきてい る。 そのため、若年層が減少することに伴って 生ずる課題としては、次が挙げられる。 ①事務・事業のアウトソーシングについて は、前述のように、地方機関における行政 執行機能をどこまで民間事業者等にアウト ソーシングすることが可能なのかという間 題がある。今後は、アウトソーシングの限 界をよく認識し、むしろ行政機能の充実・ 強化について考えていくことも必要となる であろう。 ②各府省の常勤職員の人事管理において は、新規採用を確保していくことに加え、 若年層の能力開発を図り、中堅層の専門性 やマネジメント能力を向上させるために は、今後どのような人材育成を行っていく報 必要があるのかが課題になるほか、既に存院 在する若年層世代の人員構成上の谷の問題人 2

8. 人事院月報 2016年07月号

平成 28 年公務員白書 た現場のニ 1 ズなどの情報を本府省に伝え、 本府省はそれを制度や予算に適切に反映する というようなサイクルがあり、両者は相互に 有機的に連携して機能を発揮する、いわば 「車の両輪」である。 仮に、企画・立案部門である本府省を重視 するあまり、執行部門である地方機関に本来 の業務量に見合わない過少な人員しか配置さ れないとすれば、執行事務の円滑な遂行に支 障が生じ、結果的に本府省の企画・立案機能 も十全に発揮されない事態が生じるおそれが ある。また、前述のように地方機関を有する 府省の多くでは地方機関採用者を本府省に異 動させて勤務させる人事管理を行っている が、地方機関においても業務遂行に必要な人 員を確保する必要があるため、地方機関の業 務遂行に支障が生じるような数の職員を本府 省に供給することはできない。そのため、地 方機関の若年層の職員数の減少は、本府省に 供給できる職員数の減少にもつながり、結果 的に本府省の業務遂行や人事管理にも影響を 与えることになる。 したがって、本府省と地方機関の人員の配 置を考えるに当たっては、このような企画・ 立案と執行の相互依存関係を十分に意識した 上で、最適な配置を考えることが必要となる。 本府省における課題 今回、一府九省の本府省で勤務する職員の 人事管理を担当する部局 ( 職種等の別による 人事グループごとに一五部局 ) を対象に行っ た聞き取りの結果によると、本府省に特有の 人事管理上の問題があることが明らかになっ た。例えば、早期退職慣行の見直しや在職期 間の長期化の影響で五〇歳台の職員が滞留 し、管理職層を中心に「上が詰まって昇進が 従来より遅れる」という問題を指摘する意見 や、平成一 = 一年の中央省庁等改革以降、内閣 機能強化のため各府省から内閣官房等への出 向が増加し、そのことが各府省本体の人材確 保に影響を与えている等の意見が多かった。 これらの問題は、本府省における幹部職員 の退職管理や本府省の業務体制の変化に起因 するものであり、次のように、本府省の幹部 職員及び幹部要員の人事管理を中心に顕在化 している。 在職期間の長期化による若手・中堅の士 気や組織活力への影響 近年、早期退職慣行の是正のための幹部 職員の勧奨退職年齢の段階的引上げ ( 平成 一四年一一一月一七日閣僚懇談会申合せ ) 、 各府省人事当局による再就職あっせんの禁 止 ( 平成一九年改正国公法 ) 、独立行政法 人等の役員人事について公務員が就い ているポストの後任者を任命する場合等の 原則公募による選考の導入 ( 平成一一一年九 月二九日閣議決定 ) 等の措置が講じられて きており、平成一一五年一一月には国家公務 員退職手当法施行令の一部改正により、勧 奨退職が廃止されるとともに、早期退職募 集制度が導入された。そのため、現在では、 定年前に勧奨を受けて退職する管理職員や 幹部職員はいなくなり、定年退職者や地方 公共団体等への辞職出向者を除くと、自己 都合による辞職者や早期退職募集制度を利 用した辞職者のみとなっている ( 指定職及 び本府省課長級 ( 行政職俸給表曰八級以 上 ) の辞職者数 ( 定年退職者は含まれな い。 ) 【平成一七年度五五一人↓平成一一六年 度四三一人 ) 。 こうした状況の下で、管理職員や幹部職 員の平均年齢が上昇し ( 〔指定職〕平成一 七年五四・八歳↓平成一一七年五六・四歳、 〔本府省課長級〕 ( 行政職俸給表曰九級 ) 平成一七年五〇・六歳↓平成一一七年五三・ 三歳、 ( 行政職俸給表曰八級 ) 平成一七年 五〇・四歳↓平成二七年五二・四歳 ) 、上 位役職のポスト不足もあって昇任までに要 する勤務年数が従来よりも長くなっており ( 指定職の年齢層別在職者数に占める五六 歳以上六〇歳未満の人数【平成一七年一一〇 四人↓平成二七年四一一六人 ) 、職員の新陳報 代謝が進まない中、昇進の遅れにより若院 人 手・中堅職員のモチベーションが低下し、 9 0

9. 人事院月報 2016年07月号

〇女性のための公務研究セミナーの開催 等を行った。 第四章人事行政分野における国際 協力及びー k- 化の推進 国際協力・国際交流 〇開発途上国等に対する技術協力を行っ タイム制の拡充について勧告を行った。 第一章適正な公務員給与の確保 〇日中韓協力における人事行政分野の取 平成ニ七年の給与改定及び給与制度の総合〇勧告どおり拡充することが閣議決定さ 的見直し れ、関係法律等が成立した。 組を推進した。 〇マンスフィールド研修における共通プ 〇民間準拠を基本とする給与改定につい 勤務環境の整備 て勧告を行った。 〇ストレスチェック制度を導入した。 ログラムの企画・実施を行った。 〇勧告どおり実施することが閣議決定さ 〇ハラスメントの防止対策を実施した人事管理業務のー }-- 化の推進 ハラスメント防止ハンドブッ 〇改善計画の改定に向けた改修・移行ス れ、関係法律等が成立した。 〇給与制度の総合的見直しを着実に推進 クの作成、国際シンポジウムの開催等 ) 。 ケジュールの策定等を行った。 〇運用規定や各種様式の見直しを推進し することとした ( 地域手当の支給割合の 引上げ等 ) 。 第三章多様な人材の確保・育成等 〇性能及び機能向上のためのシステム改 級別定数の設定・改定等 人材の確保 〇平成一一八年度の級別定数の設定・改定〇民間企業の採用選考活動に合わせ、平 修、各府省の支援等を行った。 書 等について意見の申出を行った。 成一一七年度採用試験日程を繰り下げて実 白 員 〇内閣総理大臣は、意見の申出どおり、 施した。 務 公 〇平成一一八年度の総合職試験から、「政 級別定数の設定・改定等を実施した。 年 治・国際」区分の試験内容の見直しを行 , っこととした。 盟第ニ章職員の勤務環境等 フレックスタイム制の拡充 人材の育成 〇公務における人材育成・研修に関する 〇適切な公務運営の確保に配慮しつつ、 原則全ての職員を対象とするフレックス 研究会の開催等を行った。 第一編、人事行政 一第一部 - 人事行政この年の主な動き」 2 一」 0 一」 0 03 人事院月報 803

10. 人事院月報 2016年07月号

平成 28 年公務員白書 要な能力・資質を持っ職員を育成していく ためには、職員の能力・適性に応じて多様 な勤務機会を計画的に付与し、その勤務を 通じて人材を育成していくことを基本とし つつ、節目節目における執務を離れた研修 を有効に組み合わせることによりこれを補 完することが必要となっている。 他方、第 1 章で述べたように、各府省に おいては、職員の業務多忙により必要な研 修機会の付与を行う人事管理上の余裕がな い状況となっており、国家公務員としての 能力・資質の向上のために必要な研修受講 機会が職員に十分に提供されていない面も ある。人材育成がもたらす中・長期的な効 果を踏まえると、必須とすべき年間研修受 講日数を設定するなど、職員の研修受講機 会の確保のための取組も進めていく必要が ある。 多様な経験による人材育成・活用 職員の人材育成の観点からは、公務内外 において多様な経験を積ませることによ り、個々の職員の能力を伸ばしていくこと も重要である。このため、他府省、地方公 共団体、独立行政法人等への出向や官民人 事交流による民間企業等への派遣の機会の 拡充等を図ることが考えられる。また、グ ローバル化に対応できる人材を育成してい くためには、長期在外研究員制度等の活用 により留学の機会を確保するとともに、各 府省において職員の国際機関等への派遣の 機会を増やしていくことも重要である。 職員がその能力と経験を公務外で積極的 に活用することは、個々の職員のモチベー ションの向上にもつながることから、そう した観点からも、例えば、国際協力や国際 標準化、地方創生等の分野において、前述 のような機会の拡充を図ることが必要であ る。 諸外国における知識の継承のための取組 既に職員の大量退職期を迎えている英 国及び米国並びに今後迎えることとなる ドイツでは、職員の大量退職に伴って経 験知まで失われるおそれがあるとして、 次のような知識継承のための取組を行っ ている。なお、フランスでは、業務に必 要な知識やノウハウは公務員の採用・育 成・研修機関で習得するものと考えられ ており、世代間の知識の継承のための特 別な取組は行われていない。 べテラン・若手のペアで経験知の伝 授 ( 英国 ) 英国では業務の化が相当程度進ん でいるが、べテラン職員の知識・経験に は化できない業務があるため、職務 の継続上重要な知識・経験の継承が最も 大きな課題と考えられている。この課題 に対して、例えばいくつかの省庁では、 退職間際の職員や完全な退職ではなく部 分退職 (partial retirement) として短 時間勤務となった職員に、後任の若手職 員とペアを組ませることで、その経験及 びノウハウの伝授等を図っている。 2 段階的退職で後継者育成 ( 米国 ) 退職予定者からそのポジションを引き 継ぐ可能性のある若手職員に対する知識 の継承を確実に行っていくため、二〇一 四年に段階的退職 (phased retirement) が導入された。自発的退職の資格を有し、 かっ、組織として残すべき必要な知識・ 経験を有する職員が、週一一〇時間のパー トタイムでそれまでの業務を継続しなが ら退職に移行する制度であり、一一〇時間 のうち少なくとも一一〇 % は、知識の継承 のための指導や研修を行うこととされて また、退職予定者から若手職員に対す るメンタリングによる知識の継承も活用 されている。 3 暗黙の知識の継承策 ( ドイツ ) ドイツでは、連邦の全ての官庁で一一〇 一五年半ばまでに知識の継承措置を策定 することとされたことから、例えば連邦 33 人事院月報 803