平成 28 年公務員白書 うことが不可欠である。このため、人事院 では女性職員が働きやすい勤務環境整備に 係る管理職員の意識啓発の機会を提供する 研修を実施するなどの着実な取組を引き続 き実施する。また、民間企業では、例えば、 使用しなかった年次有給休暇の活用を行う など、両立支援策をサポートする様々な仕 組みを工夫していることから、その取組等 を参考としていくことも考えられる。 特に、女性職員が活躍できる環境整備に は、妊娠・出産・育児等の制度の利用に関 する言動によって勤務環境が害されるマタ ニティ・ハラスメントや、女性職員が被害 者となるケースが多いセクシュアル・ハラ スメントの防止も重要であり、いわゆるパ ハラ ハラスメント ( 以下「パワー スメント」という。 ) も含め、ハラスメン ト防止対策を講じていく必要がある。 長時間労働慣行の見直し 長時間労働慣行の是正は、職員の健康保 持の観点からも、ワーク・ライフ・バラン ス推進の観点からも重要な課題であり、管 理職員はもとより、職員一人一人が、長時 間労働は見直さなければならないものであ るという強い意識を持ち、超過勤務縮減の ための取組を主体的かっ継続的に行ってい くことが必要である。 具体的には、超過勤務の必要性の精査を 踏まえた事前の超過勤務命令等の勤務時間 管理の徹底、意思決定過程の簡素化、業務 の合理化・効率化等の取組を引き続き推進 していく必要があり、これらの推進に当 たっては、職員の積極的参画の下、管理職 員が率先して取り組むことが重要であるた め、その意識改革やマネジメント能力の向 上も図っていく必要がある。また、人事院 が平成一一六年に一般職国家公務員に対して 実施した「超過勤務に関する意識調査」で は、現在の部署で業務量に対し十分な職員 ( 部下職員 ) が配置されていない、又は繁 忙期には足りないとする割合が高かったこ とを踏まえれば、業務量に見合う定員の確 保、業務の平準化や本府省と地方機関との 間の職員配置の適正化も含めた柔軟な人員 配置の工夫等にも努める必要がある。 恒常的な超過勤務は職員の健康保持にも 影響を及ぼすものであり、長期病休等の要 因ともなり得るものであるため、超過勤務 の多い職員には、定期的な健康診断の受診 の徹底や面接指導の実施等、特に健康保持 への配慮を行う必要がある。今後、終業時 刻から次の始業時刻までの間隔の最短時間 を規制するインタ 1 バル規制や、超過勤務 時間の上限規制等について、適切な公務運 営の確保を前提としつつ、導入の必要性に ついて研究することも考えられる。 なお、長時間労働慣行の見直しに際して は、一日の勤務時間を短縮することのほか、 年次休暇の取得を促進することも重要であ る。業務繁忙な部署でも計画表の活用や職 員間での情報共有等の工夫を一丁、、、 彳し少なく とも毎月一日は取得できる環境整備等、年 次休暇の取得促進にも取り組む必要がある。 働きやすい職場環境整備の推進 各府省人事当局からの聞き取りや職員ア ンケートにおいて、年齢別人員構成の偏り が、職場内のコミュニケーションを困難に し、業務遂行や技能継承の支障にもなって いるとの意見があった。異なる背景を持っ 職員間であっても、気軽に声かけ、相談、 情報共有ができ、心の健康を維持できる職 場環境づくりは、良好な職場の人間関係に もつながるものと考えられる。そのための 今後の課題として、まず、ストレスチェッ ク制度において努力義務とされている集団 ごとの集計・分析及び職場環境改善の取組 の中で、職場内のコミュニケーションの活 性化を図るとともに、長時間労働慣行や業 務遂行方法 ( サポート体制・適切な裁量権 の付与等 ) 等の見直しを含めた心の健康を 保持・増進できる職場環境づくりを行うこ とが挙げられる。 また、職場の人間関係などに悩みを抱え る職員が匿名で専門家に相談できる「ここ ろの健康相談室」については、その周知を 行うことと併せて、セクシュアル・ハラス報 メントやパワー ハラスメントなどに関す院 る悩みを持っ職員のうち心の健康に不安を人 5 3
財務省では ( 年齢構成地図 ( と ( er の一目色 を作成し、毎年、」継承しなければならな い知識の有無を把握・分析し、どのよう な知識継承措置を講じるかを確認してい る 9 継承措置としては、イントラネット への知識の保存、】一時的な同一ポストへ の職員の重複配置、残された課題や人的 ネットワーク等の情報を含む引継書の作 成を行っている。 継承すべき経験知やノウハウは、専門 知識、手法や特定の事情に係る知識だけ でなく、特定の人物やネットワーク、。『コ ミュニケーション・チャンネル、慣例な どに関する文書化されていない暗黙の知 識を含むものとされている。また、調整 役となるポスト等、「このようなノウハウ を必要とするキ 1 となるポジションで は、知識のリレーと呼ばれるモデレータ を介して行う引継ぎプロセスが採られて いるようである。 働き方の改革と勤務環境の整備 に関する課題 限られた人的資源の下で職員一人一人の能 力を十全に活用し、効率的な職務遂行を推進 するとともに、、 公務で働くことの魅力を高め、 有為な人材を確保する観点から、働き方の改 革と勤務環境の整備は喫緊の課題であり、 ワーク・ライフ・バランスの推進を通じて、 心の健康の不調の発生や若年層の離職の防 止、公務における女性の活躍推進にも資する ものである。 両立支援制度を通じた勤務環境の整備 今後、女性職員の在職者比率の高まりが 想定される中で、育児中の職員が育児を理 由に自身のキャリア形成を諦めることな く、職場の中核人材として育っていけるよ うな働き方の実現が必要である。そのため には、育児責任を担う職員が育児休業等の 仕事と家庭の両立支援制度を利用しやすい 職場の環境づくりを進めることはもとよ り、育児休業終了後の円滑な職務執行のた めの支援の充実や育児中の職員のキャリア 形成の在り方も考えていく必要がある。ま た、女性職員に育児責任が偏らないよう、 夫婦で両立支援制度の利用を考える機会を 設けるなど、男性職員の育児参加や両立支 援制度の活用促進を図ることも必要である。 また、今後は、男女を問わず、育児のみ でなく介護責任を担う職員が増加すると想 定され、公務の職場全体が、時間や場所に 制約があっても引け目を感じることなく勤 務を継続できる環境を整備していくことが 重要となる。このため、より多くの職場で のテレワークの導入や職員のフレックスタ イム制の活用等、柔軟な働き方の実現に取 り組む必要がある。 なお、仕事と家庭の両立支援策が十分機報 能するためには、制度を整備するのみでな院 く、当該制度やその活用方法等の周知、職人 号 員が相談できる体制整備等も重要となる。 月 特に介護については、介護をしていること 自体を周囲に伝えていない職員も多いた め、介護サービスや介護のための両立支援 制度について、職員を対象とするセミナー の開催等により積極的に周知するととも に、両立について具体的に相談できる場を 提供する等の取組も進めていく必要がある。 また、職員が実際に両立支援制度を利用 できるようにするためには、勤務できない ときの仕事を他の職員により円滑にカバ 1 する体制の整備も必要である。 人事院においても、平成一一八年四月から、 産前産後休暇に引き続き育児休業を取得す る職員の代替職員の公募・採用の手続を円 滑に行うことができるよう制度を整備し た。今後とも、両立支援制度の利用促進に 向けて、産前産後休暇等の取得実態に応じ た定員の拡充や任期付職員等の各種代替職 員制度の活用が進むよう、政府全体として 取り組む必要がある。 介護に係る制度についても、今後の職員 の介護の状況や各府省におけるニ 1 ズ等に より、必要な代替要員を確保し得る制度に ついて検討することが考えられる。 さらに、職員の働きやすい環境を整備す るに当たっては、管理職員の意識改革を行
〇女性のための公務研究セミナーの開催 等を行った。 第四章人事行政分野における国際 協力及びー k- 化の推進 国際協力・国際交流 〇開発途上国等に対する技術協力を行っ タイム制の拡充について勧告を行った。 第一章適正な公務員給与の確保 〇日中韓協力における人事行政分野の取 平成ニ七年の給与改定及び給与制度の総合〇勧告どおり拡充することが閣議決定さ 的見直し れ、関係法律等が成立した。 組を推進した。 〇マンスフィールド研修における共通プ 〇民間準拠を基本とする給与改定につい 勤務環境の整備 て勧告を行った。 〇ストレスチェック制度を導入した。 ログラムの企画・実施を行った。 〇勧告どおり実施することが閣議決定さ 〇ハラスメントの防止対策を実施した人事管理業務のー }-- 化の推進 ハラスメント防止ハンドブッ 〇改善計画の改定に向けた改修・移行ス れ、関係法律等が成立した。 〇給与制度の総合的見直しを着実に推進 クの作成、国際シンポジウムの開催等 ) 。 ケジュールの策定等を行った。 〇運用規定や各種様式の見直しを推進し することとした ( 地域手当の支給割合の 引上げ等 ) 。 第三章多様な人材の確保・育成等 〇性能及び機能向上のためのシステム改 級別定数の設定・改定等 人材の確保 〇平成一一八年度の級別定数の設定・改定〇民間企業の採用選考活動に合わせ、平 修、各府省の支援等を行った。 書 等について意見の申出を行った。 成一一七年度採用試験日程を繰り下げて実 白 員 〇内閣総理大臣は、意見の申出どおり、 施した。 務 公 〇平成一一八年度の総合職試験から、「政 級別定数の設定・改定等を実施した。 年 治・国際」区分の試験内容の見直しを行 , っこととした。 盟第ニ章職員の勤務環境等 フレックスタイム制の拡充 人材の育成 〇公務における人材育成・研修に関する 〇適切な公務運営の確保に配慮しつつ、 原則全ての職員を対象とするフレックス 研究会の開催等を行った。 第一編、人事行政 一第一部 - 人事行政この年の主な動き」 2 一」 0 一」 0 03 人事院月報 803
凹 従業員数が少ない年齢層があることによる影響 ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) 4 ・ ・ 4 ・ 昇進候補者や幹部 要員の不足 若年・中堅層への技能継承 ができない 計画的な人事異動・配置 が行えない 計画的な育成が行えない 従業員数が少ない年齢層 の業務量の増加 従業員数が少ない年齢層 のモチベーションの低下 業務の非効率 従業員数が少ない年齢層 以外の層の業務量の増加 従業員数が少ない年齢層 以外の層のモチベーションの低下 その他 特に問題を感じていない 従業員数が多い年齢層があることへの対応 ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) 7 ′ 0 4 中高齢層の活用 賃金制度・人事制度の見直し 昇任・昇格における厳格な選抜 研修の充実 女性の登用の推進 高度専門職制度の活用 中途採用の拡大 非正規従業員の活用 業務の外部化、業務範囲の縮小 抜擢人事の推進 他社等への出向・派遣等の拡大 退職勧奨等による人員削減 その他 特に取リ組んでいる事項はない 22 人事院月報 2016 7 月号
抱える職員の対応についてセクシュアル・ ハラスメント相談員や各府省の相談窓口等 との連携を進めることも重要である。 さらに、心の不調から病気休暇・病気休 職を取得した職員の職場復帰に関しては、 療養期間中における職員・職場間の連絡体 制の整備など職員への対応方法に関する周 知・啓発を行うことや、復帰後の直属の上 司によるケアを推進することも考えられる。 なお、人事院では後輩職員の育成のため の先輩職員のコミュニケーション技法をメ ンター養成研修で提供するなどコミュニ ケーションカを高めるための研修の提供等 を行っており、各府省人事当局においても そうした育成機会を自ら提供する等の取組 を進めていく必要がある。 諸外国における勤務環境整備の取組 英国、米国、ドイツ及びフランスでは、 ~ 職員が、子育てや介護等、人生の様々な 段階にあっても仕事と家庭を両立しなが ら継続して勤務できるよう、短時間勤務、 フレックスタイム、テレワーク、ジョブ・ シェアリングなど多種多様で柔軟な勤務 形態が導入されている。なお、こうした 柔軟な勤務形態の整備は ( 家庭生活と職 業生活の両立を重視する若い世代の人材 確保や職員のモチベーションの向上にも 組織活力の維持に関する課題 第 1 章において述べたように、本府省を中 心に、在職期間の長期化により若手・中堅職 員の昇進ペースが遅れ、全体として組織の活 力が低下しているのではないかという問題が ある。また、地方機関に象徴的な若年層が極 端に少ない人員構成に対応するため、限られ た定員の中で、従来常勤職員が担っていた定 型的な業務を非常勤職員が代替しているよう 寄与していると言われている。 例えば、英国では、柔軟な勤務形態は 一般的に活用されており、全政府職員の 一一五 % が何らかの制度を活用して短時間 勤務の形態で働いている。また、同じく 一般的に柔軟な勤務形態が活用されてい るドイツでは、管理・幹部職での短時間 勤務も推進されており、課長級以上の短 時間勤務が皆無という省もあるが、管 理・幹部職の二三 % が短時間勤務を行っ ているという積極的な省もある。 一方、このように柔軟な勤務形態が広 く活用される中、ドイツでは、課の一体 感の醸成やコミュニケーションの確保、 公平な職務分担、公正な評価といったこ とが課題となっており、管理職のマネジ メント能力の重要性が一層増している。 6 報 な事例もみられる。こうした状況の下、能力・ 月 院 実績に基づく適材適所の人事配置等を図るこ 事 とにより、能率的で活力ある公務組織を維持人 号 することが必要である。 月 能力・実績に基づく人事管理の推進 在職期間の長期化による昇進の遅れな ど、組織全体の活力が低下しているという 課題に対応していくためには、各府省にお いて、適切な能力実証の下、年齢や経験年 数を過度に重視した人事運用を改め、優秀 な若手職員の抜擢を含めた能力・実績に基 づく人員配置や昇進管理、処遇を行うこと によって、職員の士気を高めることが重要 である。具体的には、個々の職員の能力や 実績を人事評価を通じて的確に把握すると ともに、適材適所の人事を行うことや、職 員を短期間で頻繁に異動させるような人事 運用を見直し、能力開発を図りつつ、職員 の専門性を強化すること、採用年次への配 慮による昇進を排し、優秀者は抜擢する一 方、管理能力が不十分な者については、ラ インの管理職に就けないこと、特に本府省 の課長以上への昇任に当たっては、政策立 案能力に加え、従来以上に組織・マネジメ ントに対する意識や能力を厳格に検証する ことといった取組を引き続き行っていくこ とが必要である。また、職員の昇進管理に おいては、ラインの管理職として処遇して いくルートのほかに、個々の職員の適性に
人事院は、公務の民主的かっ能率的な運題、特に、人材の確保及び育成、柔軟で多特別テーマとして「在職状況 ( 年齢別人員 営を国民に対し保障するという国家公務員様な働き方の実現、勤務環境の整備等に対構成 ) の変化と人事管理への影響」と題 し、国家公務員の在職状況に偏りが生じて 法の基本理念の下、人事行政の公正の確保応した人事施策の策定・推進に取り組んで いくことが重要であると考えており、今後 きている要因、とりわけ若年層が極端に少 と職員の利益の保護等その使命の達成に努 め、人事行政の面から我が国の行政の一翼 とも人事行政の公正の確保及び労働基本権ない人員構成が各府省の人事管理や業務遂 制約の代償機能を担う第三者・専門機関の 行に与える影響、それに対する各府省の取 を担ってきており、人事院勧告制度をはじ 組について考察し、能率的で活力ある公務 めとする公務員制度は、行政運営の基盤と 責務として、適切にその役割を果たしてい 組織を維持していくための対応について記 して重要な機能を果たしてきた。 く所存である。 述している。第三部では、平成一一七年度の 人事院の業務状況について、各種資料を掲 本報告書の構成は、一一編からなり、第一 行政においては、経済の再生や地方の活 編は「人事行政」全般について、第二編は載して詳細に記述している。 性化等の複雑・高度化する課題に迅速かっ 「国家公務員倫理審査会の業務」の状況に 的確に対応していくことが求められている 本報告書により、人事行政及び公務員に ついて記述している。このうち第一編は三 が、退職管理の見直しゃ採用抑制等により、 行政を担う国家公務員の在職状況が変化し部からなり、第一部は、適正な公務員給与対する理解が一層深まることを願うもので ており、これに対応していくため、関係各を確保するための給与勧告等、職員の勤務ある。 環境を整備するための各施策、多様な人材 方面が連携し、中・長期的な視点も踏まえ、 の確保・育成等のための取組、人事行政分 それぞれの役割を適切に果たしていくこと が必要となっている。人事院としては、将野における国際協力及び化の推進など 平成一一七年度における人事行政の主な動き 来にわたって能率的で活力ある公務組織を について記述している。次いで第一一部では、 確保する観点から、現下の人事行政の諸課 2016 7 月号人事院月報 02
平成 28 年 公務員白書 従業員数が少ない年齢層があることへの対応 ( 複数回答 ) 特 集 ( 単位 : 企業数 ) 14 8 ′ 0 0 0 中途採用の拡大 60 歳超の従業員の活用 女性の登用の推進 研修の充実 賃金制度・人事制度の見直し 非正規従業員の活用 業務の外部化、業務範囲の縮小 新規採用の拡大 抜擢人事 継続雇用制度の改革 高度専門職制度の活用 昇任・昇格における厳格な選抜 他社等からの出向・派遣等の受入拡大 退職勧奨等による人員削減 その他 特に取リ組んでいる事項はない 60 歳超の従業員に期待すること ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) -0 0 知識・経験の後輩への継承 知識・経験をいかした高いパフォーマンス ー担当者としての着実な業務遂行 職場における相談役 職場内での円滑なコミュニケーション 仕事への高いモチベーション その他 歳超の従業員は存在しない 60 歳超の従業員の活用に際して困難を感じていること ( 複数回答 ) ( 単位 : 企業数 ) 0 8 4 モチベーションの維持 処遇への納得感の向上 経験や能力と仕事のマッチング 歳時点での従業員のマインドの転換 担当職務の用意 職場での良好な人間関係の確保 その他 印歳超の従業員は存在しない 23 人事院月報 洳 .803
平成 28 年公務員白書 三月上旬までにかけて、職員の年齢別人員構 成に特色があり、国と同様の問題意識を有し ている六つの地方公共団体を対象に、一般行 政職職員の在職状況及び年齢別人員構成を適 正化するための取組等について聞き取り調査 を行った。結果の概要は次のとおりである。 年齢別人員構成の状況 各年齢層の割合の変化については、一〇 年前と比べて、新規採用者数の回復に伴い 「三〇歳未満」が増加するとともに、再任 用者数の増加により「六〇歳以上ーが増加 したとする団体が多い。一方、新規採用抑 制等が行われた年齢層である「三〇 5 三九 歳」が減少したとする団体が多い 次に、各団体において、本来必要と考え る職員数よりも実際の職員数が多い年齢層 ( 以下「職員数が多い年齢層」という。 ) 及び本来必要と考える職員数よりも実際の 職員数が少ない年齢層 ( 以下「職員数が少 ない年齢層」という。 ) については、前者 は「五〇 5 五九歳」が最も多く、次いで 「四〇 5 四九歳」が多い。一方、後者は「三 〇 5 三九歳」が最も多く、次いで「三〇歳 未満」が多い。 年齢別人員構成に偏りを生じた原因 前記①で述べた職員数が多い年齢層が生じ た原因としては、「バブル期の採用拡大」な ど過去の一時期における大量採用を挙げた団 体が多い。一方、職員数が少ない年齢層が生 じた原因としては、「過去の採用抑制」や 「職員数の削減」を挙げた団体が多い。 ③職員の年齢別人員構成の偏りによる影響 ア職員数が多い年齢層があることによる 影響 職員数が多い年齢層があることによる 影響については、職員数が多い年齢層及 びその下の年齢層における「昇任・昇格 の遅滞」や、職員数が多い年齢層の「モ チベーションの低下」及び「計画的な育 成が行えない」を挙げた団体が多い。 イ職員数が少ない年齢層があることによ る影響 職員数が少ない年齢層があることによ る影響については、職員数が少ない年齢 層の「計画的な育成が行えない」、「昇 任・昇格候補者や幹部要員の不足ー及び 「業務量の増加」を挙げた団体が多い。 また、中堅層や高齢層から職員数が少な い若手・中堅層への「技能継承ができな い」を挙げた団体が多い。 ④職員の年齢別人員構成の偏りが生じてい ることへの対応 ア職員数が多い年齢層があることへの対応 職員数が多い年齢層があることへの対 応については、「昇任・昇格における厳 格な選抜」や「新たな職を設置して中堅 層・高齢層の職員を配置」のほか、早期 退職の勧奨やその際の退職金割増率の引 上げ、勧奨退職年齢の早期化などの取組 が行われている。 イ職員数が少ない年齢層があることへの 対応 職員数が少ない年齢層があることへの 対応については、「新規採用の拡大」、 「中途採用の拡大」及び「研修の充実」 を挙げた団体が多い。そのほか、「再任 用職員の活用」、「非常勤職員の活用」、 「任期付職員の活用」、「業務の民営化・ 外部委託等の推進」、「昇任・昇格におけ る厳格な選抜」、「抜擢人事の推進」、「給 与制度・人事制度の見直し」などの取組 が行われている。 ⑤再任用職員の活用 再任用職員に期待することについては、 「知識・経験の後輩への継承」、「職場にお ける相談役」及び「一担当者としての着実 な業務遂行」を挙げた団体が多い。そのほ か、「知識・経験をいかした高いパフォー マンス」、「職場内での円滑なコミュニケー ション」及び「仕事への高いモチベーショ 報 ン」が挙げられた。 一方、再任用職員の活用に際して困難を院 事 人 感じていることについては、「モチベー 5 2
上し、その魅力を発信することが必要であ る。各府省においては、若年層から見た国 家公務員の働き方、仕事内容、キャリアパ ス等に関する魅力について改めて検証し、 具体的イメージを持ってもらえるよう、こ れまで以上に積極的な o-æに努めることが 肝要である。人事院としては、公務への人 材の供給構造の現状を幅広く把握すること とし、学生等の就業意識、民間企業や地方 公共団体と比較した国家公務員の仕事の魅 力や働き方の違い等について分析等を行っ ていく。また、各府省や大学等と連携して、 啓発活動及び人材確保活動の場を広く設定 し、そういった場を積極的に活用する。そ の際、地方機関における人材確保も重要で あることから、地方事務局 ( 所 ) と連携し て、大学懇談会の拡充のほか、大学教授等 とのネットワークづくり及び関係強化、学 生等を対象とした新たな取組などを積極的 に推進している。今後とも、各地方事務局 ( 所 ) において、各管内出先機関と協力し つつ、誘致活動を拡充・強化していきたい。 さらに、国家公務員志望者の裾野の拡大に 向け、様々な媒体を利用して情報を得てい る学生等に対して働きかけを行うため、 ソーシャル・ネットワーキング・サービス (nzn) 等によるを更に充実させて いきたい。 また、女性の採用者数を着実に増加させ ていくため、より多くの優秀な女性に国家 公務員採用試験を受験してもらうよう誘致 活動を強化していくことが重要である。人 事院は、従来から意欲ある女性を公務に一 層誘致するため、セミナー、説明会の開催 等の取組を行っているところであり、今後 とも、各府省や大学等と連携しつつ、各種 人材確保活動等を近じた働きかけを行って いきたい。あわせて、働き方の改革と勤務 環境の整備を図り、その魅力を発信してい くことも有効と考えられる。また、これま で採用者数の多かった専攻分野以外の分野 からも有為な人材を幅広く採用できるよ う、平成一一八年度から、国家公務員採用総 合職試験「政治・国際」区分の試験内容を 変更したところであり、今後とも、複雑・ 多様化する行政課題に対応した人材確保に 資するよう必要な対応を行う。なお、大学 における学科系統別女子学生の割合をみる と、特に、工学が低い状態にあるなど、国 家公務員志望者の拡大については、おのず から限界があることにも留意する必要があ る。そのため、政府全体として、女子高校 生等に対して、将来の職業選択を見据えた 進路決定ができるような働きかけを行って いくことも求められる。 さらに、採用した女性職員が幅広い土俵 で活躍していけるよう適切に育成していく ことが必要であり、ライフィベントの時期 も考慮した柔軟で多様な勤務経験の付与に 取り組んでいく必要がある。そうした中で、 0 3 人事院としても、女性職員を対象とする研報 院 修において業務遂行能力やマネジメント能 事 力の開発等の機会を提供するなど女性の登人 号 用推進のための取組を引き続き行う。 月 経験者採用試験の活用 各府省の人事管理においては引き続き、 新規学卒者を採用し部内で育成していくこ とが基本となるものと考えられるが、採用 抑制の影響等により人員構成上凹んでいる 年齢層に対処するためには、各府省の採用 計画の中に中途採用を適切に位置付け、そ の拡大を図っていくことが考えられる。し かしながら、現状においては、各府省の人 材採用育成計画の中で、中途採用者が重要 な人材供給源として位置付けられていない こと、また、一般に、民間企業等に就職し 経験を積んだ者が、国家公務員に中途採用 される道があることについてあまり知られ ていないことから、経験者採用試験の申込 者に各府省の求める人材が必ずしも十分に 得られていないという課題がある。このた め、各府省が中途採用者として求める人材 に、国家公務員になるルートの一つとして 経験者採用試験があることを広く認知して もらうことが重要であり、各府省が求める 人材が存在する分野を把握した上で、そう した人材層に向けて経験者採用試験を情報 伝達するなど、各府省と協力して効率的な 人材確保活動を行っていくこととする。そ へこ
身等の強化を政府一体となって進めてい くことを目的として、各省の業務計画や 上級管理職 (Senior Executive Service (næn)) の業績評価の評価項目の中 に、職員の職務への献身等に対する責任 が盛り込まれている。 また、これまでは専門性をいかして一 つの分野の専門家として昇進していくの が通常であったが、年代に応じてその考 え方は変わってきており、ミレニアルズ と言われる一一〇歳台から三〇歳台の職員 は、同じ業務に長く携わり専門性をいか して直線的に昇進するのではなく、様々 なポジションで幅広い経験や知識を蓄積 することにより、複雑化する課題にチャ レンジする能力を身に付けたいという希 望が強いと言われており、省内での異動 あるいは省をまたいだ異動を促進するこ とにより、職員のモチベーションの向上 に努めている。 2 縦方向だけではないキャリアパス ( ドイツ ) 職員の高齢化が進む中で、管理職や幹 部職のポストには限りがあり、縦方向へ のキャリアパスが難しくなってきている ため、各職員の希望に応じて能力開発の 機会を与える、専門家やプロジェクトの リーダーにする、長期にわたる同一ポス ト在任者に異動を促す、上司が部下の業 績をフィ 1 ドバックすゑ部下と定期的 に面談をするなど、あらゆる手段を用い て職員のモチベーションの維持・向上に 努めている。 3 就職後の専門分野の変更 ( 英国 ) 従来、一度就職すると同一専門分野や 同一勤務先に退職まで勤務することが一 般的であったが、最近の若い世代は就職 後に専門分野や勤務先の変更を望む者も 多い円そのため、ハ ム務部内において、職 務への専門性がそれほど強く求められな い係長レベル以下のポストで分野変更を 認めることにより、若い世代のモチベー ションの維持を図っている。 4 キャリア形成の専門家による支援 ( フランス ) 各省においては、職員からの要望に応 じて個別に面談を行いいキャリア形成に おいて助言を与えるキャリア・モビリ ィー・アドバイザーが配置されてい る。全職員を対象にしたものであるが、 モチベーション維持のために、とりわけ 中・高年齢層の職員はキャリア◆モビリ ティー・アドバイザーとの面談が推奨さ れている。アドバイザーは、個々の職員 再任用の活用に関する課題 第 1 章で述べたように、将来的に年金支給 開始年齢が六五歳になることを踏まえ、多く の府省では、今後、再任用職員のモチベーショ ンを維持しつつ、中核的・本格的な仕事を担 わせることで、定年前と同様に堅実な業務遂 行に当たらせる必要があると考えている。一 方で、各府省は、フルタイム再任用を本格的 に活用するための課題として、再任用職員の 定年時点でのマインドの転換やモチベーショ ンの維持、経験や能力と仕事のマッチング、 職場での人間関係等を挙げており、そのため には再任用に際しての能力・適性のチェック と職員のモチベーションの維持が重要である としているほか、新規採用も一定数を確保で きるよう必要な定員を過渡的に措置すること が必要であるとしている。 フルタイム再任用の本格的活用に資する 定員上の工夫 現在、国家公務員の雇用と年金の接続は、 当面の措置として、再任用希望者を原則と してフルタイム官職に再任用するものとさ へキャリアパスを助言し、異動を促し、 空席公募のための経歴書や志望動機書の 書き方、面接の指導も行っている。 2016 7 月号人事院月報 38