非常勤職員 - みる会図書館


検索対象: 人事院月報 2016年07月号
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1. 人事院月報 2016年07月号

在職期間長期化に伴う課題 国においては、第 1 章において述べたよう に、民間企業や公共セクターへの再就職規制 の強化や年金支給開始年齢の引上げに伴う在 職期間の長期化により、五〇歳台の職員層が 増加し、若手・中堅職員の昇進ペースが遅れ ていることから、組織全体の活力が低下して いるのではないかという問題がある。 この問題に対しては、組織活力を維持する 観点から、マネジメント能力が低い者は管理 職に登用しないこと等を含め、能力・実績に 基づくメリハリのついた昇進管理に変えてい くこと、ラインによる単線型のキャリアパス 書 白 だけではなく、専門性の高いスタッフ職等を 員 務 活用した複線型人事管理を行うことにより、 公 職員が公務で培った能力と経験を適切に活用 年 すること等が考えられる。これらに加え、若 成 年層・中堅層の職員を能力・実績に応じて登 平 用することにより昇進スピードが速まれば、 個々の職員のモチベーションを向上させる効 果が期待できる。また、こうした人事管理を 在躾況の変化がもたらす 第 3 章 と人事壘の対応 第 1 節問題の所在 行うことは、高い専門性を持ったべテラン職 員が抱える技能やノウハウを下の世代に円滑 に継承していくためにも必要と考えられる。 地方機関に象徴的な若年層が極 端に少ない人員構成と課題 第 1 章において述べたように、人事行政面 においては、早期退職慣行の是正が進み在職 期間が長期化し、従前に比べ高齢層の退職者 数が減少する一方で、政府の総人件費抑制方 針の下、行政機構をスリム化するため、継続 的な定員削減や新規採用抑制の取組が進めら れてきた結果、各府省の職員の在職状況は、 , 前に比べて、特に地方機関において若年層 の職員が極端に少なくなっている実態があ る。こうした状況に対応するため、各府省は、 各種業務の効率化・集約化や電子化等の省力 化に向けた取組を進めてきているほか、民間 事業者やコンサルタント会社などへの事務・ 事業のアウトソーシングを可能な限り進めて きている。また、事務補助としての非常勤職 員の活用に加え、従来は若年層の係員が担っ ていた定型的な業務を非常勤職員に代替させ るといった措置も講じられてきている。なお、 係員業務の非常勤職員での代替については秘 書的業務や定型的業務を中心に本府省におい ても進められている。 その反面、限られた定員の中で、公務の現 場では、人員構成の偏りとそれに伴う事務・ 事業のアウトソーシングや非常勤職員の活 用・代替が進んだことにより、将来それぞれ の地方機関を管理者として支える存在になる はずの若年層や中堅層の職員が年齢や勤務年 数に応じた必要な業務経験を十分に積めない などの人事管理上の大きな課題が生じている とともに、行政の継続性の観点から組織とし て蓄積されていかなければならない技能やノ ウハウが世代間で円滑に継承されなくなると いう業務遂行上の重大な支障が生じてきてい る。 そのため、若年層が減少することに伴って 生ずる課題としては、次が挙げられる。 ①事務・事業のアウトソーシングについて は、前述のように、地方機関における行政 執行機能をどこまで民間事業者等にアウト ソーシングすることが可能なのかという間 題がある。今後は、アウトソーシングの限 界をよく認識し、むしろ行政機能の充実・ 強化について考えていくことも必要となる であろう。 ②各府省の常勤職員の人事管理において は、新規採用を確保していくことに加え、 若年層の能力開発を図り、中堅層の専門性 やマネジメント能力を向上させるために は、今後どのような人材育成を行っていく報 必要があるのかが課題になるほか、既に存院 在する若年層世代の人員構成上の谷の問題人 2

2. 人事院月報 2016年07月号

特に高齢層の山が抜けた後は、再任用者 との調整を図りつつ、空いた定員の枠を 使ってできるだけ新規採用を増やしたい としている。なお、その際の課題として、 各府省は、地方機関において必要な定員 を確保すること及び若者の地元志向や長 時間労働を忌避する傾向がある中で質を 維持しながらどれだけの人数を確保でき るかということを挙げている。 また、必要な定員の確保に当たっては、 高齢層の山の定年退職を待たずに、職員 の外部出向や早期退職募集制度の募集拡 大によって新規採用のための枠を広げた いという府省もある。 イ業務の効率化・集約化・民間委託等 各府省は、行政需要が増大する中で、 地方機関における組織・定員の合理化に 伴う若年層を中心とする職員数の減少に 対応するため、この一〇年間においても、 管理部門等の業務の効率化や集約化、各 種業務の電子化、手続や資料の簡素化等 の取組を進めてきている。さらに、かっ ては若年層職員が担っていた定型的業 務、秘書業務等を係員が減った穴埋めと して非常勤職員で代替したり、現場の事 務・事業を民間事業者やコンサルタント 会社などにアウトソーシングしたりする などにより大幅な業務合理化の取組が進 められてきている。 これらの取組に関し、非常勤職員につ いては、職員団体から雇用の安定や処遇 の改善を求める要望があり、現場で課題 となっている府省もある。また、アウト ソーシングについては、事務・事業を外 注化することが組織としての技能やノウ ハウの流出にもつながり、その維持・継 続にも影響を及ぼしかねないところにま で来ているとの見方もある。 ( ※ ) 非常勤職員の在職状況は、「一般 職国家公務員在職状況統計表」 ( 内閣人事局 ) によると、全体で 一四〇、一一一一人 ( 事務補助職員 ( 二二、五四一人 ) のほか、統計 調査職員 ( 七、六〇六人 ) 、委員 顧問参与等職員 ( 二二、四六二 人 ) 、保護司 ( 四七、五九九人 ) 、 水門等水位観測員 ( 四、一一一八九人 ) 等を含む。 ) 。そのうち、規則八ー 一一一 ( 職員の任免 ) 第四条第一三 号の期間業務職員が一一九、三一〇 人である ( 人数は平成一一七年七月 一日現在 ) 。 ウ再任用の活用 地方機関における再任用の活用につい ては、府省によって考え方に違いがある が、将来的に年金支給開始年齢が六五歳 になることを踏まえ、今後フルタイム勤 務希望者の増加が見込まれるため、多く 報 の府省では、再任用職員がモチベーショ 月 ンを維持しつつ、中核的・本格的な仕事院 を担うことで、定年前と同様に堅実な業人 務遂行に当たらせる必要があると考えて いる 一方、当面の課題としては、多くの地 方機関において高齢層職員の退職ととも に技能やノウハウが散逸することに対す る危機感が強いことから、若年層や中堅 層の職員への技能・ノウハウの継承、後 輩の育成・相談、仕事の質の維持のため、 再任用職員を積極的に活用したいと考え ている府省が多い。特に前掲の地方機 関のような人員構成にある場合、高齢層 職員の退職とともに五 5 一〇年後には技 能やノウハウが散逸してしまうとの危機 感が強く、再任用職員による技能・ノウ ハウ継承の役割に対する期待が高い。他 方で、空き定員はまずは新規採用枠に充 てるとの考え方も多く、再任用短時間勤 務職員は現場での調査要員など人手不足 を補うためのマンパワーと割り切って活 用している府省もある。 また、各府省は、フルタイム再任用を 本格的に活用するための課題として、再 任用職員の定年時点でのマインドの転換 やモチベーションの維持、経験や能力と 仕事のマッチング、職場での人間関係等 を挙げており、そのためには再任用に際 しての能力・適性のチェックと職員のモ

3. 人事院月報 2016年07月号

平成 28 年公務員白書 応じて専門職として処遇していくルートを 設けるなど、複線型人事管理を推進してい くことも重要である。 専門スタッフ職の活用 複雑・高度化する様々な行政課題に効率 的、効果的に対応するためには、専門性の 高いスタッフ職を活用することが有用であ る。現在のように、在職期間の長期化の影 響で、本府省局長級や審議官級の指定職俸 給表適用職員、本府省課長級の行政職俸給 表曰適用職員を定年間際に専門スタッフ職 に就けるような人事運用は必ずしも望まし いものとはいえない。専門家としてのキャ リアパスに対する意欲と能力のある職員に 対しては、若年層を含む早い段階から、特 定の分野の専門家として育成する方針であ ることを意識させ、養成していくことも考 えていく必要がある。そのためにも、各府 省において、専門スタッフ職が政策立案に 必要な役割を適切に果たすことができるよ うな行政事務の執行体制の見直しを行うと ともに、国際的に通用するような特に高い 専門性を有する専門スタッフ職を育成し、 活用できるようにするため、そのキャリア パスの在り方について検討を進める必要が ある。 非常勤職員の処遇等 従来常勤職員が担っていた業務を非常勤 職員が代替して恒常的に担っているような 実態が仮にある場合、そのような業務には 常勤職員を任用することが適当である。一 方、公務の現場でその役割を果たしている 非常勤職員についても、常勤職員と同様に 高い意欲を持って勤務することができるよ う、適切な勤務環境を確保することが重要 となる。 非常勤職員の給与については、給与法に より、各庁の長は、常勤職員の給与との権 衡を考慮し、予算の範囲内で支給するとさ れており、これを受けて、人事院は、平成 一一〇年八月、非常勤職員の給与に関する指 針を発出している。本指針では、基本とな る給与を類似する職務に従事する常勤職員 の俸給月額を基礎として決定することや諸 手当の支給についての考え方を示してお り、これに基づき、各府省において非常勤 職員の職務に応じた適切な処遇が図られる よう、引き続き適切に指導を行う。 諸外国における職員のモチベーション 維持のための取組 米国やドイツでは、職員の高齢化や職 員数の減少等に伴い、職員全体のモチ べーションを維持し、いかに組織の活力 を向上させていくかが課題となってい る。また、英国では若い世代、フランス では増加する高齢層の職員のモチベー ションの維持に力を入れている。いずれ の国でも、職員数が減少し、職員の高齢 化が進む職場においては、人事管理を行 う管理職のマネジメント能力やリーダ 1 シップの発揮が重要とされている。 職場における満足度の向上策 ( 米国 ) Employee Engagement ( 職場や職務 に対する職員の献身、 ( 持続性、努力及び 参加等 ( 以下「職員の職務への献身等」 という 0) ) を強化することが、職員のモ チベ 1 ションの維持や業績の向上に役立 っとの考えに基づき、ホワイトハウス主 導の下、職員の職務への献身等の強化に 力を入れている。人事管理庁は、職員の 仕事や職場への満足度、研修等の能力開 発の機会や仕事と家庭の両立のための制 度の活用等について、全ての職員を対象 とした個人の意識調査を行い、その結果 を部局ごとに取りまとめて指標化し、管 理者に結果のフィードバックを行っ - てい る「このデータにより、管理者は、上司 のリーダーシップ、キャリア開発、職場 環境等に対する職員の意識を把握し、 , 職 員の要望に応じた人事管理戦略を作成す るなど、職員のモチベーションの向上に 役立てている。また、職員の職務への献 3 / 人事院月報 803

4. 人事院月報 2016年07月号

に対処するため、外部の質の高い人材を中 途採用などによって公務に取り込むことは 可能かなどが主な課題になるであろう。 ③近年においては、非常勤職員が公務遂行 にとって欠くことのできない役割を担って きていると認められ、近時、期間業務職員 制度の導入や勤務条件の改善を逐次進めて きているところであるが、今後とも一層の 定員の弾力的な取扱いの動向を踏まえなが ら、任用状況や処遇について各府省におい て引き続き必要な点検等を行っていくこと が課題となっている。 業務量に見合った人員の確保 行政事務の遂行に当たっては、業務量に見 合った適正な人員が確保されることが基本と なるが、第 1 章において述べたように、定員 削減や新規採用抑制の結果、地方機関を中心 に若年層の在職者数が減少し、人事管理や業 務遂行に様々な影響を与えている実態があ る。実際の各府省の定員削減に当たっては、 農林水産省や国土交通省北海道開発局におい て他の行政機関への部門間配置転換を活用し た例もあるが、原則として、各府省内で定年 退職者や自己都合退職者の後補充を抑制する 方法が採られており、これまでと同様の業務 をより少人数でこなすため、業務の効率化・ 集約化・民間委託のほか、非常勤職員の活用 などの合理化の取組により対処してきている。 行政のスリム化や業務効率化には不断の取 組が必要である一方で、今後は、行政のパ フォーマンスを維持する観点からの業務量と 人員数の在り方についても検討が必要になる と考えられる。 戦後の定員管理の経緯 昭和二四年に制定された行政機関職員 定員法には、戦後直後に膨れ上がった行 政機構の簡素化と職員の縮減を行うた め、同法に定める定員を超える数の職員 は定員の外にあるものとする旨の規定が 置かれ、これを根拠に昭和一一〇年代後半 には労務作業員など大量の人員整理が行 われた。昭和三〇年代に入ると、政府は 同法施行後に各府省の定員不足を補って いた常勤的な非常勤職員を毎年の法改正 により定員化するようになり、昭和三六 年に「定員外職員の常勤化の防止につい て」 ( 昭和三六年二月二八日 ) を閣議決 定して昭和一一一七年に最後の定員化措置を 行うまで続いた。 その後、昭和四四年には、昭和三六年 に廃止された行政機関職員定員法を引き 継いで行政機関ごとの定員を定めていた 各省設置法に代わって現在の総定員法 ( 「行政機関の職員の定員に関する法 律」 ) が制定され、従来の省庁ごとに法 律の別表で定員を定める方法から、政府 全体の総定員の上限のみを法律で定め、 その下で一律的な定員削減計画を実施 し、削減された定員を新規の行政需要に 再配分する方法に改められた。これによ り、高度経済成長期において行政需要が 拡大する中でも定員の増加はほぼみられ なかったほか、現在に至るまで、行政の スリム化を推進するため定員合理化の取 組が進められる一方、活発な社会経済の ニーズに対応するため、その時々の行政 需要の増大に応じて必要な国家公務員の 定員が措置されてきている。直近では 「国の行政機関の機構・ ( 定員管理に関す る方針」 ( 平成一一六年七月一一五日閣議決 定 ) に基づき決定された定員合理化目標 ( 平成一一七年度 5 三 ~ 一年度 ) まで一三次 にわたる定員合理化目標が計画され、実 施されてきている。この間、国の行政機 関の定員は、昭和四七年の沖縄復帰及び 昭和五〇年代前半の新設医科大による増 員分を除き、昭和四一一年度から一貫して 減少してきている。 特に、平成一三年の中央省庁再編以降 は、国の実施機関の独立行政法人化や郵 政事業の公社化 ( 平成一五年四月、平成 一九年一〇月に民営化 ) 、国立大学法人 2016 7 月号人事院月報 28

5. 人事院月報 2016年07月号

: 地方公共団体 ( 地方公務員 ) の年齢別在職状況 ( 一般行政職 ) ( 地方公務員給与実態調査 ) ( 単位 : 人 ) 80 ′ 0 70 ′ 000 60 ′ 000 50 ′ 000 40 ′ 000 30 ′ 80 20 ′ 80 10 ′ 0 平成 26 年 834.129 人 平成 17 年 93 乙 116 人 ー平成 26 年 ー平成 17 年 地方公共団体における在 を 員 職状況の実例と取組 8 0 ′ 5 5 職 務 時 地方公共団体全体の在職状況 短 員 職 2 3 用 任 地方公共団体の一般行政職職員 ( 教育公務 再 0 1 ・ 一 J 員、警察官、臨時職員、特定地方独立行政法 9 人職員及び特定地方独立行政法人臨時職員に 該当する職員以外の常勤の職員のうち、税務 職、医師・歯科医師職、看護・保健職、福祉 異職、消防職、企業職、技能労務職等のいずれ 2 3 者 にも該当しない職員 ) について、総務省の地 職 方公務員給与実態調査に基づき、全団体の平 成一一六年における年齢階層別人員構成を平成 8 3 3 家 国 一七年と比較したのが図絽である。 の 章 平成一七年の時点では若年層 ( 三二・ 第 歳 ) をピークとする山と高齢層 ( 五四・五五 象 23 歳 ) をピークとする二つの山が存在してい 者 職 た。これらの山が、平成一一六年の時点で、前 在 の 者は中堅層 ( 四〇 5 四三歳 ) をピークとする 在 現 8 山にシフトし、後者は定年退職を迎えて山が 月 なくなっている。この間に、全団体の一般行 年 毎政職職員の数は約一〇万三、〇〇〇人減少し 査 ( 平成一七年九三七、一一六人↓平成一一六年 2 3 調 22 態八三四、一一一九人 ) 、平均年齢は〇・三歳 ( 四 与 2 2 給 三・一歳↓四二・八歳 ) 低下している。 員 9 下務 ) 第 1 章で見た平成一一七年の国家公務員 ( 全 1 以公む 組織 ( 行政職俸給表曰 ) ) の在職状況と地方 公共団体における一般行政職職員の平成一一六 第 2 節 2 年の在職状況を比べると、中堅層 ( 四〇 5 四報 院 三歳 ) をピークとする山が生じている点は共 事 通しているが、地方公共団体では高齢層の山人 号 はなくなり、四六 5 五七歳の在職者が大幅に 月 減少している。また、国と同様に一一八 5 三七 歳の職員は大幅に減少しているものの、一一七 歳以下の職員は増加している。全体の平均年 齢も低下しており、地方公共団体においては、 定年退職等により抜けた人員を、新規採用を 中心に補充している実情にあると考えられる。 このように、地方公共団体全体として年齢 別人員構成はおおむね平準化してきている が、この間に職員数は一〇万人超減少してお り、採用者数も従前の水準まで回復している わけではない。これは地方公共団体において 定員の適正化に取り組んできた結果が大き 一方で、住民サービスの充実の要請に応 えるため、各団体では、窓口業務の見直しゃ 庶務業務の集約化など事務・事業の見直し、 の活用等による業務の効率化、民間委 託等の推進や地方独立行政法人制度の活用、 指定管理者制度や—の活用、嘱託職員や 非常勤職員の活用などの取組を進めてきてい る。これらに加え、市町村合併等による行政 組織の統廃合も行われている。 年齢別人員構成に偏りのある地 方公共団体の例 今回、人事院は、平成一一八年一月下旬から

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抱える職員の対応についてセクシュアル・ ハラスメント相談員や各府省の相談窓口等 との連携を進めることも重要である。 さらに、心の不調から病気休暇・病気休 職を取得した職員の職場復帰に関しては、 療養期間中における職員・職場間の連絡体 制の整備など職員への対応方法に関する周 知・啓発を行うことや、復帰後の直属の上 司によるケアを推進することも考えられる。 なお、人事院では後輩職員の育成のため の先輩職員のコミュニケーション技法をメ ンター養成研修で提供するなどコミュニ ケーションカを高めるための研修の提供等 を行っており、各府省人事当局においても そうした育成機会を自ら提供する等の取組 を進めていく必要がある。 諸外国における勤務環境整備の取組 英国、米国、ドイツ及びフランスでは、 ~ 職員が、子育てや介護等、人生の様々な 段階にあっても仕事と家庭を両立しなが ら継続して勤務できるよう、短時間勤務、 フレックスタイム、テレワーク、ジョブ・ シェアリングなど多種多様で柔軟な勤務 形態が導入されている。なお、こうした 柔軟な勤務形態の整備は ( 家庭生活と職 業生活の両立を重視する若い世代の人材 確保や職員のモチベーションの向上にも 組織活力の維持に関する課題 第 1 章において述べたように、本府省を中 心に、在職期間の長期化により若手・中堅職 員の昇進ペースが遅れ、全体として組織の活 力が低下しているのではないかという問題が ある。また、地方機関に象徴的な若年層が極 端に少ない人員構成に対応するため、限られ た定員の中で、従来常勤職員が担っていた定 型的な業務を非常勤職員が代替しているよう 寄与していると言われている。 例えば、英国では、柔軟な勤務形態は 一般的に活用されており、全政府職員の 一一五 % が何らかの制度を活用して短時間 勤務の形態で働いている。また、同じく 一般的に柔軟な勤務形態が活用されてい るドイツでは、管理・幹部職での短時間 勤務も推進されており、課長級以上の短 時間勤務が皆無という省もあるが、管 理・幹部職の二三 % が短時間勤務を行っ ているという積極的な省もある。 一方、このように柔軟な勤務形態が広 く活用される中、ドイツでは、課の一体 感の醸成やコミュニケーションの確保、 公平な職務分担、公正な評価といったこ とが課題となっており、管理職のマネジ メント能力の重要性が一層増している。 6 報 な事例もみられる。こうした状況の下、能力・ 月 院 実績に基づく適材適所の人事配置等を図るこ 事 とにより、能率的で活力ある公務組織を維持人 号 することが必要である。 月 能力・実績に基づく人事管理の推進 在職期間の長期化による昇進の遅れな ど、組織全体の活力が低下しているという 課題に対応していくためには、各府省にお いて、適切な能力実証の下、年齢や経験年 数を過度に重視した人事運用を改め、優秀 な若手職員の抜擢を含めた能力・実績に基 づく人員配置や昇進管理、処遇を行うこと によって、職員の士気を高めることが重要 である。具体的には、個々の職員の能力や 実績を人事評価を通じて的確に把握すると ともに、適材適所の人事を行うことや、職 員を短期間で頻繁に異動させるような人事 運用を見直し、能力開発を図りつつ、職員 の専門性を強化すること、採用年次への配 慮による昇進を排し、優秀者は抜擢する一 方、管理能力が不十分な者については、ラ インの管理職に就けないこと、特に本府省 の課長以上への昇任に当たっては、政策立 案能力に加え、従来以上に組織・マネジメ ントに対する意識や能力を厳格に検証する ことといった取組を引き続き行っていくこ とが必要である。また、職員の昇進管理に おいては、ラインの管理職として処遇して いくルートのほかに、個々の職員の適性に

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平成 28 年公務員白書 三月上旬までにかけて、職員の年齢別人員構 成に特色があり、国と同様の問題意識を有し ている六つの地方公共団体を対象に、一般行 政職職員の在職状況及び年齢別人員構成を適 正化するための取組等について聞き取り調査 を行った。結果の概要は次のとおりである。 年齢別人員構成の状況 各年齢層の割合の変化については、一〇 年前と比べて、新規採用者数の回復に伴い 「三〇歳未満」が増加するとともに、再任 用者数の増加により「六〇歳以上ーが増加 したとする団体が多い。一方、新規採用抑 制等が行われた年齢層である「三〇 5 三九 歳」が減少したとする団体が多い 次に、各団体において、本来必要と考え る職員数よりも実際の職員数が多い年齢層 ( 以下「職員数が多い年齢層」という。 ) 及び本来必要と考える職員数よりも実際の 職員数が少ない年齢層 ( 以下「職員数が少 ない年齢層」という。 ) については、前者 は「五〇 5 五九歳」が最も多く、次いで 「四〇 5 四九歳」が多い。一方、後者は「三 〇 5 三九歳」が最も多く、次いで「三〇歳 未満」が多い。 年齢別人員構成に偏りを生じた原因 前記①で述べた職員数が多い年齢層が生じ た原因としては、「バブル期の採用拡大」な ど過去の一時期における大量採用を挙げた団 体が多い。一方、職員数が少ない年齢層が生 じた原因としては、「過去の採用抑制」や 「職員数の削減」を挙げた団体が多い。 ③職員の年齢別人員構成の偏りによる影響 ア職員数が多い年齢層があることによる 影響 職員数が多い年齢層があることによる 影響については、職員数が多い年齢層及 びその下の年齢層における「昇任・昇格 の遅滞」や、職員数が多い年齢層の「モ チベーションの低下」及び「計画的な育 成が行えない」を挙げた団体が多い。 イ職員数が少ない年齢層があることによ る影響 職員数が少ない年齢層があることによ る影響については、職員数が少ない年齢 層の「計画的な育成が行えない」、「昇 任・昇格候補者や幹部要員の不足ー及び 「業務量の増加」を挙げた団体が多い。 また、中堅層や高齢層から職員数が少な い若手・中堅層への「技能継承ができな い」を挙げた団体が多い。 ④職員の年齢別人員構成の偏りが生じてい ることへの対応 ア職員数が多い年齢層があることへの対応 職員数が多い年齢層があることへの対 応については、「昇任・昇格における厳 格な選抜」や「新たな職を設置して中堅 層・高齢層の職員を配置」のほか、早期 退職の勧奨やその際の退職金割増率の引 上げ、勧奨退職年齢の早期化などの取組 が行われている。 イ職員数が少ない年齢層があることへの 対応 職員数が少ない年齢層があることへの 対応については、「新規採用の拡大」、 「中途採用の拡大」及び「研修の充実」 を挙げた団体が多い。そのほか、「再任 用職員の活用」、「非常勤職員の活用」、 「任期付職員の活用」、「業務の民営化・ 外部委託等の推進」、「昇任・昇格におけ る厳格な選抜」、「抜擢人事の推進」、「給 与制度・人事制度の見直し」などの取組 が行われている。 ⑤再任用職員の活用 再任用職員に期待することについては、 「知識・経験の後輩への継承」、「職場にお ける相談役」及び「一担当者としての着実 な業務遂行」を挙げた団体が多い。そのほ か、「知識・経験をいかした高いパフォー マンス」、「職場内での円滑なコミュニケー ション」及び「仕事への高いモチベーショ 報 ン」が挙げられた。 一方、再任用職員の活用に際して困難を院 事 人 感じていることについては、「モチベー 5 2

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理や業務遂行にどのような影響を与えてい るのかについて、今回、八省の一一地方機 関で勤務する職員の人事管理を担当する部 局 ( 職種等の別による人事グループごとに 一七部局 ) から聞き取りを行った。その結 果を踏まえ、これらの影響について整理す ると次のとおりである。 ア人事管理に与える影響 の若年層の能力開発の不足と相談相手 の不在等 若年層については、係員の人数が減 少する中で、少ない係員に庶務的事務 が集中する上、各課に配置させる必要 から様々な仕事を広く浅く経験させる ことになり、特定の分野で専門的に じっくりと現場経験を積ませるなどの 必要な能力開発が難しくなってきてい る。 さらに、定員削減により係長の候補 となる係員が不足しているため、経験 年数の短い係員に係長心得を発令して 係長級の仕事を行わせる府省もあり、 こうした点でも係員の負荷が増してい る状況がみられる。 また、以前と比べ、配属された部署 で周囲に同年代の係員が少なくなり、 かっ、比較的年齢の近い中堅層の先輩 が多忙なこともあり、相談相手が年齢 の離れた高齢層の役職者になる場合が 多いが、若年層にとっては世代間 ギャップや年長者に対する遠慮もあっ て円滑なコミュニケーションが図れ ず、一人で悩みを抱え、離職や心の健 康の不調の問題につながる場合もみら れる。世代間ギャップ以前の問題とし て、職場内外での仕事を離れたコミュ ニケーションの機会が昔と比べて減少 し、人間関係が希薄になっていること が問題であるとの指摘もある。 他方、最近では、昔のように上司が 部下に対しプレッシャーがかかるよう な厳しい指導を行うとパワー ハラス メントの問題が発生することが懸念さ れるため、部下への指導が昔と比べて 優しくなっているとともに、上司が仕 事を部下に任せないで自分で処理して しまう場合も増えており、若い職員の 間に「指一小待ち」が増加しているとの 指摘もある。 国中堅層の業務負担の増加と能力開発 の不足 中堅層の職員には、若年層の人数が 減少することにより係長に昇任しても 部下のいない者 ( 以下「一人係長」と いう。 ) が増加している。定員削減の 下で従来と同様の業務を遂行するた め、実施業務を中心に民間事業者や非 常勤職員を活用することとなるが、そ 2 れらの者には任せられない行政機関と報 して行うべき外部との調整業務等の , っ院 ちこれまでは係員が行ってきた仕事も人 号 中堅層がカバーしなければならないな 月 ど、業務負担が増していると言われて また、こうした勤務環境の変化に伴 、中堅層の職員が多忙となって、当 局として本来必要と考えている業務に 係る能力開発が十分にできていないと いう問題が生じている。とりわけ、若 年層の人数が減少して一人係長が増加 した結果、中堅層が後輩の育成や指導、 支援といった将来の管理職要員として 不可欠なマネジメント業務の経験を職 場で積む機会が減少していることにつ いて中・長期的な業務管理の上から懸 念する声が強い。 さらに、技術系の職員については、 現場業務の民間事業者への委託 ( アウ トソーシング ) が進んだ結果、若年層 から中堅層にかけて現場での多様な勤 務経験を積む機会が減少しているた め、現場経験を通じてでないと身に付 かない技能・ノウハウが継承されにく くなっており、技術者としての技術力 や応用力が従来と比べ低下するのでは ないかとの懸念もある。

9. 人事院月報 2016年07月号

書 白 員 務 公 〉 8 2 成 れているが、現状では、希望に反して短時 間勤務となる再任用職員が一定割合存在す るほか、再任用職員の職務が補完的である といった状況となっている。しかしながら、 特に地方機関では若年層や組織によっては 中堅層までも極端に少ない人員構成となっ ている状況において、今後二〇年間にわ たって多くの職員が定年に達することにな る。そのため、高齢層が過去から蓄積して きた行政の現場における技能やノウハウの 散逸が懸念されており、行政の継続性の観 点から中堅層や若年層への継承が課題と なっている。こうした中で、国においても 民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を 実現することを通じて、再任用職員の能力 及び経験を職務執行の中で本格的に活用し ていくことが不可欠である。再任用職員に とっても、現在のような補完的な再任用の 運用では、公務能率や職員の士気の低下、 生活に必要な収入が得られないなどの問題 が深刻化するおそれがある。 また、平成三八年度にかけて年金支給開 始年齢が段階的に六五歳に引き上げられる ことにより、今後、各府省においては、再 任用希望者が増加していくことが見込まれ ること等を考慮し、それぞれの定員事情や 人員構成の特性等を踏まえた計画的な人事 管理に努めるとともに、当面、再任用職員 の能力及び経験を有効に活用できる配置や 組織内での適切な受入体制の整備等を進め る必要がある。これらの取組に当たっては、 民間企業と異なり国の場合は厳格な定員管 理があるため困難な面もあるが、前記のよ うな問題に対応する必要性が高まっている ことから、フルタイム中心の勤務の実現に 向けた一層の工夫が求められる。 将来の行政を担う新規採用者について 中・長期的に人員構成を平準化するために 必要な数を毎年確保しつつ、人員構成上の 山を形成している高齢層職員が今後大量に フルタイム勤務を希望した場合の過渡的な 定員増に対応できるよう、例えば、向こう 数年間過渡的に必要となる定員数を算出し て前倒しで措置し、毎年必要数に限り使用 を認めるとともに、不要となった際には回 収するような定員上の工夫について検討が 必要である。 人事院としては、引き続き公務内外にお ける高齢期雇用の実情等の把握に努めつ つ、各府省において再任用職員の能力及び 経験の一層の活用が図られるよう取り組む とともに、意見の申出を踏まえ、雇用と年 金の接続の推進のため、関連する制度を含 め、適切な措置がとられるよう、引き続き 必要な対応を行っていくこととしたい。 再任用職員の本格的活用に向けた取組 各府省における再任用職員としての採用 については、定員上の制約から希望に反し て短時間勤務となるものを除けば職員の希 望に応じて行うことが基本であり、また、 その職務は、定年時における役職や級格付 に応じて係長級や係員に機械的に決定され る場合がほとんどとされる。現在、再任用 に関しては、定年時点でのマインドの転換 やモチベーションの維持、経験や能力と仕 事のマッチング、職場での人間関係等が各 府省において課題となっている。このため、 今後、再任用を本格的に活用するためには、 各府省が再任用を行うに際し、再任用後の 役割や処遇を研修の機会等を通じて人事担 当部局から情報提供し、意識の切替えを促 していくことや、再任用希望者一人一人の 能力や適性をしつかりチェックした上で任 用を行うことが大切である。人事院として も、各府省がこうした研修を円滑に実施で きるようどのような支援が可能か検討して いきたい。 あわせて、再任用を希望する職員に対し ては、再任用後に期待される役割や心構え 等について、定年前の段階から十分に理解 させておくとともに、再任用職員を受け入 れる部署においても、再任用職員の能力及 び経験の本格的活用に向けて管理職員等の 意識改革に取り組むことなどにより、再任 用職員の意欲の向上を図ることが重要であ る。また、各府省において再任用後の勤務 実績に応じてより上位の職務の級に格付す報 月 院 ること等も考えられる。 なお、再任用職員を本格的に活用するた人 9 3

10. 人事院月報 2016年07月号

平成一七年に三〇 5 三三歳と四〇 5 四五歳 をピークとしていた人員構成上の二つの山 が、平成一一七年には四〇 5 四三歳と五〇 5 五 三歳をピークとする二つの山にシフトしてい る。この間に国の全組織に勤務する行政職俸 給表曰適用職員の平均年齢は三・二歳 ( 四 〇・三歳↓四三・五歳 ) 上昇している。 また、全組織における行政職俸給表曰の在 職者数は、定員削減 ( 合理化 ) 計画 ( 第一一 次 ( 平成一七年度 5 二一年度 ) ・第一二次 ( 平成一三年度 5 一一六年度 ) ) 、業務見直し及 び定員管理により五年間で五 % 以上の定員の 純減を行うとした定員純減計画 ( 平成一八年 度 5 一三年度 ) 、平成一一一年末の社会保険庁 ( 約一万七、〇〇〇人 ) の廃止並びに新規採 用抑制 ( 平成一一三年度 5 一一五年度 ) により、 この一〇年間で一一万八、〇〇〇人減少してい る ( 平成一七年一六九、六九七人↓平成一一七 年一四一、六九七人 ) 。 表 俸 職 政 行 省 本府省 府 本 本府省における行政職俸給表曰適用職員の 職 平成一一七年の年齢階層別の在職者数を平成一 在 七年と比較したのが図 2 である。 平成一七年に三二・三三歳がピークであっ 年 た人員構成上の山が平成一一七年には四〇・四 一歳をピークとする緩やかな山にシフトして いる。この間、再就職規制の強化や年金支給 ( 国家公務員給与等実態調査 ) ( 単位 : 人 ) 35 91 人 32235 人 平成 27 年 平成 17 年 2 ′ 400 1 00 1200 600 ー平成 27 年 ー平成 1 7 年 52 53 58 60 59 以上 ( 歳 ) 54 56 55 57 38 40 42 44 46 48 50 39 41 43 47 51 0 1 ・ 8 20 1 9 以下 21 6 0 報 開始年齢の引上げに伴う在職期間の長期化等 月 の影響により、三八・三九歳以上の在職者数院 が年齢階層ごとに一〇〇 5 六〇〇人程度増加人 号 している。一方、一九歳から三六・三七歳ま 月 での在職者数は三〇 5 三三歳辺りで年齢階層 ごとに三〇〇 5 四五〇人程度減少しているも のの、全体としてみるとそれほど減少はして いない。こうした年齢別人員構成の変化によ り、本府省で勤務する職員の平均年齢は一・ 六歳 ( 三九・一歳↓四〇・七歳 ) 上昇してい る。 多くの府省は地方機関を有していることか ら、これまで定員合理化の目標数を各機関の 定員規模に応じて配分する等により地方機関 に傾斜的に配分してきている。また、各府省 は、地方機関で採用された職員について人材 育成上のキャリアパスの一環として本府省へ の人事異動を行うほか、本府省の職員が不足 した場合に地方機関から必要に応じて優秀な 職員を異動させることによって必要な人材を 確保してきている状況もある。 こうした事情から、在職期間の長期化によ り高齢層の職員数が増加する中でも、本府省 における若年層職員の在職者数の減少は比較 的緩やかなものとなっており、行政職俸給表 曰の在職者の総数でみると本府省の職員は毎 年数百人単位で増加している実態がある ( 平 成一七年三一「二三五人↓平成一一七年三五、 一九一人 ) 。