000 - みる会図書館


検索対象: 図書館雑誌 2014年07月号
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1. 図書館雑誌 2014年07月号

4 図書館雑誌 Vol. 108. No. 7 の方から「各分野で本が少ない」という意見が挙 がっていたこと , 地域の知のインフラとして図書 館が役割を果たしていくためには , 本の充実が優 先課題であると考え , 蔵書の充実をプロジェクト テーマに決めました。具体的には , 支援金で本を 購入し , 図書館へ寄贈するという流れで計画しま 今回 , 「 READYFOR? 」という国内最大規模の クラウドファンディングを運営する会社を利用さ せてもらいましたが , 無事にプロジェクトの企画 の後も企画の持ち込みはどんどん増えており , 夏 書が審査を通り , いよいよ支援金の公募が始まり には映画監督を迎えての映画上映会や島外の方が ました。 90 日という長い公募期間の初日は , 目標 企画した焙煎コーヒーを図書館で提供するイベン 金額である 18 万円を達成できるのか本当に不安で トが決定しています。 した。小さな離島の小さな取り組みに , 応援が得 果たしてこのようにバラエティに富んだ企画を られるのか自信がありませんでした。 1 人目の支 図書館だけで実現できたでしようか。図書館だけ 援が得られた時は , 感謝と感動と共に遠く離れた では発想に限りがあります。これからも , たくさ 町の図書館を応援してくださる人がいることに不 んのアイデアをもち , 何かやってみたいと考えて 思議な感覚を覚えました。クラウドファンディン いる島民や全国の皆様と魅力的な図書館活動を展 グとは , 直接的な関わりがなくとも , その地域や 開していければと思います。 プロジェクトを応援したいと共感してくださった クラウドファンディングの募集期間が終了して 方々と , サイトを通して出会い・つながることが 5 か月程経ちましたが , この取り組みが新聞で取 できるシステムなのだと初めて理解しました。資 り上げられたこともあり , 寄贈や寄付の問い合わ 金を得る手法としてだけでなく , 全国の方々に海 せが多数ありました。 2013 年度の寄贈は 4 , 000 冊も 士の図書館づくりの仲間に加わってもらった気が あり , 蔵書数も 24 , 000 冊にまで達しました。しか して , 見えない部分でも大きな支援をいただいた し , 蔵書の充実を寄贈ばかりに頼ることはできま 気がしました。 せん。これからは , 財政状況の厳しい町予算を頼 皆様の協力のおかげで目標額を上回る 124 万 5 ( Ⅱ ) りにするのではなく , 予算確保のため図書館が積 円のご支援をいただき , プロジェクトは無事成立 極的に動いていく必要があると思います。図書館 しました。支援者は島内・島根県内の方 , 図書館 に指定管理者制度が導入される現状にあって , 直 関係者の方 , 海士町に来たことがある方とさまざ 営図書館も民間の意識を持ち , 図書館経営を行う までした。 必要があると感じます。 今後は , 集まった支援金で本を購入し , 海士町 今回のクラウドファンディングへのチャレンジ 中央図書館へ本を寄贈する活動になりますが , は , ひらかれた図書館経営へと向かうきっかけを せつかくの機会なのでプロジェクトメンバーと島 与えてくれました。 図書館には資料・情報提供にとどまらす , 多面 民で , どんな本が欲しいか選書会を開催しようと 考えています。 的な役割が潜んでおり , 島に足りないもので , 図 開館当初からの「島内外のいろいろな人と一緒 書館が補っていけるものは多くあると感じていま に楽しい図書館をつくっていきたい」「図書館の可 す。文化・町づくりの活動が生まれる場 , 憩いと 能性を広げたい」という想いが , いま実現しつつ 潤いの場 , 島外からのお客様のおもてなしの場等 さらに役割の幅を広げ , 町の元気アップと魅力 あります。 今年 5 月には , プロジェクトメンバーが中心と アップにつながる図書館をみなさまと共につくっ なり図書館でピアノの弾き語りコンサートが開催 ていきたいと思います。 されました。住民と図書館 , 旅行者も当日スタッ ( いそたになおこ : 海士町中央図書館 ) CNDC 9 : 0162173 BSH : 1. 海士町中央図書館 2. 図書館経営 ] フに加わっての大きなイベントの実施は初めての 試みでしたが , 大盛況のうちに終了しました。そ

2. 図書館雑誌 2014年07月号

図書館雑誌 2014.7. 特集☆図書館とファンドレイジング 島根県海士町中央図書館への クラウドファンディングによる図書購入支援 磯谷奈緒子 ングの提案をしてみました。海士町中央図書館で 海士町は , 島根県の沖合 60km に位置する隠岐 4 は , 開館時より利用者や島民に対し「図書館へ企 島のうち 2 番目に小さな人口約 2 , 300 名の島です。 島の再生を目指し , 産業振興・交流促進・人づく 画をどんどん持ち込んでください」と発信してき ました。それにより , 有志のメンバーと図書館が りに取り組んで 10 年近くが経ち , 少しずつ成果が 表れ , 全国から注目を浴びるまでになりました。 一緒になり , 読書会や映画の上映会 , 図書館づく りを考えるワークショップなど楽しみながら活動 図書館の取り組みは , 海士再生への分岐点と なった「人づくり元年」の 2007 年にスタートしま を重ねるようになり , ついに図書館を拠点に文化 活動を推進するグループが誕生した時期でもあり した。当初は図書館もなく , 島民は本と縁遠い生 活をしているという , まさにゼロからのスタート ました。 今回の図書館プロジェクト代表を務めてくれた でした。図書スポットを地域に点在させ , 島をま るごと図書館にする「島まるごと図書館構想」を 安達さんは , これまでイベントに関わる中で , い ろんな世代の方と本を通して交流する楽しさを実 掲げ , 学校図書館への司書配置 , 地域分館の開設 , 感させてもらったので , 大好きな図書館のために 中央公民館図書室のリニューアル等を進めてきま 何かできることをしたいという想いで引き受けて した。 2010 年には図書館事業の実績が認められ , 待望の図書館が開館しました。しかし , 開館時の くださいました。そんな嬉しい言葉を聞いて , 図 書館の必要性を一番理解してくれているのは利用 蔵書は 8 , 000 冊で専門書等はほとんどなく , 島民 1 してくださる人々なのだと改めて思いました。図 人ひとりのニーズに応えることが難しい状況でし 書館はその地域に暮らす住民のためにあるのです た。財政難のため予算獲得が難しく , 蔵書の充実 が進まないのが開館以来の課題でした。 から , 図書館運営を行政にすべて委ねるのではな く , 利用者・図書館・行政が一緒になって人の集 クラウドファンディングに取り組むきっかけは , うあたたかい図書館を作っていけばいいのだと思 島外から図書館の見学に来られた方からの情報提 供でした。すぐに面白そうだと思い図書館が取り いました。今回のプロジェクトは , 図書環境の充 実に加え , 住民と図書館の協働による図書館づく 組むことを検討しましたが , 行政がクラウドファ りの第一歩ととらえ , しつかり取り組みたいと思 ンディングに取り組んだ事例はないため , 今回は 見送ることにしました。しかし , 何とか別のかた いました。 プロジェクトの企画書作成にあたっては , 安達 ちで取り組めないかと考え , 図書館活動を支えて さんだけでなく , 図書館の全体像を把握している くれていた有志のメンバーにクラウドファンディ 図書館側からも意見を出し完成させました。クラ ウドファンディングはプロジェクトに社会的意義 があるか , 想いに共感してもらえるかがポイント であると知り , どのような課題が図書館にあるか , また支援金でどんなことを実行したいかを協議し ました。この段階で気を付けたのは , 図書館が考 えている課題だけでなく , 利用者から挙がってい る図書館への要望 , 図書館サポーターが感じる課 題を出し合うということでした。その結果 , 島民 1

3. 図書館雑誌 2014年07月号

図書館雑誌 vol. 108 , N 。 .7 475 ページの雑誌スポンサー制度のリンクからご確認 のかというと , おそらく市のホームページであろ いただきたい。 う。パソコンやタブレットをはじめとした IT 機器 本制度の導入からまだ 2 年目であるが , 実績は が生活に浸透してきたとはいえ , 雑誌などの紙媒 体のメディアからさまざまな情報を得る市民も多 次のとおり。同じ企業等が複数の館でのスポン サーとなっているものがあるため , 数値は本市の い。雑誌スポンサー制度の強みとは , それぞれの 図書館 3 館の延べ数である。なお , 2013 年度は主 雑誌の特徴や読者層を見極め , 各スポンサーの顧 に市立図書館 , 2014 年度は 3 館で実施している。 客層にターゲットを絞った効果的な広告を " お値 雑誌スポンサー企業数 ( 企業数 . タイトル数 ) 打ち価格 " で打っことができるといったところに 2013 年度 2014 年度 ある。雑誌スポンサーの行うイベントなどの際に 乃く , スポンサータイトルスポンサータイトル 数 数 数 その宣伝のための関連書の特別展示を行うことが 市内の企業 5 9 できれば , 図書館は所蔵資料のアピールと地域情 市内に支店や営 3 12 7 業所のある企業 報の発信 , スポンサー企業は集客力アップが望め 同業者組合 2 2 2 るならば , 両者にとって win = win の関係を築く ( 商店街など ) 学校法人・塾等 3 8 4 ことができるに違いない。しかし , 資料費の一部 合計 13 30 22 44 を負担していることを理由に , 公共機関がどれだ ( 各年度 4 月 1 日現在 ) け民間の営利活動に踏み込めるのか議論の余地が 2013 年度は定めた目標を上回る雑誌スポンサー を獲得できた。 2014 年度当初においては , 3 館で あるだろう。 ◆まとめに 実施を開始したこともあり , スポンサーは 9 社増 そもそもファンドレイジングとは資金調達のた えているが , 市立図書館において 1 社 ( 1 誌 ) 辞 めに行う活動を指すようだ。アメリカに多くある 退があった。 ように , 積極的なロビー活動により寄付を集めて ◆制度の運用から見えてきたもの 各所に赴いた折に , 「チラシは配布できないか」 基金を設立したり , シンガポールのように , 個人 や「広告費の名目で経費に計上できるのだろう の寄付によりいくつかの公共図書館が設立された か」 , 「広告として効果があるのか」といった費用 りしているような事例もあるが , 日本にはあまり 対効果を求める声などが多く聞かれた。 なじまない形式と思われる。日本の公共図書館に おいて , 資金を集めたとしても , 一般会計に繰り チラシに関しては , 想定外の意見であり , 要綱 入れなければならない。その全額を図書購入費と で定めた範囲を超えた広告となることから今後の して予算化するには , さまざまな調整が必要とな 検討課題とした。費用対効果に関しては , 実際に ることだろう。 それぞれの雑誌の新刊が , 1 日に何回 , 何人の利 用者が手にしているのかは統計がないため , 1 日 図書館の資金調達の手段とするだけでは , 雑誌 スポンサー制度は形骸化して古看板のようになる 当たりのおよその平均来館者数をその目安として ことだろう。地域の情報発信拠点としての図書館 , 回答した。 地域に根ざす企業を PR する手段として相互に協 広告を掲出するにあたっては , その大きさなど を事前に雑誌スポンサーに連絡し , 必要枚数を図 力できる関係を築くことで , この制度の新しい意 義が生まれるてくるのだろう。 書館に送付することとした。また , 紙の劣化を避 けるため , ラミネート処理をして掲出した。 前述のとおり , 特別な申し出のない限り自動継 参考資料 「図書館ファンドレイジングの動向」福田都代「図書館研究シ 続としたが , 広告の貼り替えができることなどの リーズ 40 ー米国の図書館事情 2 開 7 ー 2 開 6 年度国立国会 案内も併せて年度末に通知し , この制度をより有 図書館調査報告書」 288 年 p. 50 ー 51 効に活用してもらうための工夫も行った。 「アメリカの図書館におけるファンドレイジング」福田都代「図 書館界』 56 ⑤ 2005 年 P274 ー 292 ホームページのバナー広告などに比べ , 雑誌ス 「 LRGJ 第 3 号 2013 年春号 ポンサー制度は安価に広告を出すことができる。 fLRGJ 第 4 号 2013 年夏号 実際のところ , 雑誌スポンサーとなり市のホーム ( ささきよしひろ : 相模原市立図書館 ) CNDC 9 : 0162137 BSH : 1. 相模原市立図書館 2. 雑誌 ] ページのバナー広告から手を引いたケースもある ようだ。どちらの広告が多くの市民の目に触れる 数炻

4. 図書館雑誌 2014年07月号

474 図書館雑誌 2014.7. 特集☆図書館とファンドレイジング 相模原市の図書館における雑誌スポンサー制度の取り組み 佐々木義弘 ◆はじめに 協同組合と雑誌購入契約を締結していることから , 相模原市は 2010 年に神奈川県では 3 番目の政令 雑誌スポンサーは雑誌の購読料を同組合に支払い , 指定都市へ移行した。中央区には 1974 年開館の相 現品は直接 , 図書館に届けられる。決まった曜日 模原市立図書館 ( 以下「市立図書館」とする。 ) , 南区 に購入雑誌とともに納品され , 装備からデータ入 には 1990 年開館の相模大野図書館 , 緑区には 2001 カまで一元的に処理することを可能にした。 年に開館した橋本図書館の 3 館が設置されている。 なお , 対象は個人ではなく企業・法人・同業者 長引く不況の煽りで , 休刊となる雑誌が増える 組合・学校などの団体とした。期間は 4 月から翌 一方で , 単価の上昇などもあり , 減少分を補うの 年 3 月までの 1 年間とし , 特に申し出の無い限り もままならない状況にあった。これに歯止めをか 自動継続することとした。 けるため , 雑誌スポンサー制度の導入に向け取り 雑誌スポンサーとなるには , 一定の手続きを要 組むこととなった。 する。希望する企業等は , まず広告案とともに申 ◆制度の概要 込書を図書館に提出し , その後 , 要綱に反する事 雑誌スポンサー制度の導入にあたり , さまざま 柄がないかなど , 一定の審査を経て , 雑誌スポン な情報収集を行った。当時すでに実施していた神 サーとして決定する。雑誌スポンサーと覚書や契 奈川県内の図書館へ視察に赴いた。この結果と本 約書を取り交わす図書館もあるようだが , 当館で 市では窓口などの多くの業務がすでに民間業者に はそのような手続きは行っていない。 委託されていることなどを踏まえて検討し , 次の 要綱は 2013 年 2 月 15 日から施行され , 雑誌スポ とおりとした。 ンサーの募集を行い , 同年 4 月から広告の掲出に 至っている。当初は , 市立図書館のみで実施し , その実績を踏まえて 2014 年 4 月から , 相模大野図 書館 , 橋本図書館でも本制度の導入を行っている。 ◆雑誌スポンサーの獲得と実績 = 第物物市書店協物第合豸 2013 年 4 月からの実施にあたり , 目標を当時の 購入タイトル数のおよそ 10 % である 20 誌と定め , みんなの図書館 本制度の宣伝のため , さまざまな活動を行った。 まずは , 新刊雑誌カバーの表紙側 , 裏表紙側と まず , 相模原市商工会議所を訪れ , 制度の説明 雑誌架に掲出することとしたことである。本市で を行った。この結果 , いち早く会員企業に速報を は雑誌は自館装備している。雑誌本体に広告を貼 流していただくことができ , スポンサー獲得のよ 付するといったことは業務委託業者への仕様の変 いきっかけとなった。また , 同所の会議や図書館 更となってしまう。新刊カバーと書架への貼付で の地元の商店街組合 , 相模原市を活動拠点とする あれば , 職員が対応すればよく , スポンサーから スポーッチームの会合 , 相模原市内の大学図書館 の広告の貼り替えの依頼がない限り , 一度掲出す との相互協力連絡会など , あらゆる機会をとらえ れば手間がかかることはない。なお , 「相模原市立 て宣伝活動を積極的に行った。 図書館雑誌スポンサー制度実施要綱」 ( 以下「要綱」 これらと並行して , 本市の広報紙や図書館ホー とする。 ) では , 広告の貼り替えは年間 2 回までと ムページをとおして募集を行った。報道機関への 情報提供も行い新聞やラジオでも取り上げられる 雑誌の納入については , 本市では相模原市書店 に至った。詳細は「相模原市の図書館」ホーム

5. 図書館雑誌 2014年07月号

イ / 2 図書館雑誌 2014.7. 特集☆図書館とファンドレイジング 佐賀県立図書館における「ふるさと納税」等の取り組み 吉岡克己 1 . はじめに 2009 年度 284 , 955 円 , 2010 年度 596 , 509 円 , 2011 年度 324 , 375 円 , 2012 年度 1 , 548 , 000 円 , 2013 年度 4 , 512 , 000 円。 これは , ふるさと納税制度により , 佐賀県立図 書館の資料購入費等に充当された金額である。 厳しい財政事情の中 , どこの図書館でも予算確 保に苦労されていると思う。そういった中 , ふる さと納税により本来の予算と別に資料購入費等が 配分されるのは , 大変ありがたい。 そこで , 図書館ではなく佐賀県として , ふるさ と納税にどう取り組んできたかを中心に説明した 2 . ふるさと納税制度の始まり 佐賀県は , ふるさと納税制度の導入が議論され ていた 2007 年 7 月に , 古川康佐賀県知事が宮城県 知事ら 4 名の知事とともに , 現在の制度に近い 「ふるさと納税スキーム」を提案するなど , その導 入に力を入れていた。 そのため , ふるさと納税制度導入決定後は , そ の正式スタート前から , 寄附が見込まれる佐賀県 出身者の方に , 制度スタート後に寄附をお願いす る文書を送付するなど , 導入前から知事を先頭に 積極的に取り組んできた。 3 . 使い道の指定 ふるさと納税は , その名が示すとおり , 「生まれ 育った故郷に納税する制度」であるが , 佐賀県で は , それに加え「税金の使い道を納税者が指定で きる制度」ということも訴えてきた。 「取られた税金が何に使われたか , よくわからな い」といく声をよく聞く。そこで佐賀県では , ふ るさと納税のチラシに使い道を示すことによって , 自分がふるさと納税をした税金を何に使ってほし いかという意見を言えるようにした。 ただ , 漠然と使い道を指定できますといっても , ピンとこないので , 使い道の例示を「お品書き」 として示すことにした。 最初に作られたチラシには ①名勝九年庵の保全 ②子供たちへの本の贈りもの ③ョット世界選手権大会ⅲ唐津 ④県民協働の地域拠点支援 ⑤高校生のスポーツ活動支援など ⑥知事おまかせコースが示されている。 このうち , 2 番目が図書館関係だが , 「県内図書 館に児童図書の特設コーナーを作ります。」 と具体的に書いてある。 このお品書きを決めるに当たっては , 寄附して いただく方の思いを , どのような形にできるかを , 県庁内各課から意見聴取したうえで , ふるさと納 税担当課が決定している。この時に , 図書館では 「単に本の購入費に充てる」という提案でなく , 「児童書の購入」と「特設コーナーを作る」と寄附 者に受け入れやすい具体的な提案をしており , の具体性が評価されて採択されている。 寄附者から見ても , 単に「ふるさと佐賀の振興 に役立てます。」と書いてあるよりも , 具体的に書 いたあったほうが , 「役立てたい」と思えると思 つ。 4 . 指定された使い道は約束厳守 佐賀県では , ふるさと納税による使い道指定を , 地方自治法で規定する「指定寄附」という取り扱 いにはしていないものの , 予算編成時に寄附者の 思いに従うこととしている。 例えば , 高校の同窓会で校長がふるさと納税を 呼び掛け , 集まった寄附金は , 全額その高校の運

6. 図書館雑誌 2014年07月号

イ 70 図書館雑誌 2014.7. 米国では専門職として図書館で職務にあたるた めには図書館情報学の修士号を取得することが必 須であり , 大学図書館だけでなく公共図書館・専 門図書館でも図書館司書が高い専門性をもって活 躍している。世界最大の図書館協会と言われる米 国図書館協会 (American Library Association) が認 定する図書館情報大学院では , 633 ) の修士課程を 用意して図書館の水準向上を図っている。さらに 大学図書館では , 図書館情報学の修士あるいは博 士の学位と , 各自の専門分野に関する学位 ( 通常 修士以上 ) を持っ図書館司書が , 論文執筆を含めた 教育研究支援を行うケースも数多く見られる。 また図書館司書は自らの継続的な研鑽のため , 専門となる学問主題や提供サービスの種類ごとに 専門団体を立ち上げて研究会を開催する , あるい は専門誌を発行するなどの機会を設けている。そ れらへの参加機会を通じて自らの高い専門性を積 極的に発信し , 図書館利用者が信頼して高度な質 問や要求を寄せるという好循環を生み出している。 専門性の高い信頼に足る図書館司書に支えられ て学習・研究を行った卒業生は , 母校への帰属意 識と図書館への寄付が社会貢献へつながることへ の実感から , 快く寄付に応じるのである。 また , 20 世紀初頭から米国の図書館には図書館 支援を目的とした団体 , 「友の会 (Friends) 」が設 けられるようになった。友の会の多くは会員制で あり , 会員は会費を納めて図書館の支援活動に関 わる。支援形態は資料寄贈やボランティア活動な ど多様であるが , ファンドレイジングは友の会の 活動の中核となっている。大学では 1925 年にハー バード大学およびニューヨーク大学が友の会を導 入したのを皮切りに , 多くの大学で設立された。 会員は一方で , 図書館の利用権を獲得する , あ るいはニューズレターが届くなどの恩恵を受ける。 これにより図書館に対する帰属意識は高まり , 会 員の「図書館へ協力している」という誇りは大学 図書館の強い支えとなっている。 ②「ファンドレイジングの専門家」の配置 図書館長・図書館司書にとって寄付金等の外部 資金を獲得することは重要な業務の一つとなって いる。特に図書館長にとっては最も重要な業務で あると認識されており , その実績によって図書館 長の評価は大きく左右される。教育機関である大 学図書館を統括するため , 大学図書館長には学問 的な資質が問われ , 実際多くの大学図書館長が博 士号を保持しているが , それに加えてファンドレ イジングの素養と実力も要求される。 lthaka S + R が 2014 年 3 月に発表した 4 年制大学 の図書館長対象の意識調査 4 ) では , 図書館長が資 金調達に充てる時間は学位レベルが高いほど多く , 博士授与大学では平均 16 % の時間が費やされてい る。図書館長の 30 % ー 50 % の時間が資金調達に費 やされるという資料も見られ 5 ) , 図書館長のファ ンドレイジングにおける役割の重要性がうかがえ る。 また大学等の教育機関には利害関係者との良好 な関係を構築するアドバンスメント (Advancement) と呼ばれる専門業務領域がある。業務を担うアド バンスメント・プロフェッショナルは寄付者 , 卒 業生・在学生およびその父母 , 教員 , 地域の人々 等と長期的・安定的な関係を築き , 共に教育機関 の発展を目指す。卒業生との結びつきを強化し , プランドイメージを高め , ファンドレイジングに も取り組む。 ファンドレイジングは寄付目標額や期間 , ある いは「卒業生の寄付参加率を 50 % にする」という ような明確な数値目標を定め , その達成度はアド バンスメント・プロフェッショナルの実績として 評価される。このため大学には常に工夫を重ねな がら目標達成に向かう風土がある。大学図書館の 場合 , 図書館独自にアドバンスメントの機能を有 することもあるが , 洗練されたアドバンスメン ト・プロフェッショナルを持っ母体の大学と連携 しながら資金の獲得に取り組むことも可能である。 大学のイベント等と連携して大学図書館がファ ンドレイジングに取り組む事例もよく見られる。 例えばフットボールの試合のチケット料金に図書 館への寄付額が上乗せされる , 収益金の一部を図 書館に寄贈する , などである。 2010 年 10 月にカン ザス大学図書館が発表したプログラム「 Gridiron Gifts Football Challenge 」は , 同大学のフットボー ルチームが得点するごとに , プログラム参加者が 自ら設定した金額を図書館に寄付するというユ ークなものであった。 このようなイベント型の寄付では , 試合途中で 観客に当日の寄付金額や図書館長からの感謝の言 葉が伝えられ , 観客から拍手が起こる光景がよく 見られる。観客にはフットボール自体を楽しむの に加えて社会に貢献しているという心理的作用が 働き , 寄付に対する相乗効果がもたらされる。

7. 図書館雑誌 2014年07月号

図書館雑誌 voI.108, N 。 .7 イ 69 ロロロ 特集☆図書館とファンドレイジング 米国における図書館のファンドレイジング ー大学図書館と寄付ー 上原優子 わが国の寄付総額の半分以上が法人からのもので 1 . はじめに あるのに対し , 米国では圧倒的に個人寄付が多い 米国の図書館では個人寄付など外部からのファ ンドレイジングによる財源が非常に重要なものと のが特徴である ( 図表 1 参照 ) 。 なっている。 1970 年前後から米国の大学や大学図 米国において個人寄付が活発に行われる理由に 書館では , 財政難のため外部からのファンドレイ は , プロテスタントの教義が根付き , フィランソ ジングに乗り出すものが増加した。財政状況が一 ロピー ( 慈善・博愛 ) に基づく行動規範によって寄 層悪化した 1980 年代にその数は急増し , 一般の公 付文化が熟成していること , 税制面の優遇措置が 共図書館も外部資金獲得に積極的に乗り出すよう あることなどがしばしば採り上げられる。 になった。公共図書館に先駆けてファンドレイジ 大学図書館がファンドレイジングに取り組む場 ングに取り組んだ大学図書館は , さまざまな資金 合 , この多額の個人寄付を大学図書館へと向ける 源から資金獲得するノウハウを蓄積している。 有効な戦略を立てることが不可欠となる。本稿で は , 米国の大学図書館が寄付の対象として魅力的 米国でファンドレイジングを行う場合 , 寄付総 額の約 8 割を占める個人寄付をどのように取り込 なものであるために , どのような取り組みを行っ ているかについて , ①大学図書館の「ファン」の むかが重要になる。本稿の目的は , 米国の大学図 輩出 , ②「ファンドレイジングの専門家」の配置 , 書館のファンドレイジングのアプローチが , わが 国における寄付文化の醸成に向けて示唆するもの , の 2 点から論じたい。 ①大学図書館の「ファン」の輩出 図書館のファンドレイジングに有益な視座を , 個 継続的に寄付者から支援を得るためには , 自ら 人寄付を中心としてまとめることにある。 2 . 米国における個人寄付と大学図書館 の寄付が有効に活用され , 社会貢献に繋がってい ると寄付者が実感することが重要である。多くの 米国の寄付はわが国に比して規模が大きく , 個 選択肢がある中で , 大学図書館が自らの資産を最 人寄付が重要な要素を占める。わが国の寄付総額 も有効に活用してもらえる場であると寄付者に認 は近年 1 兆円規模へと成長してきてはいるが , 米 国の寄付総額が 2 , 984 億ドル ( 約 23.8 兆円 1 ) ) である 識されるためには , 将来寄付者となる可能性が高 い在学生が , 大学図書館でどのような「経験」を ことを考えればその差は歴然としている。また , 得たかが重要な鍵の一つとなる。大学図書館が自 図表 1 らの研究・学習に役立つ適切な 資料・情報をそろえていること 日本 はもちろんだが , 図書館司書 ( 金額単位 : 億円 ) (Librarian) から研究・学習に役 立つ助言を受け , そのことに感 謝の念がある場合 , 大学図書館 は彼らの卒業後の寄付先として 強い選択肢の一つになり得る。 法ん 米国 遺贈 , 14.55. 24.41. 5 % 八 ( 金額単位 : SBLN) 法ん 6 ′ 95 乙 57 % 財団′ 41.6 乙 14 % 個ん 5 ′ 182 第 43 % 個ん 217.79. 73 %

8. 図書館雑誌 2014年07月号

468 図書館雑誌 20147. 図書館のファンドレイジングがいま現在も各地で 行われている。これらについては , 本特集の本稿 以降の記事や先にふれた先行する調査・研究を見 てほしい。 5 . 図書館のファンドレイジングの停滞理由とそ の解法 ここまで見てきたように , 図書館におけるファ ンドレイジングは , 実は目新しい世界ではなく , よくみてみれば馴染みのある図書館がむしろ得意 とする領域と言えなくもないのである。しかし , そう言いながらも , どこの図書館でも当たり前に 6 . さいごに一ドナー・ピラミッドとアドボカ はなっていないのも実情だろう。 こで , この原 因の検討と今後の展開の可能性を述べておこう。 まず , ファンドレイジングがあらゆる図書館に おいて , 一般化しないのは , なぜだろうか。その 理由に関する体系的な調査がそもそも行われてい ないのだが , これまでの調査活動を通じての私見 を述べておきたい。課題は二つある。ーっは外部 資金を調達するという行動に対する図書館関係者 のマインドセットの欠落であり , もうーっは調達 した資金の扱いの難しさである。 ファンドレイジングに関心を示しつつも , 実際 的な行動に移らない図書館関係者の姿は筆者らに とっては , ごく日常的なものだ。それらの図書館 関係者の口からしばしば発されるのは , 本稿で繰 り返し否定した「日本には寄付文化がない」「日本 の図書館にファンドレイジングは馴染まない」と いう俗説である。このような信仰に対しては , 本 稿で挙げた実績を示すとともに , もはや外部資金 の調達なくして , 図書館の経営は困難であるとい う事実を突きつけるしかない。そして , その状況 は館種を問わない。 次いで , 外部資金の扱いの難しさだが , 特に自 治体の公共図書館の場合 , ファンドレイジングに よる事実上の収入は会計上 , 雑収入として扱われ , 次年度以降の予算割り当ての根拠にはなりにくい 現状がある。確かに , 自治体財政の仕組み上 , の問題は確かに存在し , その解決も容易ではない。 しかし , たとえば , クラウドファンディング活 用でしばしば用いられている手法だが , 友の会等 の外部の協力団体をファンドレイジングの担い手 とし , 現金を必要な資料や物品に変えてもらった うえで寄贈・貸与してもらう等 , 実は方法は多様 に存在する。また , 自治体内での正攻法な手法も ないわけではない。であれば , こは図書館関係 書館関係者であればこそ持っているはずの調査能 開けない。 こは図書館関係者の奮起 , そして図 能と諦めず , 諦めの悪さを徹底する先にしか道は だが , いずれの理由であれ , 要は最初から不可 を大いに役立てるべきだろう。 ハウの紹介にも努めている。先行する調査・研究 集でも単なる事例紹介にとどめず , その先のノウ いて , もっと勉強してもらうしかない。 LRG の特 者にとっての正念場であり , 要は行政手続きにつ 力の発揮を期待したい。 [NDC : 013.4 BSH : 1. 図書館経営 2. 資金管理 ] リソース・ガイド株式会社ライプラリアン ) 代表取締役 / プロデューサー , しまだあやこ : アカデミック・ ( おかもとまこと : アカデミック・リソース・ガイド株式会社 イジングになるのである。 るアドボカシーが図書館の中長期的なファンドレ くても , ファンドレイジングという形式で行われ ファンドレイジングで期待する成果を上げられな シーに見合ったものはそうはない。仮に短期的な が , ファンドレイジングほど , 図書館のアドボカ らしめていくことがアドボカシーの本義と言える けっして失われてはいけない価値であることを知 (y) である。その存在は社会的に不可欠であり , だ。それは言い換えれば , アドボカシー (Advoca- とは , それ自体が図書館に関する重要な広報なの 支援を必要としていることを広く社会に伝えるこ ファンドレイジングを通して , 図書館が経済的な まるものではないということを強調しておきたい。 そして , ファンドレイジングは , 資金調達に留 ミッドの構築が欠かせないのである。 イジングを成功させるには , このドナー・ピラ してみるのもよい。だが , 中長期的なファンドレ する際には , まずは手の付けやすい部分から試行 く図式のことである。ファンドレイジングを実施 腹を経て頂上へと支援者を緩やかに押し上げてい 部分の支援者までを段階的に把握し , 裾野から中 裾野部分の支援者から大口の寄付者のような頂上 とえばボランティアのような緩やかな参画をする 慮する必要がある。ドナー・ピラミッドとは , た む際には , ドナー・ピラミッドの構築を十分に考 まず , あらためてファンドレイジングに取り組 グが向かうべき方向を述べて締めくくろう。 さて , 最後に図書館におけるファンドレイジン

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の事例収集に基づき , 44 の事例を紹介した上述の LRG 第 3 号における「図書館における資金調達 ( ファンドレイジング ) 」特集では , 図書館におけ るファンドレイジングを次の四つに大区分し , さ らに中分類として八つの区分を設けた。 表 : LRG におけるファンドレイジング区分 「ふるさと納税」を利用する 寄付・寄贈寄付を募る 本の寄贈を募る 雑誌スポンサー制度を利用する 広告 広告を募る 除籍資料を販売する 販売図書館が作成したものを販売する オンライン書店と連携する 交付・助成金 現在 , 日本の図書館で行われているファンドレ イジングは , おおむね上記のようにわけられる。 この表を参照しながら , いくつかの重要な動向 について述べておきたい。まず , 先に「日本には 寄付文化がない」という考えが誤りであることを 指摘したが , 同様に「日本の図書館はファンドレ イジングと無縁である」という考え方も誤りであ ることを指摘しておきたい。 上記区分でも中項目として明記しているが , 図 書館には「本の寄贈を募る」という歴史と伝統の ある取り組みが息長く存在している。資金調達と いうと , 現金ばかりを意識してしまいがちだが , 現金の主たる用途の一つが資料費への充当である ならば , 資料そのものの寄贈を受けることもまた , 図書館らしいファンドレイジングと言えよう。 繰り返しになるが , 「日本には寄付文化がない」 わけではなく , また「日本の図書館はファンドレ イジングと無縁」でもないのである。また , 話が 広がるが , こ数年の間に創立 18 周年を迎えてい る図書館の多くが , その成り立ちは民間図書館で あることを思えば , 日本の図書館は , 脈々たる ファンドレイジングの歴史のうえにあるのだ。 4 . 特徴的なファンドレイジング事例 さて , ではその歴史のうえにどのようなファン ドレイジングの世界が広がっているのだろうか。 こでは , 三つの動向にふれておこう。 近年の大きな特徴で言えば , 2008 年に導入され た「ふるさと納税」の活用がある。自治体への寄 付金の一定額以上については控除対象とするとい う仕組みを用いた「ふるさと納税」は広く普及し 図書館雑誌 v 。 L108 , N 。 .7 46 / ているが , その使途に図書館を明示する自治体が けっして多くはないが , 確実に存在し , さらに 1000 万円単位の大きな寄付を集める図書館が登場 しているのだ。 これとは別に広告主の社名等を雑誌の保護カ バー等に表示する雑誌スポンサー制度の普及も著 しい。筆者らの調査時点では , すでに 108 自治体が 導入しており , その始まりは遅くとも 2009 年 10 月 まで遡れる。ただし , 報道等でも目にすることが あるだろうが , 雑誌スポンサーの取り組みはすべ てが好調であるわけではない。導入初年度はとも かく , 次年度以降 , スポンサーが広告効果に疑問 を持ち , 継続が見送られるケースはいたるところ にみられている。他方 , NPO との協業で雑誌スポ ンサーの導入と定着を図る埼玉県内の取り組みも あり , 継続と定着への努力の差が , そのまま制度 の普及と定着の差となってあらわれている。 以上の 2 事例と並んで , 近年大きな注目を集め ているのが , クラウドファンディングと呼ばれる インターネットで資金調達を図る仕組みの活用で ある。この仕組み等については , 本特集における 島根県海士町からの報告に詳しいので , そちらを 参照していただきたいが , 図書館とクラウドファ ンディングという組み合わせの良さにはふれてお きたい。筆者の一人である岡本は , 代表的なクラ ウドファンディングサービスである「 READY FOR? 」を運営するオーマ社の役員でもある ( 2011 年度から 2013 年度は社長を兼任 ) 。その経験に基づく と , 実は図書館はクラウドファンディングによる 資金調達ときわめて相性がよいことがわかってい る。 実際 , 2011 年 3 月から 2013 年 3 月までの間に , READYFOR? を用いて行われた図書館関係のファ ンドレイジングでは , 90 % 以上の確率で資金調達 に成功している。また , 成功した 17 事例での調達 総額は 3297 万 3000 円を , 1 事例あたりの平均調達 額は 193 万 9588 円を記録している。 なぜ , 図書館がこれほどの支援を受けるのか , その詳細な理由は詳しく分析しなくてはならない が , 図書館の社会的認知度の高さ , その必要性や 有用性に対する潜在的な評価の高さがあればこそ , これほどの成果が生まれているのではないだろう か。 以上の 3 事例以外にも , おそらくは読者の方々 が考える以上に , 刺激に満ちたアイデアに基づく

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イ 岡本真・嶋田綾子 特集☆図書館とファンドレイジング 図書館雑誌 2014.7. 図書館のファンドレイジング事情と傾向 1 . 関心が高まるファンドレイジング 「ファンドレイジング」 (Fundraising) , 日本語で 言えば「資金調達」への関心が日本の図書館業界 でも緩やかに , しかし確実に高まってきているよ うだ。この実感は , データからも裏付けられる。 筆者らが編集・発行する『ライプラリー ソース・ガイド』 ( 季刊 , 1 , 000 部 ) ( 以下 , LRG と適 宜略記 ) では , 過去 2 回ファンドレイジングをテー マとしているが , 特集「図書館における資金調達 ( ファンドレイジング ) 」を掲載した第 3 号 ( 2013 年 5 月 31 日発行 ) は現時点で 556 部が , 3 名による 書下ろし論考「図書館における資金調達 ( ファン ドレイジング ) の未来」を掲載した第 4 号 ( 2013 年 8 月 27 日発行 ) は 487 部がすでに購入されている。 そして , なによりもこの『図書館雑誌』がファン ドレイジングというテーマを掲げるようになった ことは , 関心の高さの顕著なあらわれだろう。本 特集では , さまざまな実践が報告されるが , それ に先立ち , 上記特集等の編集経験に基づき , 日本 における「図書館とファンドレイジング」の現状 を概観しておこう。 2 . ファンドレイジング全般の動向 そもそも , ファンドレイジングはけっして図書 館に限ったことではなく , 民間団体を中心に主に 寄付・募金という形で幅広く , かっ息長く実施さ れてきた。そして , あまり図書館の世界では認知 されていないように感じられるが , 日本における 寄付の総額は 1 兆円を超えるとみられている ( 『寄 付白書 2013 』日本ファンドレイジング協会 , 2013 年 ) 。 特に東日本大震災以降 , 個人による寄付は増大し ており , ときおり聞かれる「日本には寄付文化が ない」は , 実はまったく事実とは相反しているこ とがわかるだろう。 とはいえ , ファンドレイジング ( 資金調達 ) は , 寄付・募金だけに閉じたものではなく , その範囲 は広い。そのため明確な定義を下すことは実は思 うほど容易ではないのだが , あえてまとめようと すれば , 「直接・間接を問わず , 活動の資金を外部 の資源から調達すること」と言えるだろう。なお , このようなファンドレイジングのさまざまな形態・ 取り組みは , 前出の日本ファンドレイジング協会 が 2010 年から毎年開催している「ファンドレイジ ング・日本」というイベントに詳しい。例年 2 月 か 3 月に開催されるこの催しでは , 数十のファン ドレイジング事例がその実行者ら自身によって紹 介されており , 最近ではウエプ , 特にいわゆる ソーシャルメディアや後述するクラウドファン ディングを用いた興味深い実践にふれられる。 3 . 図書館でのファンドレイジング概況 では , 図書館におけるファンドレイジングの事 情と傾向は , どのようになっているだろうか。ま ず , このテーマで先行する調査・研究を 2 本紹介 しておこう。 ・『情報の科学と技術』 58 ー 10 ( 情報科学技術協会 , 2008 年 ) での「図書館の経営経済分析と資金調 達」特集 ・『ライプラリー・リソース・ガイド』第 3 号 ( ア カデミック・リソース・ガイド , 2013 年 ) における 「図書館における資金調達 ( ファンドレイジン グ ) 」特集 また , これらとは別に , 福田都代・北海学園大 学教授がこの分野に関する 10 年以上の研究を行い , 数々の研究業績を残している。図書館における ファンドレイジングの動向を把握するうえでは , 上記の先行文献が有用だろう。 以上を前提としつつ , 図書館におけるファンド レイジング動向に関する最新調査である筆者らが 行った調査で用いた枠組みを紹介したい。 18 以上