ADVERTISING WEEK ASIA 2016 粮 TOKYO, JAPAN 者一人ひとりにフィットした体験を提供 するには、消費者に寄り添うことが不可 欠だ。 ( 4 ) Brand above product ( 製 品を超えるプランド ) : 製品訴求よりプ ランド訴求。商品そのものにフォーカス し、機能説明を重視するマイクロソフト と、プランドにフォーカスし、単なる製 品表示を超えて「大好きな音楽をどこへ でも持ち歩けるイメージ」を伝えるアッ プルを比較すると、戦略の違いがよくわ かる。 そして、これら 5 つの原則を踏まえ、 マーケターが実践すべき 5 つのことを紹 介した。 ( 1 ) vote with your money ( 必要な投資をする ) : 適切なプロジェク トは、費用面を含めサポートするべき。 例えばキャンベルでは、他の多くのプロ ジェクトを取りやめて、 Amazon の人工 知能スピーカー「 Amazon Echo 」を 使って消費者にレシピアイデアを届ける プロジェクトに投資を集中させた。その 結果、他のどこよりも早く「 Amazon Echo 」活用プランドとして実績をつく ることができたし、「良い企画であれば、 適切な予算をつける。それによってイノ べーションを牽引し、消費者にとって意 味のある企業を目指していく」という メッセージを社内に発信することができ た。 ( 2 ) force failu 「 e ( 強制的に失敗す る ) : キャンベルでは、部門間アイテア を共有・連携する場として「マーケティ ングイノベーションラホ」を設け、常時 5 つほどのプロジェクトを走らせている が、その多くは強制的に失敗させる。失 敗することで、「十分な努力をしていな いこと」がわかり、それがさらなる改善 や、新しいアイデアにつながる。 ( 3 ) play the user card ( ユーザーのカード を使う = 消費者の利益を代弁する ) : ど んな部門に所属し、どんな役職に就いて いたとしても、消費者視点を意識するこ と。企業としての持続性は、消費者の ーズに見合ったものを生み出すことで しか担保できない。 ( 4 ) get out of the way ( ときには一歩譲る ) : 企業が、何で も自分たちが主体になろうとするのは良 予算をつけてコミュニティを支持する姿 ラ社は自らコントロールしようとせず、 ニュニティをつくったとき、コカ・コー 2 人の消費者が、コーラ好きが集まるコ くない。例えばコカ・コーラが大好きな Glass を開発したからこそ、いまのグー トフォンに適用されており、 Google Google Glass の技術は、いまやスマー たプロジェクトの一つだという。 が、グーグル社員にとっては最も成功し は失敗だった これが一般的な評価だ 敗」の意味を変える ) : 「 Google GIass 」 (5)change the vanacula 「 ( 「成功」「失 スを維持・向上することにつながった。 ペースにおけるコカ・コーラのフレゼン 勢をとった。この判断は、ソーシャルス グルの技術力がある。 0 <lnterview 〉 CampbeII's Umang Shah デジタルシフトは「目的」ではない。すべては消費者次第。 どのように消費者を知ればよいでしようか ? A. デジタルデバイスの使用頻度が増えたことによって、 マーケターはより多数の消費者を知ることができるように 0. や行動パターンなど、データを組み合わせることで、さまざ ループは、「家族」を単位としたものだけではなく、興味関心 ポリュームを持っグループとして捉えることができます。グ きたら、そのテータに基づいて個人と個人をつなげ、一定の 用するかが重要です。データを通じて個人を知ることがで マーケティングの時代。そこでは、いかにデータを取得し活 者を知ることができなかった。しかし、今はワントゥワン なりました。テレビの時代は、基本的に世帯単位でしか消費 まな切り口のものをつくることができます。 A. 企業がデジタルシフトをしなければならなくなった一番 0. デジタルシフトの重要性について、どう考えていますか。 の要因は、スマートフォンの浸透です。「デジタル化」それ自 体を目的にするべきではなく、消費者行動がデジタル、オン ラインにシフトしているから、企業もデジタル化する必要が あるのだという考え方が重要です。もし消費者がテレビや 紙、ラジオなどを介してコンテンツに触れるならば、企業も それらを使って消費者とコミュニケーションをとればよい。 彼らの変化に、我々はいかに反応するかー一重要なのは、 消費者にとって意味のある会社であり続けることです。 0. 「消費者にとって意味のある企業」とは、どんな企業 ? A. テレビからデジタルへ、そしてその次は ? その転換に 自社はどう対応していくのか ? ーーそれを考え続けられる 企業だと思います。「消費者が何を必要としているか」と、 「自社が提供しているものに価値があるか」。この 2 つをつ なげるために、マーケティングがあります。 2016.8 宣伝会議 59
0 PEOPLE ローチです。近年、消費者インサイト の活用はマーケティングや経営の領域 でも、消費者との関係構築において重 要視されています。 これまでは企業側の仮説ありき、そ の仮説が受け入れられるかどうかの検 証という意味で、消費者調査をしてい るケースが多かったのではないでしよ うか。しかし、まずはニュートラルな 視座で消費者インサイトを把握するこ とが大切です。 全てのステークホルターを 巻き込めるストーリー こで多くの企業が陥りがち なのが、カスタマーセントリックの本 質をはき違え、無責任に消費者に判断 を委ねてしまうことです。「共創マー ケティング」が日本の企業で、なかな かうまくいかないのも、この本質の読 だけでなく「メディア」「専門家」「流 み違えにあると思います。消費者イン 通」も加えた 4 者のステークホルダー サイトを深掘りしつつ、一方では自分 のインサイトを把握するようにしてい たちの商品・サービスの他にはない絶 ます。社内の他部門も含め、その商品 対無二の特性を見つけ出す。そして消 が売れ続けるために関係する、すべて 費者インサイトとその絶対無二の特性 のステークホルダーが巻き込まれたく との接点を生み出すようなシナリオを なるようなストーリーの形へと昇華さ っくり出すことが、成果につながるカ せる必要があります。その意味でも、 スタマーセントリック思考の実践なの 新刊の書籍は「安易な解説本ではな い」と述べました。 です。 新刊の書籍では、私たちインテグ レートがこれまで実践してきた、その プロセスをできるだけ、わかりやすく 解説することに努めました。ただ本著 は実用書ではありますが、「この手法 を取り入れれば、すぐに売上が上が る ! 」といった安易な解説本ではあり ません。険しくとも、真のマーケティ ングに取り組もうと未知の領域に足を 踏み入れようとしている方に手に取っ ていただきたいと思います。 加えて私たちが実践するマーケティ ングのシナリオづくりの手法である 「情報クリエイテイプ」では、消費者 編集協力 / 株式会社インテグレート URL:http://www.itgr.co.jp/ お問い合わせ先 / 株式会社宣伝会議書籍編集部 デジタルの進化で、消費者と接点を 持てるメディアは爆発的に増えました。 しかし、そのメディアの新しい組み合 わせを考える、コミュニケーション中 心、のマーケティングでは、モノが売れ ない時代に立ち向かえるだけの競争力 はつくれません。今こそ、より緻密で 広義なマーケティングへの進化が必要 とされていると言えるのではないで しようか。 0 カスタマーセントリック思考 ーー真の課題発見が市場をつくる 顧客の顕在ニーズを刈り取るだけで、新たな需要の創造 ができていない。そんな悩めるマーケターに いま必要 なのは、消費者の心の奥にある、彼ら自身も気づいてい ない本音をつかむこと。そして、企業内にカスタマー・セ ントリック ( 顧客中心主義 ) の思想を根付かせること。意 思決定の基準を「顧客」に置き、イノベーションを起こ すためのインテグレート流のメソッドを解説。 スタマー ントリック 思考 ー真の課題発見か市場をつくる を式社インテグし一ト 代気・、 CEO 藤田康人【“】 三宅隆之村澤典知測 どんな商品にも、 お客さまを動かす力ギは 必す見つかる。 モノが売れない時代の、「売れ続ける仕組み」のつくり方。 マーケティンクにんたら . 「原点」へ立ちろう ! ・著者 / 藤田康人、三宅隆之、村澤典知 ( 共著 ) ・価格 / 1728 円 ( 税込 ) ・発売日 / 2016 年 7 月 5 日 ・発行元 / 宣伝会議 CII.st0111( 、ド 2016.8 宣伝会議 101
CampbeIIl PerpetuaI ReIevance ヤノへ ) 顧客との永続的な関係性を築くには デジタルマーケターの役割は 「消費者にとって意味ある存在」 になるのを手助けすること Report 1 0 〇 、らイ 〇 ルで、ソーシャル & デジタルマーケティ はこれまで、マイクロソフト、ウォール デジタルマーケターは マートといったさまざまな業種業態の企 プランド再生の請負人 ングを統括している。 キャンベルのようなビッグプランドに 業でマーケティングに携わり、プランド 長年にわたり、デジタル領域を含む おけるテジタルマーケターの役割とは を再生させてきた。 「テクノロジーの力を活用してイノベー Shah 氏は、プランドが消費者にとっ マーケティング業務に関わってきた ションを起こし、『企業がもう一度、消費 lJmang Shah 氏。現在は、アンアイ・ て「 Stay relevant ( 関係性、意義のあ ウォーホルも描いたスープ缶でおなじみ、 者にとって意味のある会社になること』 る状態 ) 」であり続けるための 5 つの原 150 年の歴史を持つ食品会社のキャンべ 則を提示した。 ( 1 ) Ha 「 d decisions ( 難 を手助けすること」だと Shah 氏。同氏 しい決断 ) : 過去の成功体験に安閑とし てはいけない。物事が軌道に乗っている ときこそ、難しい決断をすべき。英レス トラン誌が選ぶ「世界のベスト・レスト ラン 50 」で過去 5 年間に第 1 位を 4 度 も獲得したデンマークのレストラン 「 noma ( ノーマ ) 」は、顧客に持続的に 受け入れられる店となるべく、本店を閉 店。シェフがスタッフ全員を引き連れ、 東京に期間限定の出張レストランを出店 している。 ( 2 ) Stay fearless ( 恐れな い ) : 慣例にないことを実行するときに 恐れたり、躊躇したりしないこと。 ( 3 ) Audience above all ( 消費者起点 ) : 成 功のカギは、大衆 ( 消費者 ) にある。消 費者の置かれている状況をよく理解し、 その価値観やニーズに応える。キャンべ ルの取り組み事例として、ゲイのカップ ルとその息子の食卓を通じて、家族像の 多様性を描いた CM 「 You 「 Father 」と、 ユーザーごとにノヾーソナライズされたコ ンテンツが表示されるレシピサイト 「 CampbeIIIs Kitchen 」を紹介。消費 宣伝会議 2016.8 58
ADVERTISING WEEK ASIA 201 引 N TOKYO, JAPAN バイル関連のパイロットプロジェクトを 康的な原材料でつくり続けられており、 ンツ自体が収益性を持つ、日 0 の高いまっ 立ち上げ、プランドとのマッチングを図 たく新しい広告モデルにチャレンジして 家族の絆も変わらない」というメッセー いる。「 OREO: Twist, Lick, Dunk 」は、 る。伝統企業にいながらにしてスタート ジを発信するために制作した CM に同 アップのカルチャーに触れ、ともにプロ 性婚カップルの家族が登場したことで、 その発想で開発し、成功を収めたモバイ ダクトやサービスをつくることを通じて、 ルゲームだ。 同性愛反対派が猛反発。これを受け、モ ( 3 ) Riding Dragons ( 乗りこなす ) : モンデリーズのマーケターが学びを得る ンデリーズは彼らが S N S に投稿した批 既存の企業・ビジネスの概念を破壊し、 ことができる。アイデアをアイデアで終 判的なコメントを紙に出力、一つひとつ 新しいカルチャー、ムープメントを起こ わらせず、実現のための投資を保証する 筒状に丸めて並べ、大きな「 Love 」の 文字をつくるムービーを公開した。「家 す存在として、次々と新しい取り組みを システムがあることも特徴。 ( 2 ) Raising Dragon ( 育てる ) : 打ち出す。 族をつくるために必要なものはたった一 例えば、インタラクテイプの祭典「サ アイデアを実現できるような、企業風 つ ( = LOVE) 」というメッセージで締 土を育てる。恐れを知らないマーケター めくくられる動画は 400 万回以上再生 ウス・バイ・サウスウェスト」では、 3D プリント技術とロポット工学を組み合わ "FEA 日 LESS MARKETER" の集団に され、プランドの検索件数は 2009 年以 せて制作した、自分だけのオリジナル・ なることを目指す。 降のどの期間と比較しても 1 4 倍以上に そのマインドがアウトブットとして現 オレオをつくれるマシーンを披露。一時 なった。 れたーっの例が、 2014 年に制作された また、従来型の広告メディア投資を、 は、 2 時間半待ちの行列ができたという。 Bough 氏は「当時はイベントのみでの HONEY MAID のテレビ CM 「 THIS 旧 利益を生むメディア投資へと転換するこ とにも挑戦している。消費者とプランド 展開だったが、 EC を使えばより多くの消 WH O LESO M E 」と、それに対する SN S 上の反応を受けて制作したムー 費者にこの体験を届けられる。 10 億ドル とのエンゲージを強化するだけでなく 「利益を生み出す ( マネタイズする ) 」プ 規模のビジネスになり得るアイデアだ」 「 Love 」だ。「時代が変わっても、 HONEY MAID のお菓子は変わらず健 と、自信をのぞかせていた。 ランテッドコンテンツをつくる。コンテ 0 <lnterview 〉 MondeIez's B. Bonin Bough いかなるデジタル戦略も、消費者ニーズを起点に考えるべき。 0. E コマースとメディアの両方を統括するメリットは ? A. プランド認知から購買まで、カスタマージャー 体を一貫して見られることです。当社は業界の中でもいち 早く、この組織体制を実現しました。今後、モバイル→ ソーシャル→メッセージングと、コマースのスタイルが変 化していっても、メティアと購買チャネルが同じプラット フォーム上に統合される流れは変わらず進んでいくはす。 中国 Te ncent のコミュニケーションアプリ「 WeChat 」 にもその兆候が見られます。近い未来に当たり前となる消 費者行動に、フィットした組織体制だと思っています。 0. モバイルとデジタルを活用する上で最も重要なことは 何ですか ? A. 消費者は何が欲しいのか、どんなことをしているかを 理解することです。今後、当社はモバイルゲームの開発に 注力していくのですが、そこでも、ゲームをしている消費 者とどのように関わっていくのが良いか、模索しているとこ ろです。多くの消費者がデジタル機器でゲームを楽しんで いることは、もちろん分かっているのですが、そんな消費 者とどのようにコミュニケーションをとるべきか。どんな方 法でメッセージングするべきか。すべての起点になるのは、 消費者がどのような立ち位置にいるのか理解することです。 0. 消費者を知るためには、どんなことに注目するといい でしようか ? A. 消費者が何に関心を持ち、何を欲しているのか。また メディア接触の観点では、消費者がデジタル機器で何をし ているか、どのようなサイトを閲覧しているか。メディア接 触行動だけでなく、デジタル機器を使ってどのように商品 を購入しているのかを把握することも重要だと思っています。 61 2016.8 宣伝会議
特 情報とは何か」「扱う際に注意すべきこ とは何か」「してはいけないことは何か」、 きちんと知識を身に付け、リテラシーを 向上する必要があります。 プ広告には実装されていないケースも少 昨今急増している動画広告や、ネイティ 静止画のバナーには表示されていますが、 まだこれからの部分もあります。また、 消費者に十分浸透しているかと言えば、 を 2014 年 1 2 月にスタートしましたが、 インフォメーションアイコンプログラム」 ウトの手段をユーザーに知らせる「 JIAA ンを表示し、情報の取り扱いやオプトア 行動ターゲティング広告に共通のアイコ ターネット広告推進協議会 (JIAA) が、 握していない人がほとんどです。イン 収集されて、何に使われているか」を把 は、「自らのどのような情報が、どこから れる風評被害・炎上リスクです。消費者 費者との意識の乖離によって引き起こさ もうーっのリスクが、マーケターと消 履歴を残す仕組みをつくることも有効です。 どのデータにアクセスしたのか可視化し、 さらに、誰がいつ、 クセスを許可する・・ うにする、社内でも特定の部屋からのみア 設定する、社外からはアクセスできないよ 定する、人によってアクセス権限を細かく 要です。データにアクセスできる人を限 ず、データへのアクセスコントロールが必 ティリスクを最小限に抑えるためには、ま しまうことを意味しています。セキュリ パーソナルテータや個人情報が流出して はセキュリティを破られた際に、前述の ーっは、セキュリティリスクです。これ 種類あると言えます。 漏えいによるリスクは、大きく分けて 2 することが重要です。そして、個人情報 大なリスクです。まず、その事実を認識 直接つながり、事業の存続にかかわる重 個人情報漏えいは、企業の信用問題に 情報漏えいがもたらす 2 つのリスク なくありません。「情報が何のために使 われているのか」を企業側がきちんと提 示し、かっ消費者が理解・了承していれ ています。ただ、コミュニケーションの しようとする動きは、ますます活発化し 昨今、ターゲットを「個」として分析 「個人の特定」は本当に必要か ? の毀損にもつながります。 無頓着でいることは、プランドイメージ せん。個人情報保護、データの健全性に 告主であることを認識しなければなりま く、アウトブットをしているプランド広 感の対象は、データサプライヤーではな う消費者の声をよく耳にしますが、不快 ゲティング広告に不快感を覚える、とい 把握できていることが重要です。リター たデータなのか」、データの取得経路を ること、「どこからどのように取得され イヤー、データブロバイダーと話ができ ているのか」という視点でテータサプラ とについてユーザーの適切な同意がとれ データに対し「このデータを利用するこ は不可欠ですし、活用している目の前の 了承を得ようという意識がマーケターに データ活用において、消費者の理解・ うとする企業姿勢が大切です。 よって、消費者側との意識格差を埋めよ う現実はありますが、明確な情報開示に かい規約を読まない消費者が大多数とい ユーザーに与える不快感を低減する。細 方式の場合も利用目的・範囲を明示して、 プトイン方式を採用する、オプトアウト る明確な同意をとることが重要です。オ の取得・活用について、ユーザーに対す このリスクを回避するためには、情報 が流出した際の影響は甚大です。 り、不快感を募らせるだけでなく、情報 と消費者との間に大きな意識の乖離があ を理解できていない場合は、マーケター れます。しかし、消費者側が情報の使途 ば、消費者の不快感は軽減できると思わ 北 : 鷲 0 有効な手段の一つだと思います。 データマネジメントを統括することも、 を設置し、自社のデータセキュリティ、 ( チーフ・プライバシー・オフィサー ) 」 統括する「 CMO 」のように、℃ PO ではないでしようか。マーケティングを 内プライオリティを高める必要があるの がそれを強く意識し、個人情報保護の社 いは、経営リスクに直結します。経営者 繰り返しになりますが、個人情報漏え していく必要があると思います。 ユーザーとのコミュニケーションを設計 マネジメントシステムを構築・改修し、 見ながら、自社のデータベースやデータ のような法制度の動きもきちんと横目で る内容が含まれており、マーケターはこ 形に加工した上で活用することを推奨す 加工情報」、つまり個人が特定できない 人情報保護法」では、個人情報を「匿名 ります。 2017 年に施行される「改正個 しない」という考え方が推奨されつつあ また、法律においても、「個人を特定 できるのではないでしようか。 ターが目指すコミュニケーションが実現 人を識別することができれば、マーケ 定できなくても、ノヾーソナルデータで個 合ってもらうことが重要です。個人を特 となく、好意をもってプランドと向き のはず。ターゲットが不快感を覚えるこ 自社が狙うターゲットにリーチすること ゴールは、個を特定することではなく、 小林秀次 Big Data 研究委員会委員長 Web 広告研究会 日本アドバタイザーズ協会 2016.8 宣伝会議 25 告研究会 Big Data 研究委員会委員長に就任。 公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web 広 ンマーケティングを支援している。 2016 年 4 月より ン上の行動データを用いて、企業のデータドリプ モグラフィックデータと日本最大級のスマートフォ 在は、 Supe 「 ship DMP 推進室長として、正確なデ 年にスケールアウト ( 現 Supership) に入社。現 イトでの広告企画・マネタイズ推進に従事。 2015 イトの運営を担当したのち、インターネット情報サ こばやし・しゅうじ / カタログ通販の編集や EC サ
モノが売れない時代に売れ続ける仕組みをつくる ! インテグレートのメソッドが 1 冊の室籍に 日日 0 近刊『カスタマーセントリック思考』著者藤田康人氏 顧客の顕在ニーズを刈り取るだけで、新たな需要の創造ができていない。 いま必要なのは、消費者の心の奥にある、彼ら自身も気づいていない本音をつかむこと。 マーケティングプランニングプティックであるインテグレートが実践するマーケティングに イノベーションを起こすためのカスタマーセントリックな思想とメソッドとは。 限界を迎えた リーチ至上主義 市場が成熟し、モノが売れないと言 われる日本の環境でマーケターに必要 とされる役割は、イノベーションによ る需要の創造。つまりは「売れ続ける ための仕組み」をつくることです。し かし幸か不幸か、これまでの日本では マス広告を使って新商品の発売を知ら せる、あるいは商品の機能特長を伝え るだけで、商品の売上が担保される状 況にありました。 とにかくリーチを確保し、パーチェ スフアネルの入り口で多くの消費者の アテンションを獲得できれば、フアネ ルの途中のパーセプションチェンジや ビヘイビアチェンジのシナリオを細か く設定せすとも、右肩上がりの成長を 継続できる状況にあったと言えるで しよう。結果、日本ではコミュニケー ション中心の狭義のマーケティングの 捉え方が浸透してしまいました。 しかし真のマーケティングとは、コ ミュニケーションのみで実現するもの ではなく、リサーチや商品開発、流通 対策を含む多種多様なファクターで構 成されるものです。かっビジネス・プ ロセス全体のマネジメントによって、 各ファクターが有機的に連携し、「売 れ続ける仕組みをつくる」ことこそが、 マーケティングの目的と言えます。 100 宣伝会議 2016.8 市場ニーズをくみ取り、消費者が欲 しいと思う製品を開発し、需要を創造 する一連の活動が統合的に行われる仕 組みを構築することこそが、今の日本 企業には必要である・・・。私は 2014 年 4 月に『 THE REAL MARKETING— 売れ続ける仕組みの本質』という 1 冊 の書籍を通じ、この考えを発信しまし た。 2 年経った今、広義のマーケティ ングに取り組み始める日本の企業は増 えていると感じますが、今度はその実 践において、悩みの声を多く聞くよう になりました。 ネット広告が得意としてきた、顕在 化した需要を刈り取るマーケティング ではなく、新しい需要の創造とはいか にして実現すればよいのか。 7 月に刊 行の書籍『カスタマーセントリック思 考ー真の課題発見が市場をつくる』で は、その実践方法を詳述しています。 イノベーションを起こし、企業の真 の課題を解決するためには、カスタ マーセントリック ( 顧客中心主義 ) の 思想が企業内に共有されていることが 必要です。確かにマーケティングの重 要性の認識が広がり、「顧客を中心に 据えた経営」を志向する企業も増えて きたと感じます。しかし、その捉え方 顧客中心主義とは 顧客に委ねることではない に違和感を抱く機会も多くありました。 カスタマーセントリックの本質とは、 「お客さまは神様である」と唱え続け る精神論ではありません。「企業が、 どの戦略や戦術を実行するかという意 思決定の基準を、顧客に置く」ことが、 私が捉えるこの概念の基本的な考え方 です。どんな戦略や戦術も、顧客が支 持してくれない限り、結果にはつなが りません。これまでのプロダクトアウ トをベースにした日本企業のアプロー チとは真逆の思想とも言えるでしよう。 つまりカスタマーセントリックとは、 顧客を正しく理解し、その理解に基づ いて、企業として「やるべきこと」と 「やらないでいいこと」という指針を 決める戦略論であり、それを具体的な 施策に落としていくリアルな戦術論な のです。 カスタマーセントリックを実践する には消費者インサイトの活用が要とな ります。消費者インサイトとは、消費 者調査やこれまでの経験、社会的動向 などを踏まえた洞察によって引き出さ れた、消費者の行動や態度の根底にあ る本音、核心のことです。多様化・複 雑化する価値観を持つようになった消 費者の琴線に触れる文脈 ( コンテクス ト ) をつくるためには、表面的な分析 だけでなく、時として消費者自身も意 識していない欲求や思考の洞察が重要 であるという考えから生まれたアプ
ドⅦを K 再 : : ⅱ再 : 効率追求の陰に潜む危機から、ブランドを守る ! デジタル広告の リスクマネジメント SPECIAL FEATURE データ活用技術の精度が急速に高まったことで、ターゲット別の広告配信が可能となり、 2016.8 宣伝会議 より積極的な活用につなげるための最新情報を紹介します。 「なんとなく感じるリスク」を明らかにすることで、 新たなテクノロジーも、またデシタル広告も消費者の変化に合わせて活用すべき。 といった新しいリスクも顕在化してきています。 消費者の「気持ち」に対する配慮に欠け、不快感・嫌悪感を与えてしまう・・ 一方で、コンバージョン直前の広告に投資が集中してしまう、数字はかりに目が行き、 ある程度、成果がコントロールできるのがデジタル広告の良さ。 15
" 個 " 客理解を深める取り組みと心地よい関係の両立を目指して 露出される先のデバイスも多様なデジタル広告。だからこそ、受け手のシチュエーションとのマッチングへの配 慮が欠かせません。取材を通じて見えてきた「デジタル広告のリスクマネシメント」、その課題と潮流とは。 0 フランディングの主戦場は デシタルへとシフト インターネット広告が登場した後、さ らに携帯電話の浸透に伴い、モバイル広 告が誕生するなど、メティアに加えてデ バイスの多様化が、 こ 1 0 年ほどのデ ジタル広告の手法・商品、さらにプラン ニングを複雑化させています。 デジタル広告についての批判でよく言 われてきたのが、効果が可視化できるか らこそ、コンバーションに近い部分での 投資に偏りがちで、長期的なプランティ ングの観点が希薄になりがちということ。 しかしながら、消費者の日常生活の多く の時間がデジタル空間にシフトする中で は、刈り取り型の販促施策以外のコミュ ニケーションでも、デジタル広告の活用 が不可欠となってきています。 しかしデジタル、特にスマートフォン でのプランディングをどう実現していく かは、取材先の広告担当者の方からも、 長年にわたりよく聞かれる課題になって いると感じます。 先に記したとおり、デジタルメディアは デバイスも多様なので、従来のマス広告 の発想でクリエイテイプを考えてしまうと マス広告の比ではない、不快感や嫌悪感 を抱かせてしまう、リスクがあります。動 画やネイテイプアドといった手法、フォー マットに注目が集まるのも、こうした課題 か月示にあるからだと言えるでしよう。 どんな面に自社の広告が露出するのか。 その時、広告の先にいるユーザーが置か れたシチュエーションとは ? 特集では、 プランドとマッチした場、シチュエー ションでの広告出稿のマネジメントを実 現するための各社の取り組みを紹介して います。 。。個”客理解の背後にある 心象悪化のリスクにどう向き合う ? 今回の特集では加えて、データドリプ ンマーケティングの進展から派生したリ スクも取り上げています。アドテクノロ ジーが進化し、ターゲティングの精度が 向上したこと。これまでバラバラに存在 していた、顧客を理解する材料となる情 報を統合して分析できるソリューション が浸透したことなどが相まって、企業が 顧客一人ひとりを深く理解することが可 能になっています。 情報洪水の環境を生きる、現代の消費 者には、 " 自分ゴト化 " できない、企業の 一方的な発信は、届きづらいという実感 もあって、今後もコミュニケーションを ワントゥワン化させる流れは加速してい くでしよう。 そこで懸案となるのが、そのコミュニ ケーションが顧客から見て、心地よいと 感じられるか否か。本来は、プランドを 好きになってもらいたいからこそ、顧客 を深く理解し、適切なタイミングで適切 OSh utterstock 顧客への深い理解を、顧客体験の質とプランド価値 向上にいかにつなげるか。 な情報を適切なデバイスを通じて届ける ことを目指してきたはずが、そのさじ加 減を見誤ると、不快感や嫌悪感につな がってしまう。 そのプランドの商材特性や消費者との 関係性によって、心地よさの基準が変 わってくるのも悩ましいポイントの一つ と言えます。このリスクに関しては、現 状では、マーケターとしてのセンスでマ ネジメントをしていく・・・という解決策し か見えませんでした。 ただ今回、取材した企業のマーケター の方たちを見ていると、それは特別なス キルではなく、企業視点で効果・効率を 考えながら、消費者としての感性も両立 させられるか、が一番大きい気がします。 リスクマネジメント、その判断基準に 迷ったら、いち消費者としての自分の感 覚を信じてみる。最先端のテクノロジー も最後は、使う、。人 " の力が不可欠だと 言えそうです。 0 宣伝会議 2016.8 5
競争が激化するヘルスケア市場におけるマーケティングの新たな選択肢「 AskDoctors 」 医師の評価を活用したプロモーション手法とは 少子高齢化が進む日本では、「ヘルスケア」は消費者ニーズが高い注目の市場た。 しかし、健康に関わる情報はネットを中心に多く出回り、企業が発信する際には、いかにして信頼性を担保できるか が大きな課題になっている。医療関連サービスのエムスリーは、この状況を打開すべく、 企業と消費者の双方の目線に立った独自サービスを提供している。 セミナーに登壇をしたエムスリーマーケティングプロデューサー の津田宗利氏。ヘルスケア市場の現状や課題、「 AskDocto 「 s( ア スクドクターズ ) 評価サービス」について、事例を基に話した。 インターネットを利用した医療関連 サービスを提供するエムスリーは 6 月、 ヘルスケア商材を扱う企業のマーケ ティングや宣伝担当者を対象としたセ ミナーを実施。商品・サービスを医師 が評価する「 AskDoctors ( アスクドク ターズ ) 評価サービス」の活用方法を 紹介した。 このサービスは、約 25 万人の医師 会員を有する医療従事者向け専門サイ ト「 m3.com を運営するエムスリー のネットワークを活かし、 100 名 ~ 1000 名の医師が客観的に商品評価を 行う。食品・飲料や日用雑貨を中心と した商品・サービスに独自のマークを 付与し、企業側はそれをプロモーショ ンに活用することが可能である。 こうしたサービス開発の背景には、 健康訴求手法の行き詰まりがある。例 とともにプロモーションに活用できる えば食品の場合、昨年 4 月から施行さ もある。 というわけだ。医師による評価が数値 れた機能性表示食品はメディアの注目 こうした中、企業と消費者との橋渡 し役を果たすのが「 AskDoctors 評価 化されるため、メーカーは、商品に信 度も高く、メーカーの期待感も大き かったが、受理数は思うように伸びて サービス」だ。具体的には、企業が取 頼感や説得力を持たせることができ、 。 1991 年から 20 年以上続く特 り扱う健康に良い商品に対し、「商品 消費者にとっては商品選びの一つの目 し、なし、 定保健用食品 ( トクホ ) については、 を使い続けたいか」という使用意向と、 安となる。 企業から「トクホの取得にかかる費用 今後の展望として、エムスリ 「商品を人に勧めたいか」という推奨 マーケティングプロデューサーの津田 は 1 商品あたり 5000 万円 ~ 2 億円と、 意向の二軸で、医師による評価が行わ コスト面で負担が大きい」といった悩 れる。最低 100 名の医師が評価を行い、 宗利氏は、「活用してくださる企業と 一緒に、この評価サービスの価値を高 みの声が聞こえる。 いずれかで 75 % 以上の肯定的な意見 一方、消費者の視点から見れば、企 めていきたい。採用数が増え、露出が を得ることができれば「医師の確認済 み商品」となる。企業は、「医師〇名 増えることで、流通側との連携や企業 業の情報発信に対して「良い面ばかり の〇 % が人に勧めたいと回答しまし 打ち出しているのではないか」「何が との共同プロモーションなど展開が広 正しいのかわからない」という不信感 た」というセールストークを、マーク がるのでは」と話した。 お問い合わせ / AskDoctors 総研 https://www.askdocto 「 s.jp/labs/about/ V セミナーの前半にはサラヤの代島裕世氏が登壇。「ヤシノミ」 シリーズを中心としたプランド戦略を話した。また、後半には日 清ョークの青木淳氏も加わり、パネルディスカッションを開催。 トクホやヘルスケアの課題感から、「 AskDocto 「 s 評価サービス」 を活用しての今後の展望などを話した。 の推 A s k D 0 c t 0 r s △「 AskDocto 「 s ( アスクドク ターズ ) 評価サービス」で認定 を受けると付与されるマー久 0 2016.8 宣伝会議 105
0 L00 引 creation & DigitaI, B れ d 衂 内容まとめ 地域とのネットワークづくりは、スマートには進まない。 生産者や農家とのネットワークは、サイトを開設したからと言って、勝手に登録をしてもらうことは難し い。販売部分はデジタルテクノロジーが生かされても、商品の仕入れ部分は泥臭い努力が不可欠。 物流の手間とコストが変わらなければ、 BtoC 市場成立は難しい。 生産者がネットで直販をできるようになっても、小口販売に対応できる手間を削減するソリューションが ない限り、 BtoC の市場活性化は難しい。 生産者と産地の距離が、デジタルで縮まることで淘汰も生まれる。 デジタルの登場で消費者と産地の距離が縮まったことで、これまでは触れなくてもよかった最終消費者 の声も産地の生産者に届くようになる。すべての地域が潤うことは難しく、淘汰も生まれる。 対談を終えて・・・ 当社は物流も自前で揃えているが、手間がかかっても物流、 決済のインフラがあるからこそ、生鮮商品のげでのビジネ スが成立していると思う。プラットフォームをつくるだけの ビジネスではないところに、独自性があるし、国内はもとよ り海外でもビジネスを拡大していきたい。 、ミマ 松田氏 限界集落の問題が指摘される中、地域への移住・定住促 進は重要。農家に民泊するようなお試し体験があって、そ の先に移住や定住もあると思うし、そういう循環する仕組 みの中で考える必要があると思う。そういう仕組みも含めて 提案していきたい。 ニロ氏 110 宣伝会議 2016.8