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検索対象: 日経ヘルスケア 2016年05月号
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1. 日経ヘルスケア 2016年05月号

図 6 ◎介護現場におけるトラブル事例 ( 外岡氏による ) 体的には、定期的に虐待防止委員会を 開催し、「まだ食べ終わっていない入居 者の食事を片付けてしまうのは虐待で はないか」など、虐待が疑われるヒャリ ハット報告事例について全職員で一つ ひとつジャッジし、組織全体の人権感 覚を高めていくのだ ( 図 5 ) 。 そうした取り組みを行う一方で、「わ がままな入居者への介助で職員が困っ た場合などに上司に気軽に相談できる 体制を作り、職員のストレスを軽減する ことも重要だ」と外岡氏は話す。 認知症高齢者増加でトラブル続出 ? 今後、高齢化の進展に伴い認知症高 齢者は増え続ける。政府は昨年、 10 年 特養で、日勤の終了間近だった職員が、コールボタンで入所者に呼ばれ、おむつ交換を行った。そ の際、急いだせいで入所者の両股関節を骨折させてしまった。診断した医師が「両方折れるのは 後の 2025 年に認知症患者が約 700 万 珍しい。虐待があった可能性もあるので、確認したほうがいい」と、家族にアドバイス。家族は医 師の言葉を真に受け、行政に通報。施設側が状況を確認したところ、担当職員は急いでいたが手 人 ( 約 5 人に 1 人 ) に達するとの推計を 順に問題はなく、虐待との確証はなかった。しかし、施設がホームページに概要を公表したところ、 発表した (partl の 29 ページ図 2 ) 。 地元の新聞に報道されてしまったため、虐待を認めた上で慰謝料を提訴され、 150 万円の支払いで 最終的に合意した。 「認知症高齢者が増えれば、介護の トラブルはますます多くなる」と外岡氏 は指摘する。居宅サービスを中心に「金 品を取られた」という妄想クレームなど が頻発するだろう。意思疎通が難しい ことなどから、虐待をめぐるトラブルも 図 5 ◎虐待をなくすための対処法 ( 外岡氏による ) 0 虐待 : 不適切なケア 認知症高齢者の「物がなくなった・・・」の訴え その 1 有料老人ホームに入居中の 81 歳の認知症の女性。居室で「タンスの上に置いてあった時計 がなくなった」と主張。介護職員は「全く知らない」と関与を否定。ほかの入居者が持ち去ったのか、 ー介護職員が盗んだのか、はたまた本人の勘違いなのか・・・・ ? 結局、証拠がないため、真実は誰に も分からず、家族の説得により女性の入居者は渋々引き下がった。 その 2 特養に入所中の 93 歳の女性。「『杖がなくなり、ほかの入所者の部屋に行ったらその杖があっ た』と本人が話している」とその娘から訴えがあった。物がなくなるという訴えは前にもあり、その 都度、施設は謝罪しているが、その物が出てきたことはない。結局、価格弁償することで解決。そ の後は、私物に名前シールを貼ってもらうことを徹底した。 入居費用未収金が累積して 1 000 万円 ! 高級有料老人ホームの入居者 ( 99 歳女性、軽度認知症 ) 。養子縁組した義理の娘が入居を申し込み、 毎月の入居費用を振り込んでいたが、ある時期から音信不通でノヾタリと入金されなくなり、月額 30 万円の未収金が累積していった。本人名義の貯金約 3500 万円もいつの間にかなくなっていたため、 入居者に保佐人がつき、まず有料老人ホームの運営会社が代理人を立て入居者と養女を提訴し、 その裁判の中で入居者 ( 保佐人 ) が養女に責任追及する、という流れで現在も進行中。そうこうし ている間に未収金は約 1000 万円に達した。 「虐待された」との家族からのクレーム 0 0 0 0 0. 障害などの犯罪相当の行為 ・虐待のヒャリハット事例報告委員会を設置し、 虐待が疑われた事例を一つひとつジャッジし ながら、虐待の定義を明確にしていく ・「自分がされて嫌なことはしない」など職員の 人権感覚を高める ・問題のある利用者については上司に早めに相 談し対策を講じるなどの対策をとり、職員の ストレスをためないようにする 0 0 May 2016 NIKKEI Healthcare

2. 日経ヘルスケア 2016年05月号

コンサルタント小濱道博の 介護経営を斬る ! 年も講演で全国を飛び回ってい フる。セミナー会場で参加者から 受ける個別相談は、介護業界の問題を リアルタイムで知ることのできる絶好の 機会だ。この春は、小規模な通所介護 事業所を運営する経営者や管理者の 参加が目立った。 2015 年度の介護保険制度改正の余 波が今なお続いている。特に影響が大 きかったのが、小規模型通所介護事業 所の地域密着型サービスへの移行だ。 定員 18 人以下の事業所は今年 4 月か ら、市町村が指定する地域密着型通所 介護に再編。該当する事業所は「みな し指定」の対象となり、自動的に移行し た。これから先、新規利用者は同じ市 町村の要介護認定者に限られる。 みなし指定だからスムーズに移行で きたと思う人もいるかもしれないが、現 実にはそうではなかった。直前になって 多くの相談が私のところに寄せられて きたからだ。「現在、定員 20 人で 1 日の 利用者数は 13 人前後です。定員を縮 小せず、県の指定事業所のままでよい でしようか ? 」 (A 社 ) 、「 1 日の利用者数 は 10 人。運営推進会議の開催が面倒 なので、定員を 15 人から 20 人へ拡大し て地域密着型通所介護への移行を避 けたいと考えているのですが・・・・・・」 ( B 社 ) といった具合である。 子どもじみた理由で減収になる例も 通所介護では、 3 月末に廃止された 小規模型 ( 月延べ利用者数 300 人以下 ) の介護報酬が 4 月から地域密着型にそ のまま適用。それまで小規模型の報酬 を算定していた定員 19 人以上の事業 所は 4 月以降、通常規模型に位置づけ られ報酬が約 1 割減ることになった。 A 社の場合、利用者数があまり増え ない見込みならば、定員を 18 人以下に 減らして地域密着型へ移行すべきだ。 介護報酬が小規模型と同じなので、利 用者数が変わらなくても、少なくとも減 収は避けられる ( 22 ページ図 1 ) 。一方、 B 社のように利用者数が 1 日 10 人のまま 定員を 20 人に拡大して県の指定事業 所を継続すれば、通常規模型の報酬が 適用され、利用者が増えない限り年間 200 万円超の収入ダウンになる。それだ けの収入があれば職員の処遇改善も容 易なのに、「運営推進会議が嫌だから」 という子どもじみた理由で収入を捨て ようとする経営者もいたのだ。 また、 30 人の定員を縮小して地域密 着型への移行を決めた C 社の社長から は、こんな相談を受けた。「忙しくて 2 月 中に定員変更の手続きができなかった ので、 3 月に役所に行ったら『現状では 変更不可』と言われ困っています・・・・・・」。 どういうことか経緯をよくよく聞くと、そ の社長は定員を 10 人に変更する申請を 行おうとしたという。申請時点で 1 日 13 人前後が利用していた事業所だから、 定員 10 人への変更申請がすぐ認められ るはすがない。 社長によると、顧問の社会保険労務 士が介護保険制度に詳しくないので自 分で手続きをしようとしたというが、本 人も明らかに理解不足。最初から介護 保険の実務に詳しい専門家に依頼して いれば、何の問題もなく終わっていたの 。結局その後も、専門家に依頼 に すれば費用がかさむなどの理由から、 3 月中に手続きが完了せず、 4 月から定員 30 人のまま県から指定を受ける通常規 模型の事業所になったそうだ。 そもそも定員をなぜ 10 人まで減らし たがるのか理解に苦しむが、社長の意 地域密着型デイへの移行は波乱含み 制度改正の影響受ける事業所が続出 May 2016 NIKKEI Healthcare 21

3. 日経ヘルスケア 2016年05月号

こじまかっとし氏 日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービス ( 株 ) に入 社。施設開発・施設管理業務に従事する。 2006 年に退社後、同社の元社員と ともにコンサルティング会社 ( 株 ) ASFON を設立。現在、首都圏を中心に複数 の有料老人ホームで運営支援に携わっている。 私はその日の夕方、入職手続きを終 備もせずに後任を据えると、今回のよう 日の夜勤は B が担当して事なきを得た。 えるために事務所を訪れ、たまたま居合 翌日、夜勤から続けてホーム長業務 な " リーダーの孤立 " が起きやすい。ホー ム長が交代した A 社のホームのうち、も わせた B と話す機会を得た。明日の夜 を行う B にねぎらいの言葉を掛けると、 う一方も似た状況だろうと推測できた。 勤について話を振ると、 B は「最悪、自 B は私に対し、次のような弱音を吐いた。 分が夜勤に入って何とかする」と打ち 「もう疲れました。介護主任だった頃は 次の日、私は経営者に B が置かれて いる立場を報告し、次のように提案し 本当に仕事が楽しかったのに、ホーム長 明けた。私が「ほかの職員に協力して もらえないのですか」と聞くと、 B は「自 になってからは戸惑うことばかりで た。まずは 2 人の新任ホーム長の担当 ホームを入れ替え、新たに設ける「副 分は信頼がないから、協力なんて期待 ・有老ホームの職員になったら、 ホーム長」というポストに据える。さら できないよ」と言って肩を落とした。 度はホーム長をやりたいと思っていまし に、前任のホーム長は「統括ホーム長」 たが、自分には向いていないと分かりま 翌日、私はリネン交換業務で一緒に としてしばらく兼務を続け、副ホーム長 なった介護職 D に B の評判を聞いた。 D した。前任のホーム長の背中は大きかっ は統括ホーム長の下で一定期間、管理 は一息ついてから「 B さんは主任時代 た。私に後任は務まりません」。 業務を研修する制度を導入する。 から大きく変わってしまったのよ」と残 担当ホームを入れ替えて“リセット” でのポイントは、ホーム長への昇格に研 念そうに語った。元来 B は真面目な性 修要件を設け、それをクリアしたことが 人手不足を背景に、主任がホーム長 格で、周囲からも慕われる優秀な職員 客観的に見える仕組みを設けることだ。 だったが、ホーム長に就任し、苦手な事 の仕事を理解しないまま会社都合で昇 1 カ月後、 B はもう一方のホームで副 務作業に忙殺されるようになってから 格させられるケースをよく目にする。立 ホーム長として業務に当たっていた。自 場の変化と自分の振る舞いとの折り合 現場との折り合いが悪くなったという。 分のことを全く知らない職員・入居者に いをうまく付けられず、行き詰まるケー さらに経費削減や残業禁止など、本 囲まれて一から出直しだ。私が訪問す スも多い。ホーム長の内部昇格は、前 社側の利益代弁者のような言動が急に ると、 B は「人間関係をリセットして、新 目立つようになり、孤立を深めたようだ。 任者が優秀であるほど次のホーム長が しい自分になった気持ちです。ホーム やりにくくなる。勝手知ったるホームと また、前任のホーム長は明るい性格で 長になるなら私のことを知らない職員と はいえ、立場が変わればほかの職員と 入居者や家族からの評判が高かったた やった方が気が楽だとは思ってもいま の接し方も変わり、今までのような関係 め、交代後は「ホーム長のレベルが下 せんでした」と恥ずかしそうに笑い、今 ではなくなる。また、ホーム長への昇格 がった」という声もちらほら聞こえ、 B は 後の抱負を語った。 に明確な基準がなく、会社の都合で準 随分と気にしているらしい。結局、この 人望を失い孤立深めた理由とは ロ「 ロ冂 ロ冂 ロ冂 ロ「 ロ冂 113 IKK ー He thca May 016

4. 日経ヘルスケア 2016年05月号

介護経営を斬る ! 図 1 ◎小規模型、通常規模型、地域密着型の通所介護の収入比較 ( 7 時間以上 9 時間未満、要介護 2 、 1 単位 = 10 円の場合 ) 【 A 社】 定員 実利用者数 介護報酬 ( 単位 ) 月営業日数 月延べ利用者数 1 日収入 ( 円 ) 月間収入 ( 円 ) 年間収入 ( 円 ) 20 868 22 286 1 1 2 840 20 〃 5 22 286 100 乃 0 域密着 1 1 2 840 286 22 868 【 B 社】 定員 実利用者数 介護報酬 ( 単位 ) 月営業日数 月延べ利用者数 1 日収入 ( 円 ) 月間収入 ( 円 ) 年間収入 ( 円 ) 868 22 220 86 , 800 常規模 〃 500 220 〃 5 1 8 868 22 220 86 800 1 909 600 (C 社】 定員 実利用者数 介護報酬 ( 単位 ) 月営業日数 月延べ利用者数 1 日収入 ( 円 ) 30 868 22 286 1 1 2 840 30 〃 5 22 286 100 , 750 域密着 86 800 220 868 2 482 480 2 , 216 , 500 2 , 482 , 480 29 / 89 760 26 598 000 29 / 89 / 60 定員を減らして地域密着型へ 移行すれば、通常規模型と比 べて年間 300 万円超の増収に 1 909 600 L705 , 000 22 915 200 20460000 22 915 200 べて年間 200 万円超の減収に 移行すれば、地域密着型と比 定員を増やして通常規模型へ 思は固かった。本当に利用者を減らし て地域密着型に移行すれば、ダメージ は増大する一方である。まず小規模型 から通常規模型へ移行した時点で報酬 単価が下がって減収になり、その後の 地域密着型への移行で報酬単価が元 に戻っても、延べ利用者数が大幅に減 るため、小規模型と比べて年間 600 万 円超、通常規模型と比べても年間 300 万円超の収入を失う見通しだ。 このように、介護事業の経営者が顧 問契約している専門家から適切な助言 を受けられない事態は決して珍しくない。 3 月のセミナーに参加して似たような質 問をした経営者の何人かは、私の話を ろくに聞かず、「自分で役所に行って手 続きをします」と言って会場を後にした。 「運営推進会議の開催が嫌だから定員 を増やす」と話した経営者もその 1 人だ。 だが、制度を理解しないままでは正しい 経営判断ができないだろう。 今回、混乱のうちに小規模ディの地 域密着型への移行が終わった。経営者 が判断の間違いに気づくのは、 4 月の サービス提供実績の介護報酬請求デー タを国保連合会に提出する 5 月だ。 ただし、地域密着型への移行を難な く終えた事業者も、早合点してはいけ ない。重要な事務作業がまだ残されて いるからだ。具体的には、運営規程お よび重要事項説明書におけるサービス 名称や提供内容の変更作業、会社定款 の目的の変更登記である。 業界再編見据えブレーンが不可欠 これらは地域密着型通所介護の事業 者に限った話ではない。 2016 年度から 新しい介護予防・日常生活支援総合事 業に移行する市町村が増えるが、その 際、介護予防訪問介護、介護予防通所 介護の事業者も同様の事務手続きが必 要である。特に定款の目的変更の登記 を完了しなければ、許認可の更新手続 きなどができないので要注意だ。だが 前述したように、適切にアドバイスでき る専門家が不足している現状から、 れらのことを十分に理解している事業 者がどれだけいるか不安である。 今後、介護事業者は制度改正の最 新情報を収集して早急に対策を取らな いと生き残れないだろう。実際、昨年の 制度改正後に大半の介護サービスで事 業所数の伸びが鈍化している。厚生労 働省の統計を見ると、小規模型通所介 月間収入 ( 円 ) 2 482 , 480 2 216 500 1 909 600 年間収入 ( 円 ) 29 / 89 / 60 26 , 598 , 000 22 915 200 定員変更手続きに失敗。最終的に地域 密着型へ移行したが、通常規模型と比べ ても年間 300 万円超の減収に 護の事業所数が横ばいになっているの が目を引く。事業所の閉鎖や統廃合に 伴い、さらに減少に向かうだろう。 これからますます目が離せないのが、 2018 年度の介護保険法改正および介 護報酬改定に向けた社会保障審議会 の議論。従来、法改正は 6 年おきだった から、 2015 年度は " 中間改正 " で、本番 はあくまでも 2018 年度の改正とみるべ きだ。この年は 6 年に 1 度の介護報酬・ 診療報酬の同時改定の年でもあり、未 曾有の大変革になる予感がする。 業界再編が加速する中、介護事業の 経営者が身近に信頼できる専門家をプ レーンとして持てるか否かが、勝ち組に なる上で重要な条件になっていく。私 自身が個別に支援を継続できる事業者 は限られる。もっと多くの事業者を支 援していくためには、介護保険実務の 専門家の育成が急務だ。 2018 年まで 残された時間は少ない。 小濱介護経営事務所代表小濱道博氏 会計事務所などに勤務後、 2009 年に小濱介 護経営事務所を開業。コンプライアンス支援を 柱とした介護経営のコンサルティングを手がけ る傍ら、全国で年間 200 回を超える講演を行う。 22 NIKKEI Healthcare May 2016

5. 日経ヘルスケア 2016年05月号

よもん “見えない敵”に発展させない クレーマー対処法と ネットに書き込みをされた場合の 基本対応 Part2 クレーマーとネット中傷対策 あの医の 一度はなんなリ P.31 今後急増する「介護トラブル」は ? 認知症高齢者の増加で 深刻化する 「事故」「虐待」をめぐる トラカレヘの対処法 P.35 25 May 2016 NIKKEI HeaIthcare

6. 日経ヘルスケア 2016年05月号

ここが問題 ! 正しい対応法は・・・ チェ ポイ ック ント 長男が亡くなった時に A さんの身元引受人の変更を迅速に行いない 料老人ホームは特別養護老人ホームなどとは異 なり、居室に入居者の利用権が生じるため、入 居者の債務を保証する身元引受人 ( 保証人 ) を立てる のが原則です。身元引受人が死亡した場合、ほかの者 に変更しなければなりません。親族から変更の申し出 がなければ、施設が相続者などに要請します。身元引 受人がいないと、利用料の滞納時に債権の保全ができ ませんし、入居者の死亡時に遺骨の引き取り手が不明 になるなど、様々な手続きに支障が出るからです。 A さんの場合、同居していた長男が身元引受人と考 えられ、長男の死亡後は相続人がその役割を引き継ぐ 有 べきですが、長男は生前に妻と離婚していますただ 元妻は引き続き利用料を支払いますから、離婚協議時 の財産分与などで身元引受人の地位を継承している可 能性があります。長男は歯科医で資産もあったでしよう から、癌の宣告を受けた時、妻への財産分与とともに母 の世話を託したとしても不思議ではありません。 どうしても身元引受人の成り手が親族にいなければ、 親族の請求で成年後見制度の利用も考えなくてはなり ません。有料老人ホームにとって身元引受人の存在は 極めて重要です。次男とのトラブルでも、身元引受人が きちんと決まっていれば、すぐに対応できたはずです。 アドバイス ポイ チェ ック ント 有料老人ホームの入居者をめぐる問題解決には、 身元引受人の存在が不可欠 居室に泊まリ飲酒するなとの 次男の行為を黙認してしまった 次 男が頻繁に居室に寝泊まりして飲酒するように なっても、施設は不適切な行為をやめさせること ができませんでした。有料老人ホームでは家族や来訪 者の居室利用についての制限が比較的緩やかですから、 近親者の宿泊や飲食を簡単には制限できません。 本件の場合、契約書や管理規定に頻繁な宿泊や飲 食を制限する項目はありませんでした。ですが生活に 困窮した近親者が、不当に居室を利用することも想定 できます。今後は「入居者以外の者の専ら自己のため の居室利用」について、より制限すべきと考えられます。 それでも、次男のケースは通常の居室利用を明らか に逸脱していますから、根拠の規定がなくても管理者 が知恵を働かせて制限しなくてはなりません。例えば、 「入居者の健康管理上問題があるので容認できない」と 排除することも可能です。居室での度重なる宿泊や飲 酒は、入居者の睡眠障害につながる恐れがあります。 次男が A さんの生活を乱して多大な悪影響を与えれば、 家族による高齢者虐待として通報することも可能でしょ う。管理者が次男の行動に毅然と対応しなかったこと が、職員への横暴な振る舞いにつながったのです。 アドバイス 入居者以外の者の居室利用は制限すべき あいおいニッセイ同和損害保険 ( 株 ) で、介護・福祉施設のリスクマネジメントの企画 立案を担当。その後 ( 株 ) インターリスク総研主任コンサルタントなどを経て、 2013 年 独立。介護事業者向けに年間 150 回のセミナーを開催。詳細は、 anzen-kaigo.com 108 山田滋 ( やまたしげる ) 氏 NIKKEI Healthcare May 2016