プロセス - みる会図書館


検索対象: 現代の図書館 2013年 03月号
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1. 現代の図書館 2013年 03月号

ML (MuIti Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 図 1 探究学習の「スパイラル」 19 学習活動の多くは , 情報を検索し , 収集し , 整理 する部分のプロセスが大半で , 課題の把握と評価 については , 授業時間等が足りないというような 理由から省略されることが多かった。しかし , 調 べ学習として何度も繰り返される , 情報を検索・ 収集・整理するという情報探索の内容だけでは , 技術的には向上しても , 生徒の思考力は育成でき ない。また , 与えられた課題を解決するだけでは 思考力を育成することは難しい。何が課題でどの ように学習を進めるのかということを生徒自身が 理解し学習そのものを構成できなければ , その学 習に対する生徒のモチベーションは上がらず , 自 ら「考え試行錯誤する」ということはない。与え られた課題の中から自分のテーマを設定するこ と , つまり自分だけの「問いをつくる」ことが , 生徒の「考える力」を育む学習方法となることは あまり認識されていない。 「問いをつくる」ことは , 何度もそのプロセス を繰り返すことが要求される。その「問い」に対 する自らの「意見や主張」を何度も検証し論理的 に構成することが必要となる。この「意見や主 張」は自らの問いに対する「仮説」となり , その 「仮説」を証明する , あるいは否定する証拠を探 しながら試行錯誤するスパイラル的な学習活動で ある。生徒は自分の興味から出た問いを探究する ことで , 自分の興味や自分自身を客観的に見るこ とになる。自分の思考や行動を客観的に見るこ と , この試行錯誤こそが生徒のメタ認知能力を高 めるとともに , 生徒の「考える力」である論理的 な思考力を育成する。 筆者らがつくった『問いをつくるスパイラル』 4 ) の「問いをつくる」プロセスは , 従来の探索モデ ルのような直線的なステップで表すのではなく , 生徒が「問いをつくる」過程で得た知識やスキル を巻き込んで , 竜巻のように学びを上昇しながら 拡張する , らせん形のプロセス ( 図 1 ) をたど る。これは , 探究学習がスパイラル型の学習活動 であることを示している。 また , 「問いをつくる」プロセスも , 探究学習 の「スパイラル」と同様に「スパイラル」な学習 活動である。図 2 は , 「問いをつくる」スパイラ ルを上から見た場合の図であるが , このプロセス には , 探究学習のプロセスにおける , 課題設定の 場面から評価までのすべての場面が含まれてい る。すなわち「問いをつくる」スパイラルは , 探 究学習そのものである。 探究学習は , 常に自分の問いを見直しながら , 新しい知識と技術を取り入れ , そのスパイラルを 拡張し上昇させることになる。それと同時に「問 いをつくる」プロセスを繰り返すことで , 「考え る力」すなわち思考力を生徒自身が鍛え育む。生 徒が生涯自立した学習者になるための最適なト レーニングが , 「問いをつくる」ことなのである。 「問いをつくる」スパイラルには , 三つの重要 な「問い」がある。それは , 「〇〇とは何か」と いう What の問い , 「なぜ〇〇なのか」という 「どのように〇〇すればいいのか」 Why の問い , という How の問いである。この三つの「問い」 を意識して , 生徒の始まりの疑問を生徒自身の問 いの形に変えることができれば , そのスパイラル 型学習は半分成功したに等しい。 実際の生徒の例を挙げると , 最近中国製品をよ く目にして , 中国は儲かっているのかが気になっ ている生徒は , 「中国経済」というキーワードか ら「日本で売られている中国製品には何がある か」という疑問をあげた。この疑問から始まっ て , 「なぜ , これだけ多くの中国製品が売られて

2. 現代の図書館 2013年 03月号

20 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 2 「問いをつくる」スパイラル 共有する ・問いをつくるプロセスを ・中間発表する ・先生や司書に相談する ・つくった問いを人に説明する 6 共有する 6 評価する 評価する ・間いをつくるプロセスを ・作業をふりかえる ・つくった問いを見直す ・与えられた条件を確認する ・気になることを書く ・つくった同いをもとに、これからの 計画を書く 課題を確認し、 計画を立てる 0 表現する ・キーワードから疑問文をつくる ・問いに選んだ理由・考えを 書いてみる ・情報を集める ・キーワードを見つける 2 情報を探す 3 情報を整理する ・キーワードを選択する ・キーワードを関連づける ・問いをとりあえす決める ・問いを分けて考える ・小さな間いを整理する ・小さな間いをべる いるのか」→「なぜ , 日本の製品を真似したもの が多いのか」→「なぜ , コピー商品といわれるも のが多く出回っているのか」と調べながら自分の 問いを問うているうちに , 「どのようにすれば , パクリ商品 ( コピー商品を本人が定義づけて名づ けた ) を防げるのか」というような「問い」にた どり着いた。そこで彼女が本当に気になっていた ことは , 中国製品が売れて中国が儲かっているこ とではなく , 日本で売られている多くの中国製コ ピー商品が日本の経済にダメージを与えているの ではないか , 日本の商品を真似した中国のコピー 商品をどうやって防げばよいのか , そのためには どのような法律があり , どのような方策が必要で どう防ぐのかを知りたかったのである。 この生徒は , What の問いから始めて , Why の問いを繰り返すうちに , 自分の本当の興味・関 心に気づき , それを明確な自分だけの問いの形に 変えることができた。自分の興味・関心を明確に する「問いをつくる」スパイラルを繰り返すこと で , かなりの知識を獲得し活用して , 最終的な 「自分だけの問い」を創った。そして , このプロ セスにおいて , かなりの試行錯誤と自分自身への 問いかけを繰り返し , そこで本当の自分に気づい たのである。 『問いをつくるスパイラル』では , 始まりの 「問い」に関して , どのようなことが知りたいの か , 自分なりの意見や主張をどんなことでもよい から併せて書くようになっている。なぜなら , の意見や主張こそが生徒自身は気づかない「始ま りの仮説」になっていることが多いからだ。「〇 〇だと思う」という主張には , 「〇〇じゃないの だろうか」という本人の推測が含まれていること が多く , これが「始まりの仮説」になる。「問い」 をつくるスパイラルを何回もめぐって試行錯誤し ていく中で , この「始まりの仮説」を肯定できる ような , あるいは否定するような証拠を見つけな がら , 常にこの「仮説」を考察・検証する。 このことは , 先に挙げた例において , 「中国製

3. 現代の図書館 2013年 03月号

品が売られすぎてない ? 」→「こんなに中国製品 が安く売られていたら日本製品が売れないじゃな い」→「それも , 日本の商品にそっくりな商品が 多すぎるから ? 」→「日本の商品がきちんと売れ るためにはどうすればいいの ? 」というような主 張を最終的には検証することになった , このこと からも明らかである。 このスパイラルをより効果的するために , さま ざまなワークシートがある。「問いをつくる」ス パイラルをめぐっている間 , 「問い」の変化や自 分の感情の変化をワークシートに記入すること で , 自分の思考や認知行動の変化を客観的に見る ことができ , また行き詰ったときには , そのワー クシートを誰かに見せることで , それまでのプロ セスをたどってもらうことができる。生徒の思考 や認知行動を可視化することは , これからの学習 において , 客観的な視点を身につけ , 自分自身を 分析・評価するという , 重要な作業である。 思考カ・判断力・表現力の育成を支援する探究 学習のカリキュラムには , 生徒自らが与えられた 課題の中からも自分の「問い」を設定でき , その 成果とともに自らの「問いをつくる」プロセスを も評価する内容を含むことが重要になる。学校図 書館が探究学習を支援するためには , 「問いをつ くる」プロセスを可視化する方法を提供するとと もに , そのスパイラル型学習を支援していくこと が重要となる。思考のプロセスを可視化するため のワークシートや生徒の興味を明確にする発想法 など , さまざまなツールをカリキュラムの中に組 み込めるよう , その指導方法とともに提供するこ とが学校図書館に求められる。 5 探究学習が成功するカギ 探究的な学習が成功するためには , もうーっ重 要な要素がある。それは , さまざまなメディアで 表現されているものを「読解する」ことである。 表現されているものには , 必ずそれを作った者 の意図が含まれている。作者の意図をくみ取るこ と , 理解することができなければ , そこで得たも のは自分の新しい知識にはなり得ない。思考カ・ 判断力とともに重要視されている表現力を身につ ML (Multi Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 21 けるためには , その表現されているものに隠され ている「意図」を正しく理解することが重要で , その「意図」を読み解くことができなければ , そ の表現方法を身につけることは難しい。 OECD による国際的な学力に関する調査 , 生 徒の学習到達度調査 (PISA) における「読解力」 は , 「 PISA 型読解力」として従来の日本の「読 解力」とは区別されている。根本的に違う点は , 「 PISA 型読解力」は実生活の中で活用する能力 であり , 利用する際に熟考や評価を伴い , 思考カ や表現力をも必要とする能力と定義されているこ とである。この点では , 文章を読み解き必要な情 報を取り出すことを目的としている従来の日本型 読解力とは異なる。 さらに , 「 PISA 型読解力」は , 文章で表され る「連続型テキスト」を読むだけでなく , データ や図・グラフなどの視覚的に表現された「非連続 型テキスト」を読むことも求められ , その他にテ キストそのものの評価や解釈なども含まれてい る。日本では , 視覚的に表現された「非連続型テ キスト」を読むことやテキストの一部を読んで推 測するというような指導はあまり行われていな い。また , 「連続型テキスト」の代表が小説など の物語に偏っているということも課題になるだろ う。論述された文章 , 論理的に構成された文章か ら , 著者の意見を批判的に読むなど , さまざまな ジャンルの文章を読解することが必要である。 このことについては , 現在多くの学校図書館で 行っている自由な読書を決して否定しているわけ ではない。読書好きであるということは , PISA においても「 PISA 型読解力」の向上を促す重要 な要素であると分析されている。 PISA の調査結 果で衝撃的であった , 2000 年 8 位から落ち続け た日本の読解力が , 2009 年度の調査において再 度 8 位に上昇した背景にはこの理由がある。 2g9 年の結果に対する文部科学省の分析 5 ) によると , 読書について「読書は , 大好きな趣味の一つだ」 などの肯定的な回答をした生徒の割合が , 2000 年調査に比べて統計的に高くなっているのに対し て , 「読書は時間のムダだ」などの否定的に回答 した生徒の割合は , 2000 年調査に比べて統計的 に低くなっている。このことは , 読書が好き ,

4. 現代の図書館 2013年 03月号

「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 27 投稿 「レフア協」研修モードを活用した 研修活動の実践 小田光宏 形式 , 方法 , 環境 , 開催要領 , 事前課題という項 目に区分し , ガイドラインとして役立つように はじめに 趣旨と要点を記している。なお , 骨子の主要な論 研修による図書館員の技能向上は , 時代や国を 点については , 3 で説明する。 問わず , 重要な課題の一つと認識される。日本で 2 . 2 研修会 は , 2008 年の「図書館法」改正により , 図書館 研修プログラムを適用した研修は , 2009 年度 員のための研修機会を設けることが明記され , そ に 7 会場 , 2010 年度に 4 会場にて実施された。 の必要性が再確認された。日本図書館協会は , 研 いずれも , 図書館あるいは図書館関係団体が主催 修事業委員会および認定司書事業委員会を中心に するものであり , 開催日 , 開催時間 , 参加者数な 実践に取り組み , 「公共図書館を対象にした中堅 どを示したものが , 表 1 である。 司書研修プログラム開発セミナー」 ( 2012 年 7 月 13 日 ) に代表される普及活動も行われている。 2 . 3 実施プロセス 筆者は , 2006 年度から 2010 年度において , レ 研修プログラムの実施プロセスを整理したもの ファレンスサービス技能を向上させるための研修 が図 2 である。図 2 では , 研修会の活動の時間 プログラムに関する実践的研究を行った 1 ) 。本稿 的関係を明示し , また , 開催者 ( 事務局 ) , 講師 , は , この研究の一環として作成した研修プログラ 参加者の対応状況を確認できるようにしている ムとそれを用いた実践事例の概要を , 考察・整理 が , 実践をとりまとめたものであることから , あ して示すものである。 くまで目安に過ぎない。しかし , 11 の事例に基 2 研修プログラムの概要 づくことから , 汎用性は高いと判断される。 2 . 4 教材 2 . 1 骨子 研修プログラムにおいては , 三つの教材を作成 した。第一は , 演習作業用の「事前課題」である。 筆者が作成し , 実践した研修プログラムの骨子 この内容と実例については , 3.6 で取り上げる。 を示したものが , 図 1 である。こでは , 目的 , 第二は , 事前課題に取り組んで , 国立国会図書 館の運営するレファレンス協同データベース・シ おだみつひろ : 青山学院大学教育人間科学部 ステム ( 以下 , レフア協 ) に登録するための手順 キーワード : 研修 , レファレンスサービス , レファレンス協同 を記した「作業要領」である。これは , 研修の趣 データベース

5. 現代の図書館 2013年 03月号

28 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 1 研修プログラムの骨子 A. 目的 レファレンス質問を処理する際に必要な , 資料・情報の検索および回答の技能を高めることを目指す。 【要点】 ・回答に至るまでのプロセスを意識し , また , それを評価できるようになることを目指す。 ・資料や情報を的確に検索するための基本原理を確認し , 汎用性および持続性を高めることを重視する。 ・館種を公立図書館と想定し , そこに寄せられるレファレンス質問の処理に必要な技能を対象とする。 B. 形式 課題を解決する演習形式を基本とし , 参加者自身が作業に取り組み , その結果に基づいて指導を行う。 【要点】 ・参加者が行う作業は , 研修会以前に取り組む「事前課題」とし , 一定の時間がかけられるようにする。 ・参加者が行う作業は , 参加者が勤務する図書館等で行い , 日常の活動との接続性を高めるようにする。 ・研修会では , 講師による一方向的な解説は最小限にし , 参加者とのインタラクションまたは参加者間の意見 交換を促す指導を優先させる。 C. 方法 国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベース・システム ( 以下 , 「レフア協」 ) の研修環境を活用 し , 搭載されている機能を活かした研修方法を実践する。 【要点】 ・事前課題に取り組んだ結果を , 研修会以前に , 遠隔から「レフア協」に登録できるようにする。 「レフア協」に登録された結果を , 参加者間で相互に確認し , 比較できるようにする。 ・「レフア協」のコメント機能を利用し , 研修会前に講師から結果に対する講評ができるようにする。 ・研修会終了後にも , 「レフア協」に登録された結果をもとにした活動を , 参加者ができるようにする。 D. 環境 ネットワーク環境のもとで行うことを前提とする。 【要点】 ・参加者がインターネットにアクセスし , 「レフア協」を利用できることを参加要件とする。 ・研修会場において , 「レフア協」の画面が閲覧できるように , インターネット接続がなされた講師用 pc と 投影機器を用意する。 E. 開催要領 研修会の開催は , 要点に記載する内容を目安とするが , 開催者の希望や状況に応じて柔軟に対応する。 【要点】 ・事前課題への取り組みに , 2 週間程度が確保できるように開催日を決定し , また , 開催の準備を行う。 ・研修会の実施時間は , 2 時間から 3 時間を目安として計画する。 ・参加者は , 20 人から 25 人を理想とし , 研修時間が 2 時間の場合は 25 人程度 , 3 時間の場合は 30 人程度を 目安にして調整する。 F. 事前課題 事前課題は , 研修会の目的 , 形式 , 方法 , あるいは , 開催条件を考慮して用意する。 【要点】 ・事前課題の内容は , レファレンス質問の処理に関する基本原理を解説するのに有効なものとするとともに 多様な検索・回答プロセスが想定されるものを優先させ , また , 開催地の地域資料・地域情報を求めるもの を含める。 ・事前課題の数は , 4 , 5 名の参加者が同じ課題に取り組めるようにすることを標準とする。

6. 現代の図書館 2013年 03月号

30 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 2 研修プログラムの実施プロセス 12 週前 1 1 週前 10 週前 9 週前 8 週前 7 週前 6 週前 5 週前 4 週前 3 週前 2 週前 1 週前 当日 企画案の策定 講師への打診 企画の確定 会場・設備の手配・確保 参加者の募集案内 開 参加者・人数の確定 催 者 事前課題・登録要領の 事 受取 局 事前課題の割り当て 事前課題・登録要領の 参加者送付 プレゼン資料の受取・ 処理 事前課題のレフア協 登録の督促 講師依頼の承諾 開催者との協議 参加人数の確認 事前課題・登録要領の 準備 講 事前課題・登録要領の 事務局送付 師 プレゼン資料の作成 プレゼン資料の事務局 送付 登録内容の閲覧 登録内容へのコメント 付与 募集の確認・申込 事前課題・登録要領の 参 受取 加 事前課題への取り組み 者 事前課題のレフア協登録 登録内容の閲覧 講師からのコメント確認

7. 現代の図書館 2013年 03月号

32 現代の図書館 Vol. 51 N 。 .1 ( 2013 ) ント機能は , 講師と参加者との間での , あるい は , 参加者間での意見交換に活用できると考えた からである。さらに , 研修プログラムでは , シス テム中の「レファレンス事例データベース」への 登録作業を行うが , 登録フォーマットそのものが 有効であると認識した。すなわち , 登録フォー マット上に「回答プロセス」や「参考資料」など が用意されており , これらの記載によって , 処理 プロセスや典拠とした情報源に対する意識が高ま ると期待した。 ただし , このシステムは , 研修プラットフォー ムとして開発されたものではないことから , 当初 はシステムの参加館に「擬する」形で「研修会」 を位置づけて試行した。しかし , 2010 年度から は , システム内に「研修環境」が用意され , 名実 ともに研修プラットフォームとして機能するよう になった。なお , 研修環境は , 二つの利用が想定 される。ーっは , システムそのものをネットワー ク上のプラットフォームとして活用する場合であ る。もうーっは , すでに収められている「レファ レンス事例データ」や「調べ方マニュアルデー タ」を , 研修教材として活用する場合である。本 稿で示す研修プログラムは , 前者に該当する。 3 . 4 研修環境 上述した研修方法の実現には , ネットワーク環 境が前提となる。すなわち , 参加者がインター ネットにアクセスすることができ , レフア協を活 用できなくてはならない。したがって , 参加者の 勤務する図書館等に , ICT 環境が整っているこ とが最低限必要となる。また , 研修会が開催され る会場には , レフア協の画面が閲覧できるよう に , インターネット接続がなされた講師用 PC と 投影機器が用意されていることが求められる。も ちろん , 参加者一人一人が PC を利用できれば , さらに望ましいが , そうした環境を必要とするこ とは , 研修会の開催そのもののハードルを高くす ることにつながるため , 要件にはしていない。 3 . 5 開催要領 この研修プログラムでは 研修会の実施要領は , 筆者が一定の「標準」を 示し , 開催者の状況に合わせて調整した。標準 は , 先行事例や筆者の経験をもとにしながら定め た。まず , 事前課題の確認からレフア協への登録 までの間に 2 週間程度を設けるようにした。これ は , 事前課題を 2 週間かけて解決することを意図 したものではない。公立図書館の職員の勤務実態 を考慮してのことである。すなわち , 2 週間あっ たとしても , 参加者の労働環境や勤務体制によ り , 事前課題の解決にかけられる時間は , それほ ど多くはないと見込んだためである。 なお , 事前課題は , 参加者に一定の力量があ り , かっ , 情報源が十分に整っていれば , 30 分 程度で解決できる難易度を目安とした。ただし , 解決できなくてもかまわないことを伝えており , むやみに時間をかけることを求めてはいない。 研修会の時程としては , 2 ~ 3 時間を目安とし , 必要に応じて途中休憩を取る程度の長さとした。 これにより , 研修会を開催しやすくするととも に , 参加者の出席に伴う負担を少なくした。地域 によっては , 研修会場への遠方からの往復の時 間 , あるいは , 天候による制約があることを踏ま えての措置でもある。 参加者数は , 20 人から 25 人を理想とし , これ よりも多くなる場合には , 開催時間との関係で調 整するようにした。また , 研修プログラムでは , 事前課題への取り組みの結果を比較することを主 眼にしている。したがって , ーっの課題に対し て , 複数の参加者が取り組むことになるが , その 人数を 4 , 5 人程度と考えた。これは , 取り組み の結果の広がりがある程度得られるようにするこ とを意図しての設定である。これよりも少ない人 数の割り当ては , 演習問題に取り組まなかった り , 研修会を欠席したりする者がいたとき , 比較 できないというリスクが生まれてしまう。また , 人数を多くすると , 「右に同じ」式の解説が増え , 参加者の集中力が低下することにもつながる。し かも , 解説は , 参加者とのインタラクションを基 調にするため , 例えば一人に 5 分程度かかると考 えた場合 , 2 時間では 25 人分を扱えない。 3 . 6 事前課題 事前課題は , レファレンス質問に対する回答を

8. 現代の図書館 2013年 03月号

34 現代の図書館 VoI. 51 N 。 .1 ( 2013 ) 探索し , その結果をレフア協に事例として登録す ることを求めるものとしている。質問に対する回 答を求めるという内容は , 奥の先行事例があり , 目新しさはないが , 広く了解が得られる手法であ る。ただし , 研修プログラムでは , 回答そのもの ではなく , 回答に至るプロセスを重視することを 強調した。すなわち , 回答が得られたかどうかで はなく , 仮に回答が得られなくてもプロセスやア プローチに妥当性があったかどうかに着目した。 これは , 参加者の勤務する図書館の相違に配慮し てのことである。どんなに妥当なアプローチで あっても , 利用できるレファレンス情報源に限界 があれば , 十分な回答は難しいからである。 言い方を換えれば , この研修プログラムは , 正 解を求めることを意図していない。レファレンス 事例に関して , その評価の一部に「解決 / 未解 決」が位置づけられるが , 極めて相対的である。 同じ検索結果に関して , 何らかのヒントが欲しい 者の場合は「解決」であっても , 網羅的な情報を 求める者にとっては「未解決」だからである。 また , 登録された結果の解説では , 取り組みを 比較することを主眼にした。それゆえ , 比較の効 果が高まるよう , 事前課題の設定に工夫をしてい る。例えば , 同じ回答を入手できる多くの情報源 が存在するもの , 同じ情報源を利用しても索引語 や検索語を変えると結果が異なってしまうもの , 情報源によって観点の相違や掲載情報の幅が大き いもの , といった具合である。また , レファレン ス質問の背景にある利用者のニーズや利用者の属 性などにより , 検索方法や情報源の選択に違いが 生じることなども意識できるよう , 研修会当日に 解説したり , コメントによって強調したりした。 さらに , 事前課題を用意するにあたって , 扱う テーマに関しては , 公立図書館職員を対象にする という点から , 特定の主題に集中しないようにし た。これに加えて , 資料案内の技能を高められる ように , 文献を求めるレファレンス質問と事実を 確認するレファレンス質問とを , バランスよく組 み入れるようにした。また , 公立図書館で尋ねら れることが多いと言われる , 人物情報や統計情報 を検索する課題を含めるようにした。さらに , 開 催地の地域資料を活用したり , 地域情報を確認し たりするものを必ず含めた。図 3 は , 北九州市 立中央図書館における研修会での実例を , 出題の 趣旨や留意点とともに示したものである。 4 、おわりに 効果的な研修プログラムを構築するには , 実践 の積み重ねが必要である。本稿で示した研修プロ グラムを参考にして , レファレンスサービスの研 修が促され , かっ充実することになれば , 筆者と してこの上ない歓びである。 ただし , これからの研修活動は , 実施すること だけが重視されるのではなく , 研修の実態を記録 し , 考察を加える営みを伴わなくてはならない。 すなわち , 研究的な視点から取り扱う必要があ る。とりわけ , 一定の性質を有する研修プログラ ムを「モデル」として位置づけ , そのモデルの有 効性 , すなわち , 妥当性 , 重要性 , 持続性など を , 実証する活動を行うことが必要となろう。こ の実証作業は , 研修という実践に基づいて行うこ とから , 自然科学における実験のようには進めら れないが , 少しでも客観性を担保できるように 多様な調査方法を駆使して推進することが求めら れる。 本稿で提示した研修プログラムについても , うした実証作業が必要とされよう。その作業は , 前述した研究活動の主目的であるが , その成果に ついては , 稿を改めて示すこととしたい。 く注 > 1 ) 研究は , 日本学術振興会科学研究費補助金を得て , 「成果 共有型ネットワークを活用した図書館員の技能育成に関する 研究」 ( 萌芽研究・研究代表者・小田光宏 , 286 ー 2007 年度 ) と , 「成果共有型ネットワークを活用した独習 / 協調研修プ ログラムに関する実証的研究」 ( 基盤研究 (C) ・研究代表者・ 小田光宏 , 2008 ー 2010 年度 ) の 2 期で行なった。 ( 2012.10.17 受理 ) く補記 > 本稿受理後 , 研修プログラムの有効性を検証した研究成果と して , 次の論考を著している。 小田光宏「成果共有型ネットワークを活用したレファレンス 研修プログラムの有効性に関する実証的研究」『図書館界』 64 巻 5 号 , 2013 年 1 月 , p. 310 ー 326

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26 現代の図書館 Vol. 51 N 。 .1 ( 2013 ) b. すべての国の教育 , 文化 , 情報 , メディアその 他政策において , MIL の促進を組み入れるこ c. 異なる当事者 ( 政府 , 教育・メディア・青少年 団体 , 図書館 , 公文書館 , 博物館 , 非政府組 織 , その他 ) のつながりにおいて , それぞれの 役割分担や能力開発 , 連携推進の概要を示すこ d. MIL の強化に必要な構造的・教育的改革を開 始するための教育制度を促進すること。 e. 生涯学習や職場学習 , 教員養成を中心とするあ らゆるレベルの教育において , 評価システムを 含むカリキュラムの中に MIL を組み入れるこ f. MIL について活動するネットワークや組織の 支援を優先し , 能力開発に投資を行うこと。 g. 理解の枠組みや根拠に基づいた実践 , 指標や評 価技法を含む MIL のためのツールを研究開発 すること。 h. MIL の基準を策定して実行すること。 i. 読む , 書く , 話す , 聴く , 見るという基本的能 力と関連する MIL を推進すること。 j. MIL を世界中に広め , 異文化間の対話や国際 協力を促進すること。 k. 電子情報の長期保存を支援するプロセスに投資 すること。 1. 表現の自由や , 情報公開 , 個人のプライバシー および秘密保持 , 倫理的諸原則ならびにその他 の権利を促進および保護に努めること。 この文書は以下の 40 カ国からの参加者を含む 共同作業を通して作成されたものである。 アルゼンチン , オーストリア , アゼルバイジャ ン , ノヾングラテ、シュ , ヾラノレーシ , プラジ丿レ , カナダ , カーポベルデ , 中国 , クロアチア , ェ ジプト , フィンランド , フランス , ドイツ , ハ ンガリー インド , イラク , イスラエル , イタ リア , カザフスタン , キルギスタン , ラトビ ア , レバノン , リトアニア , マレーシア , メキ シコ , モルドバ , オランダ , ノルウェー , フィ リピン , ポーランド , カタール , ロシア連邦 , セルビア , スーダン , トルコ , ウクライナ , イ ギリス , アメリカ , ザンビア。 ( 2013.2.6 受理 )

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14 現代の図書館 V 矼 51 No. 1 ( 2013 ) で , 大学教育の中でキャリア教育や技術者倫理を も含めたカリキュラム全体の中での位置づけと分 担を明確にして , 徹底して教え込む必要がある。 5 . 2 各段階での目標設定 図書館が担ってきた学術情報リテラシーについ て , これからは初年次教育のみならず学生にとっ ての時間軸 ( 教育研究が高度化するプロセス ) の 進行に合わせ , それぞれの段階に応じた目標設定 を立て , それに応じた支援が必要となるだろう。 以下に , 段階別・取得目標スキルの例示を試み 0 ( 1 ) 入学時 ( 最初のレポート時 ~ 夏休み前まで ) ・大学の蔵書検索システムを使って資料を探せ る ・用途に応じて参考資料を使い分けられる ・専門事典・新聞データベースを使って , 時事 問題についての情報を多角的に集められる ( 2 ) 2 ~ 3 年次 与えられたテーマについて複数の立場からの 書かれた情報を集め , 比較・分析した上で考 察できる ・出典の確かな情報を識別して活用でき , 適正 に引用表記できる ( 3 ) 卒業論文の執筆前 ・研究するテーマについて , 論文データベース 等を使って網羅的に関連情報を集められる ・仮説に反する情報についても , 客観的に収 集・分析できる ・論理的で整合性のある文章を書ける ( 4 ) 大学院入学時 ・海外雑誌や新聞の学術情報についても , 網羅 的かっ選択的に収集・評価できる ・先行研究について , サーベイ論文が書ける 以上はあくまでも一例であり , 例えば大学院進 学率の高い研究大学では , ( 4 ) について学部時代 にも基礎的な点を組み込むなど , ミッションと支 援対象に応じた設定が必要となる。 5.3 教員 , 学内他部署と連携 これらのスキル習得は , ( 1 ) であればガイダン スなどの単発型のイベントに組み込むことが可能 だが , レベルが高くなるほどに難しくなる。その ため , ( 2 ) や ( 3 ) については教員が担当するオムニ バス科目の 1 コマ ~ 数コマとしての実施 , ( 4 ) に ついては研究室への出張講義 ( 事前に教員と使用 するデータベースや必読のジャーナルについて相 談するとさらに有効 ) としての実施など , 必要に 応じて複合的な方法を選択することが重要とな る。 さらに時間軸以外の区分として高大接続教育や キャリア教育などの目的別にも , 教員 , 高等学校 関係者 , キャリアセンター , 企業側の採用担当者 と連携して不足しているスキルを探れば , どのよ うな内容と到達目標が必要かがより明確となるだ ろつ。 それらの目標設定と , 受講者アンケート , 教員 の意見聴取などによる見直しを繰り返すことに よって , 高度情報化・グローバル化など社会構造 が急速に変化する現代においてどのような状況で も対応可能な「マルチリテラシーを持った人材の 輩出」に , これからの大学図書館が貢献できる可 能性が高まる。 ただし各種リテラシーの位置づけ・分担につい ては , 最終的には大学の意思決定者がその必要性 を理解して促進する必要があるため , 図書館はそ の立場に立って判断材料を提供しなければならな い。この点について , 次節で述べる。 5 .4 大学の組織制度・財務状況を踏まえて の改善策立案と提言の必要性 図書館からの視点で見ると , 図 1 で示したよ うな「利用者サービス」「学術情報リテラシー教 育」「電子情報の提供」の重要性は年々増すばか りであるが , それらの充実化には相応の費用がか かる。価格高騰を続ける海外雑誌 ( 2012 年で前 年比平均 6 % ) 12 ) の購入に加え , 高いスキルを 持った職員の採用・育成も不可欠となる。しか し , 現在の大学は 18 歳人口の減少と長引く不況 の中で厳しい経営判断を迫られているため , 単純 なコスト増加は許容できない。「教育研究を支援 して大学と卒業生の評価を向上させ , かつ中長期 的にはコスト削減できる」提案を目指す必要があ る。