32 現代の図書館 Vol. 51 N 。 .1 ( 2013 ) ント機能は , 講師と参加者との間での , あるい は , 参加者間での意見交換に活用できると考えた からである。さらに , 研修プログラムでは , シス テム中の「レファレンス事例データベース」への 登録作業を行うが , 登録フォーマットそのものが 有効であると認識した。すなわち , 登録フォー マット上に「回答プロセス」や「参考資料」など が用意されており , これらの記載によって , 処理 プロセスや典拠とした情報源に対する意識が高ま ると期待した。 ただし , このシステムは , 研修プラットフォー ムとして開発されたものではないことから , 当初 はシステムの参加館に「擬する」形で「研修会」 を位置づけて試行した。しかし , 2010 年度から は , システム内に「研修環境」が用意され , 名実 ともに研修プラットフォームとして機能するよう になった。なお , 研修環境は , 二つの利用が想定 される。ーっは , システムそのものをネットワー ク上のプラットフォームとして活用する場合であ る。もうーっは , すでに収められている「レファ レンス事例データ」や「調べ方マニュアルデー タ」を , 研修教材として活用する場合である。本 稿で示す研修プログラムは , 前者に該当する。 3 . 4 研修環境 上述した研修方法の実現には , ネットワーク環 境が前提となる。すなわち , 参加者がインター ネットにアクセスすることができ , レフア協を活 用できなくてはならない。したがって , 参加者の 勤務する図書館等に , ICT 環境が整っているこ とが最低限必要となる。また , 研修会が開催され る会場には , レフア協の画面が閲覧できるよう に , インターネット接続がなされた講師用 PC と 投影機器が用意されていることが求められる。も ちろん , 参加者一人一人が PC を利用できれば , さらに望ましいが , そうした環境を必要とするこ とは , 研修会の開催そのもののハードルを高くす ることにつながるため , 要件にはしていない。 3 . 5 開催要領 この研修プログラムでは 研修会の実施要領は , 筆者が一定の「標準」を 示し , 開催者の状況に合わせて調整した。標準 は , 先行事例や筆者の経験をもとにしながら定め た。まず , 事前課題の確認からレフア協への登録 までの間に 2 週間程度を設けるようにした。これ は , 事前課題を 2 週間かけて解決することを意図 したものではない。公立図書館の職員の勤務実態 を考慮してのことである。すなわち , 2 週間あっ たとしても , 参加者の労働環境や勤務体制によ り , 事前課題の解決にかけられる時間は , それほ ど多くはないと見込んだためである。 なお , 事前課題は , 参加者に一定の力量があ り , かっ , 情報源が十分に整っていれば , 30 分 程度で解決できる難易度を目安とした。ただし , 解決できなくてもかまわないことを伝えており , むやみに時間をかけることを求めてはいない。 研修会の時程としては , 2 ~ 3 時間を目安とし , 必要に応じて途中休憩を取る程度の長さとした。 これにより , 研修会を開催しやすくするととも に , 参加者の出席に伴う負担を少なくした。地域 によっては , 研修会場への遠方からの往復の時 間 , あるいは , 天候による制約があることを踏ま えての措置でもある。 参加者数は , 20 人から 25 人を理想とし , これ よりも多くなる場合には , 開催時間との関係で調 整するようにした。また , 研修プログラムでは , 事前課題への取り組みの結果を比較することを主 眼にしている。したがって , ーっの課題に対し て , 複数の参加者が取り組むことになるが , その 人数を 4 , 5 人程度と考えた。これは , 取り組み の結果の広がりがある程度得られるようにするこ とを意図しての設定である。これよりも少ない人 数の割り当ては , 演習問題に取り組まなかった り , 研修会を欠席したりする者がいたとき , 比較 できないというリスクが生まれてしまう。また , 人数を多くすると , 「右に同じ」式の解説が増え , 参加者の集中力が低下することにもつながる。し かも , 解説は , 参加者とのインタラクションを基 調にするため , 例えば一人に 5 分程度かかると考 えた場合 , 2 時間では 25 人分を扱えない。 3 . 6 事前課題 事前課題は , レファレンス質問に対する回答を
28 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 1 研修プログラムの骨子 A. 目的 レファレンス質問を処理する際に必要な , 資料・情報の検索および回答の技能を高めることを目指す。 【要点】 ・回答に至るまでのプロセスを意識し , また , それを評価できるようになることを目指す。 ・資料や情報を的確に検索するための基本原理を確認し , 汎用性および持続性を高めることを重視する。 ・館種を公立図書館と想定し , そこに寄せられるレファレンス質問の処理に必要な技能を対象とする。 B. 形式 課題を解決する演習形式を基本とし , 参加者自身が作業に取り組み , その結果に基づいて指導を行う。 【要点】 ・参加者が行う作業は , 研修会以前に取り組む「事前課題」とし , 一定の時間がかけられるようにする。 ・参加者が行う作業は , 参加者が勤務する図書館等で行い , 日常の活動との接続性を高めるようにする。 ・研修会では , 講師による一方向的な解説は最小限にし , 参加者とのインタラクションまたは参加者間の意見 交換を促す指導を優先させる。 C. 方法 国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベース・システム ( 以下 , 「レフア協」 ) の研修環境を活用 し , 搭載されている機能を活かした研修方法を実践する。 【要点】 ・事前課題に取り組んだ結果を , 研修会以前に , 遠隔から「レフア協」に登録できるようにする。 「レフア協」に登録された結果を , 参加者間で相互に確認し , 比較できるようにする。 ・「レフア協」のコメント機能を利用し , 研修会前に講師から結果に対する講評ができるようにする。 ・研修会終了後にも , 「レフア協」に登録された結果をもとにした活動を , 参加者ができるようにする。 D. 環境 ネットワーク環境のもとで行うことを前提とする。 【要点】 ・参加者がインターネットにアクセスし , 「レフア協」を利用できることを参加要件とする。 ・研修会場において , 「レフア協」の画面が閲覧できるように , インターネット接続がなされた講師用 pc と 投影機器を用意する。 E. 開催要領 研修会の開催は , 要点に記載する内容を目安とするが , 開催者の希望や状況に応じて柔軟に対応する。 【要点】 ・事前課題への取り組みに , 2 週間程度が確保できるように開催日を決定し , また , 開催の準備を行う。 ・研修会の実施時間は , 2 時間から 3 時間を目安として計画する。 ・参加者は , 20 人から 25 人を理想とし , 研修時間が 2 時間の場合は 25 人程度 , 3 時間の場合は 30 人程度を 目安にして調整する。 F. 事前課題 事前課題は , 研修会の目的 , 形式 , 方法 , あるいは , 開催条件を考慮して用意する。 【要点】 ・事前課題の内容は , レファレンス質問の処理に関する基本原理を解説するのに有効なものとするとともに 多様な検索・回答プロセスが想定されるものを優先させ , また , 開催地の地域資料・地域情報を求めるもの を含める。 ・事前課題の数は , 4 , 5 名の参加者が同じ課題に取り組めるようにすることを標準とする。
したことによる。 三つの理由の根拠は , 先例および関連する事象 に求めることができる。例えば , 2000 年度に開 始された日本図書館協会の「中堅職員ステップ アップ研修 (1) 」は , 図書館員の専門的能力を高 めることを目的としているが , 「レファレンスク 工スチョンの処理」は , 「レファレンスインタ ビューの方法」と「レファレンスツールの評価」 とともに , 一貫して基本科目となっている。毎年 の文部科学省地区別研修や各地の研修会の実践例 を確認すると , 「質問回答サービス」は常に主要 テーマの一つに位置づけられている。また , レ ファレンス質問の処理は , 有志による自己研修活 動である「レファレンス探検隊」で用いられてい る手法であり , 必要かっ取り組みやすい研修テー マであると予想される。さらに , レファレンス サービスに関係する啓蒙書の多くは , この技能を 中心に解説されており , 図書館員の専門的能力と して「わかりやすい」ものとみなすことができる。 3 . 2 形式 研修プログラムは , 演習形式を基本としてい る。すなわち , 参加者に事前課題に取り組むこと を求め , その結果をもとに研修会を開催する手順 としている。研修会では , 作業結果を比較しなが ら解説することを基調とした。演習は , 事前課題 に対する参加者の取り組みと , 研修会当日の講師 とのやりとり ( インタラクション ) , ならびに 参加者間の意見交換から構成される。 事前課題は , 前節で説明したように , レファレ ンス質問の処理を行うものである。この作業を事 前課題としたのには , 二つの意図があった。ーっ は , 作業時間を確保するためである。もうーっ は , 参加者の勤務している図書館の環境のもとで 解決することを狙いとしたためである。 従来行われている研修会の中には , 研修会場で 課題となるレファレンス質問を提示し , その場で 処理を行う形態のものある。これには , 会場に調 査資料が用意されていることが必要となり , 会場 の制約が大きくなる。また , 参加者によっては , その会場に用意された資料の利用に必ずしも慣れ ているわけではないことから , 実質的な調査時間 「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 31 に無駄が生じやすい。 また , 参加者が行う作業は , 勤務する図書館等 で行い , 日常の活動との関係を意識しながら進め ることが望ましいと判断した。そのため , 勤務し ている図書館で所持する資料 , 情報源の利用条件 を踏まえた取り組みとすることを優先した。 3 . 3 研修方法 研修プログラムの汎用性を高めるためには , 研 修方法に留意する必要がある。すなわち , 研修の 開催者 , 講師 , 参加者のいずれもが扱いやすい方 法を用いることが望まれる。研修プログラムで は , これに関係する二つの構想を , 方法として組 み入れた。ーっは , 研修への取り組みが参加者間 で共有され , 相互に刺激が得られるようにするこ とである。もうーっは , 研修会に参加するという 物理的な制約を少しでも減らすために , ICT を 最大限に活用した遠隔型の研修を志向することで ある。 前者は , レファレンス質問の処理に関して , 参 加者の取り組みを相互に比較できるようにするこ とを意味する。後者は , そうした取り組みをネッ トワーク上で「いつでも」「どこでも」できるよ うにし , 参加者の研修参加に対する物理的・心理 的ハードルを下げることを目指している。また , 取り組んだ結果がネットワーク上に掲載できれ ば , それ自体が記録として保持され , 意見付与や 二次利用などを可能にすることから , 研修プログ ラムとしての効用が高まるからである。 3.1 で説明した技能を対象に , 上記の方法を用 いて効果を高めるためには , ネットワーク上で研 修用のプラットフォームを用意することが考えら れる。大学の授業では , BIackboard をはじめと する教育用のプラットフォームが利用されてお り , 研修用に援用することもできる。しかし , れには経費が伴うことから , 開催者にとっては ハードルの一つとなる。そこで , レフア協の可能 性に , 筆者は着目した。このシステムでは , レ ファレンス事例を参加館が登録していることか ら , 上記の研修方法に適用できると判断したので ある。また , 無償で利用でき , かっ , 参加者に とって身近であるとともに , 搭載されているコメ
30 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 2 研修プログラムの実施プロセス 12 週前 1 1 週前 10 週前 9 週前 8 週前 7 週前 6 週前 5 週前 4 週前 3 週前 2 週前 1 週前 当日 企画案の策定 講師への打診 企画の確定 会場・設備の手配・確保 参加者の募集案内 開 参加者・人数の確定 催 者 事前課題・登録要領の 事 受取 局 事前課題の割り当て 事前課題・登録要領の 参加者送付 プレゼン資料の受取・ 処理 事前課題のレフア協 登録の督促 講師依頼の承諾 開催者との協議 参加人数の確認 事前課題・登録要領の 準備 講 事前課題・登録要領の 事務局送付 師 プレゼン資料の作成 プレゼン資料の事務局 送付 登録内容の閲覧 登録内容へのコメント 付与 募集の確認・申込 事前課題・登録要領の 参 受取 加 事前課題への取り組み 者 事前課題のレフア協登録 登録内容の閲覧 講師からのコメント確認
情報リテラシー育成を支援する公共図書館のサービス 7 参加人数は市町村図書館等職員研修が 20 数名 活発な活動が展開された。当時は大人が読ませた ( 募集定員は 30 名 ) , 館内研修も同程度だが , そ い本を高校の図書館に置くことが主流であり , 図 書館の利用はあったものの貸出は少なかった。賛 の他は概ね 10 数名程度である。他の講座と比較 否もあったが , 貸出の拡大は図書館の活性化につ して特に多くもないが少なくもない。 同じテーマをもとに複数の別の対象に実施する ながった。 ことは , 効率的な業務運営につながる。講座の内 しかし , 学校図書館の蔵書は 2 万冊弱程度が一 般的であり , 生徒は 3 年で卒業していく。卒業後 容や配布資料は対象によってアレンジするが , 工 も含めて , 身近な生活の中で必要とする情報を得 夫を重ねることで担当者のスキルアップにもつな ることができるようさらに何かできることはない がる講座を開催する場合 , 参加人数をあげるこ かと素朴に考えはじめたことが発端である。その とが課題となるが , 同じテーマを重ねることで参 後県立図書館に異動したが , サービスの根幹に変 加人数の累積が図れる。 わりはないように思う。 3 . 3 サービス展開のこれから どのような規模の図書館においても , 実践の必 「 2011 年度調査」では主に個人利用者を対象と 要性 , 可能性はあると考えている。 するサービスを調査項目として設定した。 しかし , 都道府県立図書館にとって個人利用者 《謝辞》 「 2011 年度調査」については日本図書館情報学 だけではなく市町村図書館の職員 , 学校司書や教 会研究助成を受けました。調査にご協力ください 職員 , 行政職員もサービス対象である。 ましたみなさまに厚く御礼申し上げます。 学校支援や行政支援に関連づけて実施される例 修士課程修了後もご指導くださいます田村俊作 もあり , 各自治体の図書館でも , 特定の集団を対 慶應義塾大学教授に改めて感謝申し上げます。 象とするサービスを視野にいれる必要がある。 まとまった調査はないが , 政令指定都市以外の く注 > 市町村図書館の地域住民に対する身近なサービス 1 ) 文部科学省 ; これからの図書館の在り方検討協力者会議 . 事例もあるはずである。 これからの図書館像 : 地域を支える情報拠点をめざして ( 報 対象別のサービスとしては , 特に子どもを重視 告 ). p. 10 する必要がある。子どもを対象に作成された調べ 2 ) 野末俊比古 . 情報リテラシー教育 : 図書館・図書館情報学 方案内・パスファインダーの事例がある 19 ) 。 を取り巻く研究動向 . カレントアウェアネス . N 。 .302 , 2009 年 12 月 20 日 . ( オンライン ) , 入手先 非来館者へのサービスも含めたホームページの <http:〃current.ndl.go.j p/print/book/export/htm レ 15547 〉 , 活用などサービス展開をさらに拡大させる可能性 ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). はあり , 事例の集積と整理が今後の課題である。 3 ) 高田淳子 . 公共図書館における情報リテラシー教育の枠 組みー現況調査を基に . 2012 年度日本図書館情報学会春 季研究集会発表要綱 . 日本図書館情報学会 , 2012 年 5 月 12 4 おわりに 日 , P27 ー 30 4 ) Association of CoIIege & Research Libraries. 現場の司書である筆者が , 情報リテラシー教育 Presidential Committee on lnformation Literacy: Final Report". ( オンライン ) , 入手先 を関心分野として調査していることを不思議に思 く http://www.ala.org/acr レ publications/whitepapers/ われる方もあるかもしれない。情報リテラシー教 presidential 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 育との関わりについて最後に付記しておく。図書 5 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会編 . 図書館利用教育 館利用教育から情報リテラシー教育にいたるサー ガイドライン合冊版図書館における情報リテラシー教育支 援サービスのために . 日本図書館協会 , 2001 , p. 81 ビスの流れと重なるからである。 6 ) 注 5 ) p. 11 ー 17 筆者が県立高校の学校司書であった 1990 年代 , 7 ) 注 5 ) p. 49 ー 64 県立高校の図書館では生徒が読みたい本を提供し 8 ) 大串夏身 . " 第 1 章課題解決型サービスを提供する意義 ". 図書館の最前線 3 : 課題解決型サービスの創造と展開 . 青弓 ようという試みがあり 20 ) , 利用を増やすための 0 1 三
「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 29 表 1 研修会開催概要 研修会名 開催者 平成 21 年度福井県公共図書館職 福井県立図書館 員実務講座 平成 21 年度レファレンス研修会 千葉県立中央図書館 平成 21 年度公共図書館等職員研 宮城県図書館協会 修会Ⅲ ( 午後 ) 平成 21 年度レファレンス研修会 栃木県公共図書館協議会 平成 21 年度中堅職員研修会 佐賀県公共図書館協議会 平成 21 年度レファレンス研修会 北九州市立中央図書館 平成 21 年度レファレンス研修会 千代田区立千代田図書館 平成 22 年度第 3 回大分県公立図 大分県公共図書館等連絡 書館等職員研修会 ( 午前 ) 協議会・大分県立図書館 平成 22 年度市町村図書館・公民 13 : 00 ~ 16 : 00 秋田県図書館協会 館図書室職員研修会 平成 22 年度レファレンス研修会 13 : ~ 16 : 30 千葉県立中央図書館 平成 22 年度公共図書館等職員研 10 : 30 ~ 12 : 20 宮城県図書館協会 修会Ⅲ ( 午前 ) があまりにも大きいからである。研修プログラム 旨や手順 , レフア協の取扱い方法を , 参加者が理 では , どの情報源を利用すべきかではなく , どの 解できるように作成した。「作業要領」は , 「事前 ように考えて情報源を選んだのか , 情報源の選択 課題」とともに , レフア協への登録に役立つよう にはどのような点に留意すべきかなど , レファレ 摘記する項目を整理した「処理シート」を添付し ンス質問の処理を効果的なものとする考え方を意 ている。また , レフア協の研修環境へのログイン 識することを基本的な狙いとしているからでもあ ID とパスワードを記した別紙を添えている。「作 業要領」は , 開催者から参加者に電子メールや る。 ネットワーク上で迅速に配布できるように , MS 3 研修プログラムの詳細 PowerPoint で作成した。また , それを PDF ファイルにしたものも用意した。 第三は , 研修会同日の「プレゼン資料」であ 3 . 1 目的 る。これは , MS Power Point で作成し , レファ 研修プログラムでは , 向上させることを目指す 協の画面へ推移しやすいようにした。また , 適宜 能力として , 「質問回答サービス」の処理に必要 ウエプページへのリンクを貼り , 操作効率を高め るようにした。「プレゼン資料」には , 事前課題 な技能を中心に設計した。これは , 三つの理由に よる。第一は , この能力に対する図書館界の需要 の登録結果に基づいて , 研修会当日に解説する要 が高く , 研修プログラムの汎用性が得られると認 点を記した。ただし , レフア協への登録締切から 識したことによる。第二は , この技能を向上させ 研修会当日までは数日程度しかないため , 注意す ようとする図書館員の意識が強く , 研修プログラ べき内容を例示する簡略なものとしている。 ムの持続性が確保できると理解したことによる。 なお , 「プレゼン資料」では , 回答の例示は行 第三は , この能力の意義は , 外部の者にもわかり うが , それを「模範解答」と位置づけてはいな やすく , 研修プログラムの支持が得やすいと判断 い。図書館の環境の違いによって , 「模範」の幅 参加者数 32 開催時間 13 : 00 ~ 16 : 20 13 : 00 ~ 16 : 30 13 : 00 ~ 15 : 30 開催日 2 開 9 / 10 / 21 2009 / 10 / 22 2009 / 12 / 4 2010 / 2 / 10 16 31 25 10 : 00 ~ 12 : 00 ( 午前 ) 38 43 13 : 30 ~ 16 : 30 13 : 開 ~ 16 : 00 15 : 30 ~ 17 : 30 2010 / 2 / 23 2010 / 3 / 2 2010 / 3 / 3 8 9 : 50 ~ 12 : 00 2010 / 9 / 13 2010 / 10 / 19 2010 / 10 / 21 14 2010 / 12 / 3
情報リテラシー育成を支援する公共図書館のサービス 5 図 1 図書館ツアーの例 会・人文系リサーチ・ライプラリー 神奈川県立図書館 利用するには資科を探す調べる・相談するお知らせ 資科劭 - ・情報志 ホーム > お矢せ〉県民公講座 > 図書館大公開 図害館大公開 県立図書館は市町村の図書館と何が違うの ? 何があって何をしているの ? 県立図書館の全館を司書職員の案内で X " り歩きなカち、普段は入れ、書庫内のお宝資料などもごらんいた だく人気請座。「県立図書館に行くのは初めて」という方、「行ったことはあるすれど、よく説明してほしい」、「あの 奥はどプよっているんだろう ? 」、う方に特におすすめです。 狭い階段がありますので歩きやすい靴でご参加ください。 ※神奈川県立図書館ホームページより「県民公開講座図書館大公開」 例をあげる。事例は調査結果や文献 , インター にも浸透していることを裏付けている。 ネットの情報などを参考に , 情報活用能力の育 「 2006 年度調査」と比較して , 課題解決を支援 するための調べ方案内・パスファインダーなどの 成・向上を図るという観点から選択した一例であ ツールや調べ方講座などのプログラムが増加し多 る。 「情報リテラシー育成支援サービス : 領域と目 様になっている。 標」 [ 表 ] にあるように明確に区分されて実践が サービスについての意見では , " 情報活用能力 行われているわけではなく , さまざまなサービス の個人差は大きく , 図書館のように誰でも自由に 来られる場所でサービスを行うことは重要。 " に織り込まれていることが多い。 次に述べる ( 1 ) から⑨までのサービスは , どの " パスファインダーの作成 , 活用についての振興 図書館でも必すすべてを実施しなければならない が大切。また情報活用能力の育成 , 向上を図るた ということではない。図書館の規模や状況に応じ めの具体的な事例や方法がまとまっていると参考 て実践の一つのヒントとなればと考えている。 にしやすい。 " など公共図書館における情報リテ ( 1 ) 紙媒体の利用案内 ラシー育成を支援するサービスの重要性が肯定的 利用案内はホームページにもアップされるが , に述べられている。 手軽な紙媒体はサービス案内の基本となる。 二つの調査では , 悉皆調査が困難であることか ( 2 ) 掲示・配布物 ら事例が多いと推測される大規模図書館を対象と したが , 大規模図書館以外にも事例があることを サービスの使い方を知るために , OPAC や データベースの使い方 , 日本十進分類法の見方 指摘している文献もある 10 ) 。 情報リテラシー育成を支援するサービスの重要 を示すものなどさまざまなものがある。 性に対する認識は高まっており , 実践事例もある ( 3 ) 日常的なレファレンスサービス が , 参考となるようなマニュアルや事例集もない 検索の方法 , 特定テーマの調べ方など , 個別な 質問に対応して支援する。 まま , さまざまなサービスに織り込まれる形で展 ( 4 ) 図書館ツアー (l) [ 図 1 ] 開を模索されているというのが現況である。 書庫を中心とするバックャードッアーや見学会 3 実践のヒント と講座を組み合わせることもある。図書館への 訒識を深め , 利用方法を学ぶことができる。 ( 5 ) レファレンス事例の公開 3 . 1 サービスの方法と参考事例 ホームページや国立国会図書館 " レファレンス 協同データベース " 12 ) によるレファレンス事例 サービスの方法を整理し , あわせて関連する事 キーワード 一両県立トップー県立川崎一 活動評価・統計
「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 27 投稿 「レフア協」研修モードを活用した 研修活動の実践 小田光宏 形式 , 方法 , 環境 , 開催要領 , 事前課題という項 目に区分し , ガイドラインとして役立つように はじめに 趣旨と要点を記している。なお , 骨子の主要な論 研修による図書館員の技能向上は , 時代や国を 点については , 3 で説明する。 問わず , 重要な課題の一つと認識される。日本で 2 . 2 研修会 は , 2008 年の「図書館法」改正により , 図書館 研修プログラムを適用した研修は , 2009 年度 員のための研修機会を設けることが明記され , そ に 7 会場 , 2010 年度に 4 会場にて実施された。 の必要性が再確認された。日本図書館協会は , 研 いずれも , 図書館あるいは図書館関係団体が主催 修事業委員会および認定司書事業委員会を中心に するものであり , 開催日 , 開催時間 , 参加者数な 実践に取り組み , 「公共図書館を対象にした中堅 どを示したものが , 表 1 である。 司書研修プログラム開発セミナー」 ( 2012 年 7 月 13 日 ) に代表される普及活動も行われている。 2 . 3 実施プロセス 筆者は , 2006 年度から 2010 年度において , レ 研修プログラムの実施プロセスを整理したもの ファレンスサービス技能を向上させるための研修 が図 2 である。図 2 では , 研修会の活動の時間 プログラムに関する実践的研究を行った 1 ) 。本稿 的関係を明示し , また , 開催者 ( 事務局 ) , 講師 , は , この研究の一環として作成した研修プログラ 参加者の対応状況を確認できるようにしている ムとそれを用いた実践事例の概要を , 考察・整理 が , 実践をとりまとめたものであることから , あ して示すものである。 くまで目安に過ぎない。しかし , 11 の事例に基 2 研修プログラムの概要 づくことから , 汎用性は高いと判断される。 2 . 4 教材 2 . 1 骨子 研修プログラムにおいては , 三つの教材を作成 した。第一は , 演習作業用の「事前課題」である。 筆者が作成し , 実践した研修プログラムの骨子 この内容と実例については , 3.6 で取り上げる。 を示したものが , 図 1 である。こでは , 目的 , 第二は , 事前課題に取り組んで , 国立国会図書 館の運営するレファレンス協同データベース・シ おだみつひろ : 青山学院大学教育人間科学部 ステム ( 以下 , レフア協 ) に登録するための手順 キーワード : 研修 , レファレンスサービス , レファレンス協同 を記した「作業要領」である。これは , 研修の趣 データベース
る専門書を出版する組織・機関の代表 , メディア 関係者であった。 会議では , 以下について参加者の合意が得られ 1 . メディア・情報リテラシー (MIL) は , 市民 施設 , 団体 , コミュニティ , 個人から成る , 開 かれた多元的 , 包括的 , 参加型の知識社会の持 続可能な発展のための必須条件である。 2 . MIL は知識 , 態度 , スキル , そしてアクセ ス・分析・評価・利用・創作に求められる実践 , 人権を尊重する創造的で法的・倫理的手段によ る情報や知識の伝達を組み合わせたものと定義 される。 メディア・情報リテラシーを持つ一人ひとり の個人は , 私生活や専門的業務 , 公的活動で多 様なメディアや情報源と情報の選択肢を使うこ とができる。彼らはいつどんな情報が何のため に必要か , そしてどこでどのように入手できる かを知っている。彼らはその情報を誰が何のた めに創り出したかを , メディア・情報の供給者 と記録保管する機関の役割や責務 , 機能と同様 に理解している。 彼らはメディアやあらゆる種類のコンテンツ 製作者を通して , 情報やメッセージ , 信条 , 価 値を分析し , また , 自ら発見して生み出した情 報を , 一般的 , 個人的 , 社会的状況の指標に照 らして検証することができる。 こうして MIL 能力は学習 , 批判的思考法 , 解釈の能力を包含 する情報通信技術の枠に収まらず , 職業 , 学 歴 , 社会の境界も越えて横断的に拡大する。 MIL はあらゆる種類のメディア ( ロ承文化 , 印刷物 , アナログ , デジタル ) およびあらゆる 形態・フォーマットの情報源に対応するもので ある。 3 . MIL の理念は , 2003 年のプラハ宣言「情報 リテラシー社会に向けて」 , 2005 年のアレキサ ンドリア宣言「情報社会を照らす光」 , 2011 年 のメディア・情報リテラシーに関するフェズ宣 言および IFLA のメディア・情報リテラシー勧 告などの , これまでの国際的な報告書に基づ く。 MIL は国連ミレニアム開発目標や世界人 権宣言 , 世界情報社会サミットが推進する目標 メディア・情報リテラシーに関するモスクワ宣言 25 の達成に向け , 効果的に遂行するために必要不 可欠な能力を支援するものである。 4 . これらの目的を達成するため , 個人 , コミュ ニティ , 企業 , 組織 , 国家は , それら自身およ び自身をとりまく物理的・社会的環境に関する 情報や , それらの情報を発見 , 理解 , 伝達され るさまざまなメディアの理解を継続的に必要と する。しかしながら , メディアは絶え間なく変 化するものである。新しい技術開発は仕事や余 暇 , 家庭生活 , 市民としての立場を変え続けて いる。世界中の人々は , 異なるメディア , 双方 向性 , ネットワーク , グローバル化の結合に よって一層定義される環境のなかで生活してい る。特に若者 ( に限ったことではないが ) に とって , メディアやイ中間とのネットワークの重 要性は増しており , それらが従来の学習環境以 外での成長の場として大部分を占めるように なっている。今日 , メディアの創造はもはや専 門家集団に限るものではない。すなわち , 今や 誰もがそれを生み出せるようになっている。 5 . 同時に , デジタル・ディバイドは依然として 重大な問題となっている。開発途上国の多くの 人々は , 情報やメディアをまったく入手できて いない。先進国でさえ , 技術への物理的なアク セス制限を受けており , すべての階層の多くの 人が , 生活のあらゆる面 ( 例えば , 居住地や国 家 , 地域 , 国際的レベルでの , 個人面や社会 面 , 教育面 , 職業面 ) において , 十分な情報に 基づく判断をして , 問題を解決するために必要 な , 批判的かつ高度な思考スキルを欠いてい る。 以上のことから , 「知識社会に向けたメディ ア・情報リテラシーに関する国際会議」の参加 者たちは各国の首脳に申し入れをおこなう。対 象となるのは , 国連機関 ( 特にユネスコ ) , 政 府間組織 , 非政府組織 , 教育研究機関 , 職能団 体 , メディア機関 , 文化・社会施設 , ネット ワーク , 以下の提言に関係する企業や業種であ る。 a. MIL は個人やコミュニティ , 経済や市民社会 の向上と発展に不可欠であると認識すること。
12 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 要課題としての意識を急速に高めていることが分 かる ( 図 1 参照 ) 。 また , 2011 年からは新たに三つの課題が質問 項目に加わっている。内容を見ると , 「学生の自 学自習のための支援 ( ラーニング・コモンズの整 備 , レファレンス等 ) 」が重要と回答している大 学が 498 ( 64.8 % ) , 「研究活動のための支援 ( 学 術情報への的確で効率的なアクセスの確保等 ) 」 が 298 大学 ( 38.8 % ) , 「大学の国際化への対応 ( 言語に堪能な職員の確保 , 利用環境の整備等 ) 」 が 102 大学 ( 13.3 % ) となっており , 大学図書館 の役割のうち資料提供以外の教育研究支援機能が 多様化・高度化しており , 図書館外からの期待と それに応えようとする図書館側の意識が高まって いることがわかる。 北米における図書館利用教育 , 学術情報リテラシー教育の事例 先進国とされるアメリカやカナダでの取り組み を紹介したい。 参考とするにあたっては , まず専門職制度の違 いに触れておく必要がある。アメリカの大規模大 学では法学 , 化学など学部やスクールごとに専門 の図書館があり , 当該分野の修士または博士学位 を持ち , かっ図書館情報学の修士号を持った図書 館員 (librarian) が多く働き , 専門的な質問や要 望にも応えている。図書館情報学の大学院はアメ リカ図書館協会 (American Library Association : ALA) によって質が保証されており , さらに分 野ごとの職能団体により継続的にスキルを開発で きる仕組みによって librarian が専門職として成 立し , 高いレベルの教育研究支援ができている。 カナダにおいては , 図書館情報学の修士学位は 必須の場合が多いが ( カナダの大学院も ALA の 認証を受けている ) , 専門分野については学部卒 業 ( 学士学位取得 ) 後に企業の情報部門などの勤 務経験でスキルを磨くケースもあり , また担当す る分野についても単一ではなく , 「経済学・商学・ 労使・経営管理」「西洋史・ヨーロッパ言語」な ど , ある程度の幅がある ( アメリカの小規模大学 でも , 一人のⅱ brarian が複数の分野を担当する 4 例は多い ) 。 以上の前提を踏まえ , 入学時から研究レベルま での実践について順に述べたい。 アメリカでは , 9 月の入学シーズンには日本と 同様にガイダンス・ツアーなどの各種イベントが 催され , 「図書館に親しませること」から始まり , それ以後は学習・研究のレベルが上がるにつれて 支援内容が高度化していく。 筆者が 2004 年の秋に訪れたイリノイ大学のメイ ン図書館では , 新入生向けに「 Library festival 」 と銘打って , DDC 分類項目名を使ったビンゴに 勝っと文房具がもらえるゲーム ( 分類の成り立ち を学ぶ ) , 手作りで和装本を作る体験 ( 資料を大 切にする心の涵養 ) , スタンプラリー ( 各専門図 書館を巡ってその配置と機能を知る ) を終えた参 加者には図書館のロゴが入ったフリスビーやキー ホルダーがプレゼントされる等のイベントが開催 され , 参加を通じて図書館の基礎的な活用法を学 べる仕組みとなっていた 6 ) 。このような取り組み についてはハーバード大学など多くの事例が紹介 されているが , より多くの学生を呼び込むこと や , 教員との連携 , 全学レベルでの必修化につい ては , アメリカにおいても課題となっている 7 ) 。 学部での学習段階において大きな助けとなるの が , ラーニング・コモンズ (LC) である。大学 によって若干その機能と位置づけは異なり , 定義 も諸説あるが , その成り立ちを見ると , 1970 年 代に「書く」ことを支援する目的で始まったライ ティングセンター , 1990 年代の資料の電子化に 対応したインフォメーション・コモンズなどの機 能を含めながら 8 ) , さらに大学として「教え方・ 学び方」を支援するために大学に置かれた教授学 習センターとも協力して , 「さまざまな学習ニ ズに対応できるよう電子情報など多様な学術資源 を提供し , 自発的な学習・発信を促進し支援する 空間」として現在にいたっているといえよう。 LC については , カナダを例に挙げてみたい。 筆者が 2012 年 9 月に訪れたクイーンズ大学にお いては , 図書館は「 IT サービス」「ハンディのあ る学生向け図書館サービス」「ライティングセン ター」「学習戦略開発」部門と並ぶ LC を構成す る組織の一つとなっていた。 LC は位置的にはメ