ML (MuIti Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 図 1 探究学習の「スパイラル」 19 学習活動の多くは , 情報を検索し , 収集し , 整理 する部分のプロセスが大半で , 課題の把握と評価 については , 授業時間等が足りないというような 理由から省略されることが多かった。しかし , 調 べ学習として何度も繰り返される , 情報を検索・ 収集・整理するという情報探索の内容だけでは , 技術的には向上しても , 生徒の思考力は育成でき ない。また , 与えられた課題を解決するだけでは 思考力を育成することは難しい。何が課題でどの ように学習を進めるのかということを生徒自身が 理解し学習そのものを構成できなければ , その学 習に対する生徒のモチベーションは上がらず , 自 ら「考え試行錯誤する」ということはない。与え られた課題の中から自分のテーマを設定するこ と , つまり自分だけの「問いをつくる」ことが , 生徒の「考える力」を育む学習方法となることは あまり認識されていない。 「問いをつくる」ことは , 何度もそのプロセス を繰り返すことが要求される。その「問い」に対 する自らの「意見や主張」を何度も検証し論理的 に構成することが必要となる。この「意見や主 張」は自らの問いに対する「仮説」となり , その 「仮説」を証明する , あるいは否定する証拠を探 しながら試行錯誤するスパイラル的な学習活動で ある。生徒は自分の興味から出た問いを探究する ことで , 自分の興味や自分自身を客観的に見るこ とになる。自分の思考や行動を客観的に見るこ と , この試行錯誤こそが生徒のメタ認知能力を高 めるとともに , 生徒の「考える力」である論理的 な思考力を育成する。 筆者らがつくった『問いをつくるスパイラル』 4 ) の「問いをつくる」プロセスは , 従来の探索モデ ルのような直線的なステップで表すのではなく , 生徒が「問いをつくる」過程で得た知識やスキル を巻き込んで , 竜巻のように学びを上昇しながら 拡張する , らせん形のプロセス ( 図 1 ) をたど る。これは , 探究学習がスパイラル型の学習活動 であることを示している。 また , 「問いをつくる」プロセスも , 探究学習 の「スパイラル」と同様に「スパイラル」な学習 活動である。図 2 は , 「問いをつくる」スパイラ ルを上から見た場合の図であるが , このプロセス には , 探究学習のプロセスにおける , 課題設定の 場面から評価までのすべての場面が含まれてい る。すなわち「問いをつくる」スパイラルは , 探 究学習そのものである。 探究学習は , 常に自分の問いを見直しながら , 新しい知識と技術を取り入れ , そのスパイラルを 拡張し上昇させることになる。それと同時に「問 いをつくる」プロセスを繰り返すことで , 「考え る力」すなわち思考力を生徒自身が鍛え育む。生 徒が生涯自立した学習者になるための最適なト レーニングが , 「問いをつくる」ことなのである。 「問いをつくる」スパイラルには , 三つの重要 な「問い」がある。それは , 「〇〇とは何か」と いう What の問い , 「なぜ〇〇なのか」という 「どのように〇〇すればいいのか」 Why の問い , という How の問いである。この三つの「問い」 を意識して , 生徒の始まりの疑問を生徒自身の問 いの形に変えることができれば , そのスパイラル 型学習は半分成功したに等しい。 実際の生徒の例を挙げると , 最近中国製品をよ く目にして , 中国は儲かっているのかが気になっ ている生徒は , 「中国経済」というキーワードか ら「日本で売られている中国製品には何がある か」という疑問をあげた。この疑問から始まっ て , 「なぜ , これだけ多くの中国製品が売られて
20 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 2 「問いをつくる」スパイラル 共有する ・問いをつくるプロセスを ・中間発表する ・先生や司書に相談する ・つくった問いを人に説明する 6 共有する 6 評価する 評価する ・間いをつくるプロセスを ・作業をふりかえる ・つくった問いを見直す ・与えられた条件を確認する ・気になることを書く ・つくった同いをもとに、これからの 計画を書く 課題を確認し、 計画を立てる 0 表現する ・キーワードから疑問文をつくる ・問いに選んだ理由・考えを 書いてみる ・情報を集める ・キーワードを見つける 2 情報を探す 3 情報を整理する ・キーワードを選択する ・キーワードを関連づける ・問いをとりあえす決める ・問いを分けて考える ・小さな間いを整理する ・小さな間いをべる いるのか」→「なぜ , 日本の製品を真似したもの が多いのか」→「なぜ , コピー商品といわれるも のが多く出回っているのか」と調べながら自分の 問いを問うているうちに , 「どのようにすれば , パクリ商品 ( コピー商品を本人が定義づけて名づ けた ) を防げるのか」というような「問い」にた どり着いた。そこで彼女が本当に気になっていた ことは , 中国製品が売れて中国が儲かっているこ とではなく , 日本で売られている多くの中国製コ ピー商品が日本の経済にダメージを与えているの ではないか , 日本の商品を真似した中国のコピー 商品をどうやって防げばよいのか , そのためには どのような法律があり , どのような方策が必要で どう防ぐのかを知りたかったのである。 この生徒は , What の問いから始めて , Why の問いを繰り返すうちに , 自分の本当の興味・関 心に気づき , それを明確な自分だけの問いの形に 変えることができた。自分の興味・関心を明確に する「問いをつくる」スパイラルを繰り返すこと で , かなりの知識を獲得し活用して , 最終的な 「自分だけの問い」を創った。そして , このプロ セスにおいて , かなりの試行錯誤と自分自身への 問いかけを繰り返し , そこで本当の自分に気づい たのである。 『問いをつくるスパイラル』では , 始まりの 「問い」に関して , どのようなことが知りたいの か , 自分なりの意見や主張をどんなことでもよい から併せて書くようになっている。なぜなら , の意見や主張こそが生徒自身は気づかない「始ま りの仮説」になっていることが多いからだ。「〇 〇だと思う」という主張には , 「〇〇じゃないの だろうか」という本人の推測が含まれていること が多く , これが「始まりの仮説」になる。「問い」 をつくるスパイラルを何回もめぐって試行錯誤し ていく中で , この「始まりの仮説」を肯定できる ような , あるいは否定するような証拠を見つけな がら , 常にこの「仮説」を考察・検証する。 このことは , 先に挙げた例において , 「中国製
品が売られすぎてない ? 」→「こんなに中国製品 が安く売られていたら日本製品が売れないじゃな い」→「それも , 日本の商品にそっくりな商品が 多すぎるから ? 」→「日本の商品がきちんと売れ るためにはどうすればいいの ? 」というような主 張を最終的には検証することになった , このこと からも明らかである。 このスパイラルをより効果的するために , さま ざまなワークシートがある。「問いをつくる」ス パイラルをめぐっている間 , 「問い」の変化や自 分の感情の変化をワークシートに記入すること で , 自分の思考や認知行動の変化を客観的に見る ことができ , また行き詰ったときには , そのワー クシートを誰かに見せることで , それまでのプロ セスをたどってもらうことができる。生徒の思考 や認知行動を可視化することは , これからの学習 において , 客観的な視点を身につけ , 自分自身を 分析・評価するという , 重要な作業である。 思考カ・判断力・表現力の育成を支援する探究 学習のカリキュラムには , 生徒自らが与えられた 課題の中からも自分の「問い」を設定でき , その 成果とともに自らの「問いをつくる」プロセスを も評価する内容を含むことが重要になる。学校図 書館が探究学習を支援するためには , 「問いをつ くる」プロセスを可視化する方法を提供するとと もに , そのスパイラル型学習を支援していくこと が重要となる。思考のプロセスを可視化するため のワークシートや生徒の興味を明確にする発想法 など , さまざまなツールをカリキュラムの中に組 み込めるよう , その指導方法とともに提供するこ とが学校図書館に求められる。 5 探究学習が成功するカギ 探究的な学習が成功するためには , もうーっ重 要な要素がある。それは , さまざまなメディアで 表現されているものを「読解する」ことである。 表現されているものには , 必ずそれを作った者 の意図が含まれている。作者の意図をくみ取るこ と , 理解することができなければ , そこで得たも のは自分の新しい知識にはなり得ない。思考カ・ 判断力とともに重要視されている表現力を身につ ML (Multi Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 21 けるためには , その表現されているものに隠され ている「意図」を正しく理解することが重要で , その「意図」を読み解くことができなければ , そ の表現方法を身につけることは難しい。 OECD による国際的な学力に関する調査 , 生 徒の学習到達度調査 (PISA) における「読解力」 は , 「 PISA 型読解力」として従来の日本の「読 解力」とは区別されている。根本的に違う点は , 「 PISA 型読解力」は実生活の中で活用する能力 であり , 利用する際に熟考や評価を伴い , 思考カ や表現力をも必要とする能力と定義されているこ とである。この点では , 文章を読み解き必要な情 報を取り出すことを目的としている従来の日本型 読解力とは異なる。 さらに , 「 PISA 型読解力」は , 文章で表され る「連続型テキスト」を読むだけでなく , データ や図・グラフなどの視覚的に表現された「非連続 型テキスト」を読むことも求められ , その他にテ キストそのものの評価や解釈なども含まれてい る。日本では , 視覚的に表現された「非連続型テ キスト」を読むことやテキストの一部を読んで推 測するというような指導はあまり行われていな い。また , 「連続型テキスト」の代表が小説など の物語に偏っているということも課題になるだろ う。論述された文章 , 論理的に構成された文章か ら , 著者の意見を批判的に読むなど , さまざまな ジャンルの文章を読解することが必要である。 このことについては , 現在多くの学校図書館で 行っている自由な読書を決して否定しているわけ ではない。読書好きであるということは , PISA においても「 PISA 型読解力」の向上を促す重要 な要素であると分析されている。 PISA の調査結 果で衝撃的であった , 2000 年 8 位から落ち続け た日本の読解力が , 2009 年度の調査において再 度 8 位に上昇した背景にはこの理由がある。 2g9 年の結果に対する文部科学省の分析 5 ) によると , 読書について「読書は , 大好きな趣味の一つだ」 などの肯定的な回答をした生徒の割合が , 2000 年調査に比べて統計的に高くなっているのに対し て , 「読書は時間のムダだ」などの否定的に回答 した生徒の割合は , 2000 年調査に比べて統計的 に低くなっている。このことは , 読書が好き ,
ML (MuIti Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 7 おわりに 2013 年 1 月 13 日 , 東京大学で行われた「子ど もの読書活動を考える国際シンポジウムー子ども たちの本読み事情 : アジア各国の今とこれから」 において , 基調講演を行った CaroI CoIIier Kuhlthau 博士は , 「探究的な学びをもたらす子ど もたちの読書」シンポジウム終了後のディスカッ ションの中ではっきりとこう言った。 "NOt seeking information, But seeking meaning ! ! " もしかすると私たちは自分に必要な情報を探し ているのではなく , 自分の意図することを他の人 が表現したものから探し出そうとしているのでは ないだろうか。 そう考えると , MuIti Literacy はこれから , Meaning Literacy となり , 自分が知りたい意図 を他人のテキストから読み解くことができるリテ ラシーを意味するのではないか。学校図書館で身 につけるカ , そのすべてが「 meaning 」でつな がっている。 く注 > 1 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会「情報リテラシー教 育の実践すべての図書館で利用教育を』 ( JLA 図書館実践 シリーズ ) , 日本図書館協会 , 2010 , 180P. 第 5 章 , 天野由貴「生きるための情報活用能力を育成する 「図書館戦争」から身近な問いと知識をつなぐ」 p. 61 ー 70 2 ) 森田英嗣「 ICT が変化させた社会と教育」「教育と文化」 68 巻 6 号 , 2012 , p. 6 ー 19 3 ) 文部科学省「 OECD における「キー・コンピテンシー」に ついて」 http://www.mext.go.jp/b—menu/shingi/chukyo/ chukY03/()()4/siryo/05111603 / 開 4. htm ( accesse d 20132.15 ) 4 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会図書館利用教育ハン ドブック学校図書館 ( 高等学校 ) 版作業部会「問いをつくる スパイラルー考えることから探究学習をはじめよう ! 」日本 図書館協会 , 2011 , 123P. 5 ) 文部科学省「 OECD 生徒の学習到達度調査一 289 年調査 国際結果の要約」 http://www.mext.go.jp.com/onent/a—menu/education/ detai レーiCSFi1eS/afiddfi1e/2010/12/07/1284443ー01. pdf (accessed 20132.15 ) ( 2013.2.15 受理 ) 23
で認識されている図書館情報サービスの役割に ついても触れるべきである。目的と達成目標 は , しかるべき公式の機関から出される教育ポ リシーと一致させる必要があり , また親機関や 国から学生・卒業生の学習成果・能力として求 められている資質を満たす必要がある。 計画と評価図書館情報学教育プログラムでは , 計画・評価の過程を明確にし , それらを定期的 に行っていくべきである。そうした過程では , 図書館情報学分野やそれを含む上位社会におい て今後予測される変化を踏まえつつ , ポリシー や手順が絶えず見直される必要がある。教員 , 職員 , 学生を計画・評価の活動に関わらせると ともに , 設置機関や実務家にも意見を求めるべ きである。教育プログラムは , その国で規範と される教育要件や専門職認証評価要件を満たし ービ 達成目標 G2. カリキュラムの要素 ていなければならない。 コア・カリキュラムでは , 以下に挙げる要素が 重要である。 図書館情報学力リキュラムのコア要素は以下の 原則 と方法を組み込むこと ・カリキュラムの中に地域固有の先住民の知識 り組みに繋がるものを含めること ・過去の取り組みのうち , デジタル環境での取 5 . 情報資源管理 , これには情報の組織化・処 4 . 情報の伝達過程 ス計画 3 . 情報ニーズの評価とそれに対応するサ 2 . 情報の生成 , 伝達 , 利用 報ポリシー・倫理 , 図書館情報学の歴史 1 . 情報環境・社会が世の中に及ばす影響 , 情 とおりである。 7 . 図書館情報学分野のあらゆる成果とサービ 6 . 情報の研究 , 分析 , 解釈 式や媒体も多様である 理・検索・資料保存・修復が含まれ , 表現形 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン スに対して情報通信技術を応用すること 8 . ナレッジマネジメント 9 . 情報機関の運営 10. 情報と図書館利用の成果に対する量的・質 的評価 37 り , 図書館情報学分野における研究や実践の理論 スやその他の教育的経験から構成されるべきであ 的や達成目標に基づいて , 統合された一連のコー 図書館情報学力リキュラムは , プログラムの目 達成目標 G3. カリキュラム 2012 ) 。 統性・革新・敬意・言語の問題がある (Lilley, となる価値観やテーマとしては , 伝統・保護・正 語で表現される ) 。一方 , 先住民に共通する中核 マをもっている ( 自身の文化構造から派生する言 community) は , 自分たち独自の価値観やテー る。そのため , それぞれの先住民社会 (indigenous 民にはそれぞれ共通点もあるが , 大きな違いもあ てさらに理解が深まるであろう。地域固有の先住 これらの特徴は , その価値観を知ることによっ が重要である点 うした人びとに合った調査方法を用いること る情報資源やサービスについて調べる際 , そ ・地域固有の先住民の図書館利用者が必要とす ことの影響 語が , 先住民の知識の枠組みに内在している ・地域固有の先住民の [ 思考 ] 過程・信条・ 構造についての理解 ・地域固有の先住民の知識の重要性 , 多様性 , ること。その範囲は以下を含む。 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識す ては , 以下の指針を示す。 番目の地域固有の先住民の知識パラダイムについ 文書の範囲を超えている。しかしコア要素 11 上記の要素すべてについて述べることは , この すること 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識
してもよい。 現代の図書館編集方針 2005 年 12 月現代の図書館編集委員会 ③「シリーズ記事」 近年話題となっているテーマの中で , 継続的な掲載 が適当なテーマがあれば、「シリーズ記事」として連載 する。 1 . 編集方針 本誌は , 広く世界へ目を向け , 国内外における図書館 や情報提供機関等が直面する実践的課題を踏まえ , 図書 館および情報提供機関等の発展に貢献する論考を掲載す る。 日本図書館協会が発行する季刊の「理論誌」として , 理論的なテーマやある程度の分量を要するテーマを積極 的に取り上げる。 2 . 想定読者 ・日本図書館協会会員 ・公共図書館の職員および関係者 ・大学図書館の職員および関係者 ・学校図書館の職員および関係者 ・専門図書館の職員および関係者 ・図書館情報学および関連分野の研究者 ・出版情報産業など関連業界の関係者 ・その他図書館および図書館情報学に関心をもつ者 ・その他の図書館関係者、図書館に関心をもつ者 3 . 想定記事内容 ・現代の図書館界の展望を示す動向記事 ・我が国の図書館の参考に資する海外論文の紹介および 翻訳 ・図書館における諸活動の実際の記録 ・図書館に関する調査・研究の成果 ・日本図書館協会が関係する研究会・事業の成果 ・情報サービス・出版など関連分野の注目すべき トピッ ク 5 . 原稿種別 く依頼原稿〉 上記 4. ① ~ ③の記事については , 編集委員会が執筆 候補者を選定し , その候補者に対して編集委員および編 集事務局が執筆を打診する。承諾が得られれば , 編集事 務局が書面をもって正式な執筆依頼を行う。 依頼原稿であっても , 提出された原稿の掲載の可否に ついては , 編集委員会の審議を経て決定する。その際に 原稿の一部修正 , 書き直しを求めることがある。 依頼する原稿はいずれも未発表のものとする。原稿分 量は、図・表・写真等を含め刷り上り 6 頁程度 ( 1 頁 = 22 字 x 80 行 ) が望ましい。なお , 執筆者には原稿執筆 料を支払う。 く投稿原稿〉 本誌を日本図書館協会会員が行った研究成果の発表の 場として活用すべく , 会員からの投稿を積極的に受付け る。投稿は常時受付け , 誌面構成においては、「①一般記 事」と同様に扱う。投稿原稿の掲載の可否は , 編集委員 会の審議を経て決定する。その際 , 原稿の一部修正、書 き直しを求めることがある。 投稿原稿は必す未発表論文とし , 理論誌という性格を踏 まえ , 記述にあたっては可能な限りデータや客観的事実 を用いることを求める。原則として工ッセーや感想文的 な原稿は掲載しない。原稿分量は , 図・表・写真等を含 め刷り上り 6 頁程度 ( 1 頁 = 22 字 x 80 行 ) が望ましい。 なお , 執筆者には原稿執筆料を支払う。 4 . 誌面構成 ①「一般記事」 近年話題となっているテーマの中から , 注目すべき ものを取り上げ「一般記事」とする。記事内容につい ては , 主として上記 3. を想定する。 ②「特集」 近年話題となっているテーマの中から , 多面的に掘 り下げられるテーマがあれば , 「特集」として取り上げ る。特集を構成する記事数は , 5 本程度を目安とする。 2 , 3 本程度なら , 「小特集」として構成してもよい。 「特集」は , 当該テーマを様々な面から理解できるよ う , 総論および各論から構成する。場合によっては、 1 頁ほどの前文 ( 「特集にあたって」 ) を総論の代わりと
34 現代の図書館 VoI. 51 N 。 .1 ( 2013 ) 探索し , その結果をレフア協に事例として登録す ることを求めるものとしている。質問に対する回 答を求めるという内容は , 奥の先行事例があり , 目新しさはないが , 広く了解が得られる手法であ る。ただし , 研修プログラムでは , 回答そのもの ではなく , 回答に至るプロセスを重視することを 強調した。すなわち , 回答が得られたかどうかで はなく , 仮に回答が得られなくてもプロセスやア プローチに妥当性があったかどうかに着目した。 これは , 参加者の勤務する図書館の相違に配慮し てのことである。どんなに妥当なアプローチで あっても , 利用できるレファレンス情報源に限界 があれば , 十分な回答は難しいからである。 言い方を換えれば , この研修プログラムは , 正 解を求めることを意図していない。レファレンス 事例に関して , その評価の一部に「解決 / 未解 決」が位置づけられるが , 極めて相対的である。 同じ検索結果に関して , 何らかのヒントが欲しい 者の場合は「解決」であっても , 網羅的な情報を 求める者にとっては「未解決」だからである。 また , 登録された結果の解説では , 取り組みを 比較することを主眼にした。それゆえ , 比較の効 果が高まるよう , 事前課題の設定に工夫をしてい る。例えば , 同じ回答を入手できる多くの情報源 が存在するもの , 同じ情報源を利用しても索引語 や検索語を変えると結果が異なってしまうもの , 情報源によって観点の相違や掲載情報の幅が大き いもの , といった具合である。また , レファレン ス質問の背景にある利用者のニーズや利用者の属 性などにより , 検索方法や情報源の選択に違いが 生じることなども意識できるよう , 研修会当日に 解説したり , コメントによって強調したりした。 さらに , 事前課題を用意するにあたって , 扱う テーマに関しては , 公立図書館職員を対象にする という点から , 特定の主題に集中しないようにし た。これに加えて , 資料案内の技能を高められる ように , 文献を求めるレファレンス質問と事実を 確認するレファレンス質問とを , バランスよく組 み入れるようにした。また , 公立図書館で尋ねら れることが多いと言われる , 人物情報や統計情報 を検索する課題を含めるようにした。さらに , 開 催地の地域資料を活用したり , 地域情報を確認し たりするものを必ず含めた。図 3 は , 北九州市 立中央図書館における研修会での実例を , 出題の 趣旨や留意点とともに示したものである。 4 、おわりに 効果的な研修プログラムを構築するには , 実践 の積み重ねが必要である。本稿で示した研修プロ グラムを参考にして , レファレンスサービスの研 修が促され , かっ充実することになれば , 筆者と してこの上ない歓びである。 ただし , これからの研修活動は , 実施すること だけが重視されるのではなく , 研修の実態を記録 し , 考察を加える営みを伴わなくてはならない。 すなわち , 研究的な視点から取り扱う必要があ る。とりわけ , 一定の性質を有する研修プログラ ムを「モデル」として位置づけ , そのモデルの有 効性 , すなわち , 妥当性 , 重要性 , 持続性など を , 実証する活動を行うことが必要となろう。こ の実証作業は , 研修という実践に基づいて行うこ とから , 自然科学における実験のようには進めら れないが , 少しでも客観性を担保できるように 多様な調査方法を駆使して推進することが求めら れる。 本稿で提示した研修プログラムについても , うした実証作業が必要とされよう。その作業は , 前述した研究活動の主目的であるが , その成果に ついては , 稿を改めて示すこととしたい。 く注 > 1 ) 研究は , 日本学術振興会科学研究費補助金を得て , 「成果 共有型ネットワークを活用した図書館員の技能育成に関する 研究」 ( 萌芽研究・研究代表者・小田光宏 , 286 ー 2007 年度 ) と , 「成果共有型ネットワークを活用した独習 / 協調研修プ ログラムに関する実証的研究」 ( 基盤研究 (C) ・研究代表者・ 小田光宏 , 2008 ー 2010 年度 ) の 2 期で行なった。 ( 2012.10.17 受理 ) く補記 > 本稿受理後 , 研修プログラムの有効性を検証した研究成果と して , 次の論考を著している。 小田光宏「成果共有型ネットワークを活用したレファレンス 研修プログラムの有効性に関する実証的研究」『図書館界』 64 巻 5 号 , 2013 年 1 月 , p. 310 ー 326
18 現代の図書館 V 矼 51 N 。 .1 ( 2013 ) 要になる。 筆者の学校図書館では , 2001 年から「総合的 な学習の時間」の第 1 時限目として図書館メディ ア・オリエンテーションを実施してきた 1 ) 。この オリエンテーションは , 学習指導要領の改訂に伴 い新たに設けられることになった , 「総合的な学 習の時間」における学習活動を , 学校図書館が積 極的に支援するための第一歩として , その教科を 担当する教員組織と図書館の合同企画として実施 してきた。また , 情報リテラシー教育導入のため のオリエンテーションでもあり , この実施に至っ ては高校の教科「情報」を担当する教員との棲み 分けにより , 図書館が情報リテラシー教育を担当 することとなった。 生徒が「総合的な学習の時間」を始めとし , そ の他のさまざまな教科における学習活動を主体的 に学習していくためには , その土台として必要な 知識とスキルを学び身につけることが重要であ る。生徒自身が , このオリエンテーション以後行 われるさまざまな調べ学習の中で , このオリエン テーションで学んだ記憶を活用し , 自らの情報リ テラシーをも活用し育成していく。学校図書館は 調べ学習の礎を築くことから始まる。 3 調べ学習から探究学習へ 2012 年 4 月から中学校で , 2013 年 4 月から高 校で実施されることとなった新学習指導要領で は , 社会に出た際に実践で試されるカ , 「思考 カ・判断力・表現力」の育成を今までの知識や技 能の習得とともに重視している。新学習指導要領 で重視している「思考カ・判断力・表現力」は , 教科等を横断した課題解決的な学習や探究的な活 動を充実することで育成するとしている。このこ とは , 生徒がそれまでに身につけた知識やスキル を活用する学習活動を , 「総合的な学習の時間」 の中で教科横断的に展開しなければならないこと を意味している。また , 学校図書館を活用してと あるように , その学習の場が学校図書館であるこ とが明白になったことで , 探究的な学習を支援す るということも明白となった。 そして , この学習活動は知識基盤社会をよりよ く生きていくためのカ , OECD におけるキー コンピテンシー ( 主要能力 ) に基づいている。 キー・コンピテンシーの三つのカテゴリー① 相互作用的に道具を用いる能力 , ②異質な集団で 交流する能力 , ③自立的に活動する能力 2 ) は , すべて「単なる知識や技能だけではなく , 技能や 態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活 用して , 特定の文脈の中で複雑な要求 ( 課題 ) に 対応することができる力」 3 ) を構成している。 れは , 生徒が将来社会に出た際に遭遇するさまざ まな課題や問題を自分のカで解決できる , 自立し た学習者として社会を構成するために必要な力で ある。その力を育成する探究的な学習では , 生徒 が主体的にさまざまな情報源を活用し , 複雑な課 題を自分のカで解決するという学習活動が必須と なる。また , その学習は個人で行うだけでなく , 社会構成主義的な学習観に基づいて , 集団の中で 行われることが重要である。他の学習者とコミュ ニケーションをとりながら相互作用的に学び合 い , それぞれの課題を解決していく過程で自らの 中に新しい知識を取り込むとともに再構成し組織 化する。このような学習を通して生徒は自立した 学習者となっていくのである。 探究的な学習は , すべての教科の応用科目とし て設定されるとともに , 自らのカで獲得した知識 やスキルの活用を組み立て , 集団の中でコミュニ ケーションしながら行われる主体的な学習活動で ある。また , 新学習指導要領の実施は , 学校図書 館の活動にも大きな変化をもたらす。学校図書館 が支援する学習の形態が変われば , その活動内容 も大きく変わらなければならない。学校図書館が 支援すべき活動内容について , 再構築が必要と なったのである。 4 問いをつくる 思考カ・判断力・表現力の育成を学校図書館が どのように行うのか。この答えは , 思考のプロセ スの可視化にある。知識を活用するためには , 批 判的に考え , 判断し , 評価するという思考のプロ セスを習得することが不可欠である。 しかし , 今まで調べ学習として実施されてきた
38 現代の図書館 V 51 N 。 .1 ( 2013 ) 的枠組みを学生に提供するべきである。専門的な 能力を修得し実践する機会も , 教育プログラムの 一環として必要である。専門分野で関心をもたれ ている事柄への認識が , そのプログラムに行きわ たっていることが望ましい。 原則 公式文書カリキュラムは , 図書館情報学教育プ ログラムにおける各科目の目的・履修条件 , 内 容 , 学習成果 , 評価方法を示すような , 一般に 入手できる公式文書である必要がある。 一般教育の範囲幅広い一般教育 ( 他の学問分野 の主題 ) は , 図書館情報学の専門家を養成する 総合的教育プログラムの重要な構成要素である が , 学生はそうした一般教育を幅広く修得する べきである。 コアとなる図書館情報学の学習課題政府や専門 職団体が公表している教育ポリシーには重要な 知識や技能が示されており , 図書館情報学教育 プログラムはそうした教育ポリシーに沿うべき である。 実習科目 , インターンシップ , フィールドワーク 図書館情報学教育プログラムを通じて , 専門 的な理論とそれが現場でいかに応用されるかと いう相互作用を , 学生に対して実践的に理解さ せる必要がある。高い学習成果を求める場合 は , 理論を応用した事例調査や図書館現場での 活動プロジェクトを含めてもよい。 汎用性の高い技能教育や成績評価を計画する際 は , 学生の対人コミュニケーションスキルや , チームで協働する能力 , 時間とタスクを管理す る能力について , 伸ばしたり高めたりする配慮 が必要である。専門的なレベルでは , 学生の分 析力や問題解決能力を伸ばすことに重点を置く べきである。 教え方遠隔学習やオンライン学習の方法が用い られる場合 , カリキュラムの内容と教育の質 は , 通学課程で体験される内容と同等である必 要がある。こうした方法を提供する際は , 技術 的な要件を学生向け文書に明記しなければなら ない。 継続教育実務に従事する図書館員や情報専門家 にとって有益なワークショップや講習会を実施 すべきである。それを通じて , 図書館員や情報 専門家は変化する社会の中で能力を保持するこ とができるし , また教育者が現場の課題や動向 を認識し続けることもできる。実施の際は他機 関と提携を図ってもよい。 カリキュラムの定期的見直し正式なカリキュラ ムの見直しは定期的に行い , 次の見直しは , 遅 くとも 2017 年までに行うのが望ましい。見直 しの際は設置機関・実務者・専門職団体 , さら には学生・教員からの意見を入れるべきであ り , IFLA の標準に関する委員会 (Standards Committee) の監督を受けることになる。 G4. 教職員 達成目標 図書館情報学教育プログラムに携わる教職員 は , 親機関の同列の部門で与えられる地位と権限 を同様に有するべきである。教育職や研究職は , 教員に求められる学術的・専門的資格や管理能 カ , リーダーシップ適性を備えていることが望ま しい。 原則 教員教員 ( 教育職 ) の数は , 図書館情報学教育 プログラムの達成目標をかなえるように十分に 配置される必要がある。専任教員の資質とし て , 所定の教育分野における高い研究能力や , 情報技術に堪能であること , 効率的に教育を進 められること , 持続した研究業績 , 適切な専門 職団体に積極的に参加することが望まれる。専 門的な科目を担当する教員には , 他の学問分野 において大学教員に求められるのと同様に , 研 究業績を持続的に発表することが求められる。
8 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 社 . 2 開 8. p. 13 ー 20 9 ) 高田淳子 . 公共図書館における情報リテラシー教育の現 状 . 現代の図書館 . vol. 45 , no. 1 , 2 開 7 , P205 ー 212 10 ) 慈道佐代子 . 情報リテラシー教育と利用教育 : 大学図書館 と公共図書館 . 図書館・図書館学の発展 : 21 世紀の初頭の図 書館 . 日本図書館研究会 . 2010. P219 ー 220 (1) 図書館ツアーの事例。 神奈川県立図書館 . ・・図書館大公開 ". ( オンライン ) , 入手 先 く https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/ information/disclose-l. html) , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 12 ) 国立国会図書館 . ・・レファレンス協同データベース ". ( オ ンライン ) , 入手先 く http:〃crd.ndl.go.j p/reference/ 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). レファレンス事例集と連動した事例。 福井県立図書館 . ・・レファレンス事例集 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //www.library.pref.fukui.jp/reference/reference— top. html#jirei 〉 , ( 参照 2013-2-25 ). 13 ) 国立国会図書館 . ・・リサーチ・ナビ公共図書館パスファ インダーリンク集 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //rnavi. ndl. go. jp/research—guide/pubpath. php 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 14 ) ビジネス支援と関連づけて作成された事例。大阪府立中之 島図書館 . ・ゼジネス支援サービスビジネス Web 情報源 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //www.library.pref.osaka.jp/nakato/busi—top.html 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 15 ) 学校支援と関連づけて実施された事例。 大阪府立中央図書館 . ・・大阪府立中央図書館における学校 支援サービスの取組み ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.library.pref.osaka.j p/lib/kiyo—pdf/kiy039-02. pdf 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 16 ) 行政支援と関連づけて実施された事例。 神奈川県立図書館 . 、・県の新採用職員研修で図書館活用法 を案内しました ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/recommend/?p= 112 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 17 ) 大阪府立中央図書館 . " 図書館サービス紹介パネル ". ( オ ンライン ) , 入手先 く http 〃 www.library.pref.osaka.j p/centra レ panerukasidasi0. html) , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 18 ) 鳥取県立図書館 . " 法情報検索マップ年金問題 ". ( オン ライン ) , 入手先 <http ・ //www.library.pref.tottori.jP/Ct/0ther000000200/ nenkin3. pdf 〉 , ( 参照 2013-2 ー 25 ). 19 ) 横浜市立図書館 . " 横浜探偵団 ( よこはまたんていだん ) ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/kids/ tanteidan/ 〉 , ( 参照 2013 ー 2-25 ). 20 ) 学校図書館 de 予約します ! ! 決定版 . 学校図書館問題研究 会神奈川支部 . 1991. 64P ( 2012.2.25 受理 )