11 図 1 マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割 解決すべき各課題について「重要」と回答した大学図書館の割合の変移 ・・ 0 ・・利用者サー ビスの向上 - ロ - 情報リテラ シー教育の 充実 強化 との連携の ーー社会・地域 の明確化 * の位置づけ ・・・・大学図書館 環境の整備 提供・保存 ー電子情報の 90.0 % 80. O% 50 ℃ % 40.0 % 70 ℃ % 60.0 % 30.0 % 20.0 % 10.0 % 0.0 % 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 764 -- ロ 201 1 年 769 【参考】調査時の国公私立大学数 734 752 760 747 出典 : 文部科学省学術情報基盤実態調査「大学図書館編」 ( 作図は筆者 ) * 「大学図書館の位置づけの明確化」については 2011 年調査より「機能面」の質問項目から「組織・運営 面」に移り , 「大学全体における大学図書館の位置づけの明確化」として訊ねられており定義が若干変化 したが , 参考にこの年についても回答率を記載した。 ここで言う「情報リテラシー」は IT スキルを 注 : 「大学図書館編」の回答は図書館が記入することから , 除く「学術情報リテラシー」と捉えられていると推察される。 ても , 「情報リテラシー」は「コンピュータや ネットワークの基礎的な理解 , コンピュータやソ フトウェアの操作 , 情報検索能力等」とされ , IT スキルとしての比重が高く , 「大学図書館編」 ではなく「コンピュータ及びネットワーク編」の 中で教育に関する実施調査がおこなわれている。 しかしその教育についての関心は高まっており , 2011 年 5 月時点で全国 769 大学のうち 94.5 % に あたる 727 大学が何らかの情報リテラシー教育を 実施していると回答している。 「情報リテラシー教育を実施した組織の区分」 を見てみると , 「学部・研究科」が最も多く 432 % となっており , 「情報処理関係施設」が 10.7 % と続くが , この調査では定義の性質上「図 書館」単体での実施は 1.1 % と非常に少ない。し かし「複数組織で実施」が 33 % となっており , 教 館が自らの機能として主体的に向上させるべき重 は 494 大学 ( 642 % ) と急激に増加し , 大学図書 ( 9.7 % ) であったのに対して , 5 年後の 2011 年に 回答している大学は , 2006 年にはわすか 71 大学 教育の充実」を「解決すべき課題として重要」と 館編」を見ると , 「機能面」で「情報リテラシー な変化が生まれてきている。同調査の「大学図書 が多かったが , こ数年で図書館側の意識に大き 応じてガイダンス等の形で部分的に担当すること このように , これまで図書館は学部等の依頼に る場合などはここに含まれるものと考えられる。 ている点を見ると , 図書館が学部等と協働してい 検索技術」について 672 大学 ( 87.4 % ) が実施し 育内容のうち図書館と学術情報に関係する「情報
情報リテラシー育成を支援する公共図書館のサービス 3 特集′目目ロ住ロロロ 情報リテラシー育成を支援する 公共図書館のサービス ◆実践のヒントを中心に 子 古子 田 べる。 にはじめに 2 情報リテラシー育成を支援するサービス マルチリテラシーとは何か。その形はまだとら えがたいが , さまざまなリテラシーの可能性が包 2 . 1 情報リテラシーについて 含されている。その一つが情報リテラシーであ 情報リテラシー (information literacy) は , 「情 る。 報活用能力」と訳されることもある。 大学や学校で情報リテラシー教育は必要とされ アメリカでは , 1989 年にアメリカ図書館協会 ているが , 学校生活は長い人生の中の一時であ (American Library Association) 情報リテラシー諮 る。情報社会において , 情報活用能力の育成は生 問委員会 (Presidential Committee on lnformation 涯にわたって必要とされる。すでに 2006 年の Literacy) による最終報告 4 ) が発表され , その後 「これからの図書館像 : 地域を支える情報拠点を の情報リテラシー展開の契機となった。 めざして ( 報告 ) 」において , 公共図書館の情報 日本では , 1993 年 , 日本図書館協会図書館利 リテラシー育成の重要性が述べられている 1 ) 。 用教育委員会が発足し , 2001 年には『図書館利 しかし , 2009 年の研究文献レビューでは公共 用教育ガイドライン合冊版図書館における情報 図書館の研究や文献はほとんどないことが指摘さ リテラシー教育支援サービスのために』 5 ) を刊行 れている 2 ) 。社会教育機関である公共図書館の役 している。各館種別のガイドラインとその共通基 割は重要だが , 具体的にどのような実践が可能な 盤となる「総合版」 6 ) から構成されており , 主に のであろうか。 2011 年度に筆者が実施した「公共図書館にお 大学図書館を中心に普及した。 ける情報リテラシー教育の現況についての調査」 3 ) 「公共図書館版」 7 ) も作成されたが , 当時の図 ( 以下「 2011 年度調査」とする。 ) では , 情報リ 書館サービスの現況に対応したものとはなってい テラシーの育成に関連する事例があることを確認 なかったこともあり , 普及はしなかったものの公 共図書館のサービスの変遷とともに関連するサー している。 ビスが育まれていくことになる。 公共図書館における情報リテラシー教育の現況 とサービスの方法及び参考となる事例について述 日本の公共図書館については一定の共通識に 、ルい卩 もとづいた定義や用語などもまだ明確にされてい ない。 じゅんこ : 神奈川県立図書館 たかだ 「 2011 年度調査」では , 仮枠として定義を情報 キーワード : 情報リテラシー , 情報リテラシー教育 , 情報活用 リテラシー教育は公共図書館だけではなくすべて 能力 , 利用教育 , 図書館利用教育 , 公共図書館
0 I 0 図書館における指定管理者制度の導入の検討結果について 2012 年調査く報告〉 41 0 図書館における指定管理者制度の導入の 検討結果について 2012 年調査 く報告〉 2012 年 8 月 1 6 日 0 調査の概要 日本図書館協会図書館政策企画委員会 図書館における指定管理者制度の導入の検討結果について全国的な状況を把握するために標記の調 査を実施した。 4 月 27 日付で 47 都道府県立図書館に依頼文書と調査票を郵送し、回答期限は 6 月 28 日とした。 7 月末日までに 45 図書館から回答をいただいた。 Ⅱ調査結果 ( 1 ) 都道府県立図書館について 「 2011 年度に導入予定」には 4 月時点で指定管理者制度を導入している自治体を含む。 表 1 都道府県立図書館の検討状況について 検討結果 2006 年度に導入をした 2007 年度に導入をした 2012 年度以降に導入を予定している 検討の結果、導入しないとしている 合計 回答数 1 1 2 32 36 図書館名 岩手県立図書館 岡山県立図書館 指定管理者の性格等 民間企業 ※ 1 ※ 2 ※ 1 : 施設管理のみ※ 2 : 図書館の基幹的業務については直営、施設管理業務のみ ・「検討の結果、導入しないとしている」の回答数に「現時点で導入は考えていない」を含む ・「検討中」「検討をおこなっていない」、未記入等があわせて 9 件あった。 ( 2 ) 市区町村立図書館について ・別表 1 は本調査の回答にこれまでの調査等で確認した情報を加えて作成した。 ・別表 1 中、図書館名に※を付した館は、集計には含まれていない ( 「日本の図書館 2011 」の調査・ 集計対象による ) 。 ・ 2012 年度以降に導入を予定している自治体数については全体の数を公表するにとどめた。
品が売られすぎてない ? 」→「こんなに中国製品 が安く売られていたら日本製品が売れないじゃな い」→「それも , 日本の商品にそっくりな商品が 多すぎるから ? 」→「日本の商品がきちんと売れ るためにはどうすればいいの ? 」というような主 張を最終的には検証することになった , このこと からも明らかである。 このスパイラルをより効果的するために , さま ざまなワークシートがある。「問いをつくる」ス パイラルをめぐっている間 , 「問い」の変化や自 分の感情の変化をワークシートに記入すること で , 自分の思考や認知行動の変化を客観的に見る ことができ , また行き詰ったときには , そのワー クシートを誰かに見せることで , それまでのプロ セスをたどってもらうことができる。生徒の思考 や認知行動を可視化することは , これからの学習 において , 客観的な視点を身につけ , 自分自身を 分析・評価するという , 重要な作業である。 思考カ・判断力・表現力の育成を支援する探究 学習のカリキュラムには , 生徒自らが与えられた 課題の中からも自分の「問い」を設定でき , その 成果とともに自らの「問いをつくる」プロセスを も評価する内容を含むことが重要になる。学校図 書館が探究学習を支援するためには , 「問いをつ くる」プロセスを可視化する方法を提供するとと もに , そのスパイラル型学習を支援していくこと が重要となる。思考のプロセスを可視化するため のワークシートや生徒の興味を明確にする発想法 など , さまざまなツールをカリキュラムの中に組 み込めるよう , その指導方法とともに提供するこ とが学校図書館に求められる。 5 探究学習が成功するカギ 探究的な学習が成功するためには , もうーっ重 要な要素がある。それは , さまざまなメディアで 表現されているものを「読解する」ことである。 表現されているものには , 必ずそれを作った者 の意図が含まれている。作者の意図をくみ取るこ と , 理解することができなければ , そこで得たも のは自分の新しい知識にはなり得ない。思考カ・ 判断力とともに重要視されている表現力を身につ ML (Multi Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 21 けるためには , その表現されているものに隠され ている「意図」を正しく理解することが重要で , その「意図」を読み解くことができなければ , そ の表現方法を身につけることは難しい。 OECD による国際的な学力に関する調査 , 生 徒の学習到達度調査 (PISA) における「読解力」 は , 「 PISA 型読解力」として従来の日本の「読 解力」とは区別されている。根本的に違う点は , 「 PISA 型読解力」は実生活の中で活用する能力 であり , 利用する際に熟考や評価を伴い , 思考カ や表現力をも必要とする能力と定義されているこ とである。この点では , 文章を読み解き必要な情 報を取り出すことを目的としている従来の日本型 読解力とは異なる。 さらに , 「 PISA 型読解力」は , 文章で表され る「連続型テキスト」を読むだけでなく , データ や図・グラフなどの視覚的に表現された「非連続 型テキスト」を読むことも求められ , その他にテ キストそのものの評価や解釈なども含まれてい る。日本では , 視覚的に表現された「非連続型テ キスト」を読むことやテキストの一部を読んで推 測するというような指導はあまり行われていな い。また , 「連続型テキスト」の代表が小説など の物語に偏っているということも課題になるだろ う。論述された文章 , 論理的に構成された文章か ら , 著者の意見を批判的に読むなど , さまざまな ジャンルの文章を読解することが必要である。 このことについては , 現在多くの学校図書館で 行っている自由な読書を決して否定しているわけ ではない。読書好きであるということは , PISA においても「 PISA 型読解力」の向上を促す重要 な要素であると分析されている。 PISA の調査結 果で衝撃的であった , 2000 年 8 位から落ち続け た日本の読解力が , 2009 年度の調査において再 度 8 位に上昇した背景にはこの理由がある。 2g9 年の結果に対する文部科学省の分析 5 ) によると , 読書について「読書は , 大好きな趣味の一つだ」 などの肯定的な回答をした生徒の割合が , 2000 年調査に比べて統計的に高くなっているのに対し て , 「読書は時間のムダだ」などの否定的に回答 した生徒の割合は , 2000 年調査に比べて統計的 に低くなっている。このことは , 読書が好き ,
12 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 要課題としての意識を急速に高めていることが分 かる ( 図 1 参照 ) 。 また , 2011 年からは新たに三つの課題が質問 項目に加わっている。内容を見ると , 「学生の自 学自習のための支援 ( ラーニング・コモンズの整 備 , レファレンス等 ) 」が重要と回答している大 学が 498 ( 64.8 % ) , 「研究活動のための支援 ( 学 術情報への的確で効率的なアクセスの確保等 ) 」 が 298 大学 ( 38.8 % ) , 「大学の国際化への対応 ( 言語に堪能な職員の確保 , 利用環境の整備等 ) 」 が 102 大学 ( 13.3 % ) となっており , 大学図書館 の役割のうち資料提供以外の教育研究支援機能が 多様化・高度化しており , 図書館外からの期待と それに応えようとする図書館側の意識が高まって いることがわかる。 北米における図書館利用教育 , 学術情報リテラシー教育の事例 先進国とされるアメリカやカナダでの取り組み を紹介したい。 参考とするにあたっては , まず専門職制度の違 いに触れておく必要がある。アメリカの大規模大 学では法学 , 化学など学部やスクールごとに専門 の図書館があり , 当該分野の修士または博士学位 を持ち , かっ図書館情報学の修士号を持った図書 館員 (librarian) が多く働き , 専門的な質問や要 望にも応えている。図書館情報学の大学院はアメ リカ図書館協会 (American Library Association : ALA) によって質が保証されており , さらに分 野ごとの職能団体により継続的にスキルを開発で きる仕組みによって librarian が専門職として成 立し , 高いレベルの教育研究支援ができている。 カナダにおいては , 図書館情報学の修士学位は 必須の場合が多いが ( カナダの大学院も ALA の 認証を受けている ) , 専門分野については学部卒 業 ( 学士学位取得 ) 後に企業の情報部門などの勤 務経験でスキルを磨くケースもあり , また担当す る分野についても単一ではなく , 「経済学・商学・ 労使・経営管理」「西洋史・ヨーロッパ言語」な ど , ある程度の幅がある ( アメリカの小規模大学 でも , 一人のⅱ brarian が複数の分野を担当する 4 例は多い ) 。 以上の前提を踏まえ , 入学時から研究レベルま での実践について順に述べたい。 アメリカでは , 9 月の入学シーズンには日本と 同様にガイダンス・ツアーなどの各種イベントが 催され , 「図書館に親しませること」から始まり , それ以後は学習・研究のレベルが上がるにつれて 支援内容が高度化していく。 筆者が 2004 年の秋に訪れたイリノイ大学のメイ ン図書館では , 新入生向けに「 Library festival 」 と銘打って , DDC 分類項目名を使ったビンゴに 勝っと文房具がもらえるゲーム ( 分類の成り立ち を学ぶ ) , 手作りで和装本を作る体験 ( 資料を大 切にする心の涵養 ) , スタンプラリー ( 各専門図 書館を巡ってその配置と機能を知る ) を終えた参 加者には図書館のロゴが入ったフリスビーやキー ホルダーがプレゼントされる等のイベントが開催 され , 参加を通じて図書館の基礎的な活用法を学 べる仕組みとなっていた 6 ) 。このような取り組み についてはハーバード大学など多くの事例が紹介 されているが , より多くの学生を呼び込むこと や , 教員との連携 , 全学レベルでの必修化につい ては , アメリカにおいても課題となっている 7 ) 。 学部での学習段階において大きな助けとなるの が , ラーニング・コモンズ (LC) である。大学 によって若干その機能と位置づけは異なり , 定義 も諸説あるが , その成り立ちを見ると , 1970 年 代に「書く」ことを支援する目的で始まったライ ティングセンター , 1990 年代の資料の電子化に 対応したインフォメーション・コモンズなどの機 能を含めながら 8 ) , さらに大学として「教え方・ 学び方」を支援するために大学に置かれた教授学 習センターとも協力して , 「さまざまな学習ニ ズに対応できるよう電子情報など多様な学術資源 を提供し , 自発的な学習・発信を促進し支援する 空間」として現在にいたっているといえよう。 LC については , カナダを例に挙げてみたい。 筆者が 2012 年 9 月に訪れたクイーンズ大学にお いては , 図書館は「 IT サービス」「ハンディのあ る学生向け図書館サービス」「ライティングセン ター」「学習戦略開発」部門と並ぶ LC を構成す る組織の一つとなっていた。 LC は位置的にはメ
新規会員募集中 日本図書館協会は、 : いつでもア せひこの機会にお手続きを ! 新規こ入会の方と、こ紹介の会員の方には、入会特典のプレゼントがあります。 各種キャンペーンについては、ホームページをこ覧ください。 JLA 企画入会 トップに調査部キャンペーン 日本図書館協会検索 木岡 全国図書館大会 兄 0 夏 & 年度入会キャンペーン 図書館の発展を支えて亶 0 年 日本図書館協会 〒 104-0033 東京都中央区新川 1 -11-14 TeI 03-3523-0811 代 キャンペーン担当直通 TeI 03-3523-0815 Fax 03-3523-0841 e-mail kikaku@jla.0「.jp
ML (MuIti Literacy) に替わる次の ML とは何か ? 7 おわりに 2013 年 1 月 13 日 , 東京大学で行われた「子ど もの読書活動を考える国際シンポジウムー子ども たちの本読み事情 : アジア各国の今とこれから」 において , 基調講演を行った CaroI CoIIier Kuhlthau 博士は , 「探究的な学びをもたらす子ど もたちの読書」シンポジウム終了後のディスカッ ションの中ではっきりとこう言った。 "NOt seeking information, But seeking meaning ! ! " もしかすると私たちは自分に必要な情報を探し ているのではなく , 自分の意図することを他の人 が表現したものから探し出そうとしているのでは ないだろうか。 そう考えると , MuIti Literacy はこれから , Meaning Literacy となり , 自分が知りたい意図 を他人のテキストから読み解くことができるリテ ラシーを意味するのではないか。学校図書館で身 につけるカ , そのすべてが「 meaning 」でつな がっている。 く注 > 1 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会「情報リテラシー教 育の実践すべての図書館で利用教育を』 ( JLA 図書館実践 シリーズ ) , 日本図書館協会 , 2010 , 180P. 第 5 章 , 天野由貴「生きるための情報活用能力を育成する 「図書館戦争」から身近な問いと知識をつなぐ」 p. 61 ー 70 2 ) 森田英嗣「 ICT が変化させた社会と教育」「教育と文化」 68 巻 6 号 , 2012 , p. 6 ー 19 3 ) 文部科学省「 OECD における「キー・コンピテンシー」に ついて」 http://www.mext.go.jp/b—menu/shingi/chukyo/ chukY03/()()4/siryo/05111603 / 開 4. htm ( accesse d 20132.15 ) 4 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会図書館利用教育ハン ドブック学校図書館 ( 高等学校 ) 版作業部会「問いをつくる スパイラルー考えることから探究学習をはじめよう ! 」日本 図書館協会 , 2011 , 123P. 5 ) 文部科学省「 OECD 生徒の学習到達度調査一 289 年調査 国際結果の要約」 http://www.mext.go.jp.com/onent/a—menu/education/ detai レーiCSFi1eS/afiddfi1e/2010/12/07/1284443ー01. pdf (accessed 20132.15 ) ( 2013.2.15 受理 ) 23
現代の図書館第 51 巻第 1 号 ( 通巻 205 号 ) 編集 : 日本図書館協会現代の図書館編集委員会 2013 年 3 月 30 日発行 発行 : 社団法人日本図書館協会〒 104 ー開 33 東京都中央区新川 1-11-14 谷 03 ( 3523 ) 0811 ( 代 ) 振替 : 開 1 開ート 9375 ( 出版事業部専用 ) 定価 : 1 , 365 円 ( 本体 1 , 3 開円 ) 印刷 : 有限会社吉田製本工房 Libraries T0day VOI. 51 NO. 1 ⑥ 2013 J apan Library Association * 本誌からの無断転載を禁じます ISSNOOI 6-6332 本文は中性紙を使用しています
0 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン 35 0 訳 : 日本図書館協会国際交流事業委員会 国際図書館連盟 (IFLA) 教育研修分科会 ガイドライン 図書館情報学専門職教育プログラムのための このガイドラインは , 2012 年夏の国際図書館連 盟 (IFLA) 専門委員会 (ProfessionaI Committee) の会議で承認を得たものである。 目次 はじめに 目的 ガイドライン 0 GI. G2. G3. G4. G5. G6. G7. 参昭 大きな枠組み カリキュラムの要素 カリキュラム 教職員 学生 支援 教育資源と施設 このガイドラインは , 2000 年に行われた前回 の大幅な改訂に代わるものであり , 21 世紀に 入ってからの図書館情報サービスの発展を反映さ せ , ライプラリー・スクールのカリキュラムに取 り入れている。ガイドラインでは , 図書館情報学 教育プログラムにとって不可欠な目標の枠組みを 設定した。すなわち , 図書館情報学教育プログラ 0 ムに含めることが求められる有益なコア・カリ キュラムの要件 , 教育プログラムに関わる教員 , 職員 , 学生にとって必要な事柄 , そして , 情報資 源その他の資源によって教育プログラムを十分に 支える必要性である。 はじめに 図書館情報学教育プログラムには , 長く輝かし い歴史がある。過去の教育プログラムでは , 図書 館という建物の中における図書その他の資料のコ レクション形成が中心に据えられ , 図書館には , それらの資料の選択・収集・組織化・検索・貸出 を学んだ職員が配置されてきた。今日の図書館情 報学教育プログラムは , 物理的なコレクションや 建物の枠を超えてインターネットという仮想空間 に広がっている。今日では公共部門・民間部門・ 第三セクターを問わず , さまざまな状況下におけ る利用者への情報提供に力点が置かれているが , そこでの利用者とは必ずしも , 図書館の建物や図 書館環境に入ることができるとは限らず , あるい は入る意思をもっとも限らない。アーカイブズ・ 博物館・記録管理部門のパートナーとの協力がま すます顕著になっており , 共通の課題認識を教育 プログラムに含めることが適切である。教育プロ グラムは , [ 学部・ ] 実務レベル , 大学院・専門 レベル , 研究・博士レベルで提供されている。 こに示されるガイドラインは , 主に大学院と学部
18 現代の図書館 V 矼 51 N 。 .1 ( 2013 ) 要になる。 筆者の学校図書館では , 2001 年から「総合的 な学習の時間」の第 1 時限目として図書館メディ ア・オリエンテーションを実施してきた 1 ) 。この オリエンテーションは , 学習指導要領の改訂に伴 い新たに設けられることになった , 「総合的な学 習の時間」における学習活動を , 学校図書館が積 極的に支援するための第一歩として , その教科を 担当する教員組織と図書館の合同企画として実施 してきた。また , 情報リテラシー教育導入のため のオリエンテーションでもあり , この実施に至っ ては高校の教科「情報」を担当する教員との棲み 分けにより , 図書館が情報リテラシー教育を担当 することとなった。 生徒が「総合的な学習の時間」を始めとし , そ の他のさまざまな教科における学習活動を主体的 に学習していくためには , その土台として必要な 知識とスキルを学び身につけることが重要であ る。生徒自身が , このオリエンテーション以後行 われるさまざまな調べ学習の中で , このオリエン テーションで学んだ記憶を活用し , 自らの情報リ テラシーをも活用し育成していく。学校図書館は 調べ学習の礎を築くことから始まる。 3 調べ学習から探究学習へ 2012 年 4 月から中学校で , 2013 年 4 月から高 校で実施されることとなった新学習指導要領で は , 社会に出た際に実践で試されるカ , 「思考 カ・判断力・表現力」の育成を今までの知識や技 能の習得とともに重視している。新学習指導要領 で重視している「思考カ・判断力・表現力」は , 教科等を横断した課題解決的な学習や探究的な活 動を充実することで育成するとしている。このこ とは , 生徒がそれまでに身につけた知識やスキル を活用する学習活動を , 「総合的な学習の時間」 の中で教科横断的に展開しなければならないこと を意味している。また , 学校図書館を活用してと あるように , その学習の場が学校図書館であるこ とが明白になったことで , 探究的な学習を支援す るということも明白となった。 そして , この学習活動は知識基盤社会をよりよ く生きていくためのカ , OECD におけるキー コンピテンシー ( 主要能力 ) に基づいている。 キー・コンピテンシーの三つのカテゴリー① 相互作用的に道具を用いる能力 , ②異質な集団で 交流する能力 , ③自立的に活動する能力 2 ) は , すべて「単なる知識や技能だけではなく , 技能や 態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活 用して , 特定の文脈の中で複雑な要求 ( 課題 ) に 対応することができる力」 3 ) を構成している。 れは , 生徒が将来社会に出た際に遭遇するさまざ まな課題や問題を自分のカで解決できる , 自立し た学習者として社会を構成するために必要な力で ある。その力を育成する探究的な学習では , 生徒 が主体的にさまざまな情報源を活用し , 複雑な課 題を自分のカで解決するという学習活動が必須と なる。また , その学習は個人で行うだけでなく , 社会構成主義的な学習観に基づいて , 集団の中で 行われることが重要である。他の学習者とコミュ ニケーションをとりながら相互作用的に学び合 い , それぞれの課題を解決していく過程で自らの 中に新しい知識を取り込むとともに再構成し組織 化する。このような学習を通して生徒は自立した 学習者となっていくのである。 探究的な学習は , すべての教科の応用科目とし て設定されるとともに , 自らのカで獲得した知識 やスキルの活用を組み立て , 集団の中でコミュニ ケーションしながら行われる主体的な学習活動で ある。また , 新学習指導要領の実施は , 学校図書 館の活動にも大きな変化をもたらす。学校図書館 が支援する学習の形態が変われば , その活動内容 も大きく変わらなければならない。学校図書館が 支援すべき活動内容について , 再構築が必要と なったのである。 4 問いをつくる 思考カ・判断力・表現力の育成を学校図書館が どのように行うのか。この答えは , 思考のプロセ スの可視化にある。知識を活用するためには , 批 判的に考え , 判断し , 評価するという思考のプロ セスを習得することが不可欠である。 しかし , 今まで調べ学習として実施されてきた