34 現代の図書館 VoI. 51 N 。 .1 ( 2013 ) 探索し , その結果をレフア協に事例として登録す ることを求めるものとしている。質問に対する回 答を求めるという内容は , 奥の先行事例があり , 目新しさはないが , 広く了解が得られる手法であ る。ただし , 研修プログラムでは , 回答そのもの ではなく , 回答に至るプロセスを重視することを 強調した。すなわち , 回答が得られたかどうかで はなく , 仮に回答が得られなくてもプロセスやア プローチに妥当性があったかどうかに着目した。 これは , 参加者の勤務する図書館の相違に配慮し てのことである。どんなに妥当なアプローチで あっても , 利用できるレファレンス情報源に限界 があれば , 十分な回答は難しいからである。 言い方を換えれば , この研修プログラムは , 正 解を求めることを意図していない。レファレンス 事例に関して , その評価の一部に「解決 / 未解 決」が位置づけられるが , 極めて相対的である。 同じ検索結果に関して , 何らかのヒントが欲しい 者の場合は「解決」であっても , 網羅的な情報を 求める者にとっては「未解決」だからである。 また , 登録された結果の解説では , 取り組みを 比較することを主眼にした。それゆえ , 比較の効 果が高まるよう , 事前課題の設定に工夫をしてい る。例えば , 同じ回答を入手できる多くの情報源 が存在するもの , 同じ情報源を利用しても索引語 や検索語を変えると結果が異なってしまうもの , 情報源によって観点の相違や掲載情報の幅が大き いもの , といった具合である。また , レファレン ス質問の背景にある利用者のニーズや利用者の属 性などにより , 検索方法や情報源の選択に違いが 生じることなども意識できるよう , 研修会当日に 解説したり , コメントによって強調したりした。 さらに , 事前課題を用意するにあたって , 扱う テーマに関しては , 公立図書館職員を対象にする という点から , 特定の主題に集中しないようにし た。これに加えて , 資料案内の技能を高められる ように , 文献を求めるレファレンス質問と事実を 確認するレファレンス質問とを , バランスよく組 み入れるようにした。また , 公立図書館で尋ねら れることが多いと言われる , 人物情報や統計情報 を検索する課題を含めるようにした。さらに , 開 催地の地域資料を活用したり , 地域情報を確認し たりするものを必ず含めた。図 3 は , 北九州市 立中央図書館における研修会での実例を , 出題の 趣旨や留意点とともに示したものである。 4 、おわりに 効果的な研修プログラムを構築するには , 実践 の積み重ねが必要である。本稿で示した研修プロ グラムを参考にして , レファレンスサービスの研 修が促され , かっ充実することになれば , 筆者と してこの上ない歓びである。 ただし , これからの研修活動は , 実施すること だけが重視されるのではなく , 研修の実態を記録 し , 考察を加える営みを伴わなくてはならない。 すなわち , 研究的な視点から取り扱う必要があ る。とりわけ , 一定の性質を有する研修プログラ ムを「モデル」として位置づけ , そのモデルの有 効性 , すなわち , 妥当性 , 重要性 , 持続性など を , 実証する活動を行うことが必要となろう。こ の実証作業は , 研修という実践に基づいて行うこ とから , 自然科学における実験のようには進めら れないが , 少しでも客観性を担保できるように 多様な調査方法を駆使して推進することが求めら れる。 本稿で提示した研修プログラムについても , うした実証作業が必要とされよう。その作業は , 前述した研究活動の主目的であるが , その成果に ついては , 稿を改めて示すこととしたい。 く注 > 1 ) 研究は , 日本学術振興会科学研究費補助金を得て , 「成果 共有型ネットワークを活用した図書館員の技能育成に関する 研究」 ( 萌芽研究・研究代表者・小田光宏 , 286 ー 2007 年度 ) と , 「成果共有型ネットワークを活用した独習 / 協調研修プ ログラムに関する実証的研究」 ( 基盤研究 (C) ・研究代表者・ 小田光宏 , 2008 ー 2010 年度 ) の 2 期で行なった。 ( 2012.10.17 受理 ) く補記 > 本稿受理後 , 研修プログラムの有効性を検証した研究成果と して , 次の論考を著している。 小田光宏「成果共有型ネットワークを活用したレファレンス 研修プログラムの有効性に関する実証的研究」『図書館界』 64 巻 5 号 , 2013 年 1 月 , p. 310 ー 326
「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 27 投稿 「レフア協」研修モードを活用した 研修活動の実践 小田光宏 形式 , 方法 , 環境 , 開催要領 , 事前課題という項 目に区分し , ガイドラインとして役立つように はじめに 趣旨と要点を記している。なお , 骨子の主要な論 研修による図書館員の技能向上は , 時代や国を 点については , 3 で説明する。 問わず , 重要な課題の一つと認識される。日本で 2 . 2 研修会 は , 2008 年の「図書館法」改正により , 図書館 研修プログラムを適用した研修は , 2009 年度 員のための研修機会を設けることが明記され , そ に 7 会場 , 2010 年度に 4 会場にて実施された。 の必要性が再確認された。日本図書館協会は , 研 いずれも , 図書館あるいは図書館関係団体が主催 修事業委員会および認定司書事業委員会を中心に するものであり , 開催日 , 開催時間 , 参加者数な 実践に取り組み , 「公共図書館を対象にした中堅 どを示したものが , 表 1 である。 司書研修プログラム開発セミナー」 ( 2012 年 7 月 13 日 ) に代表される普及活動も行われている。 2 . 3 実施プロセス 筆者は , 2006 年度から 2010 年度において , レ 研修プログラムの実施プロセスを整理したもの ファレンスサービス技能を向上させるための研修 が図 2 である。図 2 では , 研修会の活動の時間 プログラムに関する実践的研究を行った 1 ) 。本稿 的関係を明示し , また , 開催者 ( 事務局 ) , 講師 , は , この研究の一環として作成した研修プログラ 参加者の対応状況を確認できるようにしている ムとそれを用いた実践事例の概要を , 考察・整理 が , 実践をとりまとめたものであることから , あ して示すものである。 くまで目安に過ぎない。しかし , 11 の事例に基 2 研修プログラムの概要 づくことから , 汎用性は高いと判断される。 2 . 4 教材 2 . 1 骨子 研修プログラムにおいては , 三つの教材を作成 した。第一は , 演習作業用の「事前課題」である。 筆者が作成し , 実践した研修プログラムの骨子 この内容と実例については , 3.6 で取り上げる。 を示したものが , 図 1 である。こでは , 目的 , 第二は , 事前課題に取り組んで , 国立国会図書 館の運営するレファレンス協同データベース・シ おだみつひろ : 青山学院大学教育人間科学部 ステム ( 以下 , レフア協 ) に登録するための手順 キーワード : 研修 , レファレンスサービス , レファレンス協同 を記した「作業要領」である。これは , 研修の趣 データベース
16 現代の図書館 VOL51 No. 1 ( 2013 ) http://www.ala.org/acr レ publications/whitepapers/ presidential ( 参照 2013 ー 02-04 ) 3 ) The Association of College and Research Libraries ( ACRL) . lnformation Literacy Competency Standards for Higher Education. 208 http://www.ala.org/acr レ standards/informationliteracy competency ( 参照 2013 ー 02-04 ). 4 ) 中央教育審議会 . 学士課程教育の構築に向けて ( 答申 ). 2 開 8 年 12 月 24 日 http://www.mext.go.jp.com/onent/b—menu/shingi/ toushin/—icsFiIes/afieIdfiIe/2008/12/26/1217067_001. pdf ( 参照 2013 ー 02 ー 04 ). 5 ) 学術情報基盤実態調査 ( 旧大学図書館実態調査 ) ー平成 23 年度結果の概要 ( 集計大学数は国公私立合計で 769 校 ) 6 ) 梅澤貴典 . 私立大学図書館協会国際図書館協力委員会 2004 年度海外派遣研修報告書 . 2 開 5 年 2 月 21 日 http.//www.jaspul.org/pre/kokusai-cilc/haken report2004. html ( 参照 2013 ー 2 ー 11 ) 7 ) 江上敏哲 . アメリカの大学図書館における情報リテラシー 教育活動ーハーバード大学等の事例から . 情報の科学と技 術 . 59 巻 7 号 , 2 開 9 , p. 334 ー 340 8 ) 山内祐平 . ラーニングコモンズと学習支援 . 情報の科学と 技術 . 61 巻 12 号 , 2011 , p. 478 ー 482 9 ) 米国大学図書館協会 (ACRL) 高等教育機関における図書 館基準 (Standards for Libraries in Higher Education) 翻訳 : http.//www.ala.org/ala/mgrps/divs/acrレstandards/ highered—i 叩 anese. pdf ( 参照 2013 ー 2 ー 11 ) 10 ) 梅澤貴典 . 大学図書館職員の教育研究支援能力ー米国大学 図書館協会の基準に学ぶ , 職員と成果の評価による改善策 . 図書館雑誌 . Vol. 103 , No. 11 , 2 開 9 , p. 753 ー 755 (1) 大城善盛 . アメリカの大学図書館界における情報リテラ シーの研究ー理論と実践の歴史的分析を通して . 花園大学文 学部研究紀要 . Vol. 42 , 2010 , P26-53 12 ) Stephen Bosch and Kittie Henderson. coping with the TerribIe Twins ー PeriodicaIs Price Survey 2012. ん川な カ〃翔雇 VOI. 137 lssue 8 , 2012 , n/a http: 〃 lj. libraryj ournal. C0m/2012/04/fundin g/coping-with- the-terrible-twins-peri0dicals-price-survey-2012/ ( 参照 2013 ー ( 2013.2.14 受理 ) 組織研究 . Vol.2, 2011 , p. 33 ー 44 と , 教育研究支援の向上につながる評価システム . 大学事務 13 ) 梅澤貴典 . 大学図書館における戦略的アウトソーシング 2 ー 13 )
そのためには , まずは大学が置かれた状況 ( 年 間予算に対して図書館の資料費・人件費が占める 割合など ) を知り , 経営側と共通の認識を持っこ とが必要となる。さらに中央教育審議会の答申な どを受けて文部科学省が近い将来にどのような政 策を実行に移そうとしているかを推察し , それに 対して図書館がいかなる貢献ができるかを提案す るべきであろう。例えば学術情報リテラシーは先 述の答申でも学士力の汎用的技能に挙げられてい るが , その教育の高度化に図書館が貢献すること によって学生が論文や統計データなどの客観的論 拠に基づいたレポートや論文を書けるようにな り , 各科目担当教員の指導上の負担を減らして教 育の本質化に注力できる点などを , 講習会の参加 者アンケート等のデータ ( 各種データベースや学 術ツールの認知度・利用度など ) を分析して予測 される効果を示す必要がある。 改善に必要となる人的・財政的負担の措置につ いては , 複数の大学が連携して資料価格の交渉を するコンソーシアム形成や , 各大学図書館団体が おこなっている研修や研究事業について国公私立 の壁を越えた情報交換による効果拡大・知識交流 などの取り組みに加えて , 図書館自らが業務効率 化の可能性 ( 専門性の必要なコア業務を洗い出し て専任職員の力をそこに傾注し , TA などの活用 によって非正規雇用者にとっても技能取得と成長 の機会を作りながら教育研究支援機能を高度化す る戦略的アウトソーシング 13 ) など ) を提案し , 大学側との対話によって有効な解決策を探る必要 がある。 6 まとめ これまでは査読など一定のプロセスを経た学術 情報のみが冊子体で流通していたが , その在り方 は多種多様となった。現在は根拠の不明確な情報 を個々人が大量にインターネット上に発信してお り , それらは有料情報よりも容易に手に入る上 に , 一見まことしやかに書かれている。適正な学 術情報リテラシー教育を受ける機会を持たない若 者は , 扇動的な情報に踊らされやすい上に , 誤っ た情報を再発信 (SNS のシェアなど ) すること マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割 15 に関して無頓着になる可能性が高い。大学時代 は , 従来の教養・専門教育とは別に , このような 意識を改めて社会人として情報を扱う自覚を持っ ための期間とも考えられるため , 総合的な学術情 報リテラシーの涵養は大学の果たすべき重要な役 割の一つとなっている。 インターネットの影響はグーテンベルクによる 活版印刷の発明とは比較にならないほど大きい が , それすらも変革の途上に過ぎず , 今後もさら に変わっていくだろう。しかし , 社会で生きてい くために必要な力の根底は普遍的で , 今も昔もさ ほど変わらないのではないだろうか。「問題の解 決に際して裏付けのある情報を集め , 歴史的・国 際的な視点を含め多角的に分析して客観的に批判 し , 新たな解決策を立案し , 論理的に文章化・図 示化して伝達可能な形で発信する能力」の涵養を 支援することに関して言えば , 大学と図書館とそ の職員の果たすべき役割は常に変わらない。 しかし「図書」や「館」という言葉の前提がす でに変わっているように , 情報を扱う専門職とし て求められる能力も , 高度情報化・国際化への対 応が必要となる。例えば , 大学図書館の職員には 司書課程で教わる知識・技能に加え , 英語力やコ ンピュータ技術 , 対人コミュニケーション能力な どが重要になってきている。ランガナタンによる 図書館学の 5 原則にある「成長する有機体」と は , その職員の成長すべき点をも示唆しており , もうーっの原則である「利用者の時間を節約す る」とは , ともすれば一般検索エンジンやフリー 百科事典に頼り切って無駄な遠回りをしがちな学 生に対し , 正しい学術情報リテラシー教育をおこ なうことも示しており , これらの原則もまた普遍 なのではないだろうか。 く注 > 1 ) 大城善盛 . 大学図書館を中心とした情報リテラシー論ーア メリカ・オーストラリア・イギリスにおける議論を中心に . 大学図書館研究 . Vol. 82 , 2 開 8 , P23 ー 32 2 ) 大城善盛 . アメリカの大学図書館界における情報リテラ シーの研究ー理論と実践の歴史的分析を通して . 花園大学文 学部研究紀要 . VOL42 , 2010 , p. 26 ー 53 原文 : presidential Committee on lnformation Literacy. Final Report, 1989
情報リテラシー育成を支援する公共図書館のサービス 7 参加人数は市町村図書館等職員研修が 20 数名 活発な活動が展開された。当時は大人が読ませた ( 募集定員は 30 名 ) , 館内研修も同程度だが , そ い本を高校の図書館に置くことが主流であり , 図 書館の利用はあったものの貸出は少なかった。賛 の他は概ね 10 数名程度である。他の講座と比較 否もあったが , 貸出の拡大は図書館の活性化につ して特に多くもないが少なくもない。 同じテーマをもとに複数の別の対象に実施する ながった。 ことは , 効率的な業務運営につながる。講座の内 しかし , 学校図書館の蔵書は 2 万冊弱程度が一 般的であり , 生徒は 3 年で卒業していく。卒業後 容や配布資料は対象によってアレンジするが , 工 も含めて , 身近な生活の中で必要とする情報を得 夫を重ねることで担当者のスキルアップにもつな ることができるようさらに何かできることはない がる講座を開催する場合 , 参加人数をあげるこ かと素朴に考えはじめたことが発端である。その とが課題となるが , 同じテーマを重ねることで参 後県立図書館に異動したが , サービスの根幹に変 加人数の累積が図れる。 わりはないように思う。 3 . 3 サービス展開のこれから どのような規模の図書館においても , 実践の必 「 2011 年度調査」では主に個人利用者を対象と 要性 , 可能性はあると考えている。 するサービスを調査項目として設定した。 しかし , 都道府県立図書館にとって個人利用者 《謝辞》 「 2011 年度調査」については日本図書館情報学 だけではなく市町村図書館の職員 , 学校司書や教 会研究助成を受けました。調査にご協力ください 職員 , 行政職員もサービス対象である。 ましたみなさまに厚く御礼申し上げます。 学校支援や行政支援に関連づけて実施される例 修士課程修了後もご指導くださいます田村俊作 もあり , 各自治体の図書館でも , 特定の集団を対 慶應義塾大学教授に改めて感謝申し上げます。 象とするサービスを視野にいれる必要がある。 まとまった調査はないが , 政令指定都市以外の く注 > 市町村図書館の地域住民に対する身近なサービス 1 ) 文部科学省 ; これからの図書館の在り方検討協力者会議 . 事例もあるはずである。 これからの図書館像 : 地域を支える情報拠点をめざして ( 報 対象別のサービスとしては , 特に子どもを重視 告 ). p. 10 する必要がある。子どもを対象に作成された調べ 2 ) 野末俊比古 . 情報リテラシー教育 : 図書館・図書館情報学 方案内・パスファインダーの事例がある 19 ) 。 を取り巻く研究動向 . カレントアウェアネス . N 。 .302 , 2009 年 12 月 20 日 . ( オンライン ) , 入手先 非来館者へのサービスも含めたホームページの <http:〃current.ndl.go.j p/print/book/export/htm レ 15547 〉 , 活用などサービス展開をさらに拡大させる可能性 ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). はあり , 事例の集積と整理が今後の課題である。 3 ) 高田淳子 . 公共図書館における情報リテラシー教育の枠 組みー現況調査を基に . 2012 年度日本図書館情報学会春 季研究集会発表要綱 . 日本図書館情報学会 , 2012 年 5 月 12 4 おわりに 日 , P27 ー 30 4 ) Association of CoIIege & Research Libraries. 現場の司書である筆者が , 情報リテラシー教育 Presidential Committee on lnformation Literacy: Final Report". ( オンライン ) , 入手先 を関心分野として調査していることを不思議に思 く http://www.ala.org/acr レ publications/whitepapers/ われる方もあるかもしれない。情報リテラシー教 presidential 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 育との関わりについて最後に付記しておく。図書 5 ) 日本図書館協会図書館利用教育委員会編 . 図書館利用教育 館利用教育から情報リテラシー教育にいたるサー ガイドライン合冊版図書館における情報リテラシー教育支 援サービスのために . 日本図書館協会 , 2001 , p. 81 ビスの流れと重なるからである。 6 ) 注 5 ) p. 11 ー 17 筆者が県立高校の学校司書であった 1990 年代 , 7 ) 注 5 ) p. 49 ー 64 県立高校の図書館では生徒が読みたい本を提供し 8 ) 大串夏身 . " 第 1 章課題解決型サービスを提供する意義 ". 図書館の最前線 3 : 課題解決型サービスの創造と展開 . 青弓 ようという試みがあり 20 ) , 利用を増やすための 0 1 三
14 現代の図書館 V 矼 51 No. 1 ( 2013 ) で , 大学教育の中でキャリア教育や技術者倫理を も含めたカリキュラム全体の中での位置づけと分 担を明確にして , 徹底して教え込む必要がある。 5 . 2 各段階での目標設定 図書館が担ってきた学術情報リテラシーについ て , これからは初年次教育のみならず学生にとっ ての時間軸 ( 教育研究が高度化するプロセス ) の 進行に合わせ , それぞれの段階に応じた目標設定 を立て , それに応じた支援が必要となるだろう。 以下に , 段階別・取得目標スキルの例示を試み 0 ( 1 ) 入学時 ( 最初のレポート時 ~ 夏休み前まで ) ・大学の蔵書検索システムを使って資料を探せ る ・用途に応じて参考資料を使い分けられる ・専門事典・新聞データベースを使って , 時事 問題についての情報を多角的に集められる ( 2 ) 2 ~ 3 年次 与えられたテーマについて複数の立場からの 書かれた情報を集め , 比較・分析した上で考 察できる ・出典の確かな情報を識別して活用でき , 適正 に引用表記できる ( 3 ) 卒業論文の執筆前 ・研究するテーマについて , 論文データベース 等を使って網羅的に関連情報を集められる ・仮説に反する情報についても , 客観的に収 集・分析できる ・論理的で整合性のある文章を書ける ( 4 ) 大学院入学時 ・海外雑誌や新聞の学術情報についても , 網羅 的かっ選択的に収集・評価できる ・先行研究について , サーベイ論文が書ける 以上はあくまでも一例であり , 例えば大学院進 学率の高い研究大学では , ( 4 ) について学部時代 にも基礎的な点を組み込むなど , ミッションと支 援対象に応じた設定が必要となる。 5.3 教員 , 学内他部署と連携 これらのスキル習得は , ( 1 ) であればガイダン スなどの単発型のイベントに組み込むことが可能 だが , レベルが高くなるほどに難しくなる。その ため , ( 2 ) や ( 3 ) については教員が担当するオムニ バス科目の 1 コマ ~ 数コマとしての実施 , ( 4 ) に ついては研究室への出張講義 ( 事前に教員と使用 するデータベースや必読のジャーナルについて相 談するとさらに有効 ) としての実施など , 必要に 応じて複合的な方法を選択することが重要とな る。 さらに時間軸以外の区分として高大接続教育や キャリア教育などの目的別にも , 教員 , 高等学校 関係者 , キャリアセンター , 企業側の採用担当者 と連携して不足しているスキルを探れば , どのよ うな内容と到達目標が必要かがより明確となるだ ろつ。 それらの目標設定と , 受講者アンケート , 教員 の意見聴取などによる見直しを繰り返すことに よって , 高度情報化・グローバル化など社会構造 が急速に変化する現代においてどのような状況で も対応可能な「マルチリテラシーを持った人材の 輩出」に , これからの大学図書館が貢献できる可 能性が高まる。 ただし各種リテラシーの位置づけ・分担につい ては , 最終的には大学の意思決定者がその必要性 を理解して促進する必要があるため , 図書館はそ の立場に立って判断材料を提供しなければならな い。この点について , 次節で述べる。 5 .4 大学の組織制度・財務状況を踏まえて の改善策立案と提言の必要性 図書館からの視点で見ると , 図 1 で示したよ うな「利用者サービス」「学術情報リテラシー教 育」「電子情報の提供」の重要性は年々増すばか りであるが , それらの充実化には相応の費用がか かる。価格高騰を続ける海外雑誌 ( 2012 年で前 年比平均 6 % ) 12 ) の購入に加え , 高いスキルを 持った職員の採用・育成も不可欠となる。しか し , 現在の大学は 18 歳人口の減少と長引く不況 の中で厳しい経営判断を迫られているため , 単純 なコスト増加は許容できない。「教育研究を支援 して大学と卒業生の評価を向上させ , かつ中長期 的にはコスト削減できる」提案を目指す必要があ る。
40 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 教員 , 職員は , その教育機関内外の関連する専門 職や学問分野について認識し , かつ意思疎通を図 るべきである。さらに教育プログラムは , その機 関の運営組織計画の中に確固たる地位を占める必 要がある。教育プログラムは , 教育機関の目的や 達成目標と知的一体性を保っ限りで , 自律性を備 えるべきである。 ガバナンス意思決定は , 明確に規定されかっ公 開されているポリシーに基づく必要がある。ガ バナンスに対して , 教員 , 職員 , 学生 , 卒業 生 , 設置主体が関与することを進めるべきであ る。重要な決定事項と活動内容は文書化するこ とが望ましい。 経済的支援図書館情報学教育プログラムは , 十 分な経済的支援のもとで , 現場の期待に応え , また別の同様な教育プログラムとも遜色のな い , 図書館情報学の学習課程を発展・維持して いくべきである。年間予算はプログラムの主任 が管理し , 財源規模は学生数 , 教員数 , 事務・ 補助職員数 , 教育資源 , 設備と関連させる必要 がある。 G7. 教育資源と施設 達成目標 図書館情報学教育プログラムに用いられる教育 資源と施設は , 最新に保たれるとともに , 深さ , 質・量ともに十分に有され , 教育プログラムで提 供される科目内容や教員の研究活動を支えること が求められる。 原則 図書館資源図書館資源は , 図書館情報学教育プ ログラムにおける教育・研究的側面を支援する ために , 最新かっ適切に保たれ , 学生と教員が 利用できる必要がある。そこには , 印刷や電子 形態の出版物 , 教育や研究を支援する一連の書 誌的ツールとオンラインツール , その他の適切 なメディアが含まれる。別の機関で所蔵される 情報資源へのアクセス手段も整えておくべきで ある。 情報技術資源コンピュータのハードウェアやソ フトウェア , マルチメディア資源は , 学生や教 職員が利用でき , 授業や教員の研究活動の際に 求められる利用水準を満たす必要がある。 インターネット資源教員と学生が適切にイン ターネットにアクセスし , 利用できることが求 められる。教育・研究のためのインターネット 利用に関するポリシーは , 図書館員にとって情 報の知的自由への関心が高い点に力点を置いて 作成し , 公表すべきである。 物理的な施設図書館情報学教育プログラムの施 設は , 教員 , 職員 , 学生がその目標を達成する のに十分な空間を提供すべきである。 く参照 > ・ Australian Library and lnformation Association (ALIA) http://www.alia.org/au.edu/ation/courses/accreditation. html and http:〃www.alia.org/au.edu/ation/courses/criteria.html ・ Chartered lnstitute of Library & lnformation ProfessionaIs ( CILIP) (formerly the Library Association (UK) ) see: http://www.cilip.org/uk/jobs-careers/qualifications/ accreditation/Pages/default. aspx ・ LiIley, A. S. ( 2012 ) . lntroducing "Awareness of lndigenous Knowledge Paradigms" IFLA core elements. AvaiIable from: s.c.lilley@massey.ac.nz ・ MedicaI Library Association (US) , see: http ・ //www.mlanet.org.edu/ation/policy/ ・ Special Libraries Association (US) , see: http://www.sla.org/content/learn/members.com/etencies/ index. Cfm ( 2013.5.8 受理 )
8 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 社 . 2 開 8. p. 13 ー 20 9 ) 高田淳子 . 公共図書館における情報リテラシー教育の現 状 . 現代の図書館 . vol. 45 , no. 1 , 2 開 7 , P205 ー 212 10 ) 慈道佐代子 . 情報リテラシー教育と利用教育 : 大学図書館 と公共図書館 . 図書館・図書館学の発展 : 21 世紀の初頭の図 書館 . 日本図書館研究会 . 2010. P219 ー 220 (1) 図書館ツアーの事例。 神奈川県立図書館 . ・・図書館大公開 ". ( オンライン ) , 入手 先 く https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/ information/disclose-l. html) , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 12 ) 国立国会図書館 . ・・レファレンス協同データベース ". ( オ ンライン ) , 入手先 く http:〃crd.ndl.go.j p/reference/ 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). レファレンス事例集と連動した事例。 福井県立図書館 . ・・レファレンス事例集 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //www.library.pref.fukui.jp/reference/reference— top. html#jirei 〉 , ( 参照 2013-2-25 ). 13 ) 国立国会図書館 . ・・リサーチ・ナビ公共図書館パスファ インダーリンク集 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //rnavi. ndl. go. jp/research—guide/pubpath. php 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 14 ) ビジネス支援と関連づけて作成された事例。大阪府立中之 島図書館 . ・ゼジネス支援サービスビジネス Web 情報源 ". ( オンライン ) , 入手先 く http ・ //www.library.pref.osaka.jp/nakato/busi—top.html 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 15 ) 学校支援と関連づけて実施された事例。 大阪府立中央図書館 . ・・大阪府立中央図書館における学校 支援サービスの取組み ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.library.pref.osaka.j p/lib/kiyo—pdf/kiy039-02. pdf 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 16 ) 行政支援と関連づけて実施された事例。 神奈川県立図書館 . 、・県の新採用職員研修で図書館活用法 を案内しました ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/recommend/?p= 112 〉 , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 17 ) 大阪府立中央図書館 . " 図書館サービス紹介パネル ". ( オ ンライン ) , 入手先 く http 〃 www.library.pref.osaka.j p/centra レ panerukasidasi0. html) , ( 参照 2013 ー 2 ー 25 ). 18 ) 鳥取県立図書館 . " 法情報検索マップ年金問題 ". ( オン ライン ) , 入手先 <http ・ //www.library.pref.tottori.jP/Ct/0ther000000200/ nenkin3. pdf 〉 , ( 参照 2013-2 ー 25 ). 19 ) 横浜市立図書館 . " 横浜探偵団 ( よこはまたんていだん ) ". ( オンライン ) , 入手先 く http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/kids/ tanteidan/ 〉 , ( 参照 2013 ー 2-25 ). 20 ) 学校図書館 de 予約します ! ! 決定版 . 学校図書館問題研究 会神奈川支部 . 1991. 64P ( 2012.2.25 受理 )
12 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 要課題としての意識を急速に高めていることが分 かる ( 図 1 参照 ) 。 また , 2011 年からは新たに三つの課題が質問 項目に加わっている。内容を見ると , 「学生の自 学自習のための支援 ( ラーニング・コモンズの整 備 , レファレンス等 ) 」が重要と回答している大 学が 498 ( 64.8 % ) , 「研究活動のための支援 ( 学 術情報への的確で効率的なアクセスの確保等 ) 」 が 298 大学 ( 38.8 % ) , 「大学の国際化への対応 ( 言語に堪能な職員の確保 , 利用環境の整備等 ) 」 が 102 大学 ( 13.3 % ) となっており , 大学図書館 の役割のうち資料提供以外の教育研究支援機能が 多様化・高度化しており , 図書館外からの期待と それに応えようとする図書館側の意識が高まって いることがわかる。 北米における図書館利用教育 , 学術情報リテラシー教育の事例 先進国とされるアメリカやカナダでの取り組み を紹介したい。 参考とするにあたっては , まず専門職制度の違 いに触れておく必要がある。アメリカの大規模大 学では法学 , 化学など学部やスクールごとに専門 の図書館があり , 当該分野の修士または博士学位 を持ち , かっ図書館情報学の修士号を持った図書 館員 (librarian) が多く働き , 専門的な質問や要 望にも応えている。図書館情報学の大学院はアメ リカ図書館協会 (American Library Association : ALA) によって質が保証されており , さらに分 野ごとの職能団体により継続的にスキルを開発で きる仕組みによって librarian が専門職として成 立し , 高いレベルの教育研究支援ができている。 カナダにおいては , 図書館情報学の修士学位は 必須の場合が多いが ( カナダの大学院も ALA の 認証を受けている ) , 専門分野については学部卒 業 ( 学士学位取得 ) 後に企業の情報部門などの勤 務経験でスキルを磨くケースもあり , また担当す る分野についても単一ではなく , 「経済学・商学・ 労使・経営管理」「西洋史・ヨーロッパ言語」な ど , ある程度の幅がある ( アメリカの小規模大学 でも , 一人のⅱ brarian が複数の分野を担当する 4 例は多い ) 。 以上の前提を踏まえ , 入学時から研究レベルま での実践について順に述べたい。 アメリカでは , 9 月の入学シーズンには日本と 同様にガイダンス・ツアーなどの各種イベントが 催され , 「図書館に親しませること」から始まり , それ以後は学習・研究のレベルが上がるにつれて 支援内容が高度化していく。 筆者が 2004 年の秋に訪れたイリノイ大学のメイ ン図書館では , 新入生向けに「 Library festival 」 と銘打って , DDC 分類項目名を使ったビンゴに 勝っと文房具がもらえるゲーム ( 分類の成り立ち を学ぶ ) , 手作りで和装本を作る体験 ( 資料を大 切にする心の涵養 ) , スタンプラリー ( 各専門図 書館を巡ってその配置と機能を知る ) を終えた参 加者には図書館のロゴが入ったフリスビーやキー ホルダーがプレゼントされる等のイベントが開催 され , 参加を通じて図書館の基礎的な活用法を学 べる仕組みとなっていた 6 ) 。このような取り組み についてはハーバード大学など多くの事例が紹介 されているが , より多くの学生を呼び込むこと や , 教員との連携 , 全学レベルでの必修化につい ては , アメリカにおいても課題となっている 7 ) 。 学部での学習段階において大きな助けとなるの が , ラーニング・コモンズ (LC) である。大学 によって若干その機能と位置づけは異なり , 定義 も諸説あるが , その成り立ちを見ると , 1970 年 代に「書く」ことを支援する目的で始まったライ ティングセンター , 1990 年代の資料の電子化に 対応したインフォメーション・コモンズなどの機 能を含めながら 8 ) , さらに大学として「教え方・ 学び方」を支援するために大学に置かれた教授学 習センターとも協力して , 「さまざまな学習ニ ズに対応できるよう電子情報など多様な学術資源 を提供し , 自発的な学習・発信を促進し支援する 空間」として現在にいたっているといえよう。 LC については , カナダを例に挙げてみたい。 筆者が 2012 年 9 月に訪れたクイーンズ大学にお いては , 図書館は「 IT サービス」「ハンディのあ る学生向け図書館サービス」「ライティングセン ター」「学習戦略開発」部門と並ぶ LC を構成す る組織の一つとなっていた。 LC は位置的にはメ
36 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) レベルを対象とし , どちらも専門的な資格に繋が るものである。 前回 2000 年に大幅にガイドラインを改訂して 以来 , 図書館専門職は多くの課題に直面してき た。なかでも無視できないのは , インターネット や他のデジタル技術とともに生じた課題であり , そのすべてがわれわれの日常生活の多くにまで持 ち込まれている。それとともに , 一部のライプラ リー・スクールでは i-School の考え方が採用さ れるようになったが , これは , 同じ国の中で同種 のスクールが行っている , 伝統的ではあるが未だ 有効な図書館情報学教育のやり方と競合するよう になっている。また , 図書館情報学教育で必要と される多くの教育・知識基盤が , 他の専門職 , 例 えば , アーカイブズ学・博物館学・記録管理学の 領域を含むことが明らかになっている。さらに は , 教育プログラムの知識基盤において地域固有 の先住民問題 (indigenous matters) が欠落して きたことも指摘しておく必要がある。 IFLA 教育研修分科会 (Education and Training Section : SET) では , 常任委員会 (Standing Committee) に , ガイドラインの改訂に責任をも つ小委員会を任命した。そのメンバーは , Gillian Hallam 教授 , S. B. Ghosh 教授 , Kerry Smith 准 教授である。改訂版を以下に記す。 [ 執筆代表 ] Kerry Smith 准教授 : FALIA ( オーストラ リア図書館情報協会フェロー ) , IFLASET ガイドライ ン小委員会委員長 , 2012 年 7 月 達成目標 このガイドラインの目的は , 世界中の図書館情 報学教育機関 ( / ライプラリー・スクール ) に対 し , 一連の望ましい実践の指針を提供し , 教育プ ログラムを開始したり運営したりする際に利用さ れることである。このガイドラインは , 教育プロ グラムの見直しと改善だけでなく , 新しいプログ ラムを計画し , また比較するための実用的なツー ルとして利用できる枠組みを提供するものであ る。このガイドラインは , 図書館情報サービス部 門の新しい教育プログラムを計画する際にも用い られることが期待される。 よく知られるように , 国によっては順守される べき広範な教育基準があり , この分野の専門職団 体が , 特に認証評価を行うために , LIS スクール にとって守るべき教育ポリシーを定めている。 のガイドラインの原則 (principles) が , そのよ うな国レベルの認証評価要件の基盤となることを 期待したい。 ガイドライン GI . 大きな枠組み 達成目標 図書館情報学教育プログラムの中身と組織にお ける地位づけは , 国内の他の職業・専門教育プロ グラムと同等である必要がある。専門職を養成す るためには , 教育プログラムが学位授与機関に置 かれる必要があり , 高等教育 ( 大学 ) レベルが妥 当である。図書館情報学教育プログラムは , 他の 教育プログラムと同じ基準に基づいて , 博士レベ ルの研究課程を提供する資格をもつべきである。 原則 使命図書館情報学教育プログラムの使命は , 般公開された公式文書に明記する必要がある。 プログラムの使命においては , 政治的・社会 的・経済的・実務的視点でその目的が述べられ るべきだが , それは当該専門職における偏見の ない価値観と合致している必要がある。使命 は , サービス対象集団を同定し , 国ごとのニ ズに対応するものであり , 独立・自立した機関 でない限り , 親機関の価値観と一致すべきであ る。図書館情報学教育プログラムは , 関連する 専門職と学問分野について認識されている事柄 をはっきりと示す必要がある。 目的と達成目標図書館情報学教育プログラムで は , その目的 (goals) を明記し , 目的から派 生する具体的な達成目標 (objectives) を掲げ るべきである。その中で , プログラムの根本原 理・原則・方法 , 専門分野 , 提供される養成レ ベル , 教育・サービス・研究上の価値観 , 社会