資料 - みる会図書館


検索対象: 現代の図書館 2013年 03月号
23件見つかりました。

1. 現代の図書館 2013年 03月号

0 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン 35 0 訳 : 日本図書館協会国際交流事業委員会 国際図書館連盟 (IFLA) 教育研修分科会 ガイドライン 図書館情報学専門職教育プログラムのための このガイドラインは , 2012 年夏の国際図書館連 盟 (IFLA) 専門委員会 (ProfessionaI Committee) の会議で承認を得たものである。 目次 はじめに 目的 ガイドライン 0 GI. G2. G3. G4. G5. G6. G7. 参昭 大きな枠組み カリキュラムの要素 カリキュラム 教職員 学生 支援 教育資源と施設 このガイドラインは , 2000 年に行われた前回 の大幅な改訂に代わるものであり , 21 世紀に 入ってからの図書館情報サービスの発展を反映さ せ , ライプラリー・スクールのカリキュラムに取 り入れている。ガイドラインでは , 図書館情報学 教育プログラムにとって不可欠な目標の枠組みを 設定した。すなわち , 図書館情報学教育プログラ 0 ムに含めることが求められる有益なコア・カリ キュラムの要件 , 教育プログラムに関わる教員 , 職員 , 学生にとって必要な事柄 , そして , 情報資 源その他の資源によって教育プログラムを十分に 支える必要性である。 はじめに 図書館情報学教育プログラムには , 長く輝かし い歴史がある。過去の教育プログラムでは , 図書 館という建物の中における図書その他の資料のコ レクション形成が中心に据えられ , 図書館には , それらの資料の選択・収集・組織化・検索・貸出 を学んだ職員が配置されてきた。今日の図書館情 報学教育プログラムは , 物理的なコレクションや 建物の枠を超えてインターネットという仮想空間 に広がっている。今日では公共部門・民間部門・ 第三セクターを問わず , さまざまな状況下におけ る利用者への情報提供に力点が置かれているが , そこでの利用者とは必ずしも , 図書館の建物や図 書館環境に入ることができるとは限らず , あるい は入る意思をもっとも限らない。アーカイブズ・ 博物館・記録管理部門のパートナーとの協力がま すます顕著になっており , 共通の課題認識を教育 プログラムに含めることが適切である。教育プロ グラムは , [ 学部・ ] 実務レベル , 大学院・専門 レベル , 研究・博士レベルで提供されている。 こに示されるガイドラインは , 主に大学院と学部

2. 現代の図書館 2013年 03月号

で認識されている図書館情報サービスの役割に ついても触れるべきである。目的と達成目標 は , しかるべき公式の機関から出される教育ポ リシーと一致させる必要があり , また親機関や 国から学生・卒業生の学習成果・能力として求 められている資質を満たす必要がある。 計画と評価図書館情報学教育プログラムでは , 計画・評価の過程を明確にし , それらを定期的 に行っていくべきである。そうした過程では , 図書館情報学分野やそれを含む上位社会におい て今後予測される変化を踏まえつつ , ポリシー や手順が絶えず見直される必要がある。教員 , 職員 , 学生を計画・評価の活動に関わらせると ともに , 設置機関や実務家にも意見を求めるべ きである。教育プログラムは , その国で規範と される教育要件や専門職認証評価要件を満たし ービ 達成目標 G2. カリキュラムの要素 ていなければならない。 コア・カリキュラムでは , 以下に挙げる要素が 重要である。 図書館情報学力リキュラムのコア要素は以下の 原則 と方法を組み込むこと ・カリキュラムの中に地域固有の先住民の知識 り組みに繋がるものを含めること ・過去の取り組みのうち , デジタル環境での取 5 . 情報資源管理 , これには情報の組織化・処 4 . 情報の伝達過程 ス計画 3 . 情報ニーズの評価とそれに対応するサ 2 . 情報の生成 , 伝達 , 利用 報ポリシー・倫理 , 図書館情報学の歴史 1 . 情報環境・社会が世の中に及ばす影響 , 情 とおりである。 7 . 図書館情報学分野のあらゆる成果とサービ 6 . 情報の研究 , 分析 , 解釈 式や媒体も多様である 理・検索・資料保存・修復が含まれ , 表現形 図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン スに対して情報通信技術を応用すること 8 . ナレッジマネジメント 9 . 情報機関の運営 10. 情報と図書館利用の成果に対する量的・質 的評価 37 り , 図書館情報学分野における研究や実践の理論 スやその他の教育的経験から構成されるべきであ 的や達成目標に基づいて , 統合された一連のコー 図書館情報学力リキュラムは , プログラムの目 達成目標 G3. カリキュラム 2012 ) 。 統性・革新・敬意・言語の問題がある (Lilley, となる価値観やテーマとしては , 伝統・保護・正 語で表現される ) 。一方 , 先住民に共通する中核 マをもっている ( 自身の文化構造から派生する言 community) は , 自分たち独自の価値観やテー る。そのため , それぞれの先住民社会 (indigenous 民にはそれぞれ共通点もあるが , 大きな違いもあ てさらに理解が深まるであろう。地域固有の先住 これらの特徴は , その価値観を知ることによっ が重要である点 うした人びとに合った調査方法を用いること る情報資源やサービスについて調べる際 , そ ・地域固有の先住民の図書館利用者が必要とす ことの影響 語が , 先住民の知識の枠組みに内在している ・地域固有の先住民の [ 思考 ] 過程・信条・ 構造についての理解 ・地域固有の先住民の知識の重要性 , 多様性 , ること。その範囲は以下を含む。 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識す ては , 以下の指針を示す。 番目の地域固有の先住民の知識パラダイムについ 文書の範囲を超えている。しかしコア要素 11 上記の要素すべてについて述べることは , この すること 11. 地域固有の先住民の知識パラダイムを認識

3. 現代の図書館 2013年 03月号

30 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 2 研修プログラムの実施プロセス 12 週前 1 1 週前 10 週前 9 週前 8 週前 7 週前 6 週前 5 週前 4 週前 3 週前 2 週前 1 週前 当日 企画案の策定 講師への打診 企画の確定 会場・設備の手配・確保 参加者の募集案内 開 参加者・人数の確定 催 者 事前課題・登録要領の 事 受取 局 事前課題の割り当て 事前課題・登録要領の 参加者送付 プレゼン資料の受取・ 処理 事前課題のレフア協 登録の督促 講師依頼の承諾 開催者との協議 参加人数の確認 事前課題・登録要領の 準備 講 事前課題・登録要領の 事務局送付 師 プレゼン資料の作成 プレゼン資料の事務局 送付 登録内容の閲覧 登録内容へのコメント 付与 募集の確認・申込 事前課題・登録要領の 参 受取 加 事前課題への取り組み 者 事前課題のレフア協登録 登録内容の閲覧 講師からのコメント確認

4. 現代の図書館 2013年 03月号

12 現代の図書館 VoI. 51 No. 1 ( 2013 ) 要課題としての意識を急速に高めていることが分 かる ( 図 1 参照 ) 。 また , 2011 年からは新たに三つの課題が質問 項目に加わっている。内容を見ると , 「学生の自 学自習のための支援 ( ラーニング・コモンズの整 備 , レファレンス等 ) 」が重要と回答している大 学が 498 ( 64.8 % ) , 「研究活動のための支援 ( 学 術情報への的確で効率的なアクセスの確保等 ) 」 が 298 大学 ( 38.8 % ) , 「大学の国際化への対応 ( 言語に堪能な職員の確保 , 利用環境の整備等 ) 」 が 102 大学 ( 13.3 % ) となっており , 大学図書館 の役割のうち資料提供以外の教育研究支援機能が 多様化・高度化しており , 図書館外からの期待と それに応えようとする図書館側の意識が高まって いることがわかる。 北米における図書館利用教育 , 学術情報リテラシー教育の事例 先進国とされるアメリカやカナダでの取り組み を紹介したい。 参考とするにあたっては , まず専門職制度の違 いに触れておく必要がある。アメリカの大規模大 学では法学 , 化学など学部やスクールごとに専門 の図書館があり , 当該分野の修士または博士学位 を持ち , かっ図書館情報学の修士号を持った図書 館員 (librarian) が多く働き , 専門的な質問や要 望にも応えている。図書館情報学の大学院はアメ リカ図書館協会 (American Library Association : ALA) によって質が保証されており , さらに分 野ごとの職能団体により継続的にスキルを開発で きる仕組みによって librarian が専門職として成 立し , 高いレベルの教育研究支援ができている。 カナダにおいては , 図書館情報学の修士学位は 必須の場合が多いが ( カナダの大学院も ALA の 認証を受けている ) , 専門分野については学部卒 業 ( 学士学位取得 ) 後に企業の情報部門などの勤 務経験でスキルを磨くケースもあり , また担当す る分野についても単一ではなく , 「経済学・商学・ 労使・経営管理」「西洋史・ヨーロッパ言語」な ど , ある程度の幅がある ( アメリカの小規模大学 でも , 一人のⅱ brarian が複数の分野を担当する 4 例は多い ) 。 以上の前提を踏まえ , 入学時から研究レベルま での実践について順に述べたい。 アメリカでは , 9 月の入学シーズンには日本と 同様にガイダンス・ツアーなどの各種イベントが 催され , 「図書館に親しませること」から始まり , それ以後は学習・研究のレベルが上がるにつれて 支援内容が高度化していく。 筆者が 2004 年の秋に訪れたイリノイ大学のメイ ン図書館では , 新入生向けに「 Library festival 」 と銘打って , DDC 分類項目名を使ったビンゴに 勝っと文房具がもらえるゲーム ( 分類の成り立ち を学ぶ ) , 手作りで和装本を作る体験 ( 資料を大 切にする心の涵養 ) , スタンプラリー ( 各専門図 書館を巡ってその配置と機能を知る ) を終えた参 加者には図書館のロゴが入ったフリスビーやキー ホルダーがプレゼントされる等のイベントが開催 され , 参加を通じて図書館の基礎的な活用法を学 べる仕組みとなっていた 6 ) 。このような取り組み についてはハーバード大学など多くの事例が紹介 されているが , より多くの学生を呼び込むこと や , 教員との連携 , 全学レベルでの必修化につい ては , アメリカにおいても課題となっている 7 ) 。 学部での学習段階において大きな助けとなるの が , ラーニング・コモンズ (LC) である。大学 によって若干その機能と位置づけは異なり , 定義 も諸説あるが , その成り立ちを見ると , 1970 年 代に「書く」ことを支援する目的で始まったライ ティングセンター , 1990 年代の資料の電子化に 対応したインフォメーション・コモンズなどの機 能を含めながら 8 ) , さらに大学として「教え方・ 学び方」を支援するために大学に置かれた教授学 習センターとも協力して , 「さまざまな学習ニ ズに対応できるよう電子情報など多様な学術資源 を提供し , 自発的な学習・発信を促進し支援する 空間」として現在にいたっているといえよう。 LC については , カナダを例に挙げてみたい。 筆者が 2012 年 9 月に訪れたクイーンズ大学にお いては , 図書館は「 IT サービス」「ハンディのあ る学生向け図書館サービス」「ライティングセン ター」「学習戦略開発」部門と並ぶ LC を構成す る組織の一つとなっていた。 LC は位置的にはメ

5. 現代の図書館 2013年 03月号

6 現代の図書館 VOL51 N 。 .1 ( 2013 ) の公開は , 利用者の課題解決のヒントとなる。 ( 6 ) 調べ方案内・パスファインダーの作成 利用者の課題解決支援のツールである。国立国 会図書館 " リサーチ・ナビ公共図書館パス ファインダーリンク集 " 13 ) に各参加館の事例が リンクされている。 ( 7 ) 特定テーマのためのリンク集の作成 14 ) 利用者の課題解決支援のツールである。 ( 8 ) 各種講座などの開催 利用者支援のためのプログラム。 OPAC 検索 , データベース検索などの検索スキルのための講 座 , 図書館活用講座 , テーマ別の調べ方講座な どがある。各講座には , 情報の評価や著作権の 問題などが織り込まれることもある。 対象を個人とする場合と , 学校支援 15 ) や行政 支援 16 ) に織り込む形で , 特定の集団に対して 集合型のサービスとして開催される場合があ る。図書館の外へ出かけて実施する「出前講 座」の形をとる場合もある。調べ方講座の展開 事例については , 32 で後述する。 ( 9 ) その他 図書館紹介のための展示パネルの貸出 17 ) や特 定テーマの関連情報と資料の配架位置案内を組 みあわせたチラシ作成の事例 18 ) がある。 3 . 2 調べ方講座の展開事例 「 2011 年度調査」を実施した際に , 神奈川県立 図書館では特に調べ方講座の開催について特色が あることを改めて認識した。さまざまな調べ方講 座を開催していること , 同じテーマをもとに異な る対象に対して開催している点である。 筆者の主な業務はレファレンスサービスと各種 講座の講師を務めることである。 2008 年度に担 当となってから 2012 年度までの 5 年間に , イン ターネットの検索 , 法情報 , 美術情報 [ 図 2 ] や 漢詩 [ 図 3 ] などの調べ方講座を , 対象もさまざ まに行ってきた。 各種講座の講師を短期間に務めることができた のは , 県立図書館のレファレンス事例と講座開催 関連資料の蓄積によるものである。筆者だけでは なく , 他の課の職員も各種講座の講師を担当して いる。 図 2 2010 年度神奈川県立図書館県民公開講座 「美術資料の調べ方入門」 ( 2010 年 7 月 14 日実施 ) 美術資料に関するご質問あれこれ 0 画家クロード・モネについて簡潔に知りたい。 . 。 ・蓮華王院本堂にある風ネ申・雷ネ申像の写真が載っている本は ? ・平山郁夫画伯の生没年や絵の評価額を知りたい。 ・小野道風の書を探している。 図 3 ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ・異本伊勢物語絵巻六段の芥河にある、 男が左手に持っている丸い物ロ何か ? ・尾形光琳の『燕子花図屏風』について、 どのくらいの量の金が使われているのか 記述のある資料や論文を知りたい。 2011 年度神奈川県立図書館県民公開講座 「漢詩の探し方入門」 ( 2012 年 2 月 8 日実施 ) 本日の予定 はじめに よくある漢詩関連のこ質問 渓詩について 日本と漢詩 ( 漢文学 ) との関係 調べる時のヒント ・ 1 1 : 1 0 ~ 1 1 : 20 頃休憩 ( 6 ) 調べるにはどうしたらワ - 事例をもとに ( 7 ) 調べる時の参考になる本やインターネットなど * 「漢詩の探し方入門ー漢詩を周べるための本やインターネットー」 年度に他の職員が担当したのが最初である。当時 この講座は市町村図書館等職員を対象に 2008 の調べ方入門講座 " を事例としてあげる。 「 2011 年度調査」で他に類例がなかった " 漢詩 90 分程度を基本に開催している。 館内職員向けの講座のみ 60 分としたが , 概ね る。 ) , 館内職員向け研修で筆者が講師を担当した。 び特別支援校 2 校に学校司書を全校配置してい 職員対象の研修 ( 神奈川県では県立高校 144 校及 書館等職員研修 , 高校連携による学校司書及び教 年度及び 2012 年度に , 県民公開講座 , 市町村図 ーズがあることから , 2011 けることもあり , 利用者や市町村図書館から漢詩関連の質問を受 献 , 事例集などを加えた資料を配布している。 はパワーポイントを使わずに , レジメに参考文

6. 現代の図書館 2013年 03月号

「レフア協」研修モードを活用した研修活動の実践 【出題の趣旨・留意点】 もあれば訪れてみたい。 ◎日本の灯台は , 明治時代にお雇い外国人によって建設されたものが多いと聞いた。そうした例が , 北九州市に 図 3 事前課題の例 ・外国人名の姓からの検索 , 表記の異同などに留意する。 ・北九州市関係の地域情報・地域資料に対する理解を深める。 ・アプローチとして , 灯台 , お雇い外国人 , 北九州市の史跡などがあることを意識する。 ◎シェークスピアの「ロミオとジュリエット」が , 日本で初めて訳されたのはいつごろなのか。その当時の訳文 ・子どもが疑問に思いそうであると感知し , 児童資料の活用を考慮する。 ・飛行機の愛好家がウエプ上に掲載している情報をヒントとして活用することの意義を認識する。 ・空港や航空路の所管官庁や , 関係団体・機関などに絞り , インターネット上の情報を検索する。 ・求められている「主題」を明確にし , 所蔵している一次資料を有効に活用する。 ・北九州空港だけではなく , 全国の空港の状況を確認できる汎用性の高い情報源にも目を向ける。 【出題の趣旨・留意点】 空港や山口宇部空港などは , どうなっているのだろうか。 ◎北九州空港の滑走路に , 18 という数字が書いてあることに気づいた。これは , 何を意味しているのか。福岡 ・古い文献であることが明らかなため , デジタル化されている文献を調査に含めるようにする。 ・「文献 = 図書」という固定観念にとらわれず , 雑誌掲載の翻訳の可能性も視野に入れる。 ・翻訳文献を検索する上での注意事項として , 複数の訳者や異なる邦題の可能性などを意識する。 【出題の趣旨・留意点】 を読むには , どうしたらよいか。 ◎北九州市の冬の名産と言えば , やはり河豚でしようか。北九州市では , 河豚はどのくらい採れるのでしようか。 切に評価して活用することの必要性を理解する。 ・インターネット上に掲載されている情報の中に , 上記の記載に類するものがあることを確認し , 情報源を適 ・事実の確認だけではなく , 根拠法令の存在を確認することの重要性を意識する。 言えるのか , あるいは , どこがどのように誤っているのかを伝える意義を認識する。 ・レファレンスサービスの回答として , 「確かである」や「誤っている」だけではなく , 何に基づいて確かと 【出題の趣旨・留意点】 るという話を聞いた。これは , 確かなのか。 ◎日本の納本制度は , 納本冊数が 2 冊であり , 1 冊を国立国会図書館の東京本館に , もう 1 冊を関西館に収蔵す 【出題の趣旨・留意点】 ◎「天城越え」を読んでみたい。単行本でも文庫でも何でもよいのだが , どうすれば確認できるだろうか。 年 ( 月日 ) , 単位にも留意しながら行うことの意義を確認する。 ・統計データを回答として提供する際には , 典拠を示すだけではなく , 統計データの採取主体 ( 機関 ) , 採取 ・統計データを検索するための資料やデータベースの特性を認識する。 ・アプローチに , 統計 , 河豚 , 北九州市 , 名産品といった多様なものがあることを理解する。 【出題の趣旨・留意点】 ・「天城越え」を検索語としたときのノイズ ( 石川さゆりの歌 ) を減らす工夫や手法を考える。 ・自館の OPAC でタイトル細目が検索できるか確認し , その機能と限界について認識する。 ・目録情報の書誌階層に対する理解を再確認する。 能性があることを意識する。 ・検索対象とする文献が , 単行本 , 文庫本 , 全集などによって , 活用する情報源や検索方法に相違が生じる可 33

7. 現代の図書館 2013年 03月号

マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割 9 , マルチリテラシー時代の図書館 マルチリテラシー時代における 大学図書館と職員の役割 典 貴 梅 術的な作法も求められる。 1 はじめに リテラシーとは本来「読み書きの能力」を指す が , 高度情報化社会でこのように多様化したリテ 大学図書館は , インターネットの発達を受けて ラシーの涵養は大学全体で取り組むべき課題であ 従来の冊子体資料に加え , 雑誌記事や新聞のバッ り , 高等学校までの教育との接続 , 教養教育 , 専 クナンバー・統計・法令・判例データベースなど 門教育 , 卒業後のキャリアなどとも深く関わるた 電子情報を契約・提供してきた。さらに , 学生に め , 教員を主体とした総合的な視点による教育目 対してそれらを複合的に活用する「学術情報リテ 標とカリキュラム設計が不可欠となる。 ラシー」の涵養に取り組んでいる。 その中で大学図書館とその職員が果たすべき役 契約した図書館の利用者のみが閲覧できる有料 割とは何か。それを大学の意思決定者の理解を得 の電子情報は責任の所在が明確だが , 誰でもアク ながらどのように果たしていくべきかを考察する。 セスが可能な Web 上には , SNS を始め個人が発 日本における 信するプログやフリー百科事典など , 必ずしも正 2 「情報リテラシー」の定義と , 確性が保証されていない情報が氾濫し , 玉石混交 となっている。 学内での用語の整理・統一の必要性 大学生・大学院生がレポートや論文を書く際に は , 単に検索エンジンで多くの情報を集めるだけ 日本の大学において「情報リテラシー」という でなく , 必要に応じて有料を含む適切なデータ 言葉は , コンピュータ・リテラシーまたは IT ス べース , 電子ジャーナルなどを使い分ける「探し キルとしばしば混同される。かっては同様であっ 方の知識」に加えて , テレビや新聞などのメディ たアメリカでは , 1980 年代の終わりまでに大学 アについても情報を鵜呑みにせず , 真偽を批判的 図書館関係者が中心となり , 両者が異なる概念で に見極めて取捨選択する見識が必要となる。さら あることを通念化させることに成功しているが , に問題の背景にある歴史や文化を踏まえる幅広い 日本では大学教育や生涯学習という広い視野で捉 教養が , 考察する上では欠かせない。発信する際 えることなく図書館に関わる部分のみが論じられ には , その出典情報を明示するなどの倫理観と学 てきた 1 ) 。 したがって , まずは用語の整理を試みたい。 「情報リテラシー」について , その先進国である アメリカにおける代表的な定義としては , アメリ カ図書館協会 (ALA) 会長情報リテラシー諮問 委員会の「最終報告」 ( 1989 年 ) がある。その中 うめざわたかのり : 中央大学大学院戦略経営研究科事務課 キーワード : 学術情報リテラシー , 情報リテラシー教育 , 利用 者教育初年次教育 , 教育研究支援 , 電子図書 ニング・コモンズ

8. 現代の図書館 2013年 03月号

28 現代の図書館 Vol. 51 No. 1 ( 2013 ) 図 1 研修プログラムの骨子 A. 目的 レファレンス質問を処理する際に必要な , 資料・情報の検索および回答の技能を高めることを目指す。 【要点】 ・回答に至るまでのプロセスを意識し , また , それを評価できるようになることを目指す。 ・資料や情報を的確に検索するための基本原理を確認し , 汎用性および持続性を高めることを重視する。 ・館種を公立図書館と想定し , そこに寄せられるレファレンス質問の処理に必要な技能を対象とする。 B. 形式 課題を解決する演習形式を基本とし , 参加者自身が作業に取り組み , その結果に基づいて指導を行う。 【要点】 ・参加者が行う作業は , 研修会以前に取り組む「事前課題」とし , 一定の時間がかけられるようにする。 ・参加者が行う作業は , 参加者が勤務する図書館等で行い , 日常の活動との接続性を高めるようにする。 ・研修会では , 講師による一方向的な解説は最小限にし , 参加者とのインタラクションまたは参加者間の意見 交換を促す指導を優先させる。 C. 方法 国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベース・システム ( 以下 , 「レフア協」 ) の研修環境を活用 し , 搭載されている機能を活かした研修方法を実践する。 【要点】 ・事前課題に取り組んだ結果を , 研修会以前に , 遠隔から「レフア協」に登録できるようにする。 「レフア協」に登録された結果を , 参加者間で相互に確認し , 比較できるようにする。 ・「レフア協」のコメント機能を利用し , 研修会前に講師から結果に対する講評ができるようにする。 ・研修会終了後にも , 「レフア協」に登録された結果をもとにした活動を , 参加者ができるようにする。 D. 環境 ネットワーク環境のもとで行うことを前提とする。 【要点】 ・参加者がインターネットにアクセスし , 「レフア協」を利用できることを参加要件とする。 ・研修会場において , 「レフア協」の画面が閲覧できるように , インターネット接続がなされた講師用 pc と 投影機器を用意する。 E. 開催要領 研修会の開催は , 要点に記載する内容を目安とするが , 開催者の希望や状況に応じて柔軟に対応する。 【要点】 ・事前課題への取り組みに , 2 週間程度が確保できるように開催日を決定し , また , 開催の準備を行う。 ・研修会の実施時間は , 2 時間から 3 時間を目安として計画する。 ・参加者は , 20 人から 25 人を理想とし , 研修時間が 2 時間の場合は 25 人程度 , 3 時間の場合は 30 人程度を 目安にして調整する。 F. 事前課題 事前課題は , 研修会の目的 , 形式 , 方法 , あるいは , 開催条件を考慮して用意する。 【要点】 ・事前課題の内容は , レファレンス質問の処理に関する基本原理を解説するのに有効なものとするとともに 多様な検索・回答プロセスが想定されるものを優先させ , また , 開催地の地域資料・地域情報を求めるもの を含める。 ・事前課題の数は , 4 , 5 名の参加者が同じ課題に取り組めるようにすることを標準とする。

9. 現代の図書館 2013年 03月号

14 現代の図書館 V 矼 51 No. 1 ( 2013 ) で , 大学教育の中でキャリア教育や技術者倫理を も含めたカリキュラム全体の中での位置づけと分 担を明確にして , 徹底して教え込む必要がある。 5 . 2 各段階での目標設定 図書館が担ってきた学術情報リテラシーについ て , これからは初年次教育のみならず学生にとっ ての時間軸 ( 教育研究が高度化するプロセス ) の 進行に合わせ , それぞれの段階に応じた目標設定 を立て , それに応じた支援が必要となるだろう。 以下に , 段階別・取得目標スキルの例示を試み 0 ( 1 ) 入学時 ( 最初のレポート時 ~ 夏休み前まで ) ・大学の蔵書検索システムを使って資料を探せ る ・用途に応じて参考資料を使い分けられる ・専門事典・新聞データベースを使って , 時事 問題についての情報を多角的に集められる ( 2 ) 2 ~ 3 年次 与えられたテーマについて複数の立場からの 書かれた情報を集め , 比較・分析した上で考 察できる ・出典の確かな情報を識別して活用でき , 適正 に引用表記できる ( 3 ) 卒業論文の執筆前 ・研究するテーマについて , 論文データベース 等を使って網羅的に関連情報を集められる ・仮説に反する情報についても , 客観的に収 集・分析できる ・論理的で整合性のある文章を書ける ( 4 ) 大学院入学時 ・海外雑誌や新聞の学術情報についても , 網羅 的かっ選択的に収集・評価できる ・先行研究について , サーベイ論文が書ける 以上はあくまでも一例であり , 例えば大学院進 学率の高い研究大学では , ( 4 ) について学部時代 にも基礎的な点を組み込むなど , ミッションと支 援対象に応じた設定が必要となる。 5.3 教員 , 学内他部署と連携 これらのスキル習得は , ( 1 ) であればガイダン スなどの単発型のイベントに組み込むことが可能 だが , レベルが高くなるほどに難しくなる。その ため , ( 2 ) や ( 3 ) については教員が担当するオムニ バス科目の 1 コマ ~ 数コマとしての実施 , ( 4 ) に ついては研究室への出張講義 ( 事前に教員と使用 するデータベースや必読のジャーナルについて相 談するとさらに有効 ) としての実施など , 必要に 応じて複合的な方法を選択することが重要とな る。 さらに時間軸以外の区分として高大接続教育や キャリア教育などの目的別にも , 教員 , 高等学校 関係者 , キャリアセンター , 企業側の採用担当者 と連携して不足しているスキルを探れば , どのよ うな内容と到達目標が必要かがより明確となるだ ろつ。 それらの目標設定と , 受講者アンケート , 教員 の意見聴取などによる見直しを繰り返すことに よって , 高度情報化・グローバル化など社会構造 が急速に変化する現代においてどのような状況で も対応可能な「マルチリテラシーを持った人材の 輩出」に , これからの大学図書館が貢献できる可 能性が高まる。 ただし各種リテラシーの位置づけ・分担につい ては , 最終的には大学の意思決定者がその必要性 を理解して促進する必要があるため , 図書館はそ の立場に立って判断材料を提供しなければならな い。この点について , 次節で述べる。 5 .4 大学の組織制度・財務状況を踏まえて の改善策立案と提言の必要性 図書館からの視点で見ると , 図 1 で示したよ うな「利用者サービス」「学術情報リテラシー教 育」「電子情報の提供」の重要性は年々増すばか りであるが , それらの充実化には相応の費用がか かる。価格高騰を続ける海外雑誌 ( 2012 年で前 年比平均 6 % ) 12 ) の購入に加え , 高いスキルを 持った職員の採用・育成も不可欠となる。しか し , 現在の大学は 18 歳人口の減少と長引く不況 の中で厳しい経営判断を迫られているため , 単純 なコスト増加は許容できない。「教育研究を支援 して大学と卒業生の評価を向上させ , かつ中長期 的にはコスト削減できる」提案を目指す必要があ る。

10. 現代の図書館 2013年 03月号

そのためには , まずは大学が置かれた状況 ( 年 間予算に対して図書館の資料費・人件費が占める 割合など ) を知り , 経営側と共通の認識を持っこ とが必要となる。さらに中央教育審議会の答申な どを受けて文部科学省が近い将来にどのような政 策を実行に移そうとしているかを推察し , それに 対して図書館がいかなる貢献ができるかを提案す るべきであろう。例えば学術情報リテラシーは先 述の答申でも学士力の汎用的技能に挙げられてい るが , その教育の高度化に図書館が貢献すること によって学生が論文や統計データなどの客観的論 拠に基づいたレポートや論文を書けるようにな り , 各科目担当教員の指導上の負担を減らして教 育の本質化に注力できる点などを , 講習会の参加 者アンケート等のデータ ( 各種データベースや学 術ツールの認知度・利用度など ) を分析して予測 される効果を示す必要がある。 改善に必要となる人的・財政的負担の措置につ いては , 複数の大学が連携して資料価格の交渉を するコンソーシアム形成や , 各大学図書館団体が おこなっている研修や研究事業について国公私立 の壁を越えた情報交換による効果拡大・知識交流 などの取り組みに加えて , 図書館自らが業務効率 化の可能性 ( 専門性の必要なコア業務を洗い出し て専任職員の力をそこに傾注し , TA などの活用 によって非正規雇用者にとっても技能取得と成長 の機会を作りながら教育研究支援機能を高度化す る戦略的アウトソーシング 13 ) など ) を提案し , 大学側との対話によって有効な解決策を探る必要 がある。 6 まとめ これまでは査読など一定のプロセスを経た学術 情報のみが冊子体で流通していたが , その在り方 は多種多様となった。現在は根拠の不明確な情報 を個々人が大量にインターネット上に発信してお り , それらは有料情報よりも容易に手に入る上 に , 一見まことしやかに書かれている。適正な学 術情報リテラシー教育を受ける機会を持たない若 者は , 扇動的な情報に踊らされやすい上に , 誤っ た情報を再発信 (SNS のシェアなど ) すること マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割 15 に関して無頓着になる可能性が高い。大学時代 は , 従来の教養・専門教育とは別に , このような 意識を改めて社会人として情報を扱う自覚を持っ ための期間とも考えられるため , 総合的な学術情 報リテラシーの涵養は大学の果たすべき重要な役 割の一つとなっている。 インターネットの影響はグーテンベルクによる 活版印刷の発明とは比較にならないほど大きい が , それすらも変革の途上に過ぎず , 今後もさら に変わっていくだろう。しかし , 社会で生きてい くために必要な力の根底は普遍的で , 今も昔もさ ほど変わらないのではないだろうか。「問題の解 決に際して裏付けのある情報を集め , 歴史的・国 際的な視点を含め多角的に分析して客観的に批判 し , 新たな解決策を立案し , 論理的に文章化・図 示化して伝達可能な形で発信する能力」の涵養を 支援することに関して言えば , 大学と図書館とそ の職員の果たすべき役割は常に変わらない。 しかし「図書」や「館」という言葉の前提がす でに変わっているように , 情報を扱う専門職とし て求められる能力も , 高度情報化・国際化への対 応が必要となる。例えば , 大学図書館の職員には 司書課程で教わる知識・技能に加え , 英語力やコ ンピュータ技術 , 対人コミュニケーション能力な どが重要になってきている。ランガナタンによる 図書館学の 5 原則にある「成長する有機体」と は , その職員の成長すべき点をも示唆しており , もうーっの原則である「利用者の時間を節約す る」とは , ともすれば一般検索エンジンやフリー 百科事典に頼り切って無駄な遠回りをしがちな学 生に対し , 正しい学術情報リテラシー教育をおこ なうことも示しており , これらの原則もまた普遍 なのではないだろうか。 く注 > 1 ) 大城善盛 . 大学図書館を中心とした情報リテラシー論ーア メリカ・オーストラリア・イギリスにおける議論を中心に . 大学図書館研究 . Vol. 82 , 2 開 8 , P23 ー 32 2 ) 大城善盛 . アメリカの大学図書館界における情報リテラ シーの研究ー理論と実践の歴史的分析を通して . 花園大学文 学部研究紀要 . VOL42 , 2010 , p. 26 ー 53 原文 : presidential Committee on lnformation Literacy. Final Report, 1989