まちじゅう - みる会図書館


検索対象: 現代の図書館 2013年 06月号
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1. 現代の図書館 2013年 06月号

・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」 ヒト・モノ 109 掛けを考えた。 重ね , ついにキャラクター「オプセドリ」が生ま それはデザインと人である。 れた。 デザインでは , ロゴ , キャラクター , そして オプセドリとは , 世界を飛び回り , 見てきたこ とや聞いたことを手トリ足トリ教えてくれる渡り グッズ製作である。人に関しては , まちじゅう図 書館を誰が中心になってディレクションしていく 鳥の一種。全世界に分布し , 生息数は不明。ふ のかということを関係者で確認をした。 らっとやってきて , なぜか小布施に住み着いてし 私が指名したのは , 自らまちじゅう図書館を行 まうケースが多いことからこの名前になった。小 いたいと名乗りでたスタッフである。そしてデザ 布施町内では至る所で遭遇することができる。本 イナーには , そのスタッフと同年代の優秀なデザ や新しいものに触れるのが大好きで , 楽しそうな イナーにお願いした。何度も何度も打ち合わせを ところや人が集まる場所によく出没する。といっ 一第物をををイ △かねいちくつろぎサロン

2. 現代の図書館 2013年 06月号

ヒト・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」 107 △まちじゅう図書館オープニングバレード 観音通りが現在行っている「ま しく語る主が存在する。図書館業界の言葉を使う このときから , ちじゅう図書館」となるのだと想像していた。実 ならば , 図書資料とレファレンスをする人がそこ 際はもっと広がったものになっている。古本市を に存在することになると考えたのである。まさに 開催しながら「いつの日かここにいつも『本があ 図書館だ ! る』状態がやってくるのです」と表現していた。 以下に記しているのは , 古本市の体験である この通りには , 栗菓子屋 , 酒造場 , フランス菓 が , 本は道具にすぎない。本を目指してやってく 子専門店 , 和食料理店 , ギャラリー パン屋など る方は , 実はその本について自ら語ったり , その など多くの専門店が並んでいるからである。 持ち主との交流を望んでいる。本はコミュニケー そして商工会の会議でも , 観光協会の方にご理 ションツールとして存在している。まちじゅう図 解をお願いした。多くの方に「本がある」から 書館の目的もそこにある。本を介してのコミュニ 「まちじゅう図書館」というものを想像していた ケーションの場づくりなのである だけるようにしたのである。 それはまちじゅう図書館だけカそうではなく , みんなで楽しく行うということが最も大切なこ まちとしょテラソが , その館内でも創造する考え とと考えたからである。図書館が中心になって実 方である。 行委員会を結成して活動してきたが , やはり図書 「本がある」場をつくろう 館として , 参加する方はもちろん , その存在を楽 しんでいただける方々にも理解していただかない と , この「まちじゅう図書館」は身勝手なものと 町民と一緒に図書館運営を考える運営プロジェ なってしまう。みんなでまちを楽しくする「まち クトで , まちとしょテラソのオープンイベントを じゅう図書館」でなければならない。 議論しているときもこの古谷さんのプランの実現 そのことをみんなで共有しながら始まったのが を見据えていた。その先駆けとして町中で古本市 冒頭にふれた 2012 年 10 月 20 日である。この日 ( 一箱古本市 ) を行うことから始めた。まちに は , 秋の一箱古本市の開催初日だった。 2 日間限 「本がある」状態を可視化しようというものだっ りの古本市とこれから常設となる「まちじゅう図 た。春と秋の 2 回行ってきた。秋は観音通りとい 書館」を同時にお披露目することにより , これま われる通りを使い , プロ・アマ入り交じった古本 で行ってきた「本がある」環境づくりから , これ 市通りを 2 日間出現させた。 0 ヾ、

3. 現代の図書館 2013年 06月号

112 現代の図書館 Vol. 51 N02 ( 2013 ) カフェで , 地域情報の受発信 , 地域の方々による ワークショップ , まちづくりセミナー , 企業イベ ントなどさまざまな活動を行っている。 ここに設置されたはしご図書館の箱には , ワー クショップに関する本やまちの情報などの本が並 んでいた。 音楽やアートにこだわった FMdiningcafebar では , やはり公共の図書館ではあまり見かけない ここならではの図書館という感じに仕 本が並び , 立てられていた。小池精米店には , ぎっしりとお 米やそれにまつわる本が並べられていた。本箱の そばにはたくさんのお米袋が並べられ , 参加して いる方が楽しんでいることが感じられた。 やはりここでもコミュニケーションを意識した 展開となっていた。また渋谷 , 原宿という込み 入った街の中でお店を探しながら歩くということ も大変楽しかった。 北海道恵庭市では , 「恵庭市人とまちを育む読 書条例」制定記念事業として , 市立図書館が中心 となり , まちじゅう図書館を展開しようとしてい る。 まずは , 「本のまちづくりってどんなこと ? 」 と題して , 私やまち塾@ まちライプラリー ( 持ち 寄った本でつくるライプラリー , 大阪や東京で展 開されている ) の提唱者の礒井純充さんを招いて のトークショーや , 「 10 年後の読書のまち未来予 想図を自由に語り合おう」と題したワールドカ フェを市民のみなさんと展開し , まちじゅう図書 館の面白さなどを語り合っている。 これからも多くのコミュニティが , まちじゅう 図書館やそれに類似した活動を展開するのではな いかと予想される。大変ありがたい。この活動が 盛んになると , いすれまちじゅう図書館を通した ブックツーリズムができてくるだろうとも考えら れる。そのときが , 小さな輪としていたコミュニ ティがお互い繋がれるチャンスかもしれない。 これからの活動 私が所属する NPO 法人オプセリズムでも , ま ちじゅう図書館をさらに発展させていきたいと考 えている。その一つが「東北・まちじゅう図書館 プロジェクト」である。 2 年前の震災時 , 図書館関係者はもちろん , 多 くの方々が被災地に本を送った。まちとしょテラ ソでもボランティアのみなさんと一緒に本を送っ た。 しかし , あの本はどこへいったのだろうか。 部は仮設住宅のコミュニティスペースにあるだろ う。または , 仮設の図書館に運ばれているだろ つ。 多くの本は , まだまだ必要とされる道具だと考 える。もっとたくさん本と触れ合い , 人と接する 場所を増やしたいと考えている。 本を送るのではなく , 「図書館を届ける」とい う活動が必要なのではないかと考えている。 被災地では , 仮店舗での営業が開始され , 仮設 の商店街が開設されている。週末などはイベント の開催などで , 集客があるように見える。また , 観光客などで盛り上がっているように感じられる が , 平日に訪れてみると , 人はまばらである。 私たちは , そこにいる方々と話をし , いつもそ こに , 人がいるという状態を作りたいと考えた。 そこには会話がある。そんな空間と時間をつな いでいきたい ! そう考えたとき , そこには「ま ちじゅう図書館」が必要なのではないかと , 本と いう道具で人と人がふれあえる場を創りだす必要 があるのではないかと考える。 東北で年内の展開を目指して , まちじゅう図書 館の活動を始めている。 もちろん , 東北だけではなく , 日本中でまち じゅう図書館を展開させたい方々への協力は惜し まない。たくさんの本を通してのワクワクする場 づくりのお手伝いをさせていただきたい。そう 願っている。 ( 2013.6.7 受理 )

4. 現代の図書館 2013年 06月号

110 現代の図書館 Vol. 51 No.2 ( 2013 ) △まちじゅう図書館に参加している銀行の行内と書棚 △まちじゅう図書館に参加しているアップルバイの店の 外観と内部 た具合にキャラクター設定を行い , このオプセド か」といった質問がでてくるようになる。そし リとロゴによる運営を考えていった。 て , 本は見てくれるのだが , それぞれの館長との グッズには , 各館を回っていただくときに使用 会話や , そこにある食べ物などにまつわる会話が してもらう手のひらサイズの「パスポート」 , オ 弾むようになってくる。本が道具となりコミュニ プセドリをあしらったトートバッグ , 手ぬぐいな ケーションがどんどんと生まれているという実感 どがある。中でもトートバッグは大人気で , 多く である。 の方々に使っていただいている。その他 , 参加館 今年は我が家でもまちじゅう図書館への参加を の位置がわかるマップも制作した。 考えている。図書館の館長を退任してからも本が また , それぞれの館の軒先には , これもオプセ ある生活は続いている。そして日本中の知人から ドリをあしらったフラッグをぶら下げていただい 本を使ってくれないかと本が届いている。 ている。これがまちじゅう図書館の目印である。 これまで開設してきたまちじゅう図書館は , 館 このフラッグがある場合は , 気兼ねなくお入りく 長 ( 主 ) が読んだ , また大切にしていた本が中心 ださいということなのだ。どの館も , 特に商売を だったが , 少し発展させて , 日本中から集まる本 されている館では , このまちじゅう図書館に参加 の棚も存在してもいいのかなと考えている。もと することで売上がアップするなんて考えてもいな もとの本の主たちが , 自分の本を訪ねて旅をする い。訪れて来られる方との会話や笑顔を楽しみに ということもできると考えている。自分の大好き されているのだ。だから暖簾をくぐる方としても な本を売ってしまうのではなく , 誰かに読んでほ 敷居が低く入りやすい。これも本来「図書館」の しい , 誰かと共有したいと考える方々がたくさん 意図するところである。 おられるのである。そういった考えにもこのまち 私は最近 , 頼まれると「まちじゅう図書館ツ じゅう図書館という場を提供し , 新しい交流を創 アー」を行っている。 2 ~ 3 時間かけて 5 ~ 6 館 造して欲しいと考えている。その先駆けとなるの 回るというツアーだ。どうしても 1 館 1 館の滞在 がますは , 我が家の図書館となればいいなと思 時間が長くなり , すべてを回ることはできない。 つ。 このツアーで面白いのは , 最初の 2 館くらいは 本を意識した回遊なのだが , 3 館目ぐらいから 「次は何が食べられますか」とか「何が名物です

5. 現代の図書館 2013年 06月号

108 現代の図書館 V 矼 51 N02 ( 2013 ) から生活の中に溶け込んでいく「本がある」状態 へのプロセスを楽しんでいただきたかった。 まちじゅう図書館が始まった スタート前にスタッフが , 当初から参加を表明 していただいていた方々はもちろん , 参加してい ただけそうな方々へ説明にまわった。そして , 最 初に手をあげていただけたのが 10 館の館長 ( 主 ) さんだった。 そして現在は , ジャム製造販売店 , 銀行 , 味噌 醸造場 , カフェ ( 7 館 ) , 酒造場 ( 2 館 ) , フラン ス菓子店 , カレー専門店 , レストラン , 民間のサ ロンといった 16 館が参加している。また開館を 準備していただいている館が 4 館ある。 いくっかの図書館を紹介する。 地酒松葉屋本店は , かって文筆家を目指してい たというオーナーの本棚である。今は使わなく ふね なった , 酒造りの絞りの段階で使用していた槽を 本棚に使っている。これだけでもこの棚の個性と なっている。その槽の棚に並ぶのは , 日本酒に関 する本だけではなく , ワインやテープルマナーの 本までも揃っている。食に対するオーナーのこだ わりを感じる本棚となっている。 穀平味噌醸造場は , 江戸時代から続く老舗の味 噌醸造場である。かって , 本屋さんで働いていた という経歴を持っ店主の棚。もちろん味噌の専門 書はある。だがそれだけではない , まちづくりに 大いに貢献していることもあり , 小布施町に関す る本や , 葛飾北斎関連本も並んでいる。そのほか にも食にまつわる本 , 東洋医学の専門書 , さらに は宇宙論に通じる本まで , 多岐にわたっている。 忙しくされている店主だが , 店内で会えれば , 本 の解説などもしてくれる。 かねいちくつろぎサロンは , それまでの 15 館 は店舗であったが , 初の個人宅からの参加であ る。明治時代に商家だったというお宅を改装し , サロンを開いた。「かねいち」とは , 当時の屋号。 このサロンでは , 町の歴史や観光情報 , オーナー 家の歴史など , さまざまな話を聞かせてくれる。 ご夫婦そろって本がお好きというオーナー。海外 特にアジアでの勤務が多かったということもあ り , アジアの歴史 , 政治などの本も多数並んでい る。またお子さんが読まれていた漫画や昭和が漂 うレアな本も展示されている。 こは , 本を読む だけではなく , 予約をすれば宴会もできてしまう という空間となっている。その他 , 銀行には金融 に関する本や長野県の本 , カフェには , そのカ フェを設計した建築家に関する本といったよう に , その場やその場にいた人 , いる人に関する本 などが並んでいる。 まちじゅう図書館のしかけ る」という状態から人が集まるということへの仕 まちじゅう図書館を始めるにあたり「本があ

6. 現代の図書館 2013年 06月号

106 現代の図書館 VOL51 No.2 ( 2013 ) ◆特集◆場所としての図書館 ヒト・モノ・コトをつなぐ はちじゅう図書館」 花井裕一郎 しかし , コンピュータによる管理 , また本の購入 まちじゅう図書館のはじまり などコストを計算すると膨大な予算がかかること が判明 , 計画の実現はすぐには難しいということ 「まちじゅう図書館オープンです ! 」スタッフ となった。それでもいつの日か町中を図書館に見 の声がお祭りの会場に響き渡った。 2012 年 10 月 立てたい ! その気持ちは私だけではなく , 多くの 20 日。「おぶせまちじゅう図書館」が始まった日 町民が抱いていた。 である。 本はコミュニケーションツール 「おぶせまちじゅう図書館」は , 2007 年に実施 された小布施町立図書館 ( 交流センター ) [ 現 : まちとしょテラソ ] の設計者選定公募型プロポー 小布施町立図書館まちとしょテラソ ( 以下まち ザルに出された建築家古谷誠章さんのプランに始 としよテラソ ) では , オープンのときから , 町 まる。 民 , 町外の方からも多くの寄贈本を受け入れてい 古谷さんは , 最初から町中に棚を設置してどこ る。その寄贈をされる方々との会話でアイデアが でも貸出 , 返却ができるというプランを提案され 生まれた。 た。これは , 小布施町立図書館 ( 交流センター ) ご自宅の本棚に並ぶ本をすべて持っていってほ の広さが 1000 ⅲという小さな図書館だから , す しいという連絡が多く寄せられるようになり , ぐに本を並べるスペースがなくなると考えてのこ せつかくある方が , ある意識の中で集められた本 とだった。小さな図書館 , 小さな町ということを の群れ , 棚ごと提供したいなと思うようになっ よしと考えてのプランである。このプランは , す た。そう考えるようになってから , ある研究をさ べての本に IC ダグを使い , コンピュータで管理 れていた方カら寄贈を受けた。そこには , その研 するというものだった。 究の専門書カ多く含まれていた。 私自身もこのプランにわくわく感を抱き , せひ そのとき , そうだ ! 研究者はその専門書を収集さ 実行したいと考えるようになった。 れている。そう考えると専門店 , 例えば酒造を営ま その後 , 町民を中心にして設計者 , 運営者と図 れる方 , 味噌醸造 , パン屋 , 菓子屋・・・・・・多くの専 書館建設を検討する図書館建設運営委員会 ( 通算 門家がその道の本を読んでいるにちがいない。 53 回 ) でこのプランを実行することを議論した。 その本群が並ぶ本棚を家の奥から表へ出してい ただけないだろうか。それはある種の分類だ ! 古谷さんの町中図書館と私のひらめきが一致した はないゆういちろう : NPO 法人オプセリズム ときである。 キーワード : まちじゅう図書館 , 小布施町立図書館まちとしょ その本の後ろ ( 家屋 ) には , その本をもっと詳 テラソ し」

7. 現代の図書館 2013年 06月号

・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」 ヒト 111 次いでいる。沖縄から北海道まで「まちじゅう図 △バスポートに押された各館のスタンプ 書館のつくり方」に関する問い合わせをいただい ある。三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングは , ている。 何も難しいことはないのだ。「本がある」とい 三菱 UFJ フィナンシャル・グループの総合シン う場を作り , それを知っていただくことでコミュ クタンクである。 ニケーションとしての場ができてくる。 渋谷はしご図書館には , 23 店舗が参加してい 同じように展開しているところがある。東京・ る。多くはカフェだが , 他にもお米屋さん , コ 渋谷や原宿にて期間限定で行われた「渋谷はしこ ミュニテイラジオ局 , コワーキングスペースなど 図書館」である。 がある。 主催者のコメントによると , 「まち全体をネッ 提供された約 30cm 四方の箱を軒先に置き , そ トワーク化された『生きた図書館』とする社会実 の中に自分の本を並べるというものだ。まさにま 験プロジェクトです。 3 月 9 日 ( 土 ) ~ 24 日 ちじゅう図書館である。この企画でもキャラク ( 日 ) のプロジェクト期間中は , 渋谷にあるカ ター「はしごん」を使って展開している。はしご フェやショップなどに , 店舗オーナーにとっての んは , 公式ホームページによると , とっても好奇 渋谷に関わる本や , 趣味・趣向などにちなんだ本 心旺盛で , まちにあるいろんなお店をはしごする が並ぶ小さな本棚を置き , それらを「はしご」し のが大好きなキャラクター。本をたっくさん読ん て楽しむことができるネットワーク型の図書館を でいて , とっても物知りということ。まちじゅう 展開します。」 ( 公式サイトより ) 図書館もそうだが , キャラクター設定により , ど 企画したのは , 株式会社ックルバ ( 以下ックル うして欲しいのかという参加と行動を促してい バ ) と三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの る。 若手社員。ックルバは , 空き店舗やオフィスをリ 私も数軒をはしごしてみた。 「カフェから広がるまちづくり」をコンセプト ノベーションしてコワーキングスペースにした り , コミュニティスペースを作ったりとコミュニ としている TOWN DESIGN CAFE JINGUMAE0 ティ空間を演出している若手のべンチャー企業で さまざまなコミュニティ活動をサポートする複合

8. 現代の図書館 2013年 06月号

現代の図書館 Libraries Today ISSN 0016 ー 6332 VOL51 n02 0 場所としての図書館 2013 0 日本図書館協会現代の図書館編集委員会 「場所としての図書館」再考・根本彰 インフラ老朽化問題の深刻さと図書館への示唆・根本祐ニ 図書館における空間デザインと利用者行動・中井孝幸 場としての大学図書館ーラーニング・コモンズがもたらすもの ・小山憲司 地域に公開された児童図書室を大学キャンバスにつくって 25 年 一時代とともに変わりゆく図書館の意味を考える・佐々木宏子 関係性のはぐくむ場所一地域の居場所から生まれる 「つながり」と「活動」をめぐって・坂倉否介 ヒト・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」・花井裕一郎

9. 現代の図書館 2013年 06月号

現代の図書館Ⅷ . 51 NO. 2 ・編集委員会 委員長 / 須永和之 ( 國學院大学文学部 ) 委員 / 柴田洋子 ( 国立国会図書館 ) 直江千寿子 ( 横浜国立大学 ) 依田一 ( 横浜市中央図書館 ) 米澤久美子 ( 東京都立府中東高等学校図書館 ) ニング・コモンズがもたらすもの・小山憲司 場としての大学図書館 図書館における空間デザインと利用者行動・中井孝幸一一一 68 インフラ老朽化問題の深刻さと図書館への示唆・根本祐二 「場所としての図書館」再考・根本彰ーー 5 ノ 特集 : 場所としての図書館 8 ノ ヒト・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」・花井裕一郎 をめぐって・坂倉杏介 - ーー 98 関係性のはぐくむ場所一地域の居場所から生まれる「つながり」と「活動」 一時代とともに変わりゆく図書館の意味を考える・佐々木宏子一一の 地域に公開された児童図書室を大学キャンパスにつくって 25 年

10. 現代の図書館 2013年 06月号

98 現代の図書館 V 矼 51 N02 ( 2013 ) ◆特集◆場所としての図書館 関係性のはぐくむ場所 ・地域の居場所から生まれる「つながり」と「活動」をめぐって 坂倉杏介 地域に求められるく居場所〉 子どもから高齢者まで , 地域の多様な人々が気 軽に立ち寄り自由に交流できる「地域の居場所」 に注目が集まっている。地域の居場所といっても 決まった形があるわけではなく , 名称も「地域の 茶の間」 , 「まちの縁側」 , 「コミュニティカフェ」 などさまざまだ。飲食店の形態をとる場合もあれ ば , ディサービスや子育てサロンが居場所になっ ているケースもある。共通するのは , 特定のサー 写真 1 ある地域の居場所の風景 ( 「うちの実家」 2011 年頃 ) ビス提供が主目的ではなく , 誰でもいっ来てもよ いし , いつ帰ってもよい , そして過ごしたいよう から急増している地域の居場所の特徴は , 運営主 に過ごせるというゆるやかさと , 人と人とのあた 体と対象者の多様化であるといってよい。すなわ たかい交流に主眼が置かれている点である。こう ち , 以前は地域福祉やまちづくりといった特定の した地域の居場所では , その規模の小ささにもか 分野の取り組みだった居場所づくりに いまや多 かわらず多種多様な活動が行われ , 地域のさまざ くの人が関心を持ち , 主体的に参加するように まな縁が紡ぎ出されている。 なったのである。 1980 年代ごろから見られた子どもや青少年の こうした動きの背景には , 一般的にコミュニ 居場所 , 社会福祉協議会の主導による高齢者のサ ティの衰退があるといわれる。核家族化や個人の ロンなど , 特定の人を対象とした居場所づくり 孤立 , また本格的な少子高齢化社会の到来 , 地域 は , それほど目新しい現象ではない。また , 地域 の災害対応力への危機感などから , 地域のつなが 住民の寄り合い所や活動拠点としては , 公民館や りが切実に求められるようになったからだという コミュニテイセンターが , 戦後から高度経済成長 のだ。もちろん , それは間違いではないけれど 期にかけて整備されてきた。 2000 年代に入って も , 携帯情報端末の普及やソーシャルネットワー キングサ一ビ・ズーて SNS ) ーなーどによって , ー従来の地 、縁や社縁を超えた新しいつながりは , 一以前に増し てつくりやすくなっている。にもかかわらず , 居 場所という素朴な手法に期待が集まるのはなぜな のだろうか。また , 居場所という空間的な装置が さかくらきようすけ : 慶應義塾大学グローバルセキュリティ 研究所 キーワード : 地域の居場所 , つながり , 場所 , 協働プラット フォーム , 芝の家