80 現代の図書館 Vol. 51 N02 ( 2013 ) 10 ) 中井孝幸 , 秋野崇大 . 図書館の雰囲気が場の選択に与える 影響に関する研究その 1 ~ 2. 日本建築学会大会学術講演梗 概集 . E- 1 , 2010 , p. 323 ー 324 , p. 325 ー 326 (1) 榛葉詠美子 , 野間元太 , 中井孝幸 . 児童開架スペースにお ける利用者の姿勢・行為からみた居場所形成について一イン ターネット時代における「場」としての図書館に関する研 究・その 1 , 日本建築学会東海支部研究報告集 . 第 48 号 , 2010 , p. 377 ー 380 12 ) 谷口桃子 , 山本智奈津 , 中井孝幸 . 公共図書館における属 性別座席選択からみた来館を促す場の魅力に関する研究 . 日 本建築学会東海支部研究報告集 . 第 48 号 , 2010 , p. 385 ー 3 13 ) 中井孝幸 . 来館を促す施設的な配慮ー滋賀県の大・中・小 規模図書館の調査から . 第 31 回図書館建築研修会 ( 2 開 9 年 度 ) 来館を促す建築的魅力ー非来館型利用が増える中で。場 としての図書館 " を考える . 日本図書館協会 . 289 , p. 46 ー 59 14 ) 蒋逸凡 , 中井孝幸 . 「個人」と「グループ」利用からみた 大学図書館での居場所形成 . 日本建築学会大会学術講演梗概 集 . E-I, 2012 , P245 ー 246 15 ) 秋野崇大 , 中井孝幸他 . 場選択と利用者意識からみた図書 館計画に関する研究・その 2 , 日本建築学会東海支部研究報 告集 . 第 50 号 , 2010 , p. 473 ー 476 16 ) 中井孝幸 . 安全な避難のために一公共図書館での滞在利用 に関する行動調査から . 第 33 回図書館建築研修会 ( 2011 年 度 ) 東日本に学ぶ . 日本図書館協会 . 2012 , p. 83 ー 98 17 ) 中井孝幸 . 行動観察調査からみる「場」としての図書館利 用 . LISN. No. 153 , 2012 , p. 13 ー 16 , No. 154 , 2012 , p. 10 ー 16 18 ) 根本彰 . 理想の図書館とは何か一知の公共性をめぐって . ミネルヴァ書房 . 2011 19 ) アントネッラ・アンニョリ著 ( 萱野有美訳 , 柳与志夫解 説 ). 知の広場一図書館と自由 . みすず書房 . 2011 20 ) 吉田右子 . デンマークのにぎやかな公共図書館ー平等・共 有・セルフヘルプを実現する場所 . 新評論 . 2010 (1) 植松貞夫 , 冨江伸治 , 柳瀬寛夫 , 川島宏 , 中井孝幸 . JLA 図書館実践シリーズ 13 , よい図書館施設をつくる . 日本図書 館協会 . 2010 22 ) ジョン・ E. ブッシュマン , グロリア・ J. レッキー編著 ( 川 崎良孝 , 久野和子 , 村上加代子訳 ). 場としての図書館ー歴 史 , コミュニティ , 文化 . 京都大学図書館情報学研究会 . 2 開 8 ( 2013.6.3 受理 )
はあるが人ごみに紛れることで匿名性を確保し て , 落ち着きを求めている利用者がいることがわ かった 12 ・ 13 ) 。地域のサロンからにぎわい空間と しての図書館まで , さまざまな図書館サービスを 用意する必要がある。 ( 2 ) コミュニケーションの場としての図書館 公共図書館での中高生や大学図書館では , 議論 や会話しながら勉強できる場として , 図書館を利 用している事例が増えている。大学図書館では ニングコモンズが計画されるようになり , 友 人との会話や交流を目的に図書館を利用する学生 もいて , 飲食できる場としての図書館を求めてい る意見もある。もはや静かな空間だけでは , 落ち 着いた環境は作り出せないともいえる。多様化す る要求にも応えられるように , 音に対する配慮を しながら距離感を持って空間同士を隔てることも 4 まとめと今後の課題 必要だと考えられる 3 ) 。 ており , 「近く」にあるからだけではもはや利用 共図書館を利用するなど賢く図書館を「選択」し う。先述したように , 約 4 割の利用者が複数の公 利用者をただ待っているだけではもうだめであろ 異なるが , 限られた予算 , 既存の施設を理由 各図書館が置かれている立場や状況はそれぞれ ている。 育理念に即して提供することが必要であると考え ないため , 偏りなく多様なサービスを各大学の教 していないサービスに対する需要は掘り起こされ が他の大学図書館を利用することは難しく , 享受 ことが必要である。一方 , 大学図書館では利用者 、一サーービスを生活・圏内で選択できるように計画する はかなり難しいが , そうしたさまざまな図書館 共図書館ではすべてのサービスを 1 館で行うこと キーワードになることが整理できた。つまり , 公 は , 利用者にとって図書館サービスの選択性が 利用行動についてみてきた。これからの図書館に と , 図書館サービスによって大きく影響を受ける ら , 図書館サービスによらない普遍的な利用行動 公共図書館と大学図書館のさまざまな調査か 図書館における空間デザインと利用者行動 79 してもらえない。図書館は , 何が求められている のかを自ら考えて行動することが必要であり , そ の結果 , そこを場の魅力として感じる利用者がリ ピーターとして必す現れるだろう 17 ) 。未だ調査 分析も途中であるが , 今後は建築計画や施設計画 から , より具体的な方策について検討を進めてい きたい。 最後に , 調査にご協力いただいた各図書館の館 長ならびに職員の方々に深謝いたします。また , 本報告の一部は , 2011 ~ 13 年度科学研究費補助 金「『場』の概念からみた図書館における来館を 促す建築的魅力に関する研究」 ( 基盤研究 C , 研 究代表者 : 中井孝幸 ) の助成を受けて行ったもの である。 く参考文献 > 1 ) 中井孝幸 . 利用圏域の二重構造に基づく疎住地の図書館計 画に関する研究 . 学位論文 . 280 2 ) 中井孝幸 . 地方中小都市における図書館利用とモータリ ゼーション一利用圏域の二重構造に基づく図書館の地域計 画 . 日本図書館協会 . 現代の図書館 . V 。 I. 39 , No.2, 2001 , p. 102 ー 110 3 ) 中井孝幸 . にぎわい・ふれあいの「場」としての図書館ー 公共図書館と大学図書館での行動観察調査より . 第 34 回図 書館建築研修会 ( 2012 年度 ) にぎわい・ふれあい空間を考え る一これからの図書館における仕掛けと場のつくり方 . 日本 図書館協会 . 2013 , p. 62-71 4 ) 中井孝幸 . 利用行動からみた「場」としての図書館に求め られる建築的な役割 , 情報の技術と科学 , 63 巻 6 号 , 2013 , P228 ー 234 5 ) 中井孝幸 , 伊藤禎浩 , 青山裕亮 . 図書館利用者の滞在利用 の時刻変動と着座行為ー公共図書館における滞在利用からみ た開架スペースの建築計画に関する研究その 1. 日本建築学 会大会学術講演梗概集 . E-I, 2 開 8 , p. 147 ー 148 6 ) 秋野崇大 , 中井孝幸 . 図書館における時刻推移と利用者属 性からみた場の選択について一居場所としての図書館計画に 関する研究その 1. 日本建築学会 . 地域施設計画研究論文 . 第 29 号 , 2011 , p. 191 ー 198 7 ) 蒋逸凡 , 中井孝幸他 . 居場所の形成からみた大学図書館の 施設計画に関する研究その 1 ~ 2. 日本建築学会東海支部研 究報告集 . 第 50 号 , 2012 , p. 457 ー 460 , p. 461 ー 464 8 ) 蒋逸凡 , 中井孝幸他 . 大学図書館の特色による利用者の利 用意識と座席選択について一「場」の概念からみた図書館計 画に関する研究その 2. 日本建築学会東海支部研究報告集 . 第 51 号 , 2013 , p. 493 ー 496 9 ) 秋野崇大 , 中井孝幸 . 使い分け行動に基づく図書館の特色 と利用者意識について一居場所としての図書館計画に関する 研究その 2. 日本建築学会 . 地域施設計画研究論文 . 第 30 号 , 2012 , p. 127 ー 136
現代の図書館 Libraries Today ISSN 0016 ー 6332 VOL51 n02 0 場所としての図書館 2013 0 日本図書館協会現代の図書館編集委員会 「場所としての図書館」再考・根本彰 インフラ老朽化問題の深刻さと図書館への示唆・根本祐ニ 図書館における空間デザインと利用者行動・中井孝幸 場としての大学図書館ーラーニング・コモンズがもたらすもの ・小山憲司 地域に公開された児童図書室を大学キャンバスにつくって 25 年 一時代とともに変わりゆく図書館の意味を考える・佐々木宏子 関係性のはぐくむ場所一地域の居場所から生まれる 「つながり」と「活動」をめぐって・坂倉否介 ヒト・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」・花井裕一郎
現代の図書館Ⅷ . 51 NO. 2 ・編集委員会 委員長 / 須永和之 ( 國學院大学文学部 ) 委員 / 柴田洋子 ( 国立国会図書館 ) 直江千寿子 ( 横浜国立大学 ) 依田一 ( 横浜市中央図書館 ) 米澤久美子 ( 東京都立府中東高等学校図書館 ) ニング・コモンズがもたらすもの・小山憲司 場としての大学図書館 図書館における空間デザインと利用者行動・中井孝幸一一一 68 インフラ老朽化問題の深刻さと図書館への示唆・根本祐二 「場所としての図書館」再考・根本彰ーー 5 ノ 特集 : 場所としての図書館 8 ノ ヒト・モノ・コトをつなぐ「まちじゅう図書館」・花井裕一郎 をめぐって・坂倉杏介 - ーー 98 関係性のはぐくむ場所一地域の居場所から生まれる「つながり」と「活動」 一時代とともに変わりゆく図書館の意味を考える・佐々木宏子一一の 地域に公開された児童図書室を大学キャンパスにつくって 25 年
68 現代の図書館 VoI. 51 No.2 ( 2013 ) ◆特集◆場所としての図書館 図書館における空間デンと 利用者行動 はじめに て推定属性・姿勢・行為を記録 ) や追跡調査 ( 入 ロット調査 ( 調査員が 10 ~ 15 分で館内を巡回し 2007 年以降はアンケート調査に加え , 巡回プ 0 な想いを持って図書館を利用していることを示し いると整理した。このように , 利用者はさまざま うかは , 図書館の施設サービスに大きく関係して が成長した後も親が単独で継続して利用するかど り , 学習目的の利用や図書館離れが生じ , 子ども で , 子どもは成長すれば友人と来館するようにな ステージによる図書館利用の変化を示したもの また , 図 1 は子どもをきっかけとしたライフ 待していることがうかがえた。 転換できる」 25 % など図書館に「非日常性」を期 「新しい興味や関心を見つけられる」 35 % , 「気分 調べたいことがわかる」が 60 % と最も多いが , 書館へのイメージを尋ねたもので , 「知りたい 『現代の図書館』でも報告している 2 ) 。表 1 は図 用意識などを構造的に整理し , その内容の一部を 図書館における利用圏域の二重構造や利用者の利 を行い , 学位論文としてまとめた 1 ) 。地方都市の 館の図書館で , 土曜日一日来館者アンケート調査 1992 年から 1998 年に三重・滋賀・岐阜県の 16 中井孝幸 表 1 図書館に対するイメージ ( 複数回答 ) 知りたいこと・調べたいことがわかる 日課として来る 友人・知人と出会い、交流する 時間をつぶせる 勉強や作業のための場所がある 自分の世界に浸れる 新しい興味や関心を見つけられる 気分転換できる 家族や友人とレジャー的に来られる その他 回答数 ( 人 ) 59.5 2.7 2.4 11.9 18.9 11.0 34.3 24.7 7.5 4.4 1658 なかいたかゆき : 愛知工業大学 キーワード : 公共図書館 , 大学図書館 , 選択性 利用行動 , 利用意識 , 館から退館まで館内での利用を調査員が記録 ) を 公共図書館と大学図書館で行っている。公共図書 館と大学図書館は , 利用者層や利用内容 , 提供し ているサービスも異なるため単純に比較はできな いが , 空間デザインと利用者行動の関係から図書 館という「場」に何を求めて利用しているのかを 整理し , 今後の図書館計画への示唆を得たいと考 えている。今回は事例報告 3 ・ 4 ) が主となり , 図 書館名は適宜省略して表すが , 調査事例等の詳細 については参考文献を参照してもらいたい。 1 図書館での基礎的な利用行動と利用意識 ( 1 ) 利用者の滞在に対する意識 1990 年代の調査では , 公共図書館の平均滞在 時間は 49 分程度であったが , 2007 年以降の調査