さて「総長公選 , 以外にも、山川総長は小野秀雄と「種々 話」している。中身は帝大内外のニュースや情報もあったろう し、また小野の専攻する新聞学の話もあっただろう。確かなの は山川総長が、ニュース・情報の持っ力や、新聞メディアの影 響力について重要視していたことだ。山川も小野記者を信頼し て話をし、小野は良い記事を書くことができた。そのお蔭で、 このよ、つに「正史」にない話も後世に伝えられることとなっ * 山川健次郎 ( やまかわ・けんじろう一八五四ー一九三一 ) 明治期の 物理学者。日本人として初めて物理学の帝大教授に就任。明治から大 正期、二度にわたり東京帝大総長を務める。 * 東龍太郎 ( あずま・りようたろう一八九三ー一九八一一 l) 『帝大新聞』 の創立資金提供者といわれる。後に東京大学医学部教授。一九五九か ら六七年まで東京都知事を二期務める。 * 永井了吉 ( ながい・りようきち一八九三ー一九七九 ) 「帝大新聞」創 業者。大川周明の影響を受けた右翼活動家。日本大学教授、建設会社 社長など。 * 小野秀雄 ( おの・ひでお一八九五ー一九七一 l) 東京日日新聞記者か ら、東京帝大文学部嘱託として新聞学を講じる。戦後、東京大学新聞 研究所教授兼所長。日本新聞学会会長。東大新聞の前身である東京大 学学生新聞会の会長も務めた。 筆者は公益財団法人東京大学新聞社の役員ですが、内容は個人の見解で あって法人を代表するものではありません。 ( しみず・あっし公益財団法人東京大学新聞社 ) 現役東大生がつくる東大受験本 東大 201 フ とんがる東大 東京大学新聞社編 7 月末刊行予定 この 1 冊で東大がわかる ! 現役東大生による、 受験必勝法から合格体験記、入学後の生活のアド バイス、本郷への進学、そして卒業後の進路に至 るまで、徹底的に解説した決定版。東大受験を考 えている高校生や中学生には必読のガイドブッ ク。ノーベル賞受賞者の梶田隆章先生へのインタ ビ、一、東大発チ ~ ー企業特集など、読み物プ土 記事も充実。 IS B N 978-4-13- OO 1300-0 A5 判 / 304 頁 / 本体 1 , 500 円十税 ノーヘル物理学震 梶田隆章 雪浦聖子 村松秀 畑正憲 現設東大生がつくる 東大受験本 ファッションデザイナー 011 搬入試 合格者の素願 東大生の 当丸わがり 現役生 & 員からの 勉強法 ーアトバイス 45 [ 初期締大新聞」の研究ーー「創刊資金の謎」 ] 5 「山川健次郎日記』に見る、一九一九年の東京帝国大学
がちょうど三千円だった、ということも一つの仮説だ。「三千十月のほうは、新聞記者をしながら古今内外の新聞研究に余 円ーの出元が東の両親であれ、山川であれ、または仮に東が自念がなかった小野が、記者と二足の草鞋で東京帝大文学部社会学 国 ら稼いだものであっても、山川の了解なくして、東から永井に学科の大学院に入ったので、あいさつに訪れたのだろう。 帝 新聞資金として渡されることはなかった。そういう意味では広後者の「見舞にあらず」は、日記によれば前日の十一月二十京 の く「山川家のマネーーであることには間違いはない。 七日山川総長は「道にてころび微少の負傷すーとあり、これが 年 翌二十八日「予が負傷の事過大に報知新聞により報道せられる 日記に登場する、もう一人の重要人物 為め」この日山川のもとには多くの見舞客が現れ、見舞の品が る 日記を見ながら、山川健次郎と『帝大新聞』のことを考えて届いていたのである。 見 いたときに、もう一人の重要人物の存在に気がついた。私がこ これだけでは詳細が不明なので小野秀雄の自伝『新聞研究五 の名前を発見したのも偶然だった。一九一九 ( 大正八 ) 年秋の十年』 ( 毎日新聞社、一九七一年 ) を繙くと、記者としての取材 日記に二度フルネームで登場していて、最初は「同名異人に始まった、小野秀雄記者と山川健次郎総長との相当深い関係健 山 か卩」と思ったくらいだった。それぐらい山川とは一見縁の薄がうかがえる。同書に出てくる話題だけでも次のようになる。 そうな人物だ。 戦後一九四九 ( 昭和二十四 ) 年に新設された東大新聞研究所①青山胤通医学部教授の後任人事について山川総長を取材し の 金 の、初代所長・教授に就任する「日本新聞学会初代会長」Ⅱ て、スクープ記事にした。 資 野秀雄、である。小野はこの当時まだ三十四歳。『東京日日新②東京帝大の学制改革、総長公選といった大ニュースを記事悧 にして特ダネとした。 聞』の気鋭の記者である。 ③理化学研究所、伝染病研究所の取材で、山川総長発案の食究 の 十月十八日小野秀雄氏大学院に入学したる趣にて来室。 用蛙の移植の記事化。 聞 ( 前後略 ) ④「森戸事件」で取材中、森戸辰男本人が現れて山川総長と新 大 帝 十一月廿八日日々の小野秀雄氏 ( 見舞にあらず ) 来学辞職をめぐるやり取りがあった。 種々話あり。 ( 前後略 ) 初 などである。この他にも学生のストや、「軽井沢夏期大学」、吉 1 三ロ
にて後ろより見物す ( 我大学と早稲田の時のみなり ) 。資金の親からの援助について一定額まで贈与税の優遇が認めら 学 高商艇庫内にて各選手 ( 四校の ) 運動会の役員本日レれている。 大 国 ースに働き呉たる人々を集めサンドイッチ、ビールを 帝 しかし、では東に新居は必要かとなると、実は翌年五月から 京 東 饗す。予一場の演説を為す。 ( 後略 ) の単身の英国私費留学が決まっていて、そのニーズに乏しい の 年 この十一月に山川から東に渡されたお金は、阿吽の呼吸で『帝 東夫婦と山川の親密な家族の交流を見たうえで、東の立場と大新聞』創刊費用にかたちを変えたということだろうか。たと して一九二〇 ( 大正九 ) 年十一月時点での、『帝大新聞』の創え、それが東の両親からのお金であったとしても、このように る 見 刊資金Ⅱ「三千円」とはどんなものだったのだろう。 親密な関係を見てくれば、それを山川への相談や了解なくし 1 言ロ 東龍太郎が、山川健次郎の三女・照子と結婚したのが一九一て、『帝大新聞』資金に回すことは実際にできないし、東はし 九 ( 大正八 ) 年の四月。そして最初の子供・克彦が誕生したのないだろう。 次 健 が一九二〇 ( 大正九 ) 年の三月。ちょうど帝大総長を二〇年九この時期、子供の出産、東の留学準備および渡航費用の支払 山 月に退任した山川健次郎が退職金の一部を山川夫婦に渡して、 い、また転居も当然想定されるので、東および山川の両方の家 新居の費用の一部に充当させる、というのは巷間によく見られからそれなりの金額のお金が渡された。そのうちの一部が不要 る話だ。いまの日本の税制でも、このようなかたちで住宅取得になったり、東にとって予定より多くて余ってしまった。それ 資 刊 大をが円 ルす題円策戦策度政円・ ウエンディ・ロワ 1 著武井彩佳監訳石川ミカ訳 、ど士 8 マ存課 8 挑政制民 8 共の 8 の生生移 4 、 & カな護 6 著がそ 2 民へ共共の 2 な 究 何か弁 / 化化後 / 移生 研 5 の・共文文 ~ 「 の ・ノ変る主」判 ヒトラ 1 の娘たち、 のて外析 < 化多多に六 ? ・あ久 急必こ 聞 ク . 人木排分 緊はー 新 日、体 ホロコーストに加担したドイツ女性 ら正急 大 国急 え治す 一一日佐現、 .. りの 帝 の論ひ代 - ま自示しる・家家 < 冷戦後に明らかになった個人的な文書な 2013 年全米図書賞ノンフィクション部門最終候補選出作工〇一一会をカ 期 どの史料と丹念な聞き取り調査をもとに、 初 「書 0 女性学』 0 「・ト研究 0 、方」け 0 分岐チ . 〇洋体少浩をな針 ? 9 わ幸 = や a ホロコースト研究に新たな視点を提供し 点と ( て読まれ、記憶されることになるだろう」 レ井 治å受歴獸の ・日未 る法く・井害 5 た員重な研究。 四六判 / 3200 円 ティモシー・スナイダー ( フラッドランド」著者 ) 自人毛のの策い憲よ永災災 4 つ、駒チると よ : 明石書店 〈価格・税別〉 図書目録送呈 東京都千代田区外神田 6-9-5 Tel. 03-5818-1171 Fax. 03-5818-1174
東京大学出版会新刊案内 上、あらかじめ書店へご注文くだされば幸いです。 201 6 年 8 月 一般財団法人東京大学出版会 〒 153-0041 東京都目黒区駒場 4-5-29 電話 : 03-6407-1069 / FAX : 03-6407-1991 HP : http://www.utp.0「.jp/ 大野秀敏 + MPF ファイバーシティ 縮小の時代の都市像 B5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 2900 円十税 ) 内野儀 J 演劇の場所 モビリティ トランスナショナルな移動性へ A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 6800 円十税 ) 高橋登・山本登志哉編 子どもとお金 おこづかいの文化発達心理学 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 4800 円十税 ) 橋元良明編 日本人の情報行動 2015 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 12000 円十税 ) 木村福成・椋寛編 国際経済学のフロンティア グローバリゼーションの拡大と対外経済政策 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 8500 円十税 ) 月刊 IJPJ 誌の定期購読をお薦めします 「 U 円 ( ゆう・びい University pres の略 ) 誌は、 1972 年 11 月創刊され、学問の最前線やその周辺のトピックス、 読書論や書物をめぐる小論・エッセイ、歳時記風のコラム を掲載しています。巻末には小会発行の新刊図書につい ての案内や、重版、復刊図書をお知らせしています。 ■ A5 判・本文 48 頁 / 毎月 5 日発行 お求めの小会の出版物が書店にない場合でも、その書店にご注 文くだされば 10 日位でお手に入ります。この新刊案内をご覧の [ 8 月の新聞広告 ] 朝日新聞 北海道新聞 京都新聞 3 段 8 割 1 日 3 段 8 割 1 日 3 段 8 割 1 日 西日本新聞 3 段 8 割 1 日 中日・東京新聞 3 段 8 割 17 日 日本経済新聞 3 段 8 割下旬 水野誠・三浦麻子・稲水伸行編 読者コード ( 7 桁 ) をお書き添えください ) 分まで承ります。 ( 住所変更等お知らせいただく場合は 号からご希望かを明記してください。ご購読期間は 5 年 お申し込みください。ご住所、お名前、郵便番号、何月 ハガキもしくは FAX にて「新規申込」とご記入のうえ、 ■定期購読のお申し込み方法 ・年間購読料 1 网円 ( 税・送料込。海外は 2 円。 ) A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 4800 円十税 ) 精神医学の科学と哲学 [ 精神医学の哲学 1 ] 石原孝二・信原幸弘・糸川昌成編 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 6600 円十税 ) オスマン朝宮殿の建築史 川本智史 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 3400 円十税 ) 新興国の経済発展とメガシティ [ メカシティ 4 ] 村松伸・山下裕子編 A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 3500 円十税 ) 21 世紀の科学技術と政策形成 科学的助言 有本建男・佐藤靖・松尾敬子 / 吉川弘之 [ 特別寄稿 ] A5 判 / 下旬刊 / 定価 ( 本体 5000 円十税 ) ファン心理とスポーツビジネス プロ野球「熱狂」の経営科学
さてそれでは山川健次郎総長と、その義理の息子であり『帝 大新聞』出資者とされる東龍太郎の側から、この資金の件はど う映っていたのだろうか ? 二〇一四年に刊行された『山川健 次郎日記』 ( 芙蓉書房出版 ) に、一九一九 ( 大正八 ) 年夏から翌 二〇年一月までの部分がある。『帝大新聞』創刊期に当たる一 九二〇年の十一月から十二月という時期の日記が見つかれば、 この問題にも大きな決め手となるだろうが、今のところ発見さ れていない しかし、これまでの本論に関係する事柄も日記に随所に見ら れるので、『帝大新聞』の実際の創業者たる永井了吉が関係す る部分からます紹介していきたい。 山川日記に見る、山川総長と永井了吉 『山川日記』に永井了吉が登場するのは、次の場面である。 初期『帝大新聞』の研究ーー「創刊資金の謎」 5 『山川健次郎日記』に見る、 一九一九年の東京帝国大学 学 大 国 帝 京 東 の 年 る 見 一九一九年 ( 大正八年 ) 〔以下同じ〕 十一月十九日出。先大学に至り土田氏を呼び、永井了吉 次 健 の願出し音楽会は切符を売ることを差し止めたる形を換へ 山 願出たるものなるべく考ふるにより永井を呼びにやりたる も未だ来らず、航空に行く時刻切迫したる故末を取調べ られたし、予は三時比帰り来るべしと云ひ、航空より自動謎 の 金 車を呼び同所に至る。 ( 中略 ) 一時半自動車にて航空より 資 大学に帰る。東氏来室し、永井の事には全く関係なき旨弁刑 明あり。土田氏来室、永井より詳細の事を聞き取り報告あ り。土方氏も永井の頼みにて来室。永井は応援団の為め大究 の 金を費す考にて、音楽会を催し純益にて之に充つる考な 聞 り。応接室にて土田、土方両氏立会にて今回は差かかりた 新 ること故、無拠も先例には為らざる旨申聞け願書に調印せ締 期 清水あっし 1 一 1 一口
長候補者等の選挙」として章を設けて語られているが、このよ ー第 ( 本・ヤキ類鶩目きっ , に付されてゐるが、素たに決をみない、これ先づ鑑難載 平賀博士を推薦か 山出一ま産士がされ画に第まし、改めて全敎授の うな記事記載は一切ない。「文部省イ ( 則よ ( 中略 ) 総長・学長の学 總長問題依然愼重續く」 , 内進められ , 。。が要確 大 實と見られる、も ^ 日ヒ景みの語められ、文 国 創、の第」委っ新新受霎当引冒・ぎ . とーする一 ~ 亭たゞでは士 = 第・・を靡 . 、′靡、新たに候補を推薦し、 互選につき特に異議をさしはさむということはなかった」が、 十四日改めて學部毎に全敎授の意向がめられたが未だ文部富局に推第の運びに至らぬ模樣である、ま第 ~ されを梦第中難・ 帝 をられ、創だけはれないのま第・、ー第方無」整駅ある一々・内「羅すをされ、内れ工を窮の窮 & ある ただしこれに続けて「総長公選」が文部省内規であったため京 の 総長選をめぐる記事「平賀博士を推薦か」 ( 「帝国大学新聞」一九三八 ( 昭和十三 ) 、「この内規が、戦前最大の難局に遭遇する事態が生じた。 年 年十二月十九日号 ) 。この前週号で「全教授の意嚮に基き」 ( 選挙のことか ) 山田三 良、平賀譲教授が有力と報じられたが、その後山田氏が辞退を表明。この号で平賀いわゆる荒木改革案と呼称される事件がそれである」とある。 教授の「推薦」に至ったという記事である。「慎重続く」という表現に帝大事務当 一九三八 ( 昭和十三 ) 年に予備役陸軍大将・荒木貞夫が文相一 局の当時の緊張感が伺える。 る に就任し、「慣行として行われてきた総長以下の選挙は法的根 見 の四月二十日付『朝日新聞』に「帝大総長公選」の同様の記事は拠がない」と、その変更を求めてきた事件だ。軍国主義下で大 見えるが、その扱いについては触れてないので「文部省内規と学自治に政府が直接介入する動きだったが、「東京帝国大学は、 なる」という部分が小野記者の「特種」といえるかもしれない 文部省と真向うから対立する立場を採」った。『百年史』は総健 山 普通選挙もない時代に帝大の「総長公選」はやはり、相当重長公選については譲らなかった、としている。 大な問題だった。山川総長は、大学評議会の結論と寺内正毅首では荒木文相側の「負け戦」だったかというと、当時東京帝 っとむ 相との間に立ち、相当な摩擦と葛藤があったことがうかがえ大の書記官だった石井勗の著書『東大とともに五十年』 ( 原書測 の 金 る。これは当然山川から小野への直話であろう。小野がこの本房、一九七五年 ) によると、ちょっと違った話が伝えられてい 資 刊 を書いたのは五十年近く後のことだが、この生々しい話は強くる。つまり荒木文相は「東大は名を取り、自分は実を取った 創 彼の印象に残ったのだろう。首相の寺内正毅は長州出身で、山と言っている、というのだ ( 同書八一 5 八二頁 ) 。平賀譲海軍技 川より二歳年長だ。陸軍大臣を長く務めたが、若いころは長州術中将が次の総長に選ばれたこと、また帝大側は「公選」「選究 の 軍の一員として戊辰戦争にも参加している。会津白虎隊出身の挙」という一言葉を以後使わないことにしたというのが、荒木の 山川とはお互いに当然そういう意識もある。 取った「実」の中身だ。平賀総長の選出前後 ( 一九三八年十一一 月 ) の『帝大新聞』記事を見ても、確かに「選挙」「公選」の締 期 文字はなく「推薦」という書き方が目立つ。両方の見解を見な 初 いと、中々わからないものである。 ( 右上写真参照 ) 東京大学の正史『東京大学百年史』では、通史第一一巻に「総 「総長公選」をめぐる、東京帝大と荒木文相のバトル 一三ロ
艇部の新艇建造資金の件、②応援団の資金集めのコンサート開て、本郷清水町に住む三女・照子と東は、山川にとって生活に 学 催の件、③一九一九 ( 大正八 ) 年秋の四大学対抗レースの件、欠かせない「家族そのもの」であったようだ。 大 国 リリこ祭して、 ( 資金援助はわからないが ) 学東龍太郎を山川が非常に可愛がっていたことがうかがえる記 ④「帝大新聞』の倉干しド 帝 内に事務所を開設できないか打診した件、の四つであり、具体述も多く見られる。刀剣が趣味だった山川は、自らが所有する 東 の 銘刀「大橡長道」を東に贈っている。白虎隊生き残りの「最後 的に相したよ、つだ。 年 これらは一九一八年に山川邸を訪ねた以降は、直接話すことの武士」たる山川にとって、刀を贈るというのは、大きな意 味・意義を込めたものだったろう。 もあったろうが、同時に東龍太郎を介して打診や連絡をしてい る 見 たことがうかかえる。つまり相当な頻度で、永井は山川総長に 十一月四日出。朝七時半宅を出で、大学にて本家より貰 接触し、交渉していたのである。 ひたる大橡長道を携へて東に至り、之を龍太郎氏に進呈 たとえば東の追悼文集『唯従自然東龍太郎紙碑』 ( 私家版、 次 健 す。父夫婦照子も同席。 ( 後略 ) 一九八五年 ) 所収の、座談会「老艇友大いに語る」には、東の 山 友人としての永井了吉のことが「伝説的先輩ーの章をたてて語 日記に見られるように、大阪から上京した東の両親も席に招 られている。たとえば大石武夫 ( 一九二一年東京帝大工学部卒 ) は、「これは大変なアイデアマンで、いろいろなことを思いっき、その喜びを伝えようとしている。また一九一九 ( 大正八 ) の いてやる男でした」と語り、永井は東を介して山川総長と交渉年秋に開催されたボートの大学対抗試合については、東から事金 刊 し、『帝大新聞』の創刊にも東龍太郎の援助があったはすだ、前によく話を聞き、当日は自ら会場に足を運んで、観戦応援し 創 ている。 と述べている。 究 研 山川日記』に見る、山川総長と東龍太郎 の 十月三十日東来室し、高商・早稲田・明治と競漕の事に 聞 新 つき話あり。 『山川日記』では、また娘婿である東に関しても非常に記述 大 か多いことがわかる。「東」「東夫婦」と一緒に食事したり、ま 十一月十一二日東氏来室し、ポート、レースの準備着々進締 期 行の旨報告あり。 た訪ねてきたりと、頻度でいえばほとんど三日に一回という感 十一月二十三日秋季レースあり、予もモータ 1 、ポート じだ。夫人を病気で一九一六 ( 大正五 ) 年三月に亡くしてい 一三ロ
小林康夫 表象文化論講義絵画の冒険 <LO 判 / 定価 ( 本体三五〇〇円十税 ) 劉文兵 日中映画交流史 <LO 判 / 定価 ( 本体四八〇〇円十税 ) プラトン著 / 山本巍訳・解説 饗宴訳と詳解 <LO 判 / 定価 ( 本体六五〇〇円十税 ) 江﨑浩 インター、不ット・、、、 ノイ・デサイン 幻世紀のスマートな社会・産業インフラの創造へ 四六判 / 定価 ( 本体ニ八〇〇円十税 ) 稲葉昭英・保田時男・田渕六郎・田中重人編 日本の家族一 999 ー 2009 全国家族調査〔 NFRJ 〕による計量社会学 <LO 判 / 定価 ( 本体五四〇〇円十税 ) 長谷川公一・保母武彦・尾崎寛直編 岐路に立っ震災復興地域の再生か消滅か <LO 判 / 定価 ( 本体六五〇〇円十税 ) 塩川伸明・池田嘉郎編 東大塾社会人のための現代ロシア講義 <LO 判 / 定価 ( 本体三〇〇〇円十税 ) ・東京大学史料編纂所編纂新刊 日本荘園絵図聚影釈文編一一中世一 <0 判 / 定価 ( 本体ニ四〇〇〇円十税 ) 三谷太一郎 戦後民主主義をどう生きるか 西野嘉章 前衛誌 新保敦子・阿古智子 超大国・中国のゆくえ 5 勃興する「民」竹峰義和 四六判 / 定価 ( 本体三ニ〇〇円 + 税 ) 〈救済〉のメーデイウム 7 月の新刊 大橋靖雄・浜田知久馬・魚住龍史 生存時間解析応用編 による生物統計 <LO 判 / 定価 ( 本体四八〇〇円十税 ) 伊沢紘生・松岡史朗 自然がほほえむとき <LO 判 / 定価 ( 本体三ニ〇〇円 + 税 ) 落合啓一一 ナチュラルヒストリーシリーズ ニホンカモシカ行動と生態 <LO 判 / 定価 ( 本体五三〇〇円 + 税 ) 東京大学医学部健康総合科学科編 社会を変える健康のサイエンス 健康総合科学への幻の扉 判 / 定価 ( 本体ニ五〇〇円十税 ) トウッティ・ソ一フンタウス ~ 者 アントニア・リングボムイラスト / 上野里絵訳 お母さん、お父さんどうしたのかな ? 〈こころの病気を抱える親をもっ子ども〉のハンドブック 子どもにどうしてあげればいい ? 〈こころの病気を抱える親〉のハンドブック 変型判 / 各巻定価 ( 本体一六〇〇円十税 ) 東京大学新聞社編 現役東大生がつくる東大受験本 東大 2017 とんがる東大 <LO 判 / 定価 ( 本体一五〇〇円十税 ) 9 月の新刊 久保亨・加島潤・木越義則 統計でみる中国近現代経済史 大西品子 キャンパスの国際化と留学生相談 太郎丸博編 後期近代と価値意識の変容 川島浩平・竹沢泰子編 人種神話を解体する 3 「混血」から「、 ( ックス」へ 東京大学社会科学研究所 / 大沢真理・佐藤岩夫編 ガバナンスを間い直す全 2 巻 越境する理論のゆくえ Ⅱ市場・社会の変容と改革政治 田中亘 会社法 宮川努・淺羽茂・細野薫編 インタンジプルズ・エコノ、くー 清水克俊 金融経済学 開一夫・金山範明編 脳波解析入門 村松伸・岡部明子・林憲吾・雨宮知彦編 メガシティ 6 高密度化するメガシティ 小泉秀樹編 コどュニテイデサイン学 青木人志 日本の動物法第 2 版 鈴木晃仁・北中淳子編 精神医学の哲学 2 精神医学の歴史と人類学
学問の図像とかたち・イラストから読む教科書ショートスカート癶場寺田寅彦 〔法の森から。ー〈 A 〔 0 帚「ざョ ~ = 0 「。「。。 ~ 。→〔。 w 〉〕 1 ( 新連載 ) レソ . ーの一一 0 一は法律かワ・長谷部恭男 相対論をめぐる誤解酒井邦嘉 アナロジーの非対称性から考える意図とハターン科学と文化をつなぐ思索春日直樹 英米法の航海『英米民事訴訟法』に込めた思い溜箭将之 〔「イスラーム問題」の構築と移民社会ー・ニ〇一五年パリ危機からその後〈〕 1 ( 新連載 ) 統ムロ A 」除の一間一宮島喬 リ - こ - 7 a- 目トに : 〔行政責任を考える〕 3 「居住の権利」を奪う政策の貧困新藤宗幸ー - - ーー。。。。、・・、懿 〔初期「帝大新聞」の研究ー「創刊資金の謎」〕 5 『山川健次郎日記』に見る、九九年の東京帝国大学清水あっし 〔書評〕奥泉光・群像編集部編『戦後文学を読む』、あるいは、いま「戦後文学」を読むこと成田龍一 〔日本美術史不案内物の味」カ佐藤康宏 すゞしろ日記第回山口晃 執筆者紹介 学術出版 第四五巻第八号 ( 通巻五ニ六号 ) ニ 0 一六年八月五日発行 ( 毎月五日発行 ) 定価 ( 本体価格一 00 円十税 ) ( 一年分一 0 〇 0 円送料・税共 ) ・京大学出版会 ・ Numbe 「 526 、 August2016 館 書 0 図Ⅷ 9 立
ヘルギーのプルッセル 厳戒態勢の隣国を避けるかのように、。 何に連動していくのかーーニつの事件から 国際空港で三月、の名による爆破事件が起こり、多数の犠 森千香子氏の「パリ襲撃事件のもう一つの恐怖」 ( 本誌七月牲者を生んだ。そして三カ月後、一見関係ないとみえる「英国 号 ) のすぐれたリポートと省察を承け、時間的スパンと視野をの離脱 Brexit 」の国民投票結果のニュースが世界中をか 広げるかたちで、二つの事件に象徴される危機のその後、およけめぐったが、はたしてフランスの危機と無縁の動きといえる び関連する問題を取り上げ、読み解いてみたい。 会 一連の出来事の背景には、国際的なイスラーム過激派運動、 一一月一三日 ( 同時多発テロ 危機はまだ過去形で語れない 民 移 事件 ) 以来フランスは「非常事態」の下におかれていて、それシリア内戦、「イスラミック・ステイト」問題があるが、 築 「ヨ常事態権力の行使」とはど私はこれらの背景じたいを考察する能力をもたない。フランス は容易に解除されそうにない。ト 構 の範囲の措置を許すのか明示されす、「状况により必要とされと諸国の移民の問題への関心と視点からこれにアプローチ初 る諸措置をとる」 ( 一九五八年憲法第一六条 ) とある。言論、表するもので、細い茎を通して世界を覗くといった体の議論とな ム 現、人身の自由など国民と住民の基本的権利に制限が加えられることを恐れつつ、筆をとるものである。 フランスの二つの出来事を、簡単に復習しておくと、預一言者ス る可能性があるわけで、当局が「ムスリム」と類別する市民・ 住民をもつばら対象範囲に、数千件におよぶ令状なし家宅捜索 ( ムハンマド ) のイラスト ( 漫画 ) を掲載した週刊新聞の編集室 を、アルカイダ系とされる移民出自の青年が襲い、同時にその を行うなど、尋常でない状況が続いてきた。 ・新連載「イスラーム問題」の構築と移民社会ーー一一〇一五年バリ危機からその後へ 1 統合と排除の間で 宮島喬 二〇一五年パリ危機からその後へ ] 1 統合と排除の間で