常念 - みる会図書館


検索対象: ごんぎつね
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1. ごんぎつね

じようねんばう と常念坊は思いました。 かまわずどんどんいきましたが、ふと考えると、うしろからくるのは、さっきの犬では なくて、ばあさんがいった、あのきつねがつけてきたのではなかろうか。こう思うと、じ ぶんのうしろには、ずるいきつねの目が、やみのなかに、らんらんとひかっているような 気がします。気の小さい常念坊は、。 ふるツと、身ぶるいをしました。 でも、うしろをふりむくのもこわいので、ぶきみななりに、ぐんぐん歩きました。なん おんな だかうしろでは、きつねがいつのまにか女にばけていて、いまにも、きやッといってとび ついてきそうな気がします。 常念坊は、そのきつねのことをわすれようわすれようとするように、ちょうちんのあか りばかりを見つめて歩きました。

2. ごんぎつね

じようねん′」ばう 常念御坊は、はしをおいて考えこんでいました。あんどんのあかりが、そのくるくる頭 へ赤くさしています。 しばらくして常念御坊は、 「正観」 と、すこしきまりわるそうこ、 「そのちょうちんをつけよ」 はんどうえん 「わしは、ちょっといってさがしてくるでな。おまいは、本堂の縁のしたへ、わらをどっ さりいれといてくれ 「なにをさがしに ? 「あの犬をつれてくるんだ」 「きつねでしよう、あれは」 「かわいそうに、犬なら、のら犬だ。食いものもろくに食わんと見えて、ひどくやせこけ しようかん 冫ししました。

3. ごんぎつね

じようねんぼう おばあさんはふろをたいていました。ちょうちんだけかりるのも、へんなので、常念坊 「おい、おばあさん、だんごは、もうないかな」 とききました。 「たった五くしのこっていますが」 つつんでおくれ」 「それてしし 「はいはい」 と、おばあさんは、たんごを竹の皮につつみます。 しようかん 「すまないが、わしにちょうちんをかしておくれんか。あした正観にもってこさせるでな」 「とても、やぶれちょうちんでござんすよ」 「いいとも」 ふる おばあさんは、だんごをわたすと、うえへあがって、古ちょうちんのほこりをふきふき じようねんばう もってきました。常念坊はちょうちんにあかりをつけると、あたりを見て、 よ、 、、 0 かわ

4. ごんぎつね

じようねんごばうご 常念御坊は碁がなによりもすきでした。きようも、となり村の檀家へ法事でよばれてき て、おひるすぎから碁をうちつづけ、日がかげつてきたのでびつくりして、こしをあげま した。 「まあ、 しいじゃありませんか。これからでは、とちゅうで夜になってしまいます。今夜 はとまっていらっしゃいましょ とひきとめられました。 こぞう 「でも小僧がひとりでさびしがりますから。さいわいに風もございませんので」 と、おまんしゅうのつつみをもらって、かえっていきました。 ある かんが 常念御坊は歩きながらも、碁のことばかり考えつづけていました。さっきのいちばんし まいの、あすこのあの手はまずかった、むこうがああきた、そこであすこを。 ( チンとおさ かぜ だんかほうじ こんや

5. ごんぎつね

「おらアしらねえ」 「おいらも、しらねえ」 といいました。 じようねん′」ばう 常念御坊は村をではずれました。左右は麦畑のひくい丘で、人っ子ひとりおりません。 うしろを見ると、犬がまだついてきています。 「しツ」といって、にらみつけましたが、にげようともしません。足をあけておうと、二、 三尺 (8 駅三 ) ひきさがって、じっと顔を見ています。 「ちょツ、きみのわるいやつだな」 常念御坊は、舌うちをして歩きだしました。あたりはだんだんにくらくなってきました。 うしろには犬がのそのそっいてきているのが見なくもわかっています。 とうげ すっかり夜になってから、峠のしたの茶店のところまできました。まっくらい峠を、足 さぐりでこすのはあぶないので、茶店のばあさんに、ちょうちんをかりていこうと思いま した。 じゃく した かお ちゃみせ むぎばたけ おか

6. ごんぎつね

ていた。はるばるとなり村から、わしについてきたのだから、あったかくしてとめてやろ うよ」 それに、わしのおとしただんごまで、ちゃんと、くわえて、きてくれたんだもの、おれ じようねん′」ばう がわるいよ、と、これだけは、心のなかでいって、常念御坊は、ちょうちんをもってでて いきました。

7. ごんぎつね

つけてきています。 じようねんばう 常念坊は門をはいると、 しようかん 「正観、正観」 と、庫裡のほうへむかってどなりました。 へんじ と返事がきこえて、正観が、ごそごそ鐘楼からおりてきました。 「おい、きつねだきつねだ。ほうきをもってこい ほうきを。ほうきでおいまくれよ」 正観はとんでいって、ほうきをもって、門のほうへかけつけました。 「おや、きつねがなにかくわえていますよ」 「ああ、だんごだ。とりあげろよ」 「ほい、したへおけ。 だんごはとりかえしましたが、きつねはすわったきりにげませ ん」 「だから、ほうきでおつばらえというのに」 しようろう

8. ごんぎつね

やっとのこと村へきました。村へはいると、すこしほっとしました。村ではどこのうち も、よいから戸をしめてしまうので、どっこも、しいんとしています。そのなかで、どこ かのうちで、きぬたをうつ音がとおくにきこえます。 そのとき、ふと気がついてみますと、左手にもっていた、だんごの竹の皮づつみが、い つのまにかなくなっています。 「おや、しまった。うつかりして、おとしたかな。それともきつねのやつが、そっと、ぬ すみとってにげたかな。ちょツ」 りよ、って じようねん′」ばう 常念御坊はいまいましそうに、おまんしゅうのつつみとちょうちんとを両手にもちわけ て、うしろをむいて見ました。もうなにもおりません。やがて寺の門のまえにきました。 たちどまって、もういっぺん、うしろをよく見ますと、きつねらしいものが、のこのこ恥 てら かわ

9. ごんぎつね

「おや、もう、ど、つかへいったな」 とひとりごとをいいました。 「おつれさまですかね」 「いんにや。どっかの犬が、のこのこついてきて、はなれなかったんだよ 「きつねじゃありませんか。あなたのとおっていらっしやった、あのさきのやぶのところ に、よくきつねがでて人をばかすといいますよ 「おもしろくもないことをいいなさんな。ほい、おあしをここへおくよ」 じようねんばうかたて 常念坊は片手に、おまんじゅうのつつみとちょうちんをさげ、片手にだんごのつつみを とう・け ちょう もって峠にかかりました。その峠をおりて、たん・ほ道を十町ばかりいくと、じぶんの寺で す。 あんしん もう、あのいやな犬もついてこないので、安心して、てくてくの・ほっていきますと、や がてうしろのほうで、クンクンという声がします。 「おや、また、あの犬めがきたな」

10. ごんぎつね

まつおくんてい しかし・ほくたちは小さい子どもはつれてゆくわけこよ、 冫。しかなかった。そこで松男君の提 しん 案で、新四年以下の者はしんたのむねから村へかえり、新五年以上の者が、町までついて ゆくことにきまった。 しんたのむねで、十五人ばかりの小さい者がうしろにのこった。ところが、そこでちょっ ひらお としたあらそいがおこった。新四年だから、かえらねばならないはずの比良夫君が、かえ ろうとしなかったからだ。五年以上の者が、かえれかえれ、というと、比良夫君はいうの ゞ ) っこ。 「おれあ、今四年だけれど、一年のときいっぺんすべっとる ( 落第している ) で、年は五 年とおんなじだ」 なるほど、それも一つのりくつである。しかし五年以上の者は、そんなりくつはとおさ せなかった。とうとううでずくで解決をつけることになった。 松男君が比良夫君に引っ組んだ。そして足がけでたおそうとしたが、比良夫君はすもう の選手だから、ぎやくにこしをひねって松男君をなげだしてしまった。 あん せんしゅ もの ひ かいけっ らくだい