じん ぶつ ふぎん 人はこう言いました。「この付近の山からたくさんのカラシ鉱 ( 。ウ ) が出るのだよ。そこでそ とくおっそん きょラくん 『甲 ( 。ウ ) の得は乙の損』とね。」 の教訓はこうだ おしまいのことばをきいていなかったアリスは、さけびました。「ああ、わかった ! 植 しよくぶつ 物だわ。そうは見えないけれど、でもやつばり植物だわ。」 きようくん 『見かけ通りの人と 「わたしの考えも、そっくりおなじだよ。で、その教訓はこうだ んなんじ もっとかんたんに言いたければーーー『汝の人となりが以前の汝とべつのものでは なれ』 たにん ないと他人に見えるかもしれぬごとく、他人の目にはべつのごとく見えるであろうとおなじ こころざ ものとなるよう志すことなかれ』ということさ。」 「書いてあるのを見れば、きっと、もっとわかりよいかと思いますが、いまおっしやった だけでは、意味がよくわかりません。」と、アリスはたいそうていねいに言いました。 こうしやく 「これくらいのことはわけないさ。言おうと思えば、もっと長くだって言えるよ。」公爵 ふじん 夫人は上きげんで言いました。 いじよう 「苦労して、それ以上長くおっしやらなくてもけっこうです。」 おくもの 「いや、苦労なんかしないよ。今までわたしの言ったことは、ひとっ残らず贈り物として たにん なんじ のこ しよく 146
こ 「あのーーたいそうよいお天気で。」と、アリスのそばでおずおずした声がしました。ア リスは白ウサギとならんで歩いていたのです。白ウサギは心配そうに、アリスの顔をのそき 込んでいました。 こうしやくふじん 「そうね、で、公爵夫人は ? 」と、アリスはたずねました。 ! 」と、白ウサギは声をひそめてあわてて言いました。こう言いながら心 配そうに肩越しにうしろをうかがって、それから背のびをして、アリスの耳に口を近づけて、 こうしやくふじんしけいせんこく そっとささやきました。「公爵夫人は死刑の宣告をうけたのですよ。」 「どうして ? 」と、アリスは言いました。 「『お気のどくなこと』と、おっしやったのですか ? 」と、ウサギがききました。 しいえ、お気のどくだとはちっとも思わないわ。『どうして』と、きいたのよ。」 「女王さまの横つつらをはりとばしたのですよーーー」と、ウサギは話しはじめました。ア しず わら リスは、クックッと笑い声を立てました。「シッ、静かに ! 」ウサギはおびえたようにささ こうしやくふじん やきました。「女王さまにきこえますよ。公爵夫人はね、遅れてきたので、女王さまがおっ しやるにはーーー」 かたご 132
じん していたのは、このことばをきいたからでした。 こうしやくふ アリスよ、・ へつにいい知恵も浮かばないので、こう言ってみました。「そのネコは公爵夫 そうだん 人のですから、夫人に相談なさるのがいいと思います。」 こうしやくふじんろう 「公爵夫人は牢にはいっている。」と女王さまが首切り人に申されました。「これへつれて 参れ。」 首切り人は矢のようにとんでゆきました。 こうしやく 首切り人がかけていったかと思うと、ネコの首はだんだん消えていって、首切り人が公爵 夫人をつれて帰って来たときには、あとかたもなくなっていました。王さまと首切り人は、 血まなこになってあたりをさがしまわり、ほかの者は、またクロケー遊びをしにもどってゆ きました。 ふじん や 141
はじめました。「それに、みんなむちゃくちゃにけんかするんたもの、じぶんが言ってるこ きそく きようぎきそく ともきこえやしないわーー・・それに、競技の規則もべつにきめてないらしいの。たとえ規則が あったって、だれも守る人はないわーーーそのうえ、生きものばかりだと、そりゃあややこし きようぎじよう いのよ。たとえば、つぎに球をくぐらせなければならないア 1 チが競技場のむこうの端を歩 きまわっているしーー・・・・そうかと思うと、せつかく女王さまのハリネズミにあたしのを打ちあ てようとすると、あたしのハリネズミのころげてくるのを見て、女王さまのハリネズミは逃 げていってしまうしーー・」 「おまえさん、女王さまは好きかね ? ーネコは小声でたずねました。 」アリスがこう言いかけたとき、女王さ え、ちっとも。女王さまはほんとうに まがすぐうしろできいているのに気がっきました。そこで、アリスはつづけて言いました。 ひつよう 「ーーーお勝ちになるにきまっているんだもの。勝負をおしまいまでする必要がないぐらい す わら 女王さまはにつこり笑って、ゆき過ぎました。 「おまえはだれに話しているのかね ? 」王さまが、アリスに近づいて来て、さもめずらし 136
おまえにあげよう。」 おくもの 「安あがりの贈り物だわ。」と、アリスは思いました。「いつもお誕生日にいただく贈り物 がこんなのでなくって、よかったわ。」しかし、アリスは、これを口に出して言うようなこ とはしませんでした。 こうしやくふじん 「また考えてるのかね ? , 公爵夫人は、とがった小さいあごで、また肩をつついてたずね ました。 「あたしだって、考える権利はあります。」アリスは、少々うるさくなってきたので、つ んとして言いました。 けんり 「それは、・フタにとぶ権利があると言うのと同じことさ。で、その教ーーー」 とくし きようくん ここまで言いかけたとき、おどろいたことには、お得意の「教訓」ということばの中途で、 こうしやくふじん 公爵夫人の声がきこえなくなり、アリスと組み合わせていた腕がぶるぶるふるえだしました。 かみなり アリスが顔をあげると、ふたりの前に女王さまが、今にも雷を落っことしそうな、けわしい うでぐ 顔をして、腕組みをしたまま、つっ立っていました。 こうしやくふじんひく 「これはこれは、女王さま。けっこうなお天気で。」と、公爵夫人は低いよわよわしい声 けんり たんじようび かた おくもの ちゅうと 147
あいて あの白ウサギがまじっていました。白ウサギは、せかせかと気ぜわしそうにしゃべっていて、 えがお 相手の言うことに一々笑顔を見せながら、アリスがそこにいるのに気づかないで通りすぎま した。それから、 ートのジャックが、まっ赤なビロードのクッションの上に、王さまの かんむり 冠をのせて運んでゆきました。このみごとな行列のしんがりは、ハートの王さまと女王さ アリスは、三人の園丁とおなじようにひれ伏さなくてはならないのかしらとちょっと迷い きそく ましたが、行列に会ったらひれ伏すものだという規則は、きいたお・ほえがありません。「そ れに、みんながひれ伏さなければならないとすると、見物することができなくて、せつかく の行列が何にもならないじゃないの。」こう考えて、アリスは立ったままで、待っていました。 なが 行列がアリスの前へさしかかったとき、一同は立ちどまってアリスを眺めました。女王さ 1 トのジャックにむか まは、きびしく、「これは何者じゃ ? 」とおたずねになりました。ハ っておたずねになったのですが、ジャックは返事の代わりにおじぎをして、につこりしたた けでした。 「ばか者め ! 」と、女王さまはいらいらして頭をぐっとそらして、仰せになりました。そ ま えんてい ふ おお 127
え、どうぞ、つづけてちょうだい。」アリスは、おとなしくなって言いました。「も とうみつ う二どとロ出ししないから。糖蜜の井戸だって、ひとつぐらいあるかもしれないわね。」 ねむ 「ひとつぐらいだと ? 」と眠りネズミは怒って言いました。けれど、話をつづけることは きようだい しようち 承知しました。「それで、この三人の姉妹はーー・・汲みあげることを習っていたのさーー」 やくそく わす 「何を汲みあげたの ? 」アリスは約束をすっかり忘れて、たずねました。 ねむ とうみつ 「糖蜜だよ。」眠りネズミは、こんどは少しも考えずに言いました。 ぼうしゃ じゃま 「手のつけてない茶わんがほしいな。」と帽子屋が話の邪魔をしました。「ひとつずっとな せきか せきうつ オいか。」こう言いながら、帽子屋は席を変えました。そのあとに眠り りへ席を移そうじゃよ ねむ ネズミが移り、三月ウサギは眠りネズミの席へ移り、アリスはしぶしぶ三月ウサギのあとへ とく ぼうしゃ せきか 変わりました。席を変えて得をしたのは帽子屋だけで、アリスは前よりもずいぶん損をしま ぎゅうにゆうい した。三月ウサギが、たった今牛乳入れをお皿の上でひっくりかえしていったからです。 そん ねむ アリスは、二どと眠りネズミのごきげんを損じてはいけないと思ったので、よくよく用心 とうみつく をしながら言いました。「でも、あたしにはわからないわ。どこから糖蜜を汲みあげたの ? 」 ぼうしゃ すると、帽子屋が言いました。「水の井戸からは水を汲みあげることができる。だから、 ど ど さら ぼうしゃ そん ねむ 120
べに アリスの顔をのそきこむので、笑い出さずにはいられません。やっと紅ヅルの頭を下にさせ まる て、こんどこそ打とうとすると、丸くなっていたハリネズミが体をのばして、のそのそはい ハリネスミをころ 出そうとするのです。まったく腹が立っといったらありません。その上、 がしてゆこうと思う先々には、たいていうねか、あぜが邪魔をしているし、体を弓なりにま へいし げた兵士たちは、しよっちゅう起きあがっては、ほかへ歩いていってしまうので、やがてア リスは、これはほんとうにむずかしい遊びだと思いました。 じゅんばん きようぎしゃ 競技者たちは順番も待たずに、みな一どに勝負をはじめました。たえずけんかをして、 リネズミのうばい合いです。女王さまはたちまち、またかんしやくを起こして、じだんだを ふんで、「その男の首をちょん切れ !. とか、「その女の首をちょん切れ ! 」とか、一分おき ぐらいにどなりつづけました。 アリスは心配でたまらなくなってきました。なるほど、アリスはまだ女王さまと言いあら なんどき そいはしていませんでしたが、いっ何時はじまらないともかぎりません。「そうすれば、」と、 アリスは考えました。「あたしはどうなるかしら。ここの人たちは首をちょん切るのがおそ ろしく好きなのね。まだ生き残っている人があるのが、ふしぎなくらいだわ。」 す のこ わら じゃま ゆみ 134
やくそく 「身の上ばなしをきかせてくださる約束だったわね。」とアリスが言いました。「それから、 なぜあれをきらいかというわけをーー・ーあの、ネの字とイの字を。」と、またきげんをそこね ましなしかとびくびくしながら、小さい声でつけくわえました。 「では、わたしの身の上ばなしをいたしましよう。 それはそれは、長い悲しいのを ! 」 と、ネズミはアリスのほうをむいて、ため息まじりに言いました。 「長くて、悲しい尾だって。そういえばたしかに長い尾だわ。」と感心しながら、アリス はネズミの尾をつくづくながめて言いました。「でも、なぜそれが悲しい尾なの ? 」ネズミ が話をしている間、アリスは一心にそのことばかり考えていたもので、その身の上ばなしは、 アリスの頭の中でこんな形になりました 「おうちのなかで 出つくわしたネズミ に犬めが言う
すると、公爵夫人が、しやがれ声でうなるように、「みんなが他人のおせ 0 かいをしなけ れば、世の中のことは、ずっと早くはかどるだろう。」と、言いました。 ちしき 「でも、それではあまり都合よくありませんわ。」アリスはしぶんの知識を少しばかりみ せびらかす機会ができたので、うれしくな 0 て言いました。「そのために昼と夜がどういう よ 5 ′ ことになるか考えてごらんなさいませ。ほら、地球が自転するのに要する時間は二十四時間 夜昼おのおの半分ずつでーー」 こうしやくふじん そうだ、この子のくびをちょん切「ておしまい ! 」と公爵夫人が言いま 「斧だって ? アリスは、言いつけ通りにする気かしらと、びくびくしながら料理女のほうを見ましたが、 料理女はせ 0 せとス 1 プをかきまわしていて、こちらの話はきいていない様子です。そこで、 ことばをつづけて、「一一十四時間たと思います。それとも、十二時間かしら ? あたしーー」 こうしやくふじん まったく数字にはがまんがならない ! 」こういうと、公爵夫人はま 「ああ、うるさい こもりうた た赤ん坊をあやしはじめました。あやしながら、子守歌のようなものをうた 0 て、一行うた うごとに手あらく赤ん坊をゆすぶるのです。 おの たにん りようりおんな