あいて あの白ウサギがまじっていました。白ウサギは、せかせかと気ぜわしそうにしゃべっていて、 えがお 相手の言うことに一々笑顔を見せながら、アリスがそこにいるのに気づかないで通りすぎま した。それから、 ートのジャックが、まっ赤なビロードのクッションの上に、王さまの かんむり 冠をのせて運んでゆきました。このみごとな行列のしんがりは、ハートの王さまと女王さ アリスは、三人の園丁とおなじようにひれ伏さなくてはならないのかしらとちょっと迷い きそく ましたが、行列に会ったらひれ伏すものだという規則は、きいたお・ほえがありません。「そ れに、みんながひれ伏さなければならないとすると、見物することができなくて、せつかく の行列が何にもならないじゃないの。」こう考えて、アリスは立ったままで、待っていました。 なが 行列がアリスの前へさしかかったとき、一同は立ちどまってアリスを眺めました。女王さ 1 トのジャックにむか まは、きびしく、「これは何者じゃ ? 」とおたずねになりました。ハ っておたずねになったのですが、ジャックは返事の代わりにおじぎをして、につこりしたた けでした。 「ばか者め ! 」と、女王さまはいらいらして頭をぐっとそらして、仰せになりました。そ ま えんてい ふ おお 127
「リンゴ掘りだなんて、人をばかにするな い ! 」とウサギは怒りました。「おー 来て、おれをここからひつばり出してくれ ! 」 ( またガラスのわれる音。 ) まど 「ところでパ。 トや、窓から出ているのは、ありや何だね ? 」 うんで 「どう見ても、腕でがすよ、だんなさま ! 」 ( その男は「うんで」となまって言いました。 ) まど 「腕たって ! あほうめが ! あんなに大きな腕をだれが見たことあるかい。見ろ、窓い つばいになっているじゃないか ! 」 「ほんに、その通りでがすよ、だんなさま。けんど、やつばり腕に変わりはねえでがすよ。」 ! ・にい 3 を阜 どこにいるんだ ? 」すると、アリスのまたき いたことのない声がしました。 「ちゃんと、ここにおりますだよー なさま、リンゴ掘りをしとるところで、ヘ
ありましたので、見渡すと、たいてい名まえを知っているものばかりなので、うれしくなり ました。 さいばんちょう 「あれが裁判長さんだわ。大きなかつらをかぶっているもの。」と、アリスはひとりごと を言いました。 かんむり さいばんちょう ところで、裁判長は王さまだったのです。何しろ、かつらの上に冠をのつけているので、 きゅうくっそうで、それに、ちっとも似合いませんでした。 ばいしんせき 「あれが陪審席だわ。」とアリスは思いました。「あそこに十二ひきいるわ。 ( そこにいる のは、けものや、鳥だったので、『ひき』と言わなければならなかったのです。 ) あれがきっ ばいせきしんりいん と陪席審理員。」 とくい アリスは得意になって、このおしまいのことばを二、三ど頭の中でくりかえしてみました。 としごろ なぜって、アリスとおなじ年頃の女の子で、こんなむずかしいことばの意味を知っている者 ばいしんいん はほとんどあるまいと思ったからです。ほんとうにその通りです。でも、「陪審員」とかん たんに言っても同じことたったのです。 ばいしんいん 十二ひきの陪審員は、みなせっせと石板に字を書いていました。 みわた 181
じん ぶつ ふぎん 人はこう言いました。「この付近の山からたくさんのカラシ鉱 ( 。ウ ) が出るのだよ。そこでそ とくおっそん きょラくん 『甲 ( 。ウ ) の得は乙の損』とね。」 の教訓はこうだ おしまいのことばをきいていなかったアリスは、さけびました。「ああ、わかった ! 植 しよくぶつ 物だわ。そうは見えないけれど、でもやつばり植物だわ。」 きようくん 『見かけ通りの人と 「わたしの考えも、そっくりおなじだよ。で、その教訓はこうだ んなんじ もっとかんたんに言いたければーーー『汝の人となりが以前の汝とべつのものでは なれ』 たにん ないと他人に見えるかもしれぬごとく、他人の目にはべつのごとく見えるであろうとおなじ こころざ ものとなるよう志すことなかれ』ということさ。」 「書いてあるのを見れば、きっと、もっとわかりよいかと思いますが、いまおっしやった だけでは、意味がよくわかりません。」と、アリスはたいそうていねいに言いました。 こうしやく 「これくらいのことはわけないさ。言おうと思えば、もっと長くだって言えるよ。」公爵 ふじん 夫人は上きげんで言いました。 いじよう 「苦労して、それ以上長くおっしやらなくてもけっこうです。」 おくもの 「いや、苦労なんかしないよ。今までわたしの言ったことは、ひとっ残らず贈り物として たにん なんじ のこ しよく 146
すると、公爵夫人が、しやがれ声でうなるように、「みんなが他人のおせ 0 かいをしなけ れば、世の中のことは、ずっと早くはかどるだろう。」と、言いました。 ちしき 「でも、それではあまり都合よくありませんわ。」アリスはしぶんの知識を少しばかりみ せびらかす機会ができたので、うれしくな 0 て言いました。「そのために昼と夜がどういう よ 5 ′ ことになるか考えてごらんなさいませ。ほら、地球が自転するのに要する時間は二十四時間 夜昼おのおの半分ずつでーー」 こうしやくふじん そうだ、この子のくびをちょん切「ておしまい ! 」と公爵夫人が言いま 「斧だって ? アリスは、言いつけ通りにする気かしらと、びくびくしながら料理女のほうを見ましたが、 料理女はせ 0 せとス 1 プをかきまわしていて、こちらの話はきいていない様子です。そこで、 ことばをつづけて、「一一十四時間たと思います。それとも、十二時間かしら ? あたしーー」 こうしやくふじん まったく数字にはがまんがならない ! 」こういうと、公爵夫人はま 「ああ、うるさい こもりうた た赤ん坊をあやしはじめました。あやしながら、子守歌のようなものをうた 0 て、一行うた うごとに手あらく赤ん坊をゆすぶるのです。 おの たにん りようりおんな
ほんとうにその通りになりました。しかも思ったより早く、効果てきめんでした。また半 てんじよう 分も飲まないうちに、アリスの頭は天井にギューギューっかえて、くびが折れないようにす るには、体をかがめなければなりませんでした。アリスはいそいでびんを置いて、「これで こんなじゃ、ドアから出られ たくさんだわーー・・、・これ以上大きくならないといいんだけど ないわーーーあんなに飲まなきやよかった ! 」と、ひとりごとを言いました。 でも、悲しいことに、もうあとの祭りです。アリスはぐんぐん大きくなって、またたくま ゆか に床にひざをついていなければならなくなりました。やがて、それもきゅうくつになって、 かたうで カた こんどは、片ひじをドアにあて、片腕を頭に巻いて、ねころがってみました。それでも、ま まど かたて すますアリスは大きくなる一。ほうです。とうとうアリスは片手を窓から出し、片足を煙突へ ふみ入れてしまいました。そして、こうひとりごとを言いました。「どうにもこうにも、こ いじよう れ以上なんともできないわ。あたしはいったいどういうことになるのでしよう。」 まほう この時ようやく、魔法の小さなびんのききめはっきて、アリスの大き しあわせなことに、 くなるのは止まりました。けれども、やつばりたいへんきゅうくつで、二どと部屋を出られ る見込みはまったくなかったのですから、アリスが悲しくなったのもむりはありません。 いじよう かたあしえんとっ
『まえにも言ったが、とつつあんは 年が年だしその上に 近頃むやみとふとってる だのに戸口でうしろむけ トンポがえりをしてはいる わけだかききたいね』 物知り顔のじいさんが しらがふりふり一一 = ロうことにや 『若い時分に手も足も ちかごろ それが今では脳みそも どうせわるいとわかったで 思う存分やってやる』 わか ぞんぶん のラ
『イルカがうしろに来ておって わたしの尾をばふんづける』 『海ガメさんやエビたちが 足なみそろえてあの通り 小石の浜で待っている おど 踊りの仲間にはいらぬか どうだ、どうだい、・ とうだい、・ おど 踊りの仲間にはいらぬか どうだ、どうだい、ど おど 踊りの仲間にはいらぬか』 おど おもしろ 『こんな踊りの面白さ やってみなくちやわからない ェビもろともに、とらえられ なかま なかま お どうだ とうだ 164
ばかばかしい詩だね。」 アリスは何も言いませんでした。アリスは腰をおろして、両手で顔をかくしたまま、いろ いろのことがもと通りふつうになることは、もう二どとないのかしら、と考えていたのです。 「今の詩の説明をしてもらいたいね。」にせ海ガメが言いました。 「この子にはできないよ。」グリフォンがあわてて言いました。「さあ、二ばんをやれよ。」 「だが、足の先のことがどうもわからない。」と、にせ海ガメが言いはりました。「どうや ったら、鼻で足の先をそとへむけら れるのかね ? 」 「それはダンスの最初の姿勢な の。」と、アリスは言いました。け れど、何やかやで頭がすっかりこん がらがっていたので、どうかして話 一題を変えたいと思いました。 「二ばんをやれよ。」とグリフォ せつめい ノ謇事 さいしょ 173
「おお、おお、かわいそうな足ちゃんや、これからはだれがおまえにくつやくっ下をはかせ てくれるんでしようね。あたしにはとてもできっこないわ ! おまえの世話をしたくても、 あたしはこんなに遠くはなれているんですもの。おまえはじぶんで何とかうまくやっていか なきゃならないのよ。」ここでアリスは考えました。「でも足にはしんせつにしてやらなくて ど はならないわ。でないと、あたしのいきたいと思うほうへ歩いてくれないでしようよー うしましよう、そうた、毎年クリスマスには新しいくつを一足おくることにしましよう。」 それからアリスは、そのくつをどうやっておくったらいいか、あれこれと心の中で考えっ たの はいたつや づけました。「配達屋さんに頼んでとどけてもらわなくちゃ。」とアリスは考えました。「じ おく あてな ぶんの足に贈り物をするなんて、なんておかしいことでしよう。それに何てかわった宛名で しょ 炉ばた町 しきもの 敷物通り アリスの右足さま アリスより