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検索対象: ふたごの魔法つかいの花ことば
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1. ふたごの魔法つかいの花ことば

少年少女のみなさんが、これから乗りだしていく人生という大海には、さまざまの 出会いが待っています。 て 人との出会い、事件との出会い、物との出会い、それこそ予想もっかないたくさん の出会いをかさねることによって、みなさんは人間として豊かに成長していくのです。 だからこそ、「人生は出会いだ」と、いわれるのでしよう。 本の世界に出会うことも、人が成長していく上での大きな事件です。 床 みなさんは、かって本を読んで感動したことがありますか。おもしろくて、おもし ア ろくて、読みだしたらやめられなくなったことがありませんか。たのしく一冊の本を 方 月 読み終わったら、気分爽央になった、という経験はありませんか。あるいは、つらい 年 かなしい物語にふれて、人間が生きるということは、こういうことなのか、とっくづ く思ったことはありませんか。 そうです。本を読むということは、いろいろな人生に出会うことでもあります。ま た、未知の世界との遭遇でもあるのです。 人は、それぞれ自分の人生を一回しか生きることができません。しかし、本の世界 の 行 は、間接ながら、一身にして二生、三生を経験させてくれるのです。 このフォア文庫は、その意味で、これから未知の人生を生きていくみなさんにとっ 床 てのまさに《宝の山》です。 みなさんが、さまざまの本の世界にふれ、そこから自分でものを考え、創造的に、 ア オ たくましく自分の人生を航海していくことを心から願っています。 フ

2. ふたごの魔法つかいの花ことば

心をもっ愛の花ラトマロナをふたたび咲かせるために、例によってネネプねえさんは おんなこ たす じぶん せかせかと飛んできて、自分たちを助けてくれる花の心をわかる女の子をつれていきま す。ところがこの子がまたどうしようもない弱虫。さあ、これからというときに「かえ ものほこ りたいよ : はやく、かえしてよ : : : 」と泣きだされては〈選ばれた者の誇りぐらい もてないの ? 〉と叱りつけたくなるくらいのおくびよう者。 も しよ、フも、プ ゅうき さくしゃ でも、作者の川北亮司はやみくもな勇気だけでは、けつきよく消耗して燃えっきて し いちばん しまうことを、一番よく知っているのだと思います。 あやこ 「彩子、おまえのこわさは、おまえのこわさ。だれにも、たすけられんのじゃ。これば かりは、自分で自分を、のりこえるしかないんじゃ」 ひとまえはな わかどくしゃ ことば ネネプの言葉は、作者から若い読者へのメッセージだと思います。人前で話さなけれ ちこく ちょうしつ しゆくだい わす ばならないこわさ、宿題を忘れたときのこわさ、遅刻して教室のドアをそっとあける へいき おとな ときのこわさ、 : 大人になればそういうこわさはすこしすっ平気になるけれど、彩子 あいだひと かちゅう のように、まだそのこわさの渦中にある間は人が何といってもこわいものはこわいので したね。 こころ 0 しか よわむし なに もの えら 122

3. ふたごの魔法つかいの花ことば

あやこ 彩子は、エリカの気もちが、わかっていた。わかっていたけれど、どうしょ 6 うもないのだった。 あやこ 「彩子、おまえのこわさは、おまえのこわさ。だれにも、たすけられんのじゃ。 じぶんじぶん こればかりは、自分で自分を、のりこえるしかないんじゃ」 ネネフは、きつばりい、フと、ネジカフトにのった。 ネネプをのせたネジカプトは、アリの足あとをおって、ナイフのように、す こおりやま るどくそびえている、氷の山にむかって、あるきだした。 あや 「がんばって、彩ちゃん ! ぜったいに、きてよ ! 」 エリカは、そういいのこして、ネネプのあとを、おいかけていった。 あやこ おきざりにされた彩子は、どうしていいか、わからなかった。これから、お こりそ、フなことを、かんかえると、おそろしい。なにしろ、おそろしくて、た あし

4. ふたごの魔法つかいの花ことば

うのだった。 ゆきした そのあいだにも、雪の下からは、巨大なユキジゴクたちの、するどいキバが、 とびかかってきていた。 ネネプは、ユキジゴクめがけて、ひっしに、 小さくなる魔法を、かけつづけ ている。 「エリカさん、ダメよ ! とどかないよⅡ」 あやこ しネ / 彩子が、なきながら、 「あきらめないで ! も、フいちど、 いノわよⅡご ちから エリカが、力いつばい、さけんだ。すると、エリカののったネジカプトか、 あし あやこ じぶんあたま まえ足をのばして、彩子のマントを、つめで、ひっかけた。そして、自分の頭 うえ あやこ の上に、彩子をはこびあげたのだった。 きょだい ちい まほ、つ

5. ふたごの魔法つかいの花ことば

「エリカ、いそぐんじゃ」 あやこ た きくうなすいたエリカの足に、彩子か、しかみついた 「エリカさん、あたしを、ひとりにしないでよ : : : 」 っ一」 0 し / エリカは、つらそうに、ため息をつくと、さとすように、 あや て 「彩ちゃんが、ネネプといっしょにいけないなら、あたしが手つだうしか、な いでしよ」 「でも : あや 「彩ちゃん、ダメよ。いつまでも、あたしに、たよってばかりじゃ : エリカは、そういうと、一びきのネジカプトの足にのった。ネジカプトは、 じぶんあたまうえ ゆっくりと、足をのばして、かるかると、エリカを、自分の頭の上にはこんだ。 あし あし あし

6. ふたごの魔法つかいの花ことば

そろしさに、たえられなかった。 カサッカサッカサッ おと ゆき 三人がかくれている木のすぐちかくで、雪をふみしめる、ぶきみな音が、ひ びいた。うごいているカゲは、まるで、山のような大きさだった。 こえ あやこ じぶんくちて 彩子は、自分のロに手をあてて、声がでそうになるのを、がまんしていた。 目だけは、ネネプとエリカを、かわるかわる、みつめていた。 やま おお 山のような大きなカゲが、すぐちかくをとおりすぎた、そのときだ。なにを もり おも 田 5 ったのか、ネネフか、きゅ、フに、森のそとに、はしりだしたのだった。 にん やま おお

7. ふたごの魔法つかいの花ことば

「うしろのほうが、すきなの・・・・ : 」 あやこ じん 彩子は、こわかっている自分をかくした。エリカは、につこりとわらっただ けで、なにもいわなかった。 けつきよく、ふたりは、いちばんうしろの車両に、のりこんだ。 あや 「彩ちゃん、だいしようぶ ? 」 あやこかお こえ 彩子の顔が、こわばっているのに、気づいたエリカが、声をかけた。 「だいしようたよ。こわくないもん」 あやこ 彩子は、つよがってこたえたが、足をつつばって、しつかりと、ゆかをふみ しめている。手すりをにぎりしめていた手が、もうあせばんでいた。 スタートのブザーが、なった。 はぐるまおと コースターは、かわいた歯車の音をひびかせて、すこしすっ、スロープをの あし しやりよう

8. ふたごの魔法つかいの花ことば

こい 「あしさいは、うつり気。あさがおは、はかない恋なんてね」 あやこ 花ことばをあんきしている彩子は、クイズのようにあてるのを、たのしんだ。 きほ、つ こ、つふく あいじよう 「ええと、すすらんは、希望と幸福がおとすれる。ひまわりは、愛情とあな たをみつめるだったかな。あたりーっー あやこ 彩子は、しばらく、花ことばあてを、たのしんでから、〈業式にふさわし い花〉というべージをあけた。 にんき 「いちばん人気があるのは、スイートピーで、この花の花ことばは、〈別れ〉 たびだ おもで 〈旅立ち〉〈思い出〉か。エリカさんにあげるには、これだわ」 あやこ あまりにも、びったりの花があるのを知って、彩子は、うれしくなった。ス じぶんき おも ィートピーなら、エリカさんに、自分の気もちを、うまくったえられそうに思 えた。

9. ふたごの魔法つかいの花ことば

「ど、どうして、そんなことを ? 」 じぶん 「それは、わからん。オニモカプラか、この世界を自分のものにしたくて、そ あい うするのか、それとも、なにか、愛をにくむ、ねじれた気もちがあるのかもし しカんそ」 エリカ。どっちにしても、のんびりしているわけには、 ) 、 れん : ・ じめん あか ネネプの目が、うっすらと、赤くひかっていた。ネネプは、長いっえを地面 まほ、つ あたまゆび につきたてると、ネジカプトの頭に指をあてて、魔法のじゅもんをつぶやいた 「、不ネプ、ネネフ、ネミシガン ! 大きくなれ、ネジカプト、ネミシガン ! 」 ちい ネネプが魔法をかけたとたん、てのひらにのるほどの小さな虫が、きゅうに、 あやこ ぐんぐんと、大きくなりはじめた。彩子もエリカも、ふしぎな魔法に、目をみ キまっこ。 ネネプは、のこりの二ひきにも、つぎつぎに、魔法をかけた。 士 6 ほ , っ おお せかい 亠まほ、つ なが むし まほ、フ

10. ふたごの魔法つかいの花ことば

そんなおくびような彩子の前にデデブがあらわれて自分のかわりにラトマロナのタネ に花をさかせる魔法をかけてくれるように頼みます。 かんが さて、このネネプとデデブは作者川北亮司の何にあたるのだろうと考えました。どち ひ わたし ほ、つ つよ すがたかん らかというと私はデデブの方により強く作者の姿を感じます。物語を引っぱっていくの こうどう は、ネネプの「なんとかしなくちゃ」という思いですが、デデブはいつもネネプの行動 とうえい げんだいしやかいたし きょむかん ひはんてき に批判的です。このデデブには作者の現代社会に対する虚無感や批判が投影されている き ような気がします。 きようりよく でも、デデブはけつきよく最後にはネネプに協力しますよね。作者の中にかっとう する二つの心があって、デデブのあきらめ、デデブの苦にがしさを持ちながら、やつば りネネプの、いをてきれない。それはちょうど、私たちの心の中にもシラける気持ちと、 どうきょ ひとり でもなんとかしなくちゃと思う気持ちが同居しているのとおなじです。だから、一人の へあと 魔法つかいが二つにわかれることで魔法の力は弱くなっても、そのかっとうを経た後の ちからづよ ネネプの言葉には私たちが思わすうなすく力強さがあります。 しん 変わらない愛がある。とはいえなくても、変わらない愛を信しる心や、それを手に入 たの にカ 123