「いちいち、かぞえちゃいないさ ! 」 め あお デデブは、目をすこし、青くひからせて、大きな、あくびをした。 「まだ、二千はかけておらん。このつぎの魔法で、タネから、芽がでるかも知 れんじやろ」 あか ネネプの目は、うっすらと、赤くなっていた。 びようき 「あーあ、ネネプねえさんのガンコは、ほとんど病気だね。あたしは、もう、 ) 、めんだよ。これいじよう、むだなじかんは、つかいたくないさ ! 」 デデフは、ゆっくりと、こしをあげた。 「ど、フするつもりじゃー め 「タネから芽がでて、葉がしげらなければ、あたしのやることは、ないんだ。 せいぜい、ひとりで、がんばるんだねⅡ」 め ま 6 一は、つ おお
「ちょっと、まってください」 あやこ 彩子は、ポシェットから、いそいで、ポールペンと小さなノートをとりだし 士 6 一は、つ て、魔法のじゅもんを、かきとった。 め ついでに、芽をださせ、葉をしげらせるじゅも 「それなら、まちがいはない。 んも、かいておいてくれないかね。さいきん、ネネプねえさんは、ものわすれ まほ、つ が、ひどくてね。魔法のじゅもんを、わすれちまうのさ」 あやこ つ」 0 しネ / デデブは、彩子のノートを、のぞきこみながら、 め 「『ネネフ、ネネフ、ネミシガン。芽をだせ、ラトマロナ、ネミシガン ! 』た ししかえれよい ) 葉をしげらせるときは、『葉よしげれ』と、 あやこ 彩子は、まちかえないように、デデフのいうとおりに、 力しオ
せかい ネから芽かでないんだ。この世界はもう、もとには、もどらないさ」 こえ デデブは、、フんざりした声で、いった。 「デデブ、おまえは、いつもそ、フじゃが、あきらめるのが、はやすぎるんじゃ」 こえ ネネプも、つかれていたせいか、きつい声で、デデブをにらみつけた。だか らといって、、不、不フにも、ど、フしていいかわからなかった。 まほ、つ いせつな魔法をかけるときは、じゅもんだけでは、かけられない。ほねか ら芽をださせるには、トゲトゲの葉。ねんれいをかえるには、まっ白いすじか、 くろ ぼん 三本はいった黒い石 : : : と、その魔法にふさわしいものが、ひつようなのだっ まほ、つ おも 「デデブ。わしが、なんとおりの魔法をためしたと思っているんじゃ」 こえ ネネフは、声をあらげて、デデブにいっこ。 まほ、つ しろ
あや 「彩ちゃんリネネプの魔法の、つづきをⅡ」 こえ エリカの声は、ほとんど、ひめいにちかかった。 こおりもり あやこ オニモカプラは、氷の森の木をかみくだきながら、ゆっくりと、彩子たちの は、つに、やってくる あや 「彩ちゃん、おねがい " デデブから、おしえてもらった魔法をかけては あやこ エリカが、さけんだ。彩子は、ふくろから、すすらんの花を、つかみだした。 こえ そして、ノートをみながら、ふるえる声で、魔法のじゅもんをかけた。 ネネプ、ネネフ、ネミシガン ! 芽をだせ、ラトマロナ、 、不ミシガン」 あやこ 彩子は、むちゅうで、さけんだ。 まほう まほ、つ まほう
つめあった。 あやこ 「彩子。わしらを、よくおいかけてきてくれた」 あやこゅうき ネネプは、彩子の勇気を、すなおに、ほめた。 あやこ でも、彩子は、へんしのしようがなかった。おそろしさに、勝ったわけでは ない。おそろしさを、わすれただけだったからだ。 あやこ 彩子は、いそいで、ポケットから、デデブに手わたされた、ふたつの小さな ふくろを、とりだした。 「これを、デデブから、あすかったの。ひとつは、ネネプねえさんに、わたし ま ( ほ、つ てくれって。それから、ラトマロナの花をさかせる魔法と、芽をださせ、葉を まほ、つ しげらせる魔法のかけかたも、おしえてもらったの」 あやこ 彩子は、ひとつのふくろを、ネネプに、手わたした。 ちい
「よく知ってるじゃないか ? 」 みはな こうふく きやほ , っ 「花ことばで、『希望と幸福がおとすれる』っていう意味の花です」 きくうなすいた。 彩子が、せつめいすると、デデブは、た 「ふーん、たいしたもんだね。あんたになら、まかせられそうだ」 「えっ ? なんのこと ? 」 まほう きぼう 「ラトマロナのタネには、希望をあたえながら魔法をかけないと、芽がでない し、葉もしげらないし、花もさかない。それが、やっとわかったのさ。ひとっ それから、あんたに のふくろは、ネネプねえさんに、わたしてくれればいい。 まほう は、このすすらんの花で、ラトマロナのタネに、花をさかせる魔法を、かけて ほしいのさ」 「あたしに四 どうして、ええと、あなたが、かけないの ? 」 め
をにぎりかえなから、千をこえるじゅもんを、かけつつけた。でも、ラトマロ へんか ナのタネには、なんの変化も、おこらなかった。 ネネプとデデブは、こおりつ いた岩のくばみに、すわりこんだ。ネネプは、 七つのタネをまえにして、つかれきった、ため息をついた 「ネネプねえさん、しつかりしてもらいたいね。 いくら五百さいだといっても、 まほ、つ 土 6 ほ、つ まほ、つ 魔法つかいは、魔法つかい。芽をださせる魔法をわすれるなんて、こまったも んさ」 くち デデフか、ロをとがらせた。 まほ、つ 「わすれたのでは、ないんじゃ。どうも、いままでの魔法では、かからんのし やよ。なにかか、ちか、つんしや」 まほ、つ 「まあ、どっちみち、あきらめたほうかいし ) よ。これだけ魔法をかけても、タ
せない。タネをのこせなければ、いのちを、ひきついでいけない。 ラトマロナは、心をもっていたからこそ、なによりもたいせつな、希望をう こころ しなって、つぎつぎに、心をとじたらしいのだ。 ネネプとデデブが知っていたこの世界は、愛の花、ラトマロナがさきみだれ、 むし たくさんの虫たちがとびまわる、あたたかいところだった。でも、いまは、ふ りしきる雪と、つめたい飃の音しかきこえない、 まったくちがう世界に、かわ っていたのだ。 いも、フとのデ おねえさんのネネプは、芽をださせ、葉をしげらせるために、 ゆき デブは、花をさかせるためにきたのに、ふたりは、雪にうめつくされた大地に、 こえ ばうぜんとして、声もでなかった。 ゆき ネネプとデデブは、手あたりしだいに、雪をほりおこした。 こころ せかい せかい き。ぼう
ゆき 雪にうすもれても、ラトマロナが生きていれば、もっと、くわしいことを、 ゆき おも ききだせると思ったのだが、きたいは、うらぎられた。雪をほりおこしても、 そこには、かれはて、息たえたラトマロナの、かなしいすかたが、あるばかり 、ゞ」っ」 0 それでも、あちこちさがして、やっと、七つのラトマロナのタネを、みつけ ることかできた。 こいし あい 心をもっ愛の花、ラトマロナのタネは、どこにでもある小石のようにみえる。 でも、手にとってみると、生きているしようこに、ばんやりと、あたたかい。 おと それに、かるくふると、カラカラと、音がするのだ。 このタネから、芽をださせるために、ネネプは、知っているかぎりの魔法を ゆき あか しろすなこおり かけた。赤い石や、白い砂、氷のかけらや、つめたい雪など、いろいろなもの こころ まほ、つ
あたまうえ デデブは、そういうと、長いっえを、頭の上で、くるりとまわした。 ゆき 「デデブ、デデフ、デブラドンー 雪のたつまき、デブラドン ! 」 ゆき まほ、つ あし デデブが魔法をかけると、足もとの雪が、ぐるぐると、小さなたつまきにな ゆきなか った。そして、デデブも、まわりなから、雪の中に、もぐっていったのだった。 ひとりにな 0 たネネプは、飃のさむさだけでなく、心までさむくな 0 た。ラ トマロナのタネかいくつあっても、芽をださなければ、なんにもならない。 おも いいかんかえを思いっ ネネプは、なやみになやんだ。しばらくして、ふと、 はなこころ ゅ、つき にんげんこ 「そうしゃ。花の心がわかる、勇気のある人間の子どもに、手だすけしてもら うしか、ないのかもしれん : : : 」 けっしん ネネプは、そ、つ決心すると、ひとっ星のテントウムシに、のったのだった。