きようみ あっか に扱うのかにも興味が湧いた。そのような意味で、私はマーヒーを意識しながら、ふた ーズを読んだ気がする。 ごの魔法つかいシリ ヤ」、つき しようねんき ししゅんき 川北氏は少年期から思春期への移行期の、どちらかとい マーヒーは思春期を扱い うと少年期近くにいる子どもたちを扱っていた。 登場する子どもたちは東京に住むも的な子どもたちで、ストレスにさらされて けんこうてき はいるが、健康的な子どもたちである。 マーヒーも様ざまな生活上の止を抱えている現在の = ージーランドの健康的な子 ものがたり ましようめん どもたちの日常を、その日常性を真正面にすえながら、魔法や魔女という言葉を物語 かのう へんよう しゅじんこう 化することによって、主人公たちの心のトランスフォーメーション ( 変容 ) を可能にした 作家である。 おとず そのプロセスは私のところを訪れる子どもの、心の不思議な魔法のような力によって、 さまに かいふく こゅうにんげんせい 自分という固有の人間性にたどりつき、あるいは回復していくその様に似ていた。 しんりりんしようかせいしん りよういきしようせつか こ、つさ 非日常と日常の交差の織りなす不思議な領域で小説家は物語り、心理臨床家や精神 しゃ ないおく 療決家といわれる人間は、精神の内奥の神秘なまでに不思議な世界から社会を見、社 しき 119
読み手の子どもたちもデデブ的な部分、ネネプ的な部分をあわせ持っているはすであ とうえ、 とくゆうちょっかん る。読み進むうちに自分を投していくにちがいない。そして、子ども特有の直感で 魔法つかいたちのケンカの裏にある「愛」にも触れことができるだろう。 おもてかげ 読み手の子どもたちは一人の人間の裏と表、影と光のそれぞれを代表するふたごの魔 とまど じんるいそうぐう 法つかいのケンカに戸惑いながらも、人類が遭遇しつつある危機や自分の心の危機にも たいめん 対面するにちがいない。そして、魔法つかいが去った後で、違う自分を発見するのでは ないだろうか。そのような自分に気がついたら、もう思春期である。「月の娘」の準備 しかけにん ができたといえよう。そういう意味では川北氏は思春期への仕掛人である 現在の質文曠はあまりにクレージーで破壊的である。人間の存在を脅かし地球環境 を破壊するだけでなく、宇宙の法則やそのバランスを脅かすところにまできてしまって きようぞん はぐく 五百年もの間、人間と共存しながら「夢」を育み、自然を護ってきた魔法つかいの じそんしん きず 力もおよばなくなりつつある。誇り高い彼女たちの自尊心や愛も傷ついている。それが ふたごの魔法つかいのいら立ちとなり、ケンカとなり、主人公の子どもたちを戸惑わせ うら ゅめ まも 121
ふた魔法つかい SOS. 0 ・ 40 人 うづ フォア A 1 1 5 9 7 8 4 4 9 4 0 2 71 8 7 I S B N 4 ー 4 9 4 ー 0 2 71 8 ー 9 C 8 2 9 5 P 5 5 0 E ふたごのつかい 8 ラ ・「解説」より 読み手の子どもたちは一人の人間の裏と表、影と光のそれ とまど ぞれを代表するふたごの魔法つかいのケンカに戸惑いなから じんるい そうぐう たいめん も、人類が遭遇しつつある危機や自分の心の危機にも対面す るにちがいないそして、魔法つかいか去った後で違う自分 を発見するのではないだろうかそのような自分に気がつい ししゅんき たら、もう思春期である。「月の娘」の準備ができたといえ しかけにん よう。そういう意味では川北氏は思春期への仕掛人である ネネブのつえが うはわれた。 石になったネネプは うごけない。 ふたごのテテプに 川北亮司・作 ふりやかよこ・画 ーはーヨ フォア文庫 AI 15 童心社 定価 550 円 ( 本体 534 円 ) おもて ( 横湯園子 ) フォア文庫の整理番号 ・アルファベットとシンポル・マークの色によって対象 を表示してあります。 ・数字は対象別の通し番号です。 ・定価の変更によって広告表示と実際の定価カ咬っ ている場合もあります。 川北亮司・作 A = 小学校低・中学年 B = 小学校中・高学年 C = 小学校高学年・中学 FOUR BUNKO 装丁安野光雅
「じようだんじゃないよな : のりこ 紀子は、きゅうくつなシートで、ねがえりを、うちながら、ぶつぶっと、つ ぶやいた じかん 「あと、二時間で、つくからな。」 こえ ノノか、げんきな声でいった。 じかん 「二時間もかよ : のりこ しネ / 紀子が、うんざりしたように しゃ おと ワゴン車は、かるいエンジンの音をたてて、とぶように、はしっていた。 かんこうち てんちけいこく 行きさきは、観光地としてしられている、天地渓谷のおくだ。 おも そのときは、このキャンプが、思いもよらない、大しけんに、まきこまれる など、だれも、そうぞうできなかった。 たい
どけい ひがしそら 紀子のうで時計は、あさの四時を、さそうとしていた。もうすぐ、東の空か たいよう じかん ら、太陽が、のばる時間だった。 としゆき テントの中で、 ハもママも敏行も、つかれきって、ねむりこんでいた。 ただ、紀子だけが、目がさえて、ねつけなかった。 もり なか ねぶくろの中で、魔法のつえを、なでながら、森のおくでであった、魔法っ かいや、動たちのことを、思いだしていた。 のりこ 7 とりかこまれた紀子 のりこ なか 0 0 まほ、つ め のり・こ じ まほ、つ
かくれ滝に、うごくものは、みえなかった。 デデブは、 飃にのりながら、森の上で、首をかしげていた。 たき 「おかしい・ たしか、ここの滝だといっていたのに : たき おと 滝は、どうどうと、音をたててながれおちているだけだ。デデブは、けいか いしなから、あたりのようすを、うかかっていた。 そのとき、きみようなものを、みつけたのだ。動のかたちをした、たくさ いわい たき んの岩や石が、滝を、とりかこむように、ころがっている。 デデブは、いそいで、下におりた。 「なんてことだい ! 」 デデブは、はきすてるよ、フに、 い「た。ネネプが魔決をまちがえて、動枷オ いわいし おも ちを、岩や石にしてしまったと、思ったからだった。 した
「ふたごの魔法つかい」シリース第 5 弾〃 ふたごの魔法つかい風と火の国 . ーレ彡イ 川北亮司・作ふりやかよこ・画 おなしみ、ネネプとデデブの物語。 四年生の女の子、由香は、ゲーム センターのかえり道、大きなタマ ) / 彡・ , ゴのようなものをみつけた。中か ら、歌声がきこえてくると思った % 丿ら、タマゴがわれて、魔法つかい のネネプがあらわれた / びつく りしている由香に、ネネプは、手 つだってほしいことがあるとい う。まよった由香だが、「ほんとう に大切なもの」をもとめてネネプ といっしょに風と火の国へ旅立っ′ ( 128P )
ネネプや、動たちも、ずらりと山の上に、ならんでいる。 「たすけて ! おねがいだから、ここから、だしてーっー のりこ 紀子は、なきながら、さけんだ。 のりこ デデブと、ネネプは、なにか、そうだんをしているようだ。紀子には、ふた こえ りの声は、きこえなかった。 すぐに、ネネプと動たちをのこして、デデブのすがたが、みえなくな「た。 まほ、つ おも 紀子は、こんどこそ、おそろしい魔法をかけられて、ころされると思った。 でも、デデブは、山の上から、すべりおりると、石になっていた、パパたち のひたいに、つえをつきたて、魔法をといたのだった。 そしてすぐに、ながいっえを、ぐるぐると、まわしはじめた。 「デデブ、デデブ、デブラドン。きえろ、石のアリジゴク、デブラドン ! 」 のりこ やまうえ まほう
紀子は、このことは、まだ、だれにも話していない。 ) 話したくなかった。 はな もし、話したとしても、しんじてくれないのは、わかっている。「ウソは、 、。、。、よ、ことわざを、とくし ( にし、フにきまって どろば、フの、はしまり」と としゆき いる。ママだって、ばかにして、わらうにちがいない。敏行は、いつものよう に、ママのまねをするはすだ。 まほう ( あたし、魔法つかいになったんだよな : のりこ おも 紀子は、そう思うと、やつばり、しぜんに、わらいがこみあげてくる。 カっ」、つ まほう ( 学校で魔法をかけたら、みんなから、ぜったいに、そんけいされるよな。 それだけじゃないよ。テレビにも、でちゃったりして、すつごく、ゆ、フめいに なっちゃうんだ。そんなことになったら、どうしよ、フ : のりこ しや、もったいなくて、
こえ 岩のかげで、しわがれた声がした。 まほ、つ 魔法つかいのネネプだ。ネネプが、ふたごのいもうと、デデブがくるのを、 まっていたのだ。 しろ いわ ネネプは、白くながいつめで、岩についていたコケをつまんで、ロにいれた 「このあたりのは、あまくて、おいしいもんじゃな。」 おも もぐもぐと、コケをたべながら、つぶやいた。そして、きゅうに、思いっし たよ、フに、顔をあげた。 「そうじゃ。動たちと、話をするには、年よりのすがたより、子どものほう が、動たちは、あんしんするかもしれんな。」 ネネプは、いままですわっていた石から、ゆっくりとこしをあげた。そして、 くろい こしにさげていたふくろから、まっ白いすじが、三本はいった黒い石を、とり かお しろ ぼん くち