びほのおお てた。やがて、たき火の炎が落ち葉や草に燃えうつり、みるみるうちに、黒い よぞらあか 夜空を赤くそめあげていった。 かんそう かぜ 風にあおられた火は、乾燥した木や葉っぱにたちまち燃えひろがった。めら ことりちい どうぶつ ほのお めらと炎をあげる木から、小鳥や小さな動物たちがあわてて逃げだしてくる。 あくしゅう もりぜんたい 悪臭をはなっ煙がひろがり、森全体が白っぱいかすみにおおわれた。バンビ ふか かお けとくゆう は煙特有のこげたようなにおいをかいで、顔をあげた。深く息をすったとたん、 もり きけん け曾・ きず 煙にむせてせきこんだ。傷つき横たわっていても、森が危険にさらされている じぶん のはわかる。バンビはひどく気がせいた。動けない自分がもどかしかった。 こえ くち めいれい そのとき、おごそかな口ぶりで命令する低い声がひびいた。 「立て、バンビ ! 」 よこ くさ しろ ひく 163
たか た。まず初めに、高くそびえ立っ木でねむっていた小さな動物たちが目をさま した。しつほの長いリスや、しまもようの入った小さなシマリスがのびをした。 さあ、一日のはじまりだ。朝ごはんをさがしに行こう。 どり あか 小鳥の巣では、母鳥が、三羽のひな鳥のために赤いサクランポをくわえても どってきた。すると、三羽のうちの二羽がうばいあいをはじめた。そのすきに、 のこりの一羽が、あまいサクランポをすっかりたいらげてしまったー くさ じめんちか すあな 地面の近くでは、小さな野ネズミが、草にかこまれたまるい巣穴からはいだ あたまうえ かぜ してきた。すぐ頭の上で、木の葉のつゆが風にゆれて落ちそうになっている。 つめ りようて ネズミは、冷たいっゅのしずくを両手でうけると、やわらかい毛におおわれた かお 顔をあらった。 」とりす はじ にち なが はは′トり・ こ あさ どうぶつ
A すっ せんたくみち につちもさっちもいかなくなった。選択の道は二つ 頭のほうへかしいできた。 たき に一つだ。もはや、滝つばにとびこむしかなかった。 - げ・きりゅう たき ちちむすこゅうき 父と息子は勇気をふりしばり、滝つばにつつこんだ。そして、激流にのみこ かりゅう みず まれ、水のいきおいに翻弄されながら下流へとはこばれていった。 みずはなか もり みずつみ 森のはずれには、大きな湖があった。動物たちの多くは、湖の中にばつんと き しま こじまひなん うかぶ小島に避難した。小鳥たちは、島にまばらに生えている木にとまった。 そして、枝という枝にずらりとならんでねむった。 みずつみおよ かあ フクロネズミのお母さんは、しつばに子どもたちを乗せて湖を泳ぎ、小島に くち とうちゃく ぶじに到着することができた。アライグマは、子どもたちを口にくわえて島に えだ えだ おお ほんろう ツ」 A トり・ どうぶつ こ こ おお の 」じま しま 167
ふゅ せいき く冬がすぎて、春をむかえた。動物たちは、生気にあふれた新しい季節を祝う じゅんび 準備をはじめた。 もりあたら ぶき はる 春になって、あたたかくなるにつれて、森は新しい息吹とともに、生まれか たの わかば かお かぜふ あおちい わった。木々から青い小さな若葉が顔をだし、そよ風に吹かれて楽しげにゆれ はなちい ている。土のあいだからも、色とりどりのかれんな花が小さなつばみをのぞか せた。 ことりうたごえ えだ えだ 枝から枝へととびかう小鳥の歌声も、いつもよりあまく美しくひびいてくる。 こいあいて わたどりみなみ 渡り鳥も南の国からもどってきて、しきりに恋の相手をさがしはじめた。枝か よ、つき こい お ら枝へととびうつり、追いっ追われっしながら、はなやかな恋のダンスと陽気 はるうたひろう な春の歌を披露している。 えだ っち はる どうっ うつく あたら きせついわ えだ 121
もり どうぶつ とち じるほどだった。動物たちの多くが森をでて、もっとあたたかい土地にうつつ まいにち もり とりむ みなみくに ていった。毎日、ちがう種類の鳥の群れが森をとびたち、南の国へわたってい くすがたも見られた。 もり なかま けれど、シカの仲間たちは森にとどまった。熟して落ちたクリやドングリや みきようりよく み クルミの実を協力して見つけ、木の葉が枯れて落ちはじめるところをながめた。 ・カ あきつめ かぜふ もろい枯れ葉は、秋の冷たい風に吹かれてゆらゆらしたり、きりきり舞いした お りしながら、いたるところに落ちていく。 じめん もりある 地面が色とりどりの落ち葉におおわれているのを、バンビも森を歩くたびに め おがわ ある ちゃいろ ・カ 目にするようになった。小月 ーのほとりを歩いていると、茶色い枯れ葉がバンビ ま おがわお みずなが のまわりをひらひら舞いながら月月。、、 ーこ落ちて、水の流れにゆっくりとはこばれ み しゆるい おお こ カ お じゅく ま
かみなりおとみみ ・ほ , フけん ゴロゴロと鳴っている雷の音に耳をすました。たくさんの冒険をしてつかれた せいか、大きなあくびがでてきたけれど、すぐにねむる気になれなかった。 かみなりおと こうきしん あま 生まれて初めてきく雷の音にも、好奇心をそそられた。雨だれが木の葉にふ おんがくおも おと れて、音楽を思わせるリズミカルな音をたてている。 どうぶつ じぶん もりなか ほかの動物たちも、自分たちの家をめざして森の中をとんだり、走ったりし すあななか ちえ リスはすばやく木をよじのばり、巣穴の中にもぐりこんだ。知恵のあるネズ りよう か詹 ミは、キノコのかさを利用して、体がぬれないように、 かさの下からかさの下 へと走りぬけながら、家にもどっていった。母鳥はそそくさと巣に引きかえす どり わかことり と、あたたかい羽でひな鳥をつつみこんだ。けれど、あそびざかりの若い小鳥 おお はじ 、、は いえ 。はは′」り・ した こ した
おな たちは、こんもりとしげつた木の枝にとまって雨やどりしながら、バンビと同 もりきようみ あめ じように、雨にぬれる森を興味しんしんの目つきでながめた。 あめなか おやこ アヒルの親子だけは、雨の中でうれしそうにはしゃいでいる。水かさのまし みず いけおよ た池で泳いだり、水あびしたりするのにびったりのときだ , もり かみなりおと しぜん ほとんどの動物は、すさまじい雷の音におびえていた。森や自然にくわしい ちょうろう かみなりおと 長老のフクロウでさえも、つばさで耳をふさいで雷の音をしめだそうとした。 くろくも もりじようくう かみなり とお やがて、黒い雲がゆっくりと森の上空からはなれ、雷もどこかへ遠ざかって そら たの きんいろ いった。空がピンクと金色に変わり、小鳥たちが楽しげにさえずりはじめた。 ゅめなか しず ていぼく 静かな低木のしげみでは、ようやくバンビがねむりはじめた。夢の中には、 ぼうけん あたら なかま 新しい仲間たちとの冒険のシ 1 ンがあらわれては消え、消えてはあらわれた。 どうぶつ きえだ みみ ツ」 A 」り・ あま みず
うっとりしたロぶりでいし 「きれいだな。」 はなうご くち ハンビもとんすけのロまねをして、においをかいだ。と、ふいに、花が動い くろ おも たかと思うと、黒にあざやかな白いしまのある、まるい頭があらわれ、バンビ はなちい の鼻は小さなスカンクの鼻とふれあった。 「花。」 、ンビは、おばえたばかりのことばを口にした。 かお スカンクは、きよとんとした顔をした。 とんすけは笑いころげた。 わら くち しろ くんくんとにおいをかいた くち あたま
まえうご おも む カ く前に動いたかと思うと、 いきなり向きを変え、 ハンビのまわりで円をえがい はね かる た。それから、 ンビのしつほにとまった。羽のように軽いので、とまったの きんいろちい ことりおな がわからないくらいだ。この金色の小さな生き物は、さっきの小鳥と同じよう そら に空をとんでいる。 そこで、バンビは呼びかけた。 」 A 一り・ 「ちがうよ。それはチョウチョだ。」 とんすけが、バンビのまちかいを正した。 「チョウチョ ? 」 ちゅう ハンビは小さくつぶやき、チョウを見ようとふりかえった。宙でひらひらし よ ただ み もの えん
りゅう さからえなかった。さからう理由がなかった。世の中を知りつくしているフク しじ あんしん ロウの指示にしたがってさえいれば、まず安心だ。 おやこ ところが、ウサギのとんすけだけは、シカの親子のそばから一歩も動こうと あか こ、つきしん しなかった。好奇心をむきだしにして、あくびをしているシカの赤ちゃんをし げしげと見つめた。 はや 「とんすけ ! 早くいらっしゃい つよくち ウサギが強い口ぶりでうながした。 ある かぞく とんすけは、家族のあとからしぶしぶ歩きだした。それでも、なごりおしそ うに足をとめると、 なまえ 「ばうやの名前は、なんていうの ? 」 あし よなか