しゆりようき ゅうぐ 一日がおわって、夕暮れがせまってきた。狩猟を切りあげたハンタ 1 たちは、 やえいち まえ 野営地に引きかえしていった。ハンターたちはつかれていた。ねむる前に、 もの き火のあとしまつをする者もいなければ、火が消えているかどうかをたしかめ もの ようとする者もいなかった。 やえいちあきかぜふ テントに入ったハンターたちがぐっすりねむるころ、野営地を秋風が吹きぬ かぜお のこび けた。風が落ち葉をそこらじゅうにばらまき、くすぶっていた残り火をかきた 9 山火事 にち やまかじ 162
ハンターが森に入ってきた。猟犬に追われて逃げ まどうファリーンを、バンビは命がけで助けだす。 し、 りようけん たす おお ハンターのたき火の不始末か大きな山火事をひきお こし、森の動物たちは、命からから逃げだした。 どうぶつ もり いのち
とお ました。ハンタ 1 が遠ざかったことをたしかめると、バンビがかくれている場 しょ こえ 所に声をかけた。 「でてらっしゃい ノンビ。もう、だいじようぶよ。」 かあ ハンヒはかくれ場所からでて、お母さんのところへかけよった。 「なにがあったの、お母さん ? どうして、みんな逃げだしたの ? 」 ハンビはたずねた。 もりどう かあ お母さんはバンビを見おろしながら、どう切りだそうかとまよった。森の動 きけん 物たちはさまざまな危険にさらされているが、銃をもっハンタ 1 にでくわすほ り′・カい むすこ りゅう きけん ど危険なことはなかった。その理由を、おさない息子にも理解できるように説 明するのはむずかしかった。 ぶつ かあ じゅう せつ
「だめた , とんじゃだめだよ。どんなことがあってもね ! 」 なかま みみか かのじよ けれど、おびえたキジは、仲間のことばに耳を貸そうとしなかった。彼女の みみはい おもあしおと きようふしん 耳に入るのは、どんどんせまってくるハンタ 1 の重い足音ばかりだ。恐布心は ぜっちょうたっ た 絶頂に達し、耐えがたいほどだった。 「、も一つす入、よ , ここへ来るわ ! 」 めす はね じめん ついに、雌のキジは羽をばたばたさせながら、地面をはなれて舞いあがった。 そのすがたをハンターが目にとめた。 どうじ じゅうせい いのち ちじようお 銃声がとどろくと同時に、キジは小さな命をうばわれ、まっすぐ地上に落ち ていった。 め ちい ま 156
みち を走りだした。ファリ 1 ンが通った道とは反対の方向にむかって , 「ギャーツ ! ギャ 1 ッ , ずじよう こえ もりのはら ハンビの頭上で、カラスがけたたましい声をあげている。森や野原にいる動 こえ 物たちへの警告の声だ。 どうぶつ あんぜんばしょ あらゆる動物が、安全な場所をもとめて移動しはじめた。ウサギのとんすけ は妻と子どもたちを引きつれると、ハンターたちの目がとどかない場所へ、あ わただしく逃げだした。 どうぶつ じめんあなに おもあしおと 動物たちは、木や地面の穴に逃げこんだ。近づいてくるハンタ 1 の重い足音 ばしょ さえきこえない場所であれば、どこでもよかった。 なかま くさなか きみみた キジの仲間たちは、野原に生えたのつほの草の中にかくれて聞き耳を立てな ぶつ つま こ のはら とお はんたい いどう ちか ほ、つ」、フ どう 154
もりどうぶつ そこでお挙さんは、森の動物たちがもっともおそれるものが来たことだけを 告げた。 もり にんげんはい 「みんなが逃げだしたのはね、森に、こわい人間が入ってきたからよ。」 いえじ いじよう それ以上はなにもいわず、バンビをうながして家路についた。ともかくも、 もり ないしん きようは、あっさりとハンターが森からでていってくれた。おさんは、内心 ほっとしていた。
がら、ハンターが通りすぎるのを待った。 みみ にんげんちか 「ほら、耳をすまして。人間が近づいてくるわ ! 」 こえ 雌のキジが、おびえた声でささやいた。 「シイ 1 ツー べつのキジがすばやく制した。 しず 「静かにして。」 三番めのキジがいった。 「ますます近づいてきたわ ! とんで逃げましようよ ! 」 最初のキジが、おろおろしながらいった。 するとべつのキジが、あわててささやいた。 さいしょ めす ばん ちか とお 155
もり 狩猟シ 1 ズンがはじまり、また、ハンタ 1 が森にやってきたのだ。あのとき むざん は、ぶじだった。でも、こんどは、無残にもバンビのおさんの命がうばわれ てしまったのだ。 かあ おも ハンビはお母さんのことを思いながら、小さくすすりいた。どっしりとし た雄ジカは、バンビにやさしく話しかけた。 むすこ 「ついておいで、わが息子よ。」 もりお、つ こころなか じぶんむすこあんぜん これから先は、自分が息子の安全をまもる番だ。森の王さまは、心の中でつ ぶやいた A 」、つ もり なかある あゆ ハンビは、お父さんについて森の中を歩きだした。でも、ときどき、歩みを かあ とめてはうしろをふりかえり、お母さんのすがたをさがした。そしてついに、 しゆりよう さき ばん 118
のはらもり じゅうせい 銃声におびえた動物たちは、あわてふためきながら野原や森を逃げまどった。 なんど く、つき じゅうせいそうちょうつめ いまわしい銃声が早朝の冷たい空気をさいて、何度もひびきわたる。そのたび あんぜんばしょ とお にんげん ぶき どうぶつ に、動物たちも走りだす。人間のおそろしい武器から遠ざかり、安全な場所を さがさなければならないのだ , こうふん りようけんつか えもの ハンターたちは、猟犬を使って獲物をさがそうとした。興奮した猟犬の群れ は ついせき が、ファリ 1 ンを発見して追跡しはじめた。するどい歯をむきだして、ほえた お しゅうねん り、うなったりしながら、執念ぶかくどこまでも追ってくる。 たぜい ぶぜい もりなか ファリーンは、ひたすら森の中をかけまわった。けれど、多勢に無勢では、 お いわやま かのじよ 彼女に勝ち目はなかった。やみくもに岩山をかけのばり、せまい岩だなに追い りようけんむ つめられてしまった。猟犬の群れが、じりじりとせまってくる。 はし どうぶつ はつけん りようけんむ 157