「目をさまして、フクロウおじさん ! 」 と、つ お 子ウサギたちもお父さんのまねをして、フクロウを起こそうとした。 「ふむむむ、いったいなにごとだ ? 」 こえ フクロウは、ねむそうな声でたずねた。 けれど、とんすけと子ウサギたちは、じっとしていなかった。フクロウと、 いちもくさんもり のんびりしゃべっているひまなどない。ウサギの親子は、一目散に森へ走って っ」 0 し / ほ、つこく やがて、スカンクのフラワーがフクロウのもとへやってきて、重大な報告を した。 しゅんかん 「ついに、その瞬間をむかえたよ ! 」 め こ こ おやこ じゅうだい 172
「おう、若いプリンスじゃないか ! 」 老いたフクロウは、びつくり顔でいった。 せいちょう 「ずいぶんと成長したもんだな。ぐるっとひとまわりして、このフクロウおじ さんによく見せてくれ、バンビ。」 せいちょう せたか ハンビはひとまわりすると、成長して背が高くなり、すっかり変わったとこ ろをフクロウに見せた。 せなかはんてんき 「背中の斑点が消えて、いよいよ、おとなの角がはえてきたか。」 かんしん くち フクロウは、感心したロぶりでつぶやいた。 あたま ハンビはりつばな角がめだつように、頭をぐいとあげた。フクロウはくすく す笑った。おさなかった子ジカがこんなに大きく、りつばに成長したところを わら わか つの がお おお つの せいちょう 126
春にはお決まりのこのにぎわいが、平和なねむりについていたフクロウの目 をさまさせた。 「うむむむ、このそうぞうしさは、なんだ ? 」 フクロウは目をこじあけると、 「おい、うかれさわぎはやめろ ! 」 ようき ふまん こい かた 不満そうにぶつぶついって、陽気な恋を語りあう小鳥たちにうんざりした目 をむけた。ロマンスの味をすっかりわすれたフクロウには、くちばしがふれあ おと う音も、あまいささやきも、わずらわしいだけだ。 「シ 1 ツ、シ 1 ツ、あっちへ行けー フクロウはつばさをばたばたさせて、小鳥たちを追いはらおうとした。 はる あじ 」 A り・ お め 122
く、つ′」、つ 年とったフクロウが寝ている木の下では、ウサギのとんすけが、空洞になっ まるた た丸太をひらべったい足でトントンたたいている。動物たちを呼ぶときの、お あいず 決まりの合図だ。 「起きてよ、フクロウおじさん ! 」 ウサギのとんすけは、枝につかまってねむりこんでいるフクロウに、大きな こえよ 声で呼びかけた。 「どうしたんだ ? 」 ひく フクロウは、低くうなるような調子でいった。寝入りばなを起こされて、少 わる しきげんが悪そうだ。まだ、まぶたがとろんとしている。 もりちょうろう とんすけは、森の長老にもすばらしいニュ 1 スを知らせたかった。そこで、 とし あし えだ ちょうし した どうっ おお すこ
どうぶつ ふゅ かじ 火事ときびしい冬をのりきった動物たちには、新しい未来が待ちうけている。 はな つぎつぎあたら こい きせつ 恋する季節をむかえて、あちこちでロマンスが花ひらき、次々に新しいカップ ルが誕生しはじめた。 ここち あさ あるあたたかい朝、いつものように、フクロウはいびきをかきながら、む地 よいねむりをむさばっていた。 した フクロウの寝ている木の下では、ウサギのとんすけと四匹の子どもたちが、 と、つ まるた 丸太にとびのってあそんでいた。お父さんのとんすけを見ならい、子ウサギた あしまるた たい ちも平らな足で丸太をトントンたたき、フクロウを起こそうとした。 「起きろ ! 起きろ ! フクロウおじさん ! 」 とんすけは呼びかけた。 たんじよう あたら みらい ひき こ 171
じようたい はすっかり骨ぬき状態になっちまう。気づいてみると、ばうっとして宙をふわ ふわとただよっているというわけだ。 はなしないよう ちゅう 話の内容にあわせて、フクロウはつばさをひろげ、宙にとびあがった。 ゼこ じぶん 「そのときになって初めて、男は、自分がまともじゃないってことに気づくの ねっ さ。熱にうかされ、頭がすっかりいかれてるってことにな ! 」 もじ フクロウは頭をぐらぐらさせて、文字どおり、ねじがゆるんだようなしぐさ をしてみせた。 「へえーっ、ぞっとするね ! 」 ほんき とんすけは本気で身ぶるいした。 たの フクロウは、芝居がかったしぐさやロぶりを楽しんでいた。聞き手のバンビ ほね あたま あたま はじ くち ちゅう 132
たか て、高らかにうたいはじめた。 フクロウはうめいた。 「ピーチクパ 1 チクさえずって、なんの役にたつっていうんだ ! 」 はらだ しず 腹立たしげにすてぜりふをはくと、あきらめてとびたち、もっと静かそうな きえだ 木の枝をえらんで腰をすえた。 はる ちょうし 「春になると、いつもあの調子だ。ピチク 1 チク ! 」 」 A 」り・ こい かた こえ 恋を語りあう小鳥たちの声をいやみたつぶりにまねたあと、フクロウは目を きおお つぶり、こっくりこっくりしはじめた。と、そのとき、木が大きくゆれだした。 えだ ひっし フクロウは必死になって枝にしがみついた。 「やめろ ! 」 こし 124
けれど、しあわせいつばいの小鳥たちは、老いたフクロウのおどしなど気に こえこい うた もとめなかった。 にぎやかな声で恋の歌をうたいつづけた。 「くそっ、なんとしても連中に気づかせてやる。」 こえ おこ ひょうじよう フクロウは怒った表情をつくると、声をはりあげた。 ことり おおごえ 小鳥たちは大声におびえて、すばやくどこかへとびさった。 しず フクロウは耳をすまし、静かになったのをたしかめると、 おも 「ほ、りな , どうやら思い知ったらしい まんぞく にんまりしながら、満足げにつぶやいた。 やさき ところが、目をつぶろうとした矢先、またしても小鳥たちが舞いもどってき みみ れんちゅう 」とり 」 A トり・ 123
か じめんみ おおごえ 大声でわめき、地面を見おろした。しかし、体がぐらついて目がかすみ、動 つむ 物の群れがいっせいに木をゆすっているように見える。 「どいつもこいつも、さっさと消えろ ! 」 フクロウはどなった。ゞ、 カよくよく見ると、動物の群れではなかった。一頭 つのきみき わかお の若い雄ジカが、枝わかれした角を木の幹にこすりつけているのだ。 あたま わかお この若い雄ジカは、おとなの角がはえはじめたところなので、頭がむずがゆ くてたまらなかった。ざらざらした木の皮に頭をこすりつけると、かゆみかい くらかおさまる気がした。 かお ごえ フクロウのどなり声をきくと、若いシカは動きをとめて顔をあげた。 「こんにちは、フクロウおじさん。ばくのことをわすれちゃったの ? 」 えだ つの わか かわあたま どうぶつむ どう A すっ 125
「あの小鳥たち、なにかあったのかな ? 」 くち フラワ 1 が、ふしぎそうな口ぶりをした。 「なんで、あんなおかしなダンスをしてるの ? 」 ハンビはフクロウにたずねた。 フクロウは大笑いした。 「ほう、まだ知らんのか ? あれは、″ ) ゝ しカれほんちのたわむれ〃さ。ついきの うまで、ひょっ子だったおまえたちには、ちんぶんかんぶんでも、むりはない がな。」 「″いかれほんちのたわむれ〃だって ? 」 わか 若い いみ トリオはあっけにとられ、いっせいにたずねた。どういう意味だろう ? ヤ」 AJ. り・ おおわら 130