森の王さま 賀題地 GR 地△賀 PRINCE 動物たちに尊敬される偉大 な王さま。バンビの父でも ある。森の中で強く生きる ' とを息子に教える。 そんけい どうぶつ つよ もり
ハンビはたずねた。 もり かれ どうぶつ 「みんなが彼をうやまっているからよ。もちろん、森で暮らすほかの動物たち もね。」 どうぶつ もりひ おか 動物たちに尊敬されている雄ジカは、森に引きかえし、丘をのばっていく。 ハンビは、そのうしろすがたを目で追った。 かれ ゅうき け . いけ ; ル 「彼はかしこくて、勇気があって、経験もゆたかなの。とてもりつばなシカよ。 もりお、つ だから、〃森の王さま〃と呼ばれているの。」 かあ しそえた。 お母さんはいゝ もり したし あゆ そのころ、森の中では、偉大な王さまが歩みをとめて、じっと耳をすまして ずじようおお いた。カラスがしきりに力アカア鳴きながら、王さまの頭上を大あわてでとん そんけい なか おう おう みみ
だ。王さまはあせった。このまま、バンビを寝かせておくわけにはいゝよい。 た た 「立て ! さあ、立つんだ ! 」 おう づよ 王さまは、しんばう強くくりかえした。 かお ひっしあし ふたたび、バンビは必死に足をふんばって体を起こした。うまくいったー た きずいた 立っことができた , 傷は痛むけれど、動くこともできる , た おう 王さまはバンビのかたわらに立っと、 ばあい 「わたしについてこい のんびりしている場合ではない。」 きけんもり むすこ ひ 息子をうながし、あちこちで火の手があがる危険な森を走りだした。 かざむ 、刀 さいしょ ほのおちちむすこ ほのおしんろ 風向きが変わるたびに、炎の進路も変わる。最初のうち、炎は父と息子の背 ゅ て まえ 後をさえぎっていた。ところが、こんどは前からせまってきた。行く手をはば おう て うご ね 165
おお ぎられ、まわりがほとんど見えなくなった。 めまえ ンビはびつく いきなり、影のように大きなものが、目の前にあらわれた。バ ひっし おも りして、思わずとびのいた。必死に目をこらすと、大きな影のように見えたの と、つ もりおう は、お父さんの森の王さまだとわかった。 こえ もりおう 森の王さまは、低いおごそかな声で切りだした。 「もう、お母さんとはいっしょに暮らせない。」 こえ きようふ もりおっ ぼうぜん ハンビは呆然として、森の王さまを見つめた。お母さんの恐布にみちた声と まえ おと じゅうせい 大きな銃声が、頭によみがえってきた。前に、あのいまわしい音をきいた日、 おも おし にんげんもり " こわい人間が森に入ってきた。のだと、おさんに教えられたことも思いだ した。 かあ あたま ひく おお おお かあ 117
「バンビ、わたしの小さなバンビ。」 どうどう 母ジカとバンビが身をよせあっているころ、堂々とした雄ジカが、低木のし じあい たか げみを見おろす高いがけに立ち、慈愛にみちたまなざしで、この母と子を見ま ふう もっていた。雄ジカの頭には太いりつばな角がはえそろい、どっしりとした風 格がただよっている。 もり いたいおう この雄ジカは、森の偉大な王さまなのだ。動物たちからしたわれ、尊敬され もり たんじよう ている。森のプリンスの誕生をいちばんよろこんでいるのも、王さまだった。 もりお、つ むすこ かれあい ハンビは、彼の愛する息子なのだから。そしていずれは、バンビが森の王さま の座を引きつぐことになる。 あたま ふと つの どうぶつ おう ていぼく そんけい こ
こえうご ふあんきようふ かん いく。カラスの声と動きから、不安と恐布がはっきりと感じとれる。 きけん もりおう 危険がせまっているのだ ! 森の王さまはすぐさま丘をかけおりて、もう一 おう くさ 度、野原にとびだした。王さまのすがたを目にするなり、草を食べたりあそん だりしていたシカたちが、びたりと動きをとめた。たちまち、王さまのただな かん らぬ気配を感じとった。 のはら もり どうぶつ 野原にいる動物たちが、森にむかっていっせいにかけだした。野生の動物た きぎ もり おお あんぜんばしょ ちにとって、大きな木々にかこまれた森ほど安全な場所はない。 かあ どうぶつ ファリ 1 ンのお母さんは、逃げまどう動物たちのあいだをぬって走りながら、 学め 娘のすがたをけんめいにさがした。やっと見つけると、ほっとするまもなく、 もり ファリーンをせかして森の中にかけこんだ のはら なか おか おう やせいどうぶつ
しょ こんかい にんげんかずおお 「今回は、人間の数が多い。」 もりおう 森の王さまはことばをついだ。 もりおく いどう 「森の奥まで移動しなければならん。いそいでな ! 」 もりおう それだけいうと、森の王さまはがけをはなれ、しげみの中に入っていく。 ちち とちゅう おも ハンビも父のあとから走りはじめた。しかし、途中でファリ 1 ンのことを思 かのじよ あんぜん いたした。彳 皮女にも警告しなければ ! ファリ 1 ンとともに、安全なかくれ場 所をさがさなければならない あいす ハンビは、ファリ 1 ンとの愛の巣にもどりはじめた。しかし、そのころファ ごえ ひめ リーンは、悲鳴にも似たカラスの鳴き声に、ねむりをさまたげられていた。胸 かん から さわぎを感じつつ、 ハンビのほうをふりかえると、寝床はもぬけの殻になって ィいし、 はし ねどこ むな 152
ほのおけむり 森の王さまと息子のバンピは、 炎と煙をつつきって、あやう く死をまぬがれた。
おいの出どころをたしかめようとした。 た たか 冖に 49 い を追って高いがけまでのばっていくと、がけつぶちに立ってあたりを み あか み とお びしろけむり 見わたした。遠くに、赤いたき火と白い煙のすじが見えた。 ちちおや ちか おと もりおう 森の王さまが、音もなくバンビのかたわらに近づいてきた。バンビの父親で いたいお もある偉大な雄ジカだ。 もり にんげん 「人間だ。また、森に入ってきたらしい き もりおう 森の王さまは、おだやかに切りだした。 きけん とうお ひけみ 二頭の雄ジカは、いまわしい火と煙を見つめながら、危険のきざしをひしひ にんげん なごえ かん しと感じていた。カラスのおびえた鳴き声もきこえてくる。カラスたちは人間 もり やえいちじようくうえん の野営地の上空で円をえがいたのちに、森をめざしてとんできた。 で お 151
とっぜんおお まえ もりおう 突然、大きな体をした雄ジカが、バンビの前にあらわれた。森の王さまだー むすこ 「息子よ、ついてきなさい ! 」 もりおうじゃ どうどう ハンビはびつくりした。森の王者として君臨するこの堂々とした雄ジカが、 と、つ お父さんだったのだ。 おう ちち ハンビは、王さまについてかけだした。途中で、お母さんにも会えた。父と もり ははむすこ いちもくさんはし きけん 母と自」子は、森をめざして一目散に走った。危険はどんどんせまってくる。 もり じゅうせいもり シカの親子が森に逃げこんでまもなく、バン , ハン ! 大きな銃声が森に AJ り・ ひめい ちよくご じゅうせい とどろきわたった。鳥がけたたましい悲鳴をあげた。その直後、ふいに銃声も とりなごえき もりぜんたい しず 鳥の鳴き声も消え、森全体がひっそりと静まりかえった。 かあ ハンビのお母さんは、じっと立ちつくしたまま、身じろぎ一つせずに耳をす おやこ くんりん とちゅう かあ おお みみ