まるたなか こえくうどうなかはんきよう 声が空洞の中で反響し、しゃべったとんすけ自身がびつくりした。丸太の中 おも じぶん さっとうしろをふりかえってみた。 に自分のほかにだれかかいるのかと思い でも、だれもいなかった。 「とんすけ ! 」 まるたなか 丸太の中で、自分の名前を呼んでみる。 「とんすけ ! 」 こだまが声をかえす。 わらごえ ハンビとウサギのきようだいは笑い声をあげた。きようは、びつくりするこ まいにちもり かおみ とがたくさんあった。毎日、森はいろいろな顔を見せて、バンビやウサギたち たの をおどろかせたり、楽しませたりする。 こえ じ ん な じしん
ウサギたちとあそんでいるうちに、ヾ ノンビは自分がだんだん強く、たくまし かん くなっていくのを感じた。速く走れるようにもなった。 きみき みき 木の幹がたおれている場所に来ると、ウサギたちは幹をひょいとすばやくと ひこえた。でも、バンビは、どうやってとびこえていいかわからなかった。 「さあ、こえて。きっととべるよ。」 じっえん とんすけはバンビをはげまし、実演してみせた。 「大きくジャンプするんだ こうやってね。」 おも ハンビは、とんすけの動きをじっと見つめた。そして、自分にもできると思っ すこ まるた た。少しうしろへさがると、はずみをつけて丸太をとびこえようとした。 けれど、シカとウサギは体のつくりがちがうので、うまくいかなかった。バ おお はやはし み じぶん じぶん つよ
ふゅ ふこう しぜん 初めての冬は、バンビに不幸をもたらし、自然のきびしさを教えた。おさ かな んをうしなった悲しみをわすれることはできないけれど、いつまでもめそめそ してばかりはいられなかった。これから先もずっと、バンビは生きていかなけ じぶん あいじよう ればならないのだから。命がけで自分をまもってくれたお母さんの愛情に、む くいるためにも , かあ おそ ふゆえいえん お母さんから教わったように、冬が永遠につづくわけではなかった。まもな はじ きせつ さき 120
ある それからまた歩きだした。 こころ じんき ハンビの心は舞いあかった。王さまのようにりつばな雄ジカが自分に気づい おも てくれるなんて、思ってもみなかった。 「いちばん大きくてりつばなシカか、立ちどまって、ばくのことを見つめてく れたんだ ! 」 かあ ちか うちょうてん お母さんが近づいてきたとき、バンビは有頂天になって告げた。 「ええ、知っているわ。」 かあ お母さんは、ほこらしげにほほえんだ。 「あの大きなシカがやってきたとき、どうしてほかのシカたちは、じっとして たの ? 」 おお おお おう お っ
ンビは、ほこらしさでいつばいになった。うきうきしながら、とんす けといっしょに走りだす。 まうえ ところが、またしても足がもつれてバランスをくずし、とんすけの真上にた おれこんだ。 「ひえーっ , ひめい とんすけはおどろいて悲鳴をあげると、 「こんどはなんだ ? 」 じしん ハンビ自身にも、なぜ足がもつれたのかわからなかった。まだ、自分の足を うまく使いこなせていないようだ。 あそびつかれたバンビととんすけたちは、大きな木の下でひと休みすること つか あし あし おお した やす じぶんあし
くち おも たりあてはまる。思ったことをそのまま口にするのが、くせなのだ。このくせ のせいで、しよっちゅう、お母さんにしかられる。 「きみ、足がふらふらしてるね。」 あか シカの赤ちゃんがよろけているのを見ると、とんすけにならって、ほかの子 ウサギがいった。 あか じぶんながあし シカの赤ちゃんは、自分の長い足をもてあましているようすだ。 あか 「赤ちゃんはねむそうだ。まだ、生まれてまもないからな。おい、みんな、そ かえ ろそろ帰るとしよう。」 フクロウかいった。 もりどうぶつ ちょうろう 森の動物たちは、ずっと子ジカのそばにいたかったが、長老のフクロウには こ かあ み こ
こえ とんすけは大きく首をふり、大きな声でゆっくりと、 「一」お 1 ・し J お 1 ・り , ー・」 」レ」り・ 小鳥たちもバンビの顔のまわりにとんでくると、 」 A 」り・ 「『小鳥』といって。」 こえ ちょうし 声をそろえ、うたうような調子でいった。 こえ ふか おも ハンビは深く息をすうと、思いきり声をはりあげた。 「こおーとおーり一ー・」 おおごえ あまりの大声に、小鳥たちはふきとばされてしまった。 じぶん おお ウサギのきようだいは大はしゃぎしながら、自分たちのおさんとバンビの おさんのところまでかけていった。 おお ツ」 A 」 . り・ かお おお
「バンビー・」 きけん ファリ 1 ンはさけんだ。危険がせまっているとすれば、バンビが自分をひと じしんみ りにしてどこかへ行くはずがなかった。ひょっとしたら、バンビ自身の身にな きゅう しんばい にかあったのかもしれない。急にバンビのことが心配になった。ファリーンは そと すばやく外にでてみた。 いえ ハンビが家にもどったとき、ファリ 1 ンのすがたはなかった。 「ファリーン , ハンビは、ファリ 1 ンをさがしまわった。動揺するあまり、ファリ 1 ンがた もり みちじゅん か こみち 1 、 どった道順をおちついて考えることができなかった。ただやみくもに森の小道 ′ : つよ、つ じぶん
「花だけ食べて葉っぱをのこしたら、どうなるって教わったかしら ? 」 ど かあ しつもん もう一度、ウサギのお母さんは質問した。 「あっ、そうか ! 」 おも こえ とんすけは思わず声をあげると、 みどりは か - 是 「『緑の葉っぱは体のためになるから、のこさずにちゃんと食べなさい』って、 ながみみ おお あし パパに教わったよ。ウサギの長い耳と、大きな足をつくってくれるんだって。」 じぶんながみみ 自分の長い耳をたたき、大きな足をあげてみせたあと、バンビにそっと耳う ちした。 「でもね、葉っぱってまずいんだ ! 花のほうがずっとおいしいよ。」 おそ おお あし おそ みみ
あおぞらしろくもみ 青空と白い雲を見わたすことができる。 おがわ こおよ ハンビが見つけた小月 ーでは、アヒルの子が泳ぐけいこをしているところだ。 じぶんな是 みず ハンビは浅瀬にとびこみ、自分の体にもアヒルの子たちにも水をはねちらした。 もり どうぶつ かお その日は、森のほかの動物たちも野原にくりだしてきた。ウサギの家族も顔 を見せ、朝ごはんを食べはじめた。 「おはよう、プリンス・ ハンビ ! 」 ウサギ一家はあいさっした。 「こんにちは。」 ハンビはあいさつをかえすと、ウサギ一家をめずらしそうにながめながら、 たずねてみた。 あさせ あさ のはら こ かぞく