プランコのむこうで 203 その散歩の帰りに、ばくはあの遊園地に寄ってみた。プランコにのってみる。ゆら ゆら、ゆらゆら、プランコはゆれる。ゆられながら、ばくは考える。あの夢の世界は どこにあったんだろうと。タやけ雲のむこうなのだろうか。それとも、このすぐそば なんだろうか。あのさまざまな夢の世界も、この現実の世界があればこそなんだ。こ こが、ずっとばくの生きてゆく世界なんだ : ( この作品は「だれも知らない国で」を改題したものです )
なんかもある。草花はあまりない。小さないたずらっ子が花をむしっちゃうからだろ うな。きようも、四歳か五歳ぐらいの男の子や女の子が七人ほど、声をあげてかけま わったり、砂あそびをしたりしていた。 べンチにはとしとった男の人がふたり腰をかけ、なにか話しながらハトにパンのく ずらしいのをまいていた。ハトは集って食べていたが、とっぜん、いっせいに飛び立 つ。犬をつれた女の人が散歩にやってきたからだ。だけど、こんなことはどうでもい で いことさ。 こ む 公園にはプランコもある。あの少年はそこへ行って乗った。腰をかけてゆらせはじ の コめた。子供つばいことをするやつだなあ。ばくなんか、学校の帰りにわざわざ公園に、 プランコに乗りに寄ったりはしない。でも、ちょっと面白そうだった。少年は楽しそ うに、プランコをこいでいる。ゆれかたは大きくなってゆく。 ばくはしばらく考えてから、やっと決心した。あいつの顔を見てやろうと。顔ぐら い見たって、怒りはしないだろう。怒りそうだったら、逃げればいいんだ。ゆれてい るプランコから、すぐにはおりられないだろう。いまがチャンスなのだ。 しかし、できることなら、あいつに気づかれないほう力しし。 ゞ ) ゝ。まくはそっと水飲み 1 場のむこうをまわり、木のうしろをとおり、すべり台のかげにたどりついた。ここか
プランコのむこうで
プランコのむこうで りむいた。 「亠のつ」 ばくは思わず叫んでしまった。
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138 プランコのむこうで ているというわけなんだろうな : そう思いながらも、ばくはふるえていた。いまにも戸があけられ、銃をつきつけら れることになるんだろうと :
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プランコのむこうで 155 そして、小屋の戸を勢いよく押して、なかへ飛びこんだ。開ききった戸は、はずみ がついて戻り、ばくのうしろでばたんとしまってしまった :
プランコのむこうで を思い出したんだ。あれに似た感じ。べつな人の夢の世界に移っちゃうんだなと、ば くは思った。ピロ王子とこんな別れかたをするのはいやだな。別れるとしても、あい さつぐらいはしたい。ばくは扉をあけようとして、手で前を押した。扉があるはずな んだけど、なんの手ざわりもなかった・
106 プランコのむこうで のうち、昼間は日光が明るく照るようになって : 0 、 0 、 ノ、も、一つんと もっと眺めていたかったけれど、ばくは歩き出した。ばくのママもノ 心配しているにちがいないんだ。こんなところで時間をつぶしてはいられない。 さっき見つけておいた、細い横町のポール紙でできた箱のところへ行った。あけて のぞいてみると、なかはからつば。きゅうくっそうだったけど、ばくは身をかがめて なかへはいった。手でひつばり、ふたをびったりとしめた :