王様 - みる会図書館


検索対象: リアル鬼ごっこ
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1. リアル鬼ごっこ

国の佐藤さんを恐怖のどん底に追い込んでいくのである。 じいは限られた時間の中で必死に努力し、二日後の午後一時には全ての内容とルールをマ スコミを通じて布告した。国民はその内容に騒然となった。全国に号外も出回り、それを手 にした者は、佐藤さんばかりか誰もが改めて驚き呆然とし、全ての佐藤さんは恐怖に見舞わ れた。マスコミは全て緊急特番を組んだ。 『またも ! またも王様が″ある〃計画を実行しようとしております ! 』 そんな今回の計画に対し、キャスターは、 『リアル鬼ごっこ』 と称した。聞こえまゝゝ ) 。しし力もしれないが、実際やろうとしていることは凄まじく、残酷か っ冷酷極まりなかった。 しかし、前代未聞の提案をした″馬鹿王〃のいる宮殿の周りには、誰一人として押し掛け る者はいなかった。数百名の衛兵が厳重に目を光らせていることもあるが、抗議に行ったと 提ころで所詮無駄だと分かっていたからだ。宮殿外では嵐のような騒ぎだったが、宮殿の敷地 っ内では時折、鳥の鳴き声が聞こえるだけで、いつもと変わらぬ静けさであった。 そして、鬼ごっこの実行が決断されたその時から、全国の佐藤さんは〃リアル鬼ごっこみ を避けることは許されず、いやでもこの現実を受け入れるしかなかった。王様の命令どおり

2. リアル鬼ごっこ

るだけである。学校で流れる校内放送を思い出させる光景だ。全国民がテレビに釘付けとな り、固唾を呑んで王様の登場を見守っていた。その間、王国中が静まり返る。二、三分が経 過した時、数人の側近を連れた王様が画面に映し出された。久々のテレビ出演とあってか王 一つ咳をし、間を置いてから第一声を発した。 様の仕草もぎこちない。 「全国各地の誇り高き姓を持っ佐藤の諸君、お早う」 それをきっかけに王はべラベラと喋り続けた。 「そして、今回、鬼という名誉な役に選ばれた諸君、ご苦労。どうかな、意気込みのほど は ? とにかく、今日の夜十一時に一日目の鬼ごっこが予定されておる。そして、一週間逃 げ切った者には、どんな願いでも叶えると約束しよう。一週間後に一人でも多く残っている ことを私は期待して待っておるよ」 ここまで一気に喋り、最後に付け加えた。 「それでは一週間後に宮殿で会おう」 捨てゼリフのようにそう言った後、マントをひるがえし、側近と共に王はテレビの画面か 会ら姿を消した。王国中から深いため息が洩れたのが聞こえるようだった。これがリアル鬼ご 開 っこの開会式だった。そして〃逃げ切った者の願いを叶えてやる〃と述べていたが、捕まっ た時のことは一言も口にしなかった。リアル鬼ごっこ開始まで約十一時間。時間は刻一刻と

3. リアル鬼ごっこ

始されます。そして、逃げ切った佐藤さんには王様が何でも願いを叶えて下さるという素晴 らしいご褒美が待っております』 アナウンスが流れる中、翼は遥か上空を見つめていた。 『それでは、そろそろ時間です。明日の″閉会式〃でお会いしましよう : : : ブツッと放送が切れたと同時に、これが最後である、始まりの長いサイレンが王国中に響 き渡った。 十二月二十四日、日曜日、〃リアル鬼ごっこ〃最終日 : : : スタート。

4. リアル鬼ごっこ

新横浜から新大阪行きの新幹線に乗り込んでから、一時間以上が経過していた。退屈な時 間とはいえ、翼は一睡もせずに窓から見える風景をばんやりと見つめていた。すると、通路 を挟んで隣の席に座っている、仲のよさそうなカップルの会話が聞こえてきた。 「それよりさー どうなってんのかな ? 」 「どうなってるって ? 何が ? 」 「やってるじゃん。鬼ごっことかいう、王様が勝手に決めたやっ」 「あ 1 、あれね」 佐「何か、実行されてるらしいわよ」 プ「でもさ、捕まった人たちって : : : 本当に殺されちゃうのかな ? 」 そのセリフだけ声を潜めて言った。翼には全て聞こえていたが、寝たふりをしていた。 彼女はいともあっさり彼氏の質問に答えた。 ダブル佐藤

5. リアル鬼ごっこ

「じい 不意に呼びかけられ、思わず声を上げそうになったじいの前には、王様の弟である王子が 立っていた。 「お、王子 : ・・ : どうかなされましたか ? 」 王子は深刻そうな表情で、俯いたまま黙っている。 「王子 ? 」 もう一度じいが問いかけると王子は俯いたまま、 「す、すまぬ : : : 」 申し訳なさそうにじいに言った。 「王子 ? 一体 : : : どうなされたというのです」 「私のせいだ。こんなことになったのも本当は私のせいなのだ」 こ つ「そ、それは : ・・ : 一体どういうことなのです ? 」 鬼「実は、王がこんな計画を実行しようと決めた前の夜、私は王にこう言った。今、王国の中 スでもっとも多い姓は佐藤だと。それは喜ばしいことだと。そう言ったのだ。それが王には気 にくわなかったのだろう : そして、こんなことに : 「王子 : : : 」

6. リアル鬼ごっこ

81 鬼ごっこ始動 息をつきながら、天井を見つめる。公園での恭子の言葉が妙に気になり、頭から離れなかっ ″確率的に言えば、鬼に遭遇しない佐藤さんも存在する〃 この言葉の裏を返せば、一日目に運悪く鬼に発見され、追いかけられて、捕まって、最終 的には殺された佐藤さんもいるはずなのだ。はずじゃない、必ずいるのだ。たまたま翼は鬼 に発見されず、公園で全てを忘れ、楽しいとまでは言わないが、恭子との思い出に残る一時 を過ごすことができた。が、これからは甘くない。鬼ごっこが続けられるにつれて、王国中 そうなれば自分が追いか の佐藤さんは消えてゆくのだ。馬鹿げた王様の発案のために : けられて捕まる可能性も高くなっていくわけだ。その前にどうしても母と愛に会わなければ ならない。それだけが心残りだ。とにかく今は、父が無事に帰って来ることを祈るだけだ。 今は待っしかない : 疲れのせいか、まぶたが重くなり、次第に翼は深い眠りへと落ちていった。二日目の朝を 迎える :

7. リアル鬼ごっこ

閉会式での願い事 終了の合図が王国中に鳴り響いてから、十五分が経過していた。佐藤翼はいまだに地面に へたり込んでいた。翼は体をガタガタと震わせながら心の中で呟いた。何が : : : 何が起こっ たというのか ? あの時、鬼たちとの間に何が起こったというのだろうか ? それにどうし て俺は今この場にこうしていられるんだ ? どうして俺は生き延びているんだ ? 分からな : どうして ? 目の前にいた九人の鬼たちもすっかり姿を消している。先ほどとはまったく異なり、落ち 着いた雰囲気が漂っていた。そして、完全に呼吸が落ち着いた時、七日間続いた〃リアル鬼 ごっこ〃がようやく全日程を終えたことを実感した。 一方、王国では " リアル鬼ごっこ〃の集計結果が出ようとしていた。最終日に捕まった佐 藤さんたちのデータは消されていった。一晩かけて集計は全て終了し、その結果がじいの耳 に伝わった。その結果にじいは驚き、不安と焦りを感じていた。王様の反応が怖かったから

8. リアル鬼ごっこ

硯説明された。 『一週間逃げ切った方には、王様が直々に願いを聞いて下さるという大きなご褒美が待って います。それではあと五、六分お待ち下さい』 語尾は更に元気がよかった。翼はその嫌みとも受け取れるアナウンスを聞いて、更に闘志 を燃やした。ひもをギュッと固く結んで、鋭い目つきで立ち上がった。 やってやる ! やってやるよ ! 捕まえられるものなら捕まえてみろってんだ ! 俺は佐 藤翼だぜー それに母さんや愛に会うまでは捕まるわナこまゝゝ し。ーし力ないんだ ! 逃げてやる、どんな鬼か らも逃げてやる ! そう心に強く決め、翼は玄関の扉に手をかけた。リアル鬼ごっこまであ と : : : 百一一十秒。 「妙に・・ : : 静かだな」 外に出た最初の感想はそれだった。確かに、ちらほらと人が歩いているのは確認できる。 しかし、いくら住宅街とはいえ、異様なほどに静かなのだ。まるで王国に翼だけが生き残っ ているかのように : 翼はキョロキョロと周りに目を配る。まだ始まっていないとはいえ、 自然に鬼を捜していた。鬼たちの待機場所がどこにあるのかは知らされてもいないし、分か

9. リアル鬼ごっこ

どの毎日を過ごしてきた翼なのだが、憎いとはいえ肉親に、捕まってしまえ ! などとは思 えなかった。 翼は腕時計に目をやった。それにしても妙である。鬼ごっこが開始されて、既に二十分が 経過しているにもかかわらず、鬼の姿はおろか、逃げ回る佐藤さんの姿もいまだ目撃してい なかった。本当に鬼ごっこは実行されているのだろうか。もしかして、王様のイタズラ ? はったり ? それとも夢 ? そんなはずはない、と頭を小刻みに振り、自分の甘すぎる考え を追い払った。 ( 静かすぎると思わないか ? ) 翼は自分に問いかけていた。別に現れてほしくもないし、それに越したことはない。しか し、どう考えても実行されているとは思えないくらいに、町は静けさを保っている。 警戒は怠らずに、翼は木々に覆われた公園に目をとめた。休憩がてら、そこで身を潜める ことにした。 鬼が待機していないかと、木の陰から確認し、いないと分かってホッと安堵の表情を浮か べ、足音を立てないようにして公園の中へ入った。周りを見渡すと、その公園はそれほど大 きくなく、滑り台の階段はさびついており、登り棒のペンキはすっかりはげてしまっている。 明かりを常に放っているはずの電灯もついたり消えたりの繰り返しだった。かなり古くから

10. リアル鬼ごっこ

「本当でしょ ? だって、王様の命令だもん。逆らえる人はいないわよ」 「そうだよなー」 深刻そうな表情を浮かべた彼氏は、 「でも俺たち、佐藤じゃなくてよかったよな 1 」 安心したというより、それは佐藤さんたちを馬鹿にしているようだった。その言葉に翼は 目を開き、二人をにらみつけた。それにいち早く気づいた彼氏は眉をひそめ、翼に向かって 頭を下げた。翼は無反応のまま再び目を瞑った。なおも、ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。 最初は自分たちがうるさかったために、にらまれたと思っていたところ、よくよく考えてみ ると、にらみつけてきた人の名字が佐藤だったことにようやく気づいたようだ。それからは 一切その話題に触れず、翼が気づいた時にはお互い寄り添ってグッスリと眠っていた。 翼はスポーツ新聞に目を通した。テレビ欄以外は滅多に見ないのだが、今は王国の状況や 鬼ごっこに関する情報などを知っておきたかった。それ以外は一切興味がなかった。 翼が手にした新聞には大きく、鬼ごっこが取り上げられていた。 〃とうとう三日目に突入 , リアル鬼ごっこー そういう見出しだった。 『国王が提案した鬼ごっこが実行されてから、三日目に突入した。日々、王国中の佐藤さん